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幻想水月物語  作者: 安良木 響花
【紫の章】
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第040話 ラース

 ルィンが眠るベッドの上で、ルナは困惑した表情を浮かべる。


「一体何があったのよ。わたしも気がついたらソフィアの手の中にいて、何がなんだかよ」


 フィンは言葉を探すように、ゆっくりと口を開いた。


「……あんまり言いたくないけどさ、ルナ、君は一度ベルマに殺されたんだ……」

「えっ!?」


 ルナの驚く声が静かな病室に響く。


「えぇ……その場を直接見たわけではないけれど、私もそういう認識だったわ……。だけど白く輝いたルィンが手をかざすと、あなたは生き返っていた」

「えぇっ!?」

「俺たちだって驚いたよ……。目の前でそんな光景見せられてさ……」


 フィンは困惑した表情を滲ませる。


「そして、圧倒的な力であの魔族を消し去ったわ……あれはまるで別人のようだった……」

「別人……」


 ルナはその瞬間、何かを思い出したかのようにはっと目を見開いた。


「ラース……! あの時最後に話しかけてきたのはラースで間違いなかったわ! それにそのめちゃくちゃな力も彼なら納得よ!」

「どういうこと? ラースって誰?」

「わたしが前に付いていた人よ。ルゥに会う前の。すっごい魔法使いだったの」


 ルナの声には、懐かしさと尊敬の念が混じっていた。


「確かにあれはすごかったわ……。すごいなんて言葉では……。あたしたちがまるで歯が立たなかった魔族を一瞬にして……」

「でもそのラースはどこへ行ったんだ? あれきりルィンの輝きも消えちゃったしさ」


 ルナは「うーん」と呟きながらルィンの左手に視線を移す。


「たぶん指輪の中でまた眠っているんだわ……。ルゥも目を覚まさないし、無理して出てきたのかもしれないわ」

「指輪に……」


 ソフィアはルィンの指輪を見つめる。


「伝承で指輪の話が伝えられているけれど、その指輪にはやっぱり何か秘密があるのね」

「わたしも詳しいことは分からないわ。もともとラースの持ち物だったってことくらい」


 そこで話を区切り、三人はベッドで眠るルィンを見つめた。


「ひとまずルィンが目を覚ますのを待ちましょう。詳しい話はその後ルィンを交えてにしましょうか」



 ――その後、ルィンはひと月以上目を覚まさなかった。


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