兄の名で売られた刃を打ち直す私へ、帰還騎士が私の名を書いた工賃袋と求婚を差し出しました
「また兄さんの印を打つの?」
返事の代わりに、槌が鳴った。
鉄より妹の質問を叩き潰すほうが得意とは、さすが我が兄ズビグニェフ。研がなくても切れ味がいい。主に私へ向けて。
私は作業台の猟刀を持ち上げた。三晩かけて刃の歪みを取り、砥石を替え、握り込んだ時に初動が引っ掛からないよう刃元だけをごくわずかに丸めてある。丸めすぎれば鈍る。足りなければ手首を返す瞬間に刃が暴れる。私が何度も試して決めた、私の仕上げだ。
「所見を申し上げます」
客の猟師へ向け、私は刃を灯りにかざした。
「峰側に古い打痕がありますが、芯までは届いていません。枝払いにも使えます。ただし骨へ斜めに当てると欠けます。投げないでください」
「投げないよ」
「前のお客さまも、そうおっしゃいました」
猟師が黙った。実績のある注意事項なので仕方ない。
兄は私の手から猟刀を取り、刃の根元へ自分の職人印を打った。かつん、と軽い音がした。三晩が一打で兄のものになった。
「仕上がりました。ズビグニェフの作です」
客前の兄は胸を張り、刃の角度まで自分が決めたような顔で断言する。猟師は兄へ工賃の袋を渡した。
「いい腕だ。また頼む」
「ええ。うちは代々、この仕上げです」
代々ではない。先月、私が決めた。
客が帰ると、兄は受け取った袋を腰へ収め、代わりに銅貨を三枚よこした。
「今月の小遣いだ。無駄遣いするなよ」
「今の猟刀の工賃は?」
「家の仕事だろう。材料も炉も家のものだ。おまえは家で食べている」
三晩の仕事が食事と寝床に化けた。しかも今夜の煮込みは兄が肉を先にさらうので、私の取り分は芋だ。せめて大きい芋を狙おう。職人には未来を見る目が必要である。
私は惨めだった。三晩眠らず研いだ刃より、兄が一度押した印のほうが高く買われたからだ。
自分の腕が足りないなら、もっと磨けた。けれど客が褒めた腕は、もう兄の腰の工賃袋に入っている。私は砥石の粉を払い、作業台へ猟刀が置かれていた跡を見た。
そこだけ、妙に明るかった。
* * *
「欠けた。六本。うち一本は、訓練中に刃先が飛んだ」
城の兵士は布包みを作業台へ置いた。短剣同士が触れ、がちゃりと嫌な音を立てる。
兄が自分の印で納めた短剣だった。もちろん、研いだのは私である。ただし納品前、兄が勝手に刃を薄くした。見栄えが鋭いほうが客受けすると言って。
客受けした刃は、見事に欠けて帰ってきた。
いい気味だ。
そう思った。かなり思った。胸の内では兄の評判が短剣より景気よく砕けた。兄が羨ましく、腹立たしかった。客に頭を下げられ、名を呼ばれ、工賃を受け取るのはいつも兄だ。失敗だけ私の作業台へ戻ってくる。便利な家族愛にも限度がある。
「家の仕事だ。直しておけ」
兄は客前では眉間に皺を刻み、熟練職人の顔をしていた。兵士が出ていった途端、声が一段低くなった。
「おまえが最後に見たんだろう」
「兄さんが薄く削り直したでしょう」
「証拠は?」
「欠けた六本です」
「口答えする暇があるなら手を動かせ。家の評判が落ちる」
家の評判。とても便利な言葉だ。利益は兄へ、失敗は家へ、修理は私へ。三方向へ自在に飛ぶ。短剣よりよほど優秀な武器である。
「所見を申し上げます」
私は六本を並べた。
「五本は刃先を落とせば使えます。これは駄目です」
一本だけ、作業台の端へ退けた。ひびが刃の内側まで走っている。研げば表面からは消えるだろう。そして次に硬いものへ当たった時、兵士の手元で折れる。
「形だけ戻せ」と兄は言った。
「戻しません」
「納期は明日だぞ」
「折れます」
「訓練用だ」
「訓練中の兵士にも血は入っています」
