11.ゲーム
俺らの間では、
一つのゲームがあった。
それは、ツレの女を寝取ること。
世の中の大体の女が、
自分の男とは違う男にコロッと寝返る。
そして、抱かれる。
俺らは、それを確認して、
その女を捨てる。
まるでボロ雑巾のように。
その後、その女が泣こうがわめこうが、
俺たちは絶対に相手にしなかった。
未練なんて、
小指の爪の先ほどもなかったから。
今考えると、
何でそんなことをしてたのか不思議だ。
今は、結構めんどくさくて、
あんまやらねーけど。
俺はマキオに聞いた。
「お前、この三年、何やってたんだよ。」
俺の当然の質問に、
マキオは不適な笑みを浮かべた。
「へへぇ。実は、俺、墨田組に入ったんだよ。俺の知り合いのツテでな。」
「墨田組って・・・。」
「そう、ここらじゃちょっと名の知れた墨田組さ。」
墨田組というのは、
俺らの住んでる街の一帯を占める、
暴力団だ。
まさか、自分のツレだったヤツが、
ヤクザの道に入るとは・・・。
でも、それも何だか実感が湧かなかった。
「大丈夫なのか?」
俺の言葉にマキオは、
目を丸くした。
「お前さんも丸くなったな。前は絶対、俺の心配なんかしなかったのに。」
マキオに言われて、
初めて気付いた。
俺が人を心配なんて、
ありえない話だったのに・・・。
でも、すぐに否定した。
「お前の心配なんかしてねぇよ!ただ、現実味がねぇから・・・。」
「何言ってんだよ。八重門には、それ系の店がいっぱいあるだろうが。」
俺は、その言葉に黙ってしまった。
「ま、お前は、そんな世界とは関わんねぇ方がいいぜ。親が親だからな。」
「親のことはいうんじゃねぇ!」
その事を言われた瞬間、
俺はマキオに怒鳴っていた。
親のことを少しでも言われると、
すぐに頭に血が上る。
それぐらい、
俺は親のことが大嫌いだ。
そんな俺の姿を見て、
マキオは、笑った。
「お前、相変わらずなんだな。そういうトコ変わってなくて安心したぜ。」
俺は黙って、マキオを見ていた。
その時、マキオの女が、
間に割り込んできた。
「マキオ。この人が、トシ?一緒に悪いことしてたってゆってた・・・。」
「おう。まぁ、今の俺よりマシだけどな。」
「ふぅん・・・。ねぇ、それより早くいいコトしにいこうよ♪」
マキオの女が、
マキオの腕に胸を押し付けて誘ってる。
彼氏がツレとの再会で話が盛り上がってるコトよりも、
自分の快楽のほうが大事らしい。
やっぱ女は低俗だ。
でも、この女がそこまで欲情するんだから、
やっぱそれなりのテクは持ってるんだろう。
って、昔から知ってるけど。
「お前、相変わらず、スゴイんだな。」
俺は、マキオに言った。