つまりこれが本当
いろいろ暴走中
拓真
「つ、疲れた〜。」
彩夏
「うん。さすがにしんどい。」
妖魔との戦闘、その後すぐに生徒たちからもみくちゃにされて、かなりの疲労が溜まった。
拓真
「あ〜、制服もベタつくし、本当に最悪…」
彩夏
「代えは持ってないの?」
拓真
「持っているわけないだろう。それにこれは少し手を加えているから。」
彩夏
「ナイフのホルスターを着けただけでしょ?」
拓真
「いや、普通のより丈夫にしたりした。」
彩夏
「それもう改造制服やん。」
拓真
「しかたない。制服は諦めて、シャワー借りよ。」
俺は妖魔の死体の近くにあるテントから出て、運動部の部室がある方に向かった。
彩夏
「あ、私も〜。」
彩夏も続けて出て来た。
妖魔の死体の周囲10メートル付近に鉄柱が六本立っていて、その間を『KEEP OUT』と書かれたテープが張り巡らしてある。
俺と彩夏はテープの隙間から外側に出て、運動部の部室がある方に向かった。
今は授業が行われているから他の生徒は見当たらない。
拓真
「まさかここのシャワー室を使う日がくるとわな…」
シャワー室は体育館と運動部の部室が密集しているここの二ヵ所に設置してある。
俺は軽くシャワーを浴びて、簡単にシャツを洗い、ドライヤーで乾かした。
上着は乾くのに時間がかかるから、洗わずそのままにした。
拓真
「少しベタつくがいいか。」
血が乾いてきているみたいだし、俺は上着を着て外に出た。
彩夏と合流して、テントに戻った。
拓真
「支部長、早く戻って来ないかな〜。」
彩夏
「まだじゃない。話てる内容が内容だし。」
何故かヘリに乗っていた支部長は今、学園長と話合いをしている。
もちろん、俺と彩夏の装備について。
拓真
「火力不足で手こずったしな…。」
彩夏
「私は手が痛い。」
俺はともかく、彩夏は格闘だから、手を痛めやすい。
てか、怪力でも手を痛めるんだ…。
拓真
「お、支部長が来た。」
校舎の方からこっちに来る支部長の姿が見えた。
支部長
「いや〜すまん、遅くなった。」
彩夏
「いえ、大丈夫です。」
拓真
「どうでしたか?」
支部長
「生徒たちに危険がない武器なら持ち込んでいいそうだ。」
彩夏
「やった。」
拓真
「けど、勝手に扱われて怪我されたら困るよな〜。」
彩夏
「いないでしょ。そんな奴。」
拓真
「俺の中には2人いるんだけど…。」
不安要素はあるが、俺と彩夏はそれぞれの教室に戻った。
俺は休み時間に合わせて教室に入った。
生徒全員
「!!!!!」
教室に入るなり、全員の注目を集め、そして全員にドン引きされた。
拓真
「あ、忘れてた。」
俺の制服が血だらけで、ホラー映画でありそうな格好になっていることを…。
俺はそのまま自分の席に座って、残りの授業を受けた。
拓真
「さて、帰るか。」
大介
「拓真、聞きたいことがある。」
席を立ち上がると大介に声をかけられた。
拓真
「何だ?」
大介
「昼休みに起こった出来事は本当なのか?」
昼休みの出来事?俺と彩夏が妖魔と戦ったことだよな…
拓真
「この格好を見たら分かるだろ。」
俺は血だらけの制服を見せた。
大介
「だよな…。」
亮助
「なぁ拓真、お前はいつからあんなことやっているんだ?」
拓真
「親父が死んでからだから、中二だな。」
大介と亮助はそれぞれ俺に質問してきて、俺は出来るだけ答えた。
大介
「しかし、身体能力が五倍ね〜。」
拓真
「俺はまだ、三倍までしか出来ないけどな。」
四倍以上となると負担が凄いし、制御しにくくなる。小学生のときに、一度、五倍まで引き上げて、暴走したことがあるから、三倍で止めている。
亮助
「三倍でも十分凄いよな…」
藍那
「あら、ここにいましたの?」
教室の入口に藍那、由美、由奈の3人がいた。
由奈
「パパー!」
由美
「お父さん!?」
藍那は特に反応は無いが、由美と由奈が俺の格好を見て驚いていた。
2人はすぐに俺は所に来た。
由美
「お父さん、大丈夫ですか!?血だらけですよ!」
由奈
「パパ大丈夫?!死なないよね?」
拓真
