14.性悪刑事
「久しぶりだな。トシ。」
「山下・・・!」
「警察を呼び捨てするとは、いい度胸だな。」
ヨレヨレのスーツに、
デカイ熊のような体格。
ニヤニヤしながら話しかけてきたこの男は、
俺が暴力事件を起こすたびに、
世話になっている、刑事の山下だ。
だけど、こいつの人間性は最悪で、
何でこいつが刑事なんてやっているのかが、
不思議なくらいで、
俺の最も嫌う人間の一人だ。
俺はヤツをキッと睨んだ。
「・・・何だよ。」
「まぁ、そう睨むなよ。ところで、その手に持ってるのは何だ?」
ヤツの指がさしたのは、
俺の手元の財布だった。
「あ・・・これはさっきの・・・。」
「ま、話の続きは署で聞いてやるよ。」
俺の言葉を遮り、
山下は無理矢理俺の手をつかんだ。
俺は、その手を思い切り振り払った。
「なんだよ!何もしてねぇよ!なんで、俺が行かなきゃいけねぇんだよ!!」
俺の怒鳴り声に、
街中の奴らが反応した。
ざわざわと、
野次馬たちが俺らの周りに、
円を描くように集まってくる。
でも、そんなことは全く気にする様子もなく、
俺の言葉に、
山下は静かに答えた。
「ここから、1キロ先でひったくりがあった。被害者は年配の女性だが、辺りは暗いわ、一瞬の事だわで、顔はまったく見えなかったらしい。でも、背格好はちょうどお前くらいだそうだ。」
その話を聞いて、聞き返す。
「で?俺がその犯人だって言いたいのかよ?」
山下はニヤニヤしながら、
俺に告げた。
「そうは言っちゃいない。ただ、その手に持ってるモンが何よりの証拠だと思ってね。」
山下は、顎をつかって俺の手元を促した。
「・・・これは俺じゃねぇよ。さっきぶつかったヤツが落としていったんだ。」
「へぇ?お前にしちゃめずらしいな。そんなすぐバレる嘘をつくなんて。」
その言葉を聞いて思った。
こいつは、たいして調べようともせず、
最初から俺を犯人にしたてあげようとしてたに違いねぇ。
この野郎・・・。
警察の風上にもおけねぇヤツだ!
こういう大人がいるから、
俺は誰一人、信用しない。