表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

〜チャームポイント〜

空き地に着いた。ここは、一羽が海を拾った場所だ。

「あっ言うの忘れてたけど、一羽が猫になれるのは1週間。その間人間たちの時間は止まっているんだ。だから、家には帰れない。」

「わかった。とりあえず、その手ほどきを1週間以内で覚えて、猫ライフをエンジョイする分にはいいんだよね?」こんなこと絶対今回限りだもん。楽しまなきゃね!

「そゆこと!では、さっそく手ほどき1。自分のチャームポイントを掴むべし!」

「…え!?そんなのないよー。」

「一ヶ所くらいあるでしょ?自分が自信持ってるとこだよ?」海の無邪気さが、今だけ少し憎い。

「…。私…全然ダメで…。」なんだか自分が惨めで凹む。

「自分を否定するのは良くないな。うーん…今回は急だし、オレ直々のやり方を伝授しよう!」また先生の様な威張ったしゃべり方で海が言う。

「いーい?特に野良だと、食べ物は死活問題に関わってくるから、真剣に取り組むんだ。あっ丁度良いところに、ターゲット発見!」海はタッと道の方へ走っていく。その先には、猫好きで有名なおばあちゃんがいた。海は甘えた声を出し、おばあちゃんの足にスリスリしたり、自分のお腹を出して身体をなぜてもらっている。そして最後に煮干しををもらった。すごい…本気で感心した。

「どう?オレのお手本!良かったでしょ?」自慢気に話す海。

「それと今まで何も食べてないでしょ?煮干し食べて?」おばあちゃんからもらった煮干しを持ってきてくれた。

「…あっありがと。」海の気遣いが嬉しかった。煮干しも猫になってるせいか、なんだかとてもおいしかった。

「でもさ、猫嫌いの人とかだったらどうするの?ごはんもらうどころか、いじめられるかも…。」好きな人がいれば、嫌いな人がいる。それは仕方ないことだけど、やっぱり寂しい気がする。

「ハハッそれはもう勘だね!第6感で感じるんだ。…まぁそれは冗談にしても、人間だって敵意を感じると、なんとなく近寄らないでしょ?それと一緒さ。」

「あっあとね?気になったんだけど、猫にも好みってあるの?」本当は海の好みが知りたいが、遠回しに聞くことしかできない。

「猫も外見重視のやつとか、性格重視のやつ、雌なら強さ重視のやつとか人間同様様々だね。」海は苦笑しながら言う。

「ちなみに、オレは性格重視…かな。あったかいヒトがいい…。」海が少し照れながら言う。

「そっ…か。」なんだかショックを受けている自分に気づく。

なんでこんな気持ちになるんだろ…自分の感情がなんだかわからない。

何人かの通行人を相手に練習を終えた時には、日が沈んでいた。

「よぉし!いっちゃん、だいぶ上達したね。もう寝よっか。」海はそそくさと土管の中に入る。

「…ね?このまま?」土管の中は薄暗くて(と言っても猫の目なので関係ないが)、狭くて、海の顔が間近にある。

「あたり前じゃん。」他にどうするの?とでも言いたげな海。

「あっもしかして、緊張とかしちゃってる?」ニヤニヤと笑う。

「……っ!」図星を突かれて何も言えない一羽。

「え、図星!?…でも、大丈夫だよ。だってあり得ないでしょ?オレ猫で、一羽は人間だし。」諭すように海が言う。なんとなく哀しそうなのは気のせいだろうか。

「そ…そうよね。元々こんな風に猫になっている時点であり得ないんだからっ…。」わかってる。わかってるけど、なんかやりきれない感じ。

「とりあえずさ、明日また次の手ほどきやらなきゃだから、早く寝よ。」伸びをして、海が言う。

「そうよね、おやすみ!」一羽は、今日1日驚きの連続で疲れていてすぐ眠ってしまった。

海は、そんな一羽を愛しそうに見つめて、土管から出て空を見上げる。新月なのか月は見えないが、星はたくさん輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