兄は舌を鳴らした。私は五本を研ぎ直し、危険な一本は柄を外して赤い布を巻いた。代わりの短剣を倉から選び、刃を整える。夜が明ける頃には、腕が砥石と同じ形に固まった気がした。あまり格好よくない。できれば人間の形へ戻りたい。
受け取りに来た兵士たちは刃の理屈には詳しくなかったが、赤い布の一本を見て顔をしかめた。
「これを使っていたら?」
「たぶん、次に折れていました」
「助かった。ありがとう」
兵士は兄ではなく、作業台の前にいる私へ頭を下げた。隣の兵士も、その隣も、短く礼を言った。
兄は奥で帳面を閉じた。
「家の仕事に自分の印など要らない」
私は返事をせず、赤い布をきつく結び直した。
* * *
「値は銀貨十八。欠損は刃先と柄の内側。重心は、持ち主に振らせないと決まらん」
老刃物商のドブロミルは、それだけ告げて長い布包みを置いた。
「打ち直しですか」
「完成させる依頼だ」
布を解くと、未完の長剣が現れた。
刃先が半寸ほど欠け、柄には仮の革が巻かれている。刃そのものは悪くない。ただ、重心が決まっていなかった。軽くしすぎれば剣先が流れ、重くすれば初動が遅れる。持ち主の肩、肘、踏み込みまで見なければ仕上げられない剣だ。
そして刃元には、私が昔つけた丸みが残っていた。
喉が狭くなった。
私がその研ぎを施した長剣は一本しかない。試振りをした男も、一人しかいない。
消息が途絶えて五年。帰らない人のために場所を取っておくなと兄に言われ、倉から消えたはずの剣だった。
「どこで、これを」
裏口の蝶番が鳴った。
入ってきた男は戸口へ肩をぶつけ、さらに立てかけてあった火箸を倒した。がらん、がらがら、がしゃん。
戦地帰りの登場としては、だいぶ締まらない。
「ミロスラフ」
「ただいま、ヴラスタ。先に言うが、怪しい者ではない」
「火箸から見れば十分に怪しいです」
「そこは昔と変わらないな」
背が伸び、頬に薄い傷が増えていた。けれど剣を避ける時だけ右足から引く癖も、私を見る時に眉尻がわずかに下がる顔も、私の知っているミロスラフだった。
私は駆け寄りたかった。胸へ額をぶつけて、生きていたのかと怒鳴りたかった。実際には火箸を拾った。職人なので。床の安全が第一なので。決して足が動かなかったわけではない。たぶん。
「名乗ったほうがいいか」
「もう呼びました」
「では確認だけ。ミロスラフだ。戦地で部隊が分断され、負傷して捕虜になった。解放後に出した便りは届かなかったらしい。帰還の許可が下りて、まっすぐここへ来た」
彼は私の逃げ道を塞ぐのではなく、一つ横へずれた。昔からそうだった。大きな身体のくせに、他人の前を占領しない。
「この長剣は、撤退の際に置いていかざるを得なかった。取り戻した時には欠けていた。刃元を見て、間違いなく君の仕事だと思った」
「なぜ、分かったのです」
「ここを丸める職人は君だけだ。俺が一歩目で剣先を落とす癖を見て、君が変えた」
兄の印ではなく、私の癖を知っている人が、目の前にいた。
うれしい、より先に腹が立った。五年分、まとめて。感情にも工賃を請求できればいいのに。特急料金をつけたい。
「それで、来た目的は」
「君と二人でこの剣を完成させるためだ。それから、今も君を愛していると伝えるために来た」
ドブロミルが帳面をめくる手を止めた。
私は火箸をもう一度落とした。
がらん。
ミロスラフが拾おうとして剣の鞘を棚へぶつけ、木箱が落ち、その木箱から釘が散った。
ばらばらばらばら。
「帰って早々、工房を攻城戦にするのはやめてください!」
「すまない。久しぶりで距離感が」
「五年で肩幅まで増やしてくる人がありますか!」
「食事が戻ったので」
「そこはよかったです!」
よくない。いや、よかった。腹が立つほどよかった。
ドブロミルは長剣の横へ小さな革袋を置いた。表には墨で名前が書かれていた。
