1 平凡なスキル
母親に叩き起こされ用意してもらった朝ごはんを前に、俺はリモコンでテレビを点ける。
そこには毎朝放送されているニュース番組のキャスターが番組を進行しいていた。
『今日の紹介はこちら! 【スキルクエスト】についてです!』
スキルプロジェクトとは18年前から政府が社会に立ち上げた国民全体のスキルを向上させる為に立ち上げたプロジェクトだ。
スマホ携帯にダウンロードされた専用アプリに個人情報と生まれた時から個人で持つスキルを読み込ませ数値化させる事で、スキルの向上を上げようと考えられたものだ。
一定のスキルを向上させる事で、国からあらゆる補助が受けられ、それはスキルの数値によって異なってくる。
例えばスキルレベルが10歳の平均でレベル5だとして、そこからプラス1以上であれば買い物券が、5以上であれば家族に10万以上の補助金が、10以上であれば特待の進学と進路が約束されている。
『たったレベル5だけの違いでそれだけの補助金を頂けるとはすごいですね~。 これは大人がスキルクエストを行うと頑張る人も増えるのではないですか?』
女性キャスターと同じく番組の司会を進行する男性の司会者が質問する。
すると、特別ゲストとして番組に出演している大学の教授と紹介されている老人が質問に答える。
『いやいや。 スキルクエストはあくまでも10歳~29歳までの若者だけが参加できるプロジェクトで30歳以上の大人は参加できないです』
『その年齢制限はプロジェクト開始時には国民から凄い反発がありましたよね』
女性キャスターの言葉と同時にテレビの映像は18年前の映像に切り替わる。
その映像は当時のSNSでの政府への炎上内容やプロジェクトの内容に反発する大人達の映像が映し出されていた。
『大人を見捨てた内容。 国の未来を捨てたバカバカしい政策。 当時はかなり荒れていましたね~』
『そうですね。 しかしこの年齢制限には理由がありまして―――』――プツン。
「――あ」
教授が説明している途中でテレビの映像が消えた。
後ろを向くと般若のような顔をして仁王立ちをしている女が立っていた。
「なにすんのさ。 姉ちゃん」
「アンタが何時まで経っても私が愛をこめて用意した朝食に口を運ばないからよ! カムイッ!!」
ドンッーーと近所の家にまで鈍い音が響いた。
▢ ■ ▢ ■
「おーすカムイ。 今日は拳骨か?」
隣の家から同じタイミングで出てきた制服を着た男はカムイの幼馴染、ライト・アーサー。
雰囲気から見て分かる神々しさとイケメン顔の男だが、何故か庶民的な生活をしている。
・・まぁ、大きな一軒家を1人で暮らしている時点で普通の学生ではないが、10年以上一緒にいるとそれも別に気にしなくなった。
「残念でした。 今日はビンタ」
「・・・聞こえてきた音がビンタの音ではなかったけど??」
「何言ってるんだよ。 俺の姉貴のスキルは知ってるだろ」
「あぁ、確か格闘技をしてて発現したスキルで【打撃倍】だろ」
「そう。 ある条件が揃う事で本来の打撃を倍にして相手に攻撃するスキル。 正にゴリラが持つに相応しいスキルだろ?」
「・・・あ」
「へ?」
ゴンッーーと今度は重たい物がが落ちてきたような音がしたが、音の発言は話を最初から最後まで聞いていた姉のかかと落としがカムイの頭上に直撃した音だった。
■ ▢ ■ ▢
「それで? そろそろ考えは決まったか?」
「え? 何が?」
大きなタンコブを擦りながら学校へ向かっていた。
「何がじゃないよ何がじゃ。 いい加減にスキルを向上させる物を考えたのか?」
「スキルの向上・・あぁ」
「まったく。 やっぱり覚えてなかったか。 早く考えないと――」
「よォ・・平凡」
ライトの言葉を遮り、目の前に現れたのは同級生の女子だ。
冷たい視線と目立つ金髪、そして挨拶から出る口の悪さから分かるようにあまり性格は良くない。
「おぉ・・これはこれはお嬢」
しかし、そんな圧を駆けられてもカムイは普段通りの表情で手を振る。
「チッ。 相変わらずムカつく顔した奴だな」
「そういうお嬢は相変わらず綺麗な顔をしてるね」
カムイの返事にイラつきながら、お嬢と呼ばれる女学生は再度カムイを睨みつけ、そのまま通学路へ歩いていった。
「なんだったんだ? アイツ」
「さぁ。 何故か知らないが毎朝いつも今みたいに睨みつけて俺を平凡って呼ぶんだ」
「ま、毎朝?!」
一体何の意味を持ってそんな事をしているのか、ライト的には意味が分からずおもわず苦笑いをした。
「まぁ平凡ってのは別に否定しないけどな」
カムイはスマホを取り出してスキルクエストと記載されたアプリを開く。
そこには現段階で自分が保有しているスキルとその数値が記載されており、ランクもある。
カムイのランクはレベルC。
特にこれと言った特徴のスキルもない平凡な数値の持ち主だ。