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邪眼の力でS級ハンターに  作者: 他力本願
第一章:邪眼を継ぐ者
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5話「識環邪眼と幽霞ノ帳」

僕は一先ず森を出て自宅にもどった。


「ただい──…あぁ、誰もいないんだった」


いつもなら寂しく感じるはずの静けさが、

今日だけは、救いのように思えた。


自分の部屋に入って、そっとドアを閉める。

制服の上着を脱いで、乱れたシャツのままベッドに腰を下ろした。


「あ……服に着いた血……。見つかる前に捨てないと」


深く息を吐く。

あのダンジョンでの出来事が、まだ体のどこかにまとわりついている。


ゆっくりと、目を閉じて──

そして、邪眼を開いた。


視界が少し、金色に染まる。

ぼんやりとした光が広がり、空間に文字と線が重なっていく。


「やっぱり慣れないな……視界がブレる……」


まるで、世界の“構造”そのものが浮かび上がってくるようだった。


その中に、ひときわ鮮明な表示がある。


識環邪眼しきかんじゃがん

分類:神格級スキル

系統:視覚系/複合干渉能力(解析+介入)

付与主:邪神王クトゥル・イグルアス


【能力概要】

対象を視認することで、構造・属性・魔力・精神・空間因子などの情報を“解析”し、

適合度や使用段階に応じて“干渉”を加えることができる。


【段階開放】

•第1段階:視穿しせん

 解析特化。視界に映るものの構造・状態・弱点などを可視化。 ※現在使用可能

•第2段階:視操しそう【未開放】

 視線を通じて物質・魔力・術式に干渉、構造改変が可能。

•第3段階:視刻しかく【未開放】

 一度見た現象・能力を記録し、再現する能力。

•第4段階:視侵ししん【未開放】

 精神層に干渉し、記憶・感情・思考へ作用する。

•第5段階:視扉してい【未開放】

 空間や結界の“扉”を創造・開閉する力。


【適合度】:7%

【警告】:長時間使用による視覚・精神への負荷に注意


詩遠は黙って、それを見つめていた。


「……? すでに神格級のスキルなのに、さらにあと四段階も進化できるのか?」


スクロールするように視界の情報を辿っていく。


表示されている能力は、どれも“普通”じゃなかった。

解析、干渉、記録、精神侵入、空間操作──

どれを取っても、一つで国家が動くレベル。


「……第5段階、視扉──空間や結界の“扉”を想像……

 ってことは……ダンジョンそのものを、自分で開けたりできるってこと……?」


ゾクリと背中を汗が伝う。


「ええ……こっわ。

 一歩間違えたらこの世界ごと崩れるじゃん……」


思わずため息が漏れた。


「……慎重に、使おう……うん……」


目を伏せながら、自分に言い聞かせるように呟いた。


「そして……この“適合度”ってやつ──

 使えば使うほど、パーセンテージが上がっていくってこと、だよな?」


〈識環邪眼〉の情報欄には、“現在の適合度:7%”という数字があった。


つまり──

使いこなすことで、スキル自体が進化していく。


「……使っていけば自然と次の段階にも行ける……ってこと、だよな」


今はまだ一段階目だけでも、その先にある能力が全部解放されたら……。

少しゾッとした。


そして──視界の横にもうひとつ、スキルウィンドウが浮かび上がる。


■ スキル名:

〈幽霞ノゆうかのとばり


■ 分類:希少級

■ 系統:隠密・幻影系


■ 効果:一定時間、使用者の気配・足音・魔力反応などを“霞”のようにぼかし、周囲の視認・感知を妨げる。状況に応じて、存在感そのものが希薄になり、“姿そのものが見失われる”こともある。


■ 特性:

•物理的な透明化ではなく、“認識阻害”に近い隠匿効果

•意識を集中させて発動し、集中が切れると即座に解除

•強力な探知スキルや感知系魔眼には見破られる可能性あり


「……存在を“霞ませる”スキル……か」


敵から逃れるだけじゃない。

潜入、奇襲、観察、隠密──

使い方次第で、戦闘にも立ち回りにも化ける力だ。


「これは……実戦でも使えそうだな」


僕は邪眼を閉じて、ベッドに仰向けになった。


シーツの感触が、やけに冷たい。

天井をぼんやりと見つめながら、息をひとつついた。


「はぁ……あんなに、この力に憧れてたのに……

 いざ手に入ると、ちょっと怖くなるなんて……情けないな」


あのダンジョンで見たもの。

命のやり取り。裏切り。異形の神。

どれも、“普通の高校生”が直面するものじゃなかったはずなのに──


今の僕は、どこか冷静だった。


(もし、本当に“普通”だったら……きっと、震えて何もできなかった)


「いや、実際には震えていたし、ちゃんと怖がっていた。」

腹も貫かれたし、人間であるならそんな経験をして生きてるなんておかしいよね。


それでも僕は、生きて帰ってきた。

力を得て、こうして、いつも通りの天井を見ている。


それが、少し不思議だった。


(もしかして、僕もこの世界の“異常”に慣れ始めてるのかな)


ダンジョン、スキル、魔物。

いつの間にか、それが“当たり前”になってる。


「……当たり前って……なんだっけ」


誰に向けたわけでもなく、ふっと声に出た。


答えは出ない。

でも、その問いだけが、心の中に静かに残った。


気づけば、まぶたが重くなっていた。

目を閉じる。

静けさに身を預けるように、意識がゆっくりと沈んでいった


なんだか、今日はよく眠れる気がした。

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