ヴラスタ。
兄の名でも、家の工房名でもなかった。
「前金だ」とミロスラフが言った。「受け取ってほしい。足りなければ、君が額を決めてくれ」
私は袋を持ち上げた。硬貨の重さが手のひらへ落ちる。小遣いではない。材料費を引いた工賃が、私の名で、私へ支払われている。
「ドブロミル。依頼主は頭を打ちましたか」
「昔からだろう」
「ひどいな」
「工賃の行き先を確認しただけ、昔よりましだ」
老商人の査定は辛い。しかし反論できないあたり、焼き入れも十分だ。
「一つ、確認します」
私はミロスラフを見た。
「昔、あなたが言ったことを覚えていますか。私を他人の名の炉へ連れてはいけない、と」
「覚えている」
「あれを言った翌朝、あなたは出征しました」
「そうだ」
「私はずっと、あれが答えだと思っていました」
彼の口が動きかけた。
「今は剣を先に」と私は遮った。「これを仕上げなければ、私たちはまた言葉だけになります」
ミロスラフは言い訳を押し込め、うなずいた。
「分かった。君が話すと決めた時に聞く」
その答えもまた、前とは違っていた。
私は長剣を持ち上げた。
「所見を申し上げます」
刃先を灯りへ向ける。
「欠けは打ち直せます。柄は作り直し。重心は前より指一本ぶん手元へ。ただし、私一人では決めません。振ってください」
「了解した、主職人」
「その呼び方は、まだ早いです」
「では、ヴラスタ」
「それで結構」
ミロスラフが中庭へ出た。長剣を正眼に構え、踏み込む。風が低く鳴り、剣先が右へ流れた。
「重すぎますか」
「軽い。俺が力で抑えようとして流した」
「私のせいにしないのは結構ですが、剣に謝ってください」
「すまなかった」
「本当に謝る人がありますか!」
彼が二度目を振る。靴底が砂を蹴り、肩が開く。私は柄へ薄い鉛片を仮留めした。
三度目。剣先が桶の縁へ当たった。
ぱかん。
桶が見事に割れ、水がミロスラフの脚へ浴びせられた。
「今の所見は」
「剣は無事。桶は殉職。試振り役は要注意人物です」
「弁償する」
「工賃とは別です」
「もちろんだ」
笑いが収まると、私は濡れた地面に映る彼を見た。
彼が私を愛していることは分かっていた。同情でも、仕事を得るための挨拶でもない。ミロスラフは最初から隠さず、私へ向けて言った。
それでも私は怖かった。今も彼を愛しているからこそ、もう一度同じ言葉で失うのが怖かった。五年前の私は彼の一言を拒絶だと受け取り、その翌日に彼を失った。好きな人が戻ってきたからといって、古い傷まで都合よく消えるわけではない。鉄なら熱して叩けるのに、人の記憶は作業台へ載せてくれない。実に面倒だ。
だから私は、彼の言葉の続きを、行動で確かめることにした。
翌週、私は柄を削り直した。ミロスラフは振り、私が止めろと言えば止めた。
「もう少し前へ重みを」
「前だな」
「やはり戻します」
「戻す」
「今、面倒だと思いましたね」
「思っていない」
「眉が欠けた刃みたいになっています」
「顔まで所見に含まれるのか」
「作業場に入ったものは全部、査定対象です」
彼は文句を言いながらも、勝手に重りを外さなかった。昔は、私が決める前に「このほうが振りやすい」と柄を削ることがあった。悪気はなかった。善意と自信が肩を組むと、だいたい作業台を荒らす。今回は最後まで私の判断を待った。
追加の革と鋲が必要になった日には、彼は工賃袋を私へ渡した。やはり表にはヴラスタと書いてある。
「兄へ渡さなくてよいのですか」
「君の仕事だから君へ払う」
「家の炉を使っています」
「炉の使用料は別に兄へ払った。君の技術料を混ぜる理由にはならない」
あまりに正しい。反論の差し込み口がない。剣の鍔より隙間がない。私は袋を懐へ入れ、内心で一度だけ万歳した。小さく。職人には品格があるので。
