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代行バス(帯広~東鹿越)

経路

 帯広~新得(根室本線)

 新得~東鹿越(根室本線代行バス)




 帯広の朝は中々早いです。やっぱ日本の東側にあるからかななどと考えつつ、帯広駅へ。帯広駅の外観は高架駅という事もあり立派な物で、普通に大都会かと思っちゃいました。駅前にはホテルが多く、寧ろホテル以外何があったのかあんまり覚えていません。ってかホテル多い。駅の中(駅舎)に入るには当然扉に入らなければならないのですが、そこも流石北海道仕様。自動扉より手動扉の方が多いのです。帯広駅の待合室では改札待ちをする人が多く、中で暖まっていました。所用で、みどりの窓口へ。切符と特急券を買います。今日使うんですけどね。注文すると係員がもの凄いスピードでパネルをタッチ。どうやら間違いも無いらしく最後に指差し確認をして発券してくれました。何か、凄く、鉄道マンなんだなぁという気になりました。購入したのは旭川~深川の乗車券と自由席特急券。何でそんな距離をわざわざ特急使うんじゃと思われるかも知れませんが、こうしないと函館線の札幌~旭川を制覇出来ないのです。18きっぷで旅をしているとは言え手痛い出費ではありますが……。

 そうこうしている内に自分の乗る新得行き普通列車の改札が始まっていました。この日は18きっぷに「帯広駅」のスタンプが押される日です。自分はあまり駅スタンプなどには執心しないのですが、折角の北海道です。ワクワクしながら18きっぷを係員に見せると、押してくれました──めっちゃ薄く。何かがスタンプされたのは分かりますが「帯広駅」と読む事はおろか「2019.3.6」と日付を確認する事も難しいのです。これスタンプの意味あんの? とも思いましたがコミュ障なので止めました。

 帯広駅のホームに出ると自分の乗る普通列車と札幌方面の特急スーパーとかち号一番列車が停車していました。平日朝の列車ですが大勢の人が乗車していました。皆さん札幌に向かうのでしょうね。

 帯広駅は、現在は根室線のみが発着する高架駅になってしまいましたが、元々は地上にあり他二つの国鉄路線が乗り入れる一大ターミナルでした。乗り入れていたのは北の十勝三股へ向かう士幌線と南の広尾へ向かう広尾線。丁度現在の高岡駅のような格好ですね。どちらも国鉄がJRに民営化される前に廃止されてしまいました。元々は、士幌線は三国峠を越えて石狩の上川へ、広尾線は襟裳岬を回って日高の様似へそれぞれ至るという野望がありました。残念ながらその夢が実現する前に、両路線とも不採算路線として国鉄再建法により1988年に廃止されてしまいました。こうした国鉄時代の未成線などは全国各地にあります。今考えるとどうしてそんなの作ろうとしたんだよ、みたいな事を思いますが、当時(明治以降)は必要と思われたのかも知れません(野岩羽線とか特にアホじゃねと思いますが)。まぁ夢があって良いですよね!

 さて話を戻して──キハ40形はエンジンを吹かしながら1+1+1で停車していました。三両も要るのかはよく分かりませんでしたが、案の定自分の乗った最後尾は誰も居ませんでした。それも新得まで。ひえぇ……人が居ないよぅ……。まさかでしたが、一両をまるごと一時間貸し切りにしてしまいました。という訳で列車の走行中はやりたい放題です。と言ってものんびり鼻歌を歌っていたレベルですが。記念に自撮りでもしようかなとか思いましたが、恥ずかしいのとキモいなと思ったのとで止めにしました。

 朝でしたので、根室線沿線の風景をよく眺める事が出来ました。帯広から柏林台、西帯広までは街中を走行しますが、そこからは平坦な十勝平野の大地へ。畑やら、牧場やら、小さな林やらそんな物が続き、ポツポツと芽室や御影、十勝清水などの町が現れます。自分の中の田舎という物は山奥とかにあるイメージだったので、こういう平地の田舎というのは新鮮でした。


 けっきょく誰も乗ってこないまま列車は新得に到着です。降りましたが、自分の車両以外も他四、五人位しか乗っていなかったみたいです。どうやら普通列車は本気で儲からなそうです。

 新得からはバスに乗車します。ここから先の根室本線は峠の向こうの東鹿越まで不通となっています。これは2016年の台風10号の影響により橋脚や線路が流失してしまった事が原因です。被害程度がよく分かりませんが、現在のJR北海道は大量の資金を儲かりもしない鉄路に投資したくないというのが本音でしょう。実際この区間は札幌と道東を結ぶ路線としての能力を石勝線に譲ってからはますます衰退の一途を辿り、現在では北海道でもトップを争う閑散路線。それがここに来て台風で被災し運行が不能に。JR的には意向通りこのまま廃止、バス転換という選択肢が妥当でしょう。

 因みにこの区間が不通になるまでは滝川~釧路を結ぶ日本で最長距離、最長時間の普通列車が走っていました。確か300kmを8時間半ぐらい掛けて走っていたと記憶しています。一度乗ってみたかった……。恐らく復活する事は無いんでしょうね……。

