15.冤罪
怒り全開の俺に、
さらに火に油を注ぐような事を、
山下は言った。
「お前らみたいなクズどもが、何言っても世の中の誰も信用しちゃくれねぇんだよ。」
そう言いながら、
山下はまた俺の腕をつかんだ。
「離せよ!」
俺はまた、思い切り手をほどく。
そんな俺の態度に、
山下はなかなか煮えきらねぇなとばかりに、
舌打ちをすると、
最後の手段に出た。
山下はスーツの胸ポケットに手を入れ、
そこから、
黒い輪っかを出した。
手錠だ。
手錠が出た途端、
周りの野次馬たちがざわめきだした。
緊張感が、
現場に走る。
俺は手錠なんて何回も見たことがある。
それを見ることに、
特に抵抗なんてねぇ。
でも、何もしてねぇのに、
これをかけられるなんて、
まっぴらごめんだ。
「はい、公務執行妨害だな。」
山下は緊迫した様子でもなく、
ひょうひょうとそう言いながら、
手錠を俺の左手首にしようとした。
「やめろよ!」
必死で振りほどこうとしたが、
なかなか振りほどけない。
山下も必死だ。
いい歳のオッサンとはいえ、
日ごろ武道とかやって鍛えてるから、
相当の力はある。
特に手錠をかけるときなんて、
犯人が逃げられないようにするから、
かなり力を入れて、
腕をつかんでるはずだ。
だから、俺は体全体で、
手錠をかけられるのを抵抗するしかなかった。
「やめろって言ってんだろうがよ!!」
でも山下は、
俺の怒鳴り声に、
耳を貸そうともせず、
無理矢理、手錠をかけようとした。
その時だった。
「待ってください!!」