発注に関わった騎士たちが確認に来た時、兄は真っ先に前へ出た。
「うちの工房で仕上げております。私が全体を——」
「主職人はヴラスタです」
ミロスラフが穏やかに遮った。
兄の声が止まった。客へ向けていた胸だけが、取り残されて前へ出ている。
「打ち直しと重心の決定は彼女が担当しています。俺は試振り役です。判断はすべて彼女へ確認してください」
騎士たちの視線が、兄を越えて私へ向いた。
「では、刃先の欠けはもう?」
「打ち直しました。今は柄と重心を合わせています」
「完成日は?」
「試振りの結果次第です。急がせれば、速く仕上がった悪い剣ができます」
「分かった。主職人に任せる」
兄は客がいる間、何も言わなかった。
戸が閉まると、兄の声が戻った。反撃しない妹を見つけた途端、ずいぶん元気である。
「勝手に家の看板を傷つけるな。客前で俺へ恥をかかせて楽しいか」
「兄さんが名乗る必要のない仕事です」
「この炉を使っている限り、家の仕事だ」
「炉の使用料は受け取っていますよね」
「家族に金を払わせた覚えはない!」
「依頼主から受け取ったと、帳面にあります」
奥で聞いていたドブロミルが、帳面の該当欄を指で叩いた。兄の語尾が急に痩せた。
「……どちらにせよ、自分の印は打つな」
「完成したら打ちます」
「家の仕事に自分の印など要らない」
二度目だった。
一度目は赤い布を結び直した。今度は、工賃袋を握った。
「では、家の仕事ではない場所で仕上げます」
「炉も住まいも使わせないぞ」
「分かりました」
兄は私が謝るのを待っていたらしい。私が作業台の道具を布へ並べ始めると、口を開けた。閉じた。また開けた。
ちょうど冷却の悪い魚みたいだった。
私は砥石、槌、やすり、自分で作った職人印を包んだ。過去の猟刀と短剣の名義を正せとは言わなかった。兄から工賃を取り戻そうとも思わなかった。あの二件に残りの人生まで持っていかれるのは、ごめんだ。
ドブロミルの店裏には、空いた工房があった。小さい炉と、片脚の短い作業台と、雨の日には端から水が入る窓つき。
「相場どおりだ。まけん」とドブロミルは賃料を告げた。
「窓から雨が入ります」
「空も使える工房だ」
「屋根の修理代を引いてください」
「半月分なら引く」
「一月分」
「三週間」
「借ります」
私が自分の工賃から賃料を払い、鍵を受け取った。ミロスラフは横で見ていたが、代わりに払うとも、彼の家へ来いとも言わなかった。
「俺はどこに立てばいい」
「まず、その短い脚の下へ木片を入れてください」
「了解した」
「工房の持分を主張したら、あなたを入れます」
「どこへ」
「作業台の短い脚の下へ」
「俺では高すぎると思う」
その判断だけは正しい。
数週間後、長剣は最後の試振りを迎えた。
ミロスラフが踏み込み、振り下ろす。剣先はぶれず、低い風切り音だけを残した。返す刃も遅れない。彼の腕と、私が決めた重心が、ようやく同じ場所へ着いた。
「どうです」
「俺が考えたより、少し手元が重い」
「戻しますか」
「いや。君の判断が正しい。長く振っても肩が上がらない」
私は長剣を受け取り、刃元へ職人印を当てた。
槌を振るう。
かつん。
三度目の仕事で、初めて私の印が刃に入った。
小さな刻印だった。兄の看板より小さい。工房の扉よりも、工賃袋に書かれた文字よりも小さい。それでも、誰の仕事かを消されない深さまで入っている。
「一緒に仕上げてくれて、ありがとう」
ミロスラフは長剣ではなく、私を見て言った。
私はうれしかった。彼が私を救うと言わず、私が選ぶまで隣で働いたからだ。私の名で払い、私の判断に従い、人前で私を主職人だと紹介し、この小さな工房を自分のものにしようとしなかった。そのどれも一度きりではない。言葉どおりの行動を、彼は何週間も続けた。