 新得から乗車するのは富良野バスの観光型バスです。しかも乗客は自分を含めて三人だけ。代替輸送なのにこんなに豪華で良いのか知らんとも思いました。

 バスは新得駅前を出ると国道37号線に入ります。この国道は根室線に沿うように滝川~釧路を結んでいます。バスはここから暫くは平坦な道を、その後は狩勝峠を越える為山奥を、そして石狩に出れば37号線と分かれて根室線のすぐ側を通ります。


 北海道の道路というのは明治以降に殆どが敷かれたので、直線的な物が多いです。この国道37号線も例外ではありません。新得を出てからは片側一車線の道が山の方へ伸びていました。また北海道は積雪があるからなのでしょうが、国道37号線などこ道路によっては等間隔で歩道と車道の境を矢印で指し示す標識みたいな物もありました。

 バスはいよいよ山に差し掛かります。当然観光バスの重量は途徹も無いので新しく現れた登板車線を走行します。

 程無くしてバスは37号線から右に逸れます。真っ直ぐ行けば石狩ですが、右に曲がるとサホロリゾートです。一体どういう事かと言うと、このバスは根室線の代替だけでなくサホロリゾートへの送迎も兼ねて運行されているという訳です。しかしサホロリゾートに到着しますが、乗客も降客も居ません。そもそも根室線を使ってサホロリゾートに行く人なんて居ないでしょうし、時間はまだ八時半を過ぎたぐらい。まだまだ観光ホテルを出るのには早い時間でしょう。という訳でバスは何の為に寄ったのか分からないサホロリゾートを後にして再び狩勝峠に挑みます。

 37号線で山の縁を登っていくと、バスの左手に開けた場所が見えてきます。どうやらこの区間は十勝平野を上から眺める事が出来るようでした。ただ他の山が思いの外多かったり、十勝平野自体が遠かったりする所為で眺めは良いのですがちょっと見にくかったです。こういう場所を何ヵ所か通り、バスはいよいよ狩勝峠の天辺へ。

 644m。頂点を示す、鷹だか鷲だかの絵が描かれた看板がありました。

 ここからは下りです。バスは国道37号線をまだ進みます。雪の殆ど無かった十勝辺りとは違い、石狩は一面の雪景色とでも言いましょうか、とても幻想的な大地が広がっていました。山を一つ跨ぐだけでこんなにも違う物かとも思いました。上越線の清水トンネルではありませんが、新狩勝トンネルを通る事が出来れば川端康成と同じような感覚になったのかも知れません。

 進んでいくと、家々が現れてきました。バスは右に折れて、落合駅に到着します。バスの中からは落合駅のホーム、駅名標が見えました。落合駅は根室線が不通になった後、当然ですが誰にも使われていません。それ故にホームには大量の雪が積もり、線路も雪に埋もれて見えません。落合駅では誰も乗ったり降りたりしませんでしたが、近くで母子がこちらに手を振ってくれていました。落合を出ると、雪がちらついてきました。バスは雪原の中を走ります。遠くの山も雪が太陽に照らされて美しく輝いていました。

 そしてまた暫くすると、今度は木造の駅舎が見えてきました。幾寅駅に到着です。幾寅は故高倉健さんが主演の映画「鉄道員」の舞台「幌舞駅」として映画に登場した駅です。そしてそれをそのままに残している為、駅舎には本当の駅名の「幾寅駅」よりも「幌舞駅」の方がでかでかと書かれています。また駅のすぐ側には映画で使われた国鉄キハ12形をモチーフに改造されたキハ40形が展示されていて「鉄道員」の風景を残しているようでした。幾寅駅では高校生かと思われる乗客が十人程度あり、一気にバスの中でペチャクチャお喋りを始めました。くっ……地元民というだけで何だかもの凄いパワーを感じる……。何この敗北感……。

 まぁそんな事はどうでも良いです。コミュ障ボッチ旅行者の自分には1mmも関係無いのです。バスは国道37号線と分かれ、南へ。国道は金山湖の北を通りますが、東鹿越駅は湖の南にあるのです。バスは二年以上使われていない──もしかしたらこれ以上使われる事の無い踏切を渡ったり、渡ったりしながら東鹿越へ向かいます。途中根室線と並走するような区間では、列車は通る事が無いのに信号が「進行」を示しているのも見ました。何だか悲しいような……。


 根室線を左に、暫くすると、小さな家みたい物が見えてきました。そしてバスは左に。ん? ここ駅じゃ無くね? と思ったら駅でした。東鹿越に到着です。小さな家は東鹿越駅舎でした。っていうか家一軒も無いって何なの? それもそのはず、東鹿越はついこの間まで利用者の少なさから廃止が検討されていた駅でした。それが根室線の不通により、バスの発着駅に。まさかの復活を遂げました。何じゃそりゃという感じですが、今は大事な起終点を担っているのです。

 バスから降りた客は皆そのままホームに停車していた列車へ。本来であれば利用される事は無いでしょうから誰もここで降りないのは当たり前なのです。

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