狂気
???
「私、強くなります。再び貴方に会えるまでに、強くなりますから…、…だから…」
拓真
「なら、再会した時に分かるようにこれをやるよ」
???
「マフラー、ですか?」
拓真
「俺のお気に入りだったんだ。また会うまで、無くすなよ」
???
「はい!私、肌に離さず持ってます!」
拓真
「う…うぅ〜」
目を開けると、白い天井と白いカーテンが見えた。
拓真
「ここは…保健室?」
薬品の臭いがするし、寝ていたベットは保健室にあるやつだから、ここは保健室で間違いないと思う。
白河
「あ、拓真さん!気がつかれましたか!」
目の前のカーテンを開けると、白河さんと由美と由奈がいた。
由美
「お父さん!大丈夫ですか?」
由奈
「パパ〜!」
慌てて由美と由奈が抱き着いてきた。
拓真
「おおと、どうした2人とも?」
由奈
「パパが保健室に運ばれたって聞いて…」
由美
「お父さんに何かあったのか心配したんですよ」
拓真
「そうか…」
俺は2人を抱き締め
拓真
「2人とも、俺は大怪我するかもしれんが、死にはしないから」
笑いながら言った。
白河
「あの〜、拓真さん」
拓真
「ん?何かな?白河さん」
白河
「ごめんなさい!私のせいで…」
拓真
「いいよ。それより、約束どうり、強くなったんだね」
白河
「え?!あ、はい。二年間、少しでも拓真さんに近づきたくて、厳しい特訓に耐えました」
拓真
「厳しい特訓?白河さんは組織か何かに所属してるのか?」
白河
「いえ、父が元軍人なので父直伝の特訓です。あと…そうですね、言うより見た方が早いと思いますので、銃で私を撃って下さい」
拓真
「え?」
白河
「あぁ、拓真さんの銃はそこにありますから」
白河さんは言いながら保健室にあるテーブルを指差した。
拓真
「いや、そうじゃなくて…」
白河
「大丈夫です。絶対に当たりませんから」
拓真
「…じゃあ、撃つぞ」
俺は銃を取り、セーフティーを外して、スライドを引いて弾を装填し、白河さんに銃口を向け
拓真
「…本当にいいのか?」
白河
「大丈夫です」
それを聞いて、俺は白河さんの肩を狙って、引き金を引いた。
もちろん弾丸は打ち出され、白河さんの肩目掛けて、音速のスピードで飛んでいく。
拓真
「…嘘だろ」
白河
「だから大丈夫って言ったじゃないですか」
撃ち出された弾が見えているのだ。白河さんの目の前で…
白河
「私、自分の周囲のベクトルを少しだけ操作出来るんですよ」
白河さんは飛んでいる弾を掴み、そのまま床に落とした。
白河
「反射は出来ませんけど、遅くしたり速くしたりすることは出来ます」
なるほど、だから光希の攻撃を素手で受け止められたのか。
で多分、自分の攻撃は無意識に加速させているのだろう。俺を壁まで飛ばしたのもこれで説明がつく。
白河
「まだ自分に対しての操作は制御しきれてませんけど…」
拓真
「俺だって自分の能力を完全には制御しきれてないんだ。気にすることじゃないと思うぞ」
俺は白河さんの頭を撫でながら言った。
白河
「…なんで、不意にカッコいいこと言うんですか…」
拓真
「何か言ったか?」
白河
「な、何でもないです」
白河さんの顔は赤くなっていた。
由美
「ねぇ、お父さん、何だか外が騒がしいよ」
由奈
「パパ、行ってみよう」
拓真
「え?…俺だけ行って、様子を見て来るから、2人は待ってて」
白河
「私も行きます!」
拓真
「白河さんには2人を守って欲しいから、2人の傍にいてくれないか?」
白河
「わかりました。気を付けて下さい」
拓真
「わかってる」
俺は装備を取り、保健室を出て、グランドに向かった
拓真
「…やられたな」
グランドには妖魔がいた。
しかも相手は小型の群れ。
拓真
「大怪我で済むといいんだけどな」
俺はさっき使った銃を取り、撃ちながら群れに突入した。
小型は群れだろうが、単体だろうが、特殊能力を持っている。まずはそれを見極めないと…
拓真
「取り合えず、数を減らさないと話にならん!」
俺は銃をリロードすると、もう一丁の拳銃を取り出し、二丁で別方向を狙い、数を減らした。
拓真
「…こんなに数、多かったけ?」
群れに突入する前に見た数の半分を既に倒したはずなのに、全然減ってないのだ、妖魔が…
拓真
「まさか…、増えてるのか!?」
俺は確認する為、両手の銃を弾切れになるまで乱射して、周りを確認した。
拓真
「…増殖してやがる」
倒したら、倒した分だけ増えている。
拓真
「厄介やな…」
こうゆう敵は増殖するまえに倒しきるしかないから、正直、一人だとキツイし、ヘタしたら殺られる。
拓真
「…嫌な相手が出たものだ」
応援は来るだろうけど、それは俺がヤられた後だろうし、彩夏は今頃は支部に行っているだろう…
拓真
「八方塞がりだな」
俺は銃をしまい、ナイフを二本、両手で持った。
拓真
「単体が弱いのが唯一の救いか…」
そう、さっきから妖魔は近づいて来るだけで、攻撃して来ないのだ。
拓真
「まるで遊ばされているみたいだな」
俺は近づいて来る妖魔を片っ端から斬っていった。
やはり、単体は弱く、ナイフの刃もすんなり通る。
返り血を気にしなければ幾らでも斬れそうな気がしてきた。
斬って、刺して、また斬っての繰り返し。数はなかなか減らないが…
…楽しい。
拓真
「…え?!なんで楽しんでんだ俺?」
実際に斬る手は止まらない。止められない。
どんどん斬って、返り血を浴びて、理性が飛んでいく…
拓真
「…はめられたな。完全に…。けど、いいか…」
三倍から四倍へ…
さっきより、多く倒せるが…
拓真
「…何だ。まだ足りないのか…なら…」
四倍から五倍へ…
最早動きが止まって見える
拓真
「…さてと、殺戮の時間だ」
まず周囲の妖魔を一気に斬り殺し、増殖しようとしてるやつを見つけて殺す。
どんどん妖魔の死体が増えていく。
普通の人から見ると、勝手に妖魔が死んでいるように見えているだろうが、実際には俺が目視可能なスピードを越えて、妖魔を殺しているだけだ。
残り三体になった妖魔は、三体とも別方向に逃げ始めた。
拓真
「…逃がすわけないだろう」
俺はナイフを二本、二体にそれぞれ投擲し、残り一体を片手で掴み上げて。
拓真
「…潰れろ」
頭を握り潰し、体を地面に叩き付けた。
拓真
「…何だ、死んでなかったか」
ナイフを投げつけた二体のうち、一体が増殖しようとしてるのが見えた。
拓真
「…させるわけないだろうが!」
瞬時に接近。思いっきり踏み潰した。
拓真
「…もう居ないのか…、つまらんな、なら…」
もう、気付いている。
アイツらの返り血は浴びてはいけなかった。
拓真
「…もう、抑えきれんな」
アイツらの能力は増殖だけではなく、自分たちの血を浴びさせて、相手を狂わせるとゆう能力を持っていたんだろう。
拓真
「…あ、もう来たのか…」
支部のヘリが見えた。
拓真
「…来たらダメなんだけどな…、インカム無いし、楽しめるから、いいか…」
俺は銃を取り出し、ヘリに向かって、発砲した。
俺はもう、戻れないかもしれない。