だから私は、五年前から止めていた話を終わらせることにした。
* * *
炉の火を落とした。
ドブロミルが完成した長剣の横へ布を置き、帳面を閉じる。
「工賃の相談は、抱き合う前か後かね」
「抱き合う予定はまだ——」
「俺はある」
「あなたは黙ってください!」
「では後だな」
ドブロミルは鍵を置き、店側の扉から出ていった。背中まで商人だった。たぶん抱擁にも手数料をつける。
笑い声が消えると、工房には私とミロスラフだけが残った。
完成した長剣は作業台の上にある。話を先延ばしにする理由は、もうなかった。
「五年前、私はあなたの言葉を拒絶だと受け取りました」
ミロスラフは口を挟まず、私を見た。
「あなたは、私を他人の名の炉へ連れてはいけない、と言った。私はその頃、あなたと工房を持てたらと話していました。だから、あなたは私と働きたくないのだと思ったのです。私を連れていけない、つまり、あなたの未来に私はいらないのだと」
「違う」
「ええ。今は、違う可能性があると思っています。でも当時の私は、ほかの意味を知りませんでした。私の仕事にはいつも兄の名がついていた。あなたまで、名前のない私を選ばないのだと思いました」
言い終えると、指先が冷えていた。
「翌朝、あなたはいなくなりました。便りも来なかった。私は、答え合わせをしたつもりになったのです。あの言葉は拒絶で、出征前に関係を終わらせたのだと。待つなという意味だったのだと」
ミロスラフは腰の剣帯を外し、壁へ立てかけた。音を立てないよう、ゆっくりと。
「あの時、俺が言いたかったのは逆だ」
「聞かせてください」
「君を、ズビグニェフの名がついたままの炉から別の炉へ移しても、またその炉が俺や別の誰かの名義なら同じだと思った。俺の給金で場所を借り、俺が主人になり、君をそこで働かせる。それでは君の仕事の上にある名前が、兄から俺へ変わるだけだ」
彼は作業台に置いた私の職人印へ目を向けた。
「俺は、君を他人名義の炉へ連れていきたくなかった。君自身の名がついた炉を持ってほしかった。俺はそこで、剣を振る役として雇ってもらいたかった」
「では、あれは」
「拒絶ではない。君と生きたかった。ただ、君を自分のものにする形では始めたくなかった」
胸の奥で、五年間ずっと引っ掛かっていた刃が動いた。
「なぜ、そこまで言わなかったのです」
「君なら分かると思い込んだ。俺の中では、何度も考えていたことだったから」
「私はあなたの頭の中へ出入りできません」
「そのとおりだ」
「鍵も預かっていません」
「扉の場所さえ教えていなかった」
ミロスラフは一度、息を吐いた。
「伝え方を誤った。君がどう受け取るかを確かめず、自分の中で完成した考えを一部分だけ渡した。あの言い方で君を傷つけたことを謝る。すまなかった」
彼は続けた。
「それから、連絡を途切れさせたことも謝る。捕虜になったことは選べなかった。だが解放された後、届かない便りを一度出しただけで、君へ伝えたつもりになった。別の商人を探すことも、帰還者へ託すこともできた。生きていると知らせるために、もっと行動するべきだった。すまなかった」
言い訳と謝罪を混ぜなかった。
できなかったことと、しなかったことを分けて、彼は私へ返した。
「私も、聞きませんでした」
「聞けない言い方をしたのは俺だ」
「それでも私は、腹を立てたまま、あなたが戻った時に何を言うかを何百回も考えました。最初は頬を張る予定でした」
「覚悟する」
「次に槌を投げる案になりました」
「頬で済ませてほしい」
「その次は、顔を見るなり抱きつく案でした」
ミロスラフの指が動いた。それでも近づかなかった。
「今は?」
「まだ私の話です」
「分かった」