「2人とも落ち着け。これは俺の血じゃないし、2人を置いて死なないから。」
俺は2人を落ち着かせた。
由美
「よかったです。怪我もありませんから…」
由奈
「制服が血だらけだから心配したよ〜。」
拓真
「血が付くから抱き着くなよ。」
今にも抱き着きそうな2人を両手で制した。
大介
「軽くスルーしてるから気づかなかったけど、さっき呼び方変だったな。」
亮助
「『パパ』と『お父さん』だったな。」
なんか大介と亮助が言っている気がするが無視しよう。
拓真
「そう言えば何で藍那がここにいるんだ?」
藍那
「拓真に用があるからよ。はい、これ。」
拓真
「制服?うわ、サイズ一緒だし。」
制服のサイズが書かれている部分を見ると、今着ているのと同じだった。
藍那
「当たり前よ。これ、貴方にあげるやつだから。」
拓真
「いや、フツー見た目で服のサイズは解らないでしょ。」
藍那
「私の情報網を甘く見ないで。」
拓真
「それ…胸を張って言えることじゃないから。むしろストーカーに近いからね。」
教えた覚えがない服のサイズを知ってるとか、どんな情報網だよ。
拓真
「まぁ、とにかく制服ありがとな。」
藍那
「これくらいお安い御用よ。」
拓真
「ふ〜ん、あれ?すでに改造してある…」
上着の背中部分にはナイフのホルスターが付いていた。
藍那
「ついでに付けておいたのよ。」
一応、制服自体を調べてみた。
拓真
「これとこれは不用っと。」
功名に隠してあった発信器と小型マイクを取り外した。
藍那
「あら、バレた。」
拓真
「やることが悪質だ。」
更にまだ隠してないか、制服を調べた。
亮助
「おい拓真、一ついいか?」
拓真
「何だ?」
亮助
「由美ちゃんと由奈ちゃんってさ、お前の何?」
拓真
「娘…、じゃなくて家族だ。」
大介
「今娘って言わなかったか?」
亮助
「確かに言ったな。」
藍那
「何?まだ言ってないの?」
拓真
「言う必要ないだろ。」
亮助
「ひそひそ話してないで俺たちにも言えよ。」
大介
「そうだ交ぜろよ。」
拓真
「今更だがお前ら藍那と初対面のはずたよな?」
亮助
「そんなのはどうでもいい。拓真、何を隠してる。」
大介
「正直にゲロっちまえよ。」
拓真
「えー。断る。」
藍那
「由美ちゃんと由奈ちゃんは拓真の娘よ。」
いやお前が言うのかよ!?
大介&亮助
「……マジ?」
藍那
「マジよ。」
大介&亮助
「拓真!!」
拓真
「何?」
大介&亮助
「娘さんを下さい!!!」
拓真
「断る!!」
大介
「そんなお父さん、娘さんは必ず幸せにしますから。」
拓真
「誰がお父さんじゃ!!だいたい2人の見分けも出来ないだろうが!」
亮助
「何を言う、出来るに決まっているだろうが!」
拓真
「じゃあやってみろ!」
俺は俺の制服の上着を着て遊んでいる由美と由奈を見た。
…てか何やっているんだ2人とも…。
大介
「由奈ちゃ〜ん。」
大介は俺の制服を着ている方を。
亮助
「由美ちゃ〜ん。」
亮助は俺の制服を着てない方をそれぞれ呼んだ。
拓真
「逆だ。由美。」
俺は制服を着ている由美を呼んだ。
由美
「何でしょう?」
拓真
「あまり俺の制服で遊ぶなよ。」
由美
「ごめんなさい。つい着てみたくなりました。」
拓真
「別に着てもいいんだけど重いだろ?」
由美
「いえ、意外と軽いです。」
拓真
「そうなんだ。」
由奈
「パパ〜。由美が代わってくれない〜。」
拓真
「これでいいなら着ていいから。」
俺は今着ている血だらけの上着を由奈に渡した。
由奈
「これ、重い。」
拓真
「ナイフとマガジンと空のマガジンが入っているからな。少しまってろ。」
俺はポケットからマガジン、背中の部分からナイフを抜いて、マガジンは机の上、ナイフは手元に置いた。
拓真
「これで少しは軽いはずだ。」
由奈
「わ〜い。パパありがとう。」
由奈は俺の上着を着て、由美と少し離れた位置に移動した。
大介&亮助
「………」
自分たちが外したのがショックなのか2人とも固まっていた。
拓真
「当ててもやるつもりは無かったけどな。」
俺はグランドから妖魔の死体が運び出されるのを窓から眺めながら呟いた。