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【短編】金のツバサ

作者: 小関アリス

誰からも注目されたい。

有名になりたい。

金持ちになりたい。

今の私はなんだってかなえられる。でも、私が欲しかったのはただ一つのモノだけだったのだ。

すなわち、自由の身の上は、この上ない至上の幸福であったのだ。

ああ、見る者を魅了するそのツバサ、そうだ今日はそれについて話そう。

あれはたしか幼少期のころであったか。

私は大空を自由に飛び回り、飛翔する鳥の翼に殊、恋焦がれていた。

「誰よりも自由に!

どこまででも遠くへ!」

しかしそんな子供心に抱いた感情など、忙しい大人の生活にあっさりと飲み込まれていった。


はて、仕事の都合が悪くやきもきとしたとある日。


妙なことだ、自分の背中に何やら違和感を覚えた。

鏡で確認したところ、自分の背中から、何やら金ぴかのヘンテコなガサガサしたものが生えているのを確認した。

一見しただけではよく分からなかったが、どうやらこいつは鳥の翼に類似したものらしい。


私は直感的にそう悟っていた。

普通に考えたら背中からそのようなものが生えてきたら、誰しも驚くであろうが、そのときの私は妙に冷静だった。

「はて、どうしたもんかな」

その日はあまり考えずに床に就いた。


私が驚嘆したのは次の日からだった。

今までは、仕事は何とか上手くやっている程度であったが、翼の生えた翌日から驚くようにすべてが円滑にいくようになった。

はてどういう了見であろうか。

私は考えた。

そしてこの翼と生活していくうちに俺はこの奇妙なものについての見識を身に付けるに及んだ。

まずこの翼は人からは見えないということだ。

今となっては人とすれ違うにも、難渋しそうなほど大きくなったこの翼だが、奇妙なことに誰からもそれを指摘されることはなかった。


そしてどういう仕組みかは全然見当もつかないが、翼が生えてからは誰も私を見下さなくなった。

言い換えると、リスペクトをもって私を扱うようになったという事だ。

翼が生えてからの生活は何もかもうまくいっていた。

もともと私のことを歯牙にもかけなかった連中が私を丁重に取り扱う。

そうして、私は少し得意げになっていた。


しかしながら、今考えたらこの時の私は何も分かっていなかったのだろう。

周囲の期待に応え続ける事の重圧には。


翼の大きさはもはや私の身長を超えていたが、見た目以上に重苦しい感情が今の私を支配していた。

飛び立つための翼を持った今どこにでも行けるはずの自分は、而してうっとうしい現実に囚われている。

周囲からの期待、羨望、尊敬その他諸々。

一心に集めるようになった今の私は、もうどこにも行けない。

そうしてある時悟ったのだ。

「翼を捨て去ろう、そうして自由の身へ」

金のツバサで得られる限りのものは得た自分であったが、ただ一個自由のみ

はまだ得ていなかった。


本来自由に飛び回るはずの翼が私を縛っていた。

これはなんとも皮肉な話だが、

而して多くの人は金のツバサを得るために下手したら一生を投げうってしまうものなのだ。


金のツバサを捨て去り、本当の自由へ!

自分が信じたいものを信じよ!



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