私は彼の顔を見上げた。
「あなたが戻って、愛していると言った時、私はうれしかった。でも同じくらい怖かった。言葉を信じて、またいなくなったら、今度は五年前より深く傷つくと分かっていたからです」
喉の奥が熱くなった。声はまだ出た。
「だから、あなたを見ました。私の名を書いて工賃を払うか。私の判断が自分の感覚と違っても従うか。人前で私を職人として扱うか。私の工房を、あなたの庇護や所有へ変えないか」
「試されていたんだな」
「査定していました」
「結果は?」
「急がないでください。今、最も大事なところです」
「すまない」
私は作業台へ手を置いた。自分の工房の、自分の作業台。片脚の下にはミロスラフが入れた木片がある。彼の名はどこにも刻まれていない。けれど、私一人でここまで運べなかった長剣が載っている。
「あなたは、言葉どおりに行動しました。一度だけではなく、何度も。私を助ける相手ではなく、一緒に剣を作る相手として扱った。だから私は、あなたの言葉をもう一度信じたいと思いました」
「ヴラスタ」
「今度は、あなたの番です」
ミロスラフは一歩だけ近づいた。
「俺は君を愛している。昔、君が俺の剣を最初に研いだ時からではない。何度も意見がぶつかって、それでも俺の腕の癖を見捨てず、俺も君の研ぎを誰のものとも取り違えなくなった、その全部を重ねて愛するようになった」
もう一歩近づく前に、彼は止まった。
「君と暮らしたい。君の工房を俺のものにはしない。働き方も、受ける仕事も、君の判断を奪わない。俺は試振り役として正当な料金を請求し、賃料と食費を分けて払い、意見がある時は勝手に削らず口で言う」
「最後が一番重要です」
「肝に銘じる」
彼は懐から新しい革袋を出した。
表には、やはり私の名が書かれている。
「長剣の残りの工賃だ。全額、ヴラスタへ」
それを作業台へ置いたあと、彼は何も持たない両手を見せた。
「これは工賃とは別の願いだ。俺と結婚してください」
胸の内側で、何かが大きく鳴った。
五年前なら、言葉の続きを推測しただろう。今日の私は、推測しない。彼が一項ずつ説明したように、私も一項ずつ言う。
「私は、あなたが帰ってきてくれてうれしいです」
ミロスラフの肩がわずかに下がった。
「あなたともう一度剣を作れて、うれしかった。私の名を見て、私の判断を待って、私が選ぶ場所を尊重してくれたことも、うれしかった」
私は作業台から手を離し、自分から彼へ近づいた。
「私はもう、あなたを失うのが怖いという理由だけで、あなたを選ばないことにはしません」
彼の手を取る。剣を振るための硬い指が、私の指を包んだ。
「私もあなたを愛しています。あなたと暮らしたい。求婚をお受けします」
ミロスラフの腕が私の背へ回った。
温かかった。五年前の言葉も、届かなかった便りも消えない。消さなくていい。私たちはようやく、同じ意味の上に立っていた。
しばらくして顔を上げると、彼が工房の入口を見た。
「看板は『ヴラスタ工房』でいいか」
「共同工房でしょう」
「では二人の名を」
「長すぎます。お客さまが読み終わる前に日が暮れます」
「どうする?」
「大きく『ヴラスタ工房』。その下に小さく『試振り役ミロスラフ在籍』」
「俺の扱いが軽くないか」
「料金表は大きく出します」
「高く設定してくれるのか」
「桶の弁償代を差し引きます」
「まだ払っていなかったか?」
「工房の床を水浸しにした清掃料も追加です」
「結婚初日から借金か」
「ご安心を。身体で払えとは言いません。剣を振って払ってください」
完成した長剣の私の印を、ミロスラフが指でなぞった。
「何本でも」
「では働いてください、私の試振り役」
「了解した、俺の主職人」
今度は、その呼び方を訂正しなかった。




