絵師と花言葉
私は、菖蒲。絵を描く事が大好きな社会人で、趣味で絵を描いています。けれど、なかなか良い絵が描けず、SNSに絵を投稿しても誰も見てくれません。こんな私ですが、憧れの絵師がいます。フォロワー3万人以上いて、その人が絵を載せるたびに2万以上いいねがつきます。憧れであり、実際の友達でもないのに嫉妬の感情も抱いてしまいます。
「絵、描けたー?」
声をかけてきた人は、同棲している彼氏の荒星 冬です。冬も、絵を描いていますが、私よりも何倍も絵が上手いです。
「ごめん、描けなかった。それより、見て、またストックさんが新作出してたんだ!」
ストックさん。それは、私が憧れている絵師さんです。色の使い方も、線画も、背景も引き込まれる程美しく、私の憧れです。私もいつか、このストックさんって方みたいに素晴らしい絵を描ければなと思っていますが、なかなか手は届きません。
「へぇー、ストックさんねぇ」
「塗り込みもすごいし、線画も凄いし、一日中、見てられる絵ばっかり!私の憧れなんだ」
「俺は、別にそんなこの絵柄は好きじゃないかな」
冬は、私のタブレットを覗き込みながらそう言いました。人それぞれ絵柄の好みはあると思います。ですが、その発言は、憧れの絵師を否定されたみたいで、私は許せませんでした。
「は?!何でそんなこと言うの?!ストックさんは、何時間もかけてこんなに綺麗に描いてるんだよ?!」
「そんな怒ることじゃないって、何でそんなに、怒るんだよ、菖蒲」
冬は、私の肩に手をポンっと置いてきました。私は、イラついていたので、その手を振り払いました。
「は?憧れの絵師さん馬鹿にされて、怒らない人なんていないよ?冬って、最低だね」
私は、頭に血がかなり上っていました。こんな奴の顔なんて見たくない、と同居していたマンションから外に飛び出しました。
歩いている間、冬が追いかけてこないかと思い、期待していました。その為、後ろを振り返りましたが、冬は、追いかけてくる気配はありませんでした。それもそのはず、全部私が悪いのです。憧れの絵師を冬に馬鹿にされたくらいで、怒ってしまった私が悪いからです。急に、雨が降ってきました。傘も持っていなかったので、近くの書店で雨宿りをする事にしました。私は、色々と本を見ていました。その中に、花言葉が載っている本がありました。そう言えば、ストックって言う花もあるんだっけと、探し始めました。
私はそのページで真実を知り、私の中で点と点が繋がったのです。
ストックとは、和名で紫羅欄花と言います。どこかで、聞いた事があるなと思いました。それは、漢字は違いますが、彼氏の名前だったのです。整理すると、つまり、彼氏はアラセイトウという名前だから、SNSの中で、アラセイトウの英名のストックを使っていたという結論に纏まりました。だから、私が憧れの絵師だと言った時に、自分の絵柄だから、あまり好みじゃないと言っていた。それで私の中で点と点が繋がったのです。ですが、まだ本人かはわかりません。私は、真実を確かめる為、本を買い書店から出ました。
書店から出ると、さっきまで雨が降っていたのが嘘かかのように、太陽が照り付けていました。私は、近くのベンチに座り、SNSを起動しました。すると、ストックさんの新作の絵が載せられていました。それは、紫のアネモネでした。先程買った、花言葉が載っている本を見ました。
花言葉は
ー貴方を信じて待つ
私は、その絵の花言葉を知った時に確信に近付きました。私は、帰らなければならないと思い、彼がいるマンションへともどりました。
どうしても恋愛もの×花言葉×絵師の物語を書いてみたかったので短めですが、詰め込んで書いてみました。