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邪眼の力でS級ハンターに  作者: 他力本願
第一章:邪眼を継ぐ者
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7話「適性検査」

用紙を前にしながら、僕は少しだけペンを握り直した。


(……でも、僕まだ“視穿”しか使えないんだよな、)


解析だけなら、知覚系って書いとけばいいけど、

神格級のスキルだし、干渉とか精神介入とか、そこまで書いてしまったら目をつけられてしまうだろうし、昨日の件も直ぐに気づかれる…。


(スキルもまだ進化してないし、今のうちは“そこまでの力がある”なんて申告しない方がいい)


僕はそっと、深呼吸してから記入を始めた。


1. スキルの系統について、当てはまるものにチェックを入れてください。

•☑ 知覚系(感知・視覚・解析などに関するスキル)


2. スキルの発動形式について、当てはまるものにチェックを入れてください。

•☑ 意識(思考や集中による起動)

•☑ 物理的動作(視線)


(意識を集中して、“目を開く”感覚。多分この2つ)


3. 使用可能部位について、当てはまるものにチェックを入れてください。

•☑ 物体(武器・構造物・自然物)


(構造の分析はできた。魔力の流れも“視える”からこれでいいのかな?)


4. 持続性について、当てはまるものにチェックを入れてください。

•☑ 瞬間型(短時間・即効性)


(見ると同時に情報が流れ込んで来るから瞬間型かな)


5. 使用時のリスク・負荷について、当てはまるものにチェックを入れてください。

•☑ 精神負荷(意識の混濁・感情変化など)

•☑ 視覚障害(軽い頭痛・光の残像)


(長く使ってると気持ち悪くなるから)


(……うん、今の段階ではこれが正直な答えだ)


スキルの本質を全部晒すのは、まだ早い。


(“視穿”が扱えるようになっただけでも、すごいことだし──

 今は、それで十分なんだ)


僕は記入を終えた用紙を小さくたたんで、カウンターへ差し出した。


受付のお兄さんは、僕が差し出した用紙を受け取って、ニコニコしたまま目を通す。

表情がまったく変わらないから、読んでる途中も何を考えてるのか分からなくてちょっと不安になる。


「解析系のスキルをお持ちということで、よろしいですか?」


「あっ、はい! 大丈夫です!」


……ちょっと元気出しすぎたかもしれない。


「かしこまりました。それではスキルの確認のため、解析系スキル向けの適性試験を受けていただきますが、本日はこのまま受験可能でしょうか?」


(解析系スキル向けの試験……)


「はい、このまま受けます!」


そう返事をすると、お兄さんは記入した用紙のコピーをプリントし、それを僕に手渡した。


「では、こちらを持ってエレベーターで“試験フロアF3”までお進みください。

 フロアに入ったら、試験官の指示に従ってくださいね」


僕は軽く頭を下げて、そのまま案内された方向に向かう。


エレベーターに乗ると、内部にはボタンがずらりと並んでいて、

「攻撃系」「支援系」「結界系」など、スキル分類ごとのフロア名が表示されていた。


僕が向かうのは

【F3:解析系/知覚系スキル専用試験エリア】


(階ごとに分かれてるんだ……すごいな、ここ)


目的階に到着すると、ドアの向こうには静かで無機質な廊下が続いていた。

照明も白く、音も少ない。

“判断”と“精度”が試される解析スキルの特性に合わせて、

必要最低限の視覚・聴覚情報しか与えないように調整されているらしい。


(……ちょっと緊張してきた)


僕は用紙を胸に抱えて、ゆっくりと歩き出した。


案内に従って進んでいくと、分厚い自動扉の前で足が止まる。

タッチパネルの前に書かれた文字が目に入った。


《試験室3-B──解析スキル適正審査》


僕が手にしていた登録用紙をパネルにかざすと、機械音と共に扉が開く。


中に入ると、そこはまるで大学の研究室の一角のようだった。

中央に透明な強化ガラスで仕切られた検査区画、

壁際には機材や試験用の装置がずらりと並んでいる。


(思ってたよりも、ずっと……本格的だ……)


「ようこそ、今日適性検査を受ける子かな?」


そう声をかけてきたのは、一人の男性だった。


白衣を羽織った細身の男。

きちんと整ったスーツに、細縁の眼鏡。

前髪はさらりと流れていて、仕草一つ一つが落ち着いている。

どこか“研究者然とした”空気がある人だった。


(この人が……試験官?)


「私は瀬早 正人(せはや まさと)この試験フロアの担当をしている。今日はよろしくね」


丁寧で、やさしい口調。

だけど──僕はどこか、その人の瞳の奥に“熱”のようなものを感じた。


(……なんだろう、この感じ)


僕のスキルを見透かすようにでもなく、ただ静かに、

でもじわじわと何かを観察するような視線だった。


「まずは軽く、君の申告してくれたスキル──〈知覚系・解析〉という前提で、

 いくつかのテストを受けてもらう。難しくはないよ、リラックスして構わない」


瀬早さんはそう言って、手元の端末を操作する。


「試験は三段階に分かれていてね。君のスキルが“どう視るか”“どこまで視えるか”“何を導けるか”──それを確認するためのものだ」


ゆったりとした口調。

だけどその語尾には、言葉に出さない興奮がほのかに滲んでいる気がした。


「……じゃあ、始めようか」

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