表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想水月物語  作者: 安良木 響花
【藍の章】
102/109

第100話 二つの気配

 下に降り、旅人たちが待つ場所まで行くと、ルィンは結界を解除した。

 中にいた人々の間にどよめきが走った。


「お前ら! 無事だったか!」

「ライリー、こっちもみんな無事……みたいだね。よかった」


 あたりを見回すと、人々は落ち着いて待機していたようだった。


「ああ、あれ以降影獣の襲撃もなかったよ。だが、そっちで何があったんだ? ここからでもお前らの向かった上空から、空気が震えるほどの凄まじい気配を感じたぞ。最後にバカでかい爆発もあったし、大丈夫だったのか?」

「うん、上にまた“竜”がいたんだ」


 その言葉にライリーは体をのけぞらせた。周囲の人々からも驚きと戸惑いの声が上がる。


「竜!? さっき言ってた強大な魔力ってのは、竜だったのか……」

「うん、でも僕たちでなんとか解決したから安心して」

「お、おう、さすがだな……」


 そこへタグラーが近づき、ルィンの肩に大きな手を乗せた。


「ガッハッハ! この坊主はとんでもない実力者だ! あの凶悪な化け物をたった一人で――」


 そこまで言うと、タグラーはオーグのそばに横たわるシャルに気づき、真面目な表情に戻った。


「怪我人がいたか、これは早急に街へ戻る必要があるな。諸君、出発の準備をしてくれ、整い次第すぐに街へ向かう」


 準備を整え、一行がその場を離れようとした刹那――


「む!」

「ルゥ、また何かくる……! でもこの感じ……」


 タグラーとナヴィの反応の後、ルィンも大きな二つの気配が近づいてくるのを感じた。

 そちらに目をやると、ルィンの心臓がドクンと跳ねた。近づいてくるのは見知った顔と、知っている魔力の気配――

 彼らが傍までやって来ると、ルィンは目を見開いた。


「……お父さんと、ルルア――!?」

「なっ――まさかルィンか!?」

「お兄ちゃん!?」


 三人は驚きの表情で顔を見合わせた。やって来たのは、以前「青の里」で再会を果たしたルィンの家族、父ダンルークと、妹のルルアだった。


「ルルアじゃない! どうしたのよ、こんなところに」


 ルナがひらひらとルルアの頭の上に乗る。


「ルナも! 二人とも元気そう、だけどなんでこんなところに……?」


 フェルナリーザたちは状況を呑み込めず、混乱したような表情を浮かべた。


「ルィンの……お父様と、妹さん?」

「うん、僕が青の里を訪ねてからそれ以来なんだけど、四年くらい前かな……?」


 ルィンが思い出そうとするが、ルィンの父――ダンルークが一歩前へ出て真剣な表情を向けた。


「――それよりルィン、まずは状況を説明してくれ、ここにいたはずの『魔神竜まじんりゅう』はどうした? ある時からぴたりと魔力を感じられなくなったが――」

「あ、サヴィスナージャは――」


 ルィンが言いかけると、タグラーが手を挙げた。


「坊主、怪我人もいる、ワシらは先に行くぞ。あの化け物がいなくなってから影獣の気配が収まった。帰りはワシらだけで大丈夫だろう」

「うん、わかった。みんなを、シャルをお願いします」

「ああ、任せておけ」


 タグラーは深く頷くと、人々を連れ、来た道を戻っていった。

 ルィンは皆の背を見送ると、再びダンルークとルルアの方へ向き直った。


「お父さん、あの高台にいた魔神竜の『サヴィスナージャ』は僕たちが討伐したよ。今はここのフェルナリーザの眷属になったんだ」


 それを聞き、ダンルークは驚愕に満ちた顔をした。


「それは本当か――!? ルィン、お前の成長ぶりには驚かされたが……奴を世界に解き放つ前に解決することができて、本当によかった――」


 ダンルークはほっと息を吐いた。


「二人はサヴィスナージャのことは知っていたの?」

「いや……ルィン、お前が“魔界”のことをどれだけ知っているか私には分からないが――」


 ダンルークはそこで言葉を区切ると、近くの水辺に視線を向けた。


「この話は少し長くなる。戦闘の直後なんだろう、あそこの木陰で休みながらにしよう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