06-10
06バナナの皮
バナナの皮が地面に落ちている
駆けていたぼくはそれを踏んでしまい
コケなかった
ああ、どうしてぼくはこんなにダメなんだ
頭を抱えて悩んでいると
神様が下りてきてこう言った
あなたが滑らなかったのではない
バナナの皮が滑ったのだ
ぼくは何故か納得させられそうになっている
雨粒はそんなぼくらを歪んで写しながら落ちていき
地面にたたきつけられて
死んでいった
神様とぼく
ふたりで傘をさした
07白馬とお姫様
美しいお姫様がいた
白馬に跨った王子様を待っていると
白馬が跨った王子様がやって来た
白馬が言う
「俺と結婚しろよ」
「嫌よ。だって王子さまのほうがカッコいいし偉いし」
「俺お前のこと嫌い」
「あら、あたしもあなたのこと嫌い」
二人は奇遇にも気が合ったので結婚した
幸せに暮らせよ
保証はしない
08昔と今
昔の人が
ちょんまげを切って
ザンバラ頭になったとき
文明開化の音がするといった
今の人が
ちょんまげ頭になったら
どんな音がするだろう
たぶん江戸時代の雰囲気を
楽しく味わうだけだろう
そんなのもいいもんだな
ぼくは無音を鳴らす
09仲のいい夫婦
春
一時的な雨上がりの狭間の
夕焼け前の時の空は
透き通った上空のキャンバスに
朱色が拡がって
綺麗だった
光が射し込む
道の向こうから
仲の良さそうな外国人夫婦が
横並びに歩いてくる
と思ったら
よく見たら日本人だった
たまによくある間違いだ
何事もなかったようにすれ違ってから
トボトボと帰路につく
そうしてこうやって言葉にしてみる
笑顔で楽しそうに話す日本人夫婦のことを
思い出しながら
10残月
太陽の残月
日の光のくらやみ
じぶんの影は笑いながら
どこまでも伸びてゆき
ぼくは泣き崩れていた