表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

飛ばされた先は

目覚めたら、何故か森に居た。



『はぁ!?』






『ちょ、ここどこ!?』


突然ですがはじめまして。九条 菜月です。


で、ここはどこですか?


見渡す限り“森”なんだけど…。


確か電車に乗って…寝てたよね、私。


それがどーしてこんな森のなかに…?


まさか私死んだの!?


ここは死後の世界!?


「んーまぁ、あながちハズレでもないんじゃない?」


『え、』


ふと私の後ろから声が聞こえて振り向けば、岩に腰掛けて笑う青年が一人。


『今心読んだ!?』


「全部口に出てた」


くくっ。と青年は喉で笑う。


『わ、私を食べても、おいしくないですよ!』


まさかこいつが地獄の使者!?


割と人間っぽいのね…。


「いや、俺人間だからね」


笑いながら青年は言った。


『な、何がおかしいのよ!?』


笑うなんて失礼だ!


「だって、まさかそれを素でいう人に会うとは思わなかったからさ。

 君の言動はなんていうか…一般人より地球一個分くらいズレてるんじゃないかな?」


本当に失礼な奴だなぁ。


いくらなんでもそんなにはずれてない!


っていうか地球一個分ってどんだけだよ。


なおも笑う青年は「あぁ、そうだ」と聞いてもいないことを話始める。


「俺の名前は保坂 拓磨。17歳で高校二年生だよ。君と同じようにこの世界に飛ばされてきたんだ。

 なんかよくわかんないけど近くに見知らぬバックがあってさ。

 ほら、君の分はそこにある奴じゃないかな。なんか色々入ってるんだよね、これ。

 んで、中にメモがはいってるから、それを読んだら大体のことは分かると思うよ」


感想。ほんとよく喋るなぁ。


口の軽い男は信用されないよ?


まぁとりあえず、拓磨の目線を追って自分の足元を見ると、彼の言うとおりベージュの小さなショルダーバックがあって。


拾い上げて中を見てみた。


『うわ、ほんとに色々入ってるなぁ…』


短剣とか傷薬とか、なんかよくわかんない物まで入ってる。


がさごそと中を探れば“九条 菜月サマへ”と書かれた一枚のメモ。


『え〜っと、“残念なことにあなた様は死にました”…って何これ!?』


いきなり一文目から死亡宣告されたんだけど。


「まぁまぁ、最後まで読んでみなって」


いつの間にか横に立っていた拓磨が笑いながら言ってくる。


いや、笑い事じゃないんだけどね。


まぁとりあえず続きを読むか…。


『“ですが、幸運にも選ばれたあなた様には、蘇るチャンスを与えましょう。何、簡単なことです。私の創ったこの【ゲーム】をクリアして頂くだければよろしいのです。

  【ゲーム】は簡単なRPGとなっております。参加者はあなた様を含め30人。バックの中に入っている道具は選別です。ご自由にお使いください。

  それでは、後武運を。  神様より”

 ……え、これ、マジ?』


最後まで呼んでみたけど、なんていうか現実味のない話だ。


思わず拓磨を見ると、あいつは少し先に居てちょいちょいっと私を手招きしていた。


『何?』


そっちの方へ行ってみると


『うわっ;;』


そこにあったのは異形のものたちの屍。


それらは、ゲームなどでいう【魔物】のような姿をしていた。




『これ…』


「殺したのは俺だよ」


言葉に詰まる私に説明する拓磨は、もう笑ってはいなかった。


「俺が目覚めた所も、君と同じでこの森の中の少し開けた場所だった。

 どうやら【魔物】たちはそこには入れないようになっているらしい。まぁ目覚める前に喰われちゃ困るしね。

 でも、一歩でも外に出れば【魔物】がうようよしてるよ」


拓磨の説明とこの光景で、さっきのメモの内容が一気にリアルに感じる。


『でも、ちょっと待って。あのメモにはクリアすれば生き返れるってなってたけど…

死んだらどうなるの?』


私の質問に拓磨は「さぁね」と肩を竦めた。


『そもそも私にはあんな魔物たちと戦えるような力はないよ?

 どうすれば…』


途方にくれていると、拓磨の笑い声が聞こえた。


『…なに笑ってんの?』


「いや、君でもそんな顔するんだなぁ、と。

 そーいえば俺、君の名前をまだ聞いてないんだけど」


さっきまでの様子が嘘のように、彼は笑って言った。


眉間にしわを寄せつつも、私は答える。


『…九条 菜月。…16歳で、高校一年生』


なに?とうとう頭がイッちゃったの?


いきなり笑い出した拓磨を不審な目で見てたら頭を小突かれた。


「俺だってもともと【魔物】を倒せるような力を持ってた訳じゃないんだよ。こっちに来てからいきなり攻撃力があがってたの。

 じゃなきゃとうの昔に餌になってるって」


相変わらず笑いながら拓磨はそんなことを言う。


いや、笑って言うようなことじゃないと思うんだけど。


『えっと、じゃぁ…』


「菜月もなんか能力が上がってたりするんじゃない?

 ってか、バックん中になんも入ってなかったの?短剣以外の【武器】」


拓磨に言われてバックの中をもう一度探ってみる。


『あ、』


奥のほうから


『拳銃、だよね…』


二丁の小型拳銃が出てきた。


え、これどーやって使うの…?


「貸してみ」


使い方に困っていると、横から拓磨がそう言って手を出してきた。


素直に渡すと何やらがちゃがちゃいじり始める。


『使い方分かるの?』


「んー」


尋ねてみると曖昧な返事を返された。


そしていきなり




パンッ!!




撃った。


『ちょ、何やってんの!?撃つなら撃つって先に言ってよ!!』


「あー、わるい」


たいして反省が見られない笑顔で謝りながら、拓磨は拳銃を私に返してくる。


「それさ、普通の拳銃とは違うみたいだよ。弾が入ってなくても撃てた。しかも引き金引いただけで。

 安全装置とかないっぽいよ。よかったな菜月でも使えそうで」


いやいや、ちょっと待て!


『安全装置ないって危ないよね!?』


いくら拳銃について知らなくてもそれくらいはわかるよ!?


それないと暴発とかしちゃうじゃん!


「あ、それがさ。自分が撃つ、って思って撃たない限り撃てないみたいなんだよね。

 なんでもありだな、この世界は」


そう言って、やっぱり拓磨は笑った。






なんか、無茶苦茶な世界だなぁと思うけど。


それに順応出来ちゃってる拓磨も結構おかしいと思うよ?


なんて言ったら、また笑いながら小突かれたけど。




   


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