乗り得列車(夕張~帯広)
静岡dcop号ありがとう!
もう昼間に静岡で185を見れる事は無いだろうから嬉しかったよ!
経路
夕張~新夕張(石勝線)
新夕張~新得(石勝線 スーパーとかち)
新得~帯広(根室本線)
石勝線夕張支線は大勢の鉄ヲタを乗せて、残り一ヶ月の運命となったレールの上を南に進んでいきます。西に傾く太陽が車内を暖かく照らし、車窓にも幻想的な風景が映りました。
暫くして石勝線本線の橋梁が見えてくると、間も無く新夕張。ホームに滑り込み、ドアが開きます。二十五人位が列車から降りました。勿論自分もその中の一人です。新夕張は夕張支線廃止後は、夕張市の中心駅となる予定です。元々は紅葉山という名前で、ここから今の路線とは別の線路が延びていた事も有名です。ホームは島式二面四線。特急も停まるのでホームの全長はとても長かったです。列車から降りた人々は、大体が停車時間を利用して写真を撮っていました。自分も乗ってきた列車や駅名標を撮影しましたが、再び列車に乗り込む事はしません。ここで乗り換えです。
階段を下って通路を通り、再び階段を上ります。やって来たのはキハ40形の停まっているのと反対のホーム。ここで乗って来た列車の発車を撮影し、山の中に消えていくのを見送りました。
ホームに集まった人は十人強。恐らく全員が夕張支線からの乗り換え客だと思われました。
暫くすると、特徴のある声の放送がありました。それからまた暫くしてトンネルの中から現れたのは、リニューアルして前面が白くなったキハ261系スーパーとかち号です。
ご存知の方も多いかも知れませんが、石勝線の新夕張~新得は普通列車が設定されていません。通常走っているのは特急と貨物のみです。これは、この区間の人口が極端に少ない(短絡線として建設された為殆ど山の中)のが理由です。「普通列車走らせんの金の無駄だし、どうせなら皆特急に乗せちゃおうぜ」という理論なのでしょう。石勝線のこの区間は帯広、釧路方面の特急は必ず通ります。確かその半分位の本数は新夕張、占冠、トマムに停まったと思います。その為、特例として新夕張~新得だけの相互乗車なら特急料金不要で特急の自由席に乗車出来るのです。その区間だけの利用者にとっては、特急列車が在来線の普通列車として利用可能という事です。
自分もその特例を利用して新夕張~新得まで特急スーパーとかち号に乗車しました。
確かスーパーとかち号は四両編成が普通だったと思うのですが、何だか一両増結されて五両でやって来ました。自由席が一両増えてラッキーです。さて乗り込みましたが、流石に客が沢山でした。元々札幌方面からの客が居るので当たり前ですが。丁度良い所に窓側の席が空いていたので、そこにお邪魔して車窓でも楽しむ事にしました。着席したのと同じ位のタイミングでエンジンの爆音が聞こえ、列車が発車しました。思えば気動車特急に乗ったにはこれが初めてでした。まずエンジン音ですが普通列車に比べれば格段に聞こえにくいですが、それでも加速する時なんかには少し大きく聞こえる事もありました。しかし、それに因る揺れなどは全く無く、スピードもこれが気動車かよというレベルで速かったです。殆ど電車と言っても差し支え無さそうでした。シートも特急なので柔らかく、リクライニングもあり、あの、何て言うんですか頭をフィットさせる枕みたいなの? それが最近流行りの上下に動くヤツだったのでお尻と背中と頭に優しいです。グレード高すぎ。北海道の気動車特急は舐められません。18きっぷを使いながら、こんな優雅な旅が出来るとは……。しかも新夕張~新得は四駅だけなのに89.4km(東京~根府川に匹敵)もあります。こんな長い距離の特急列車を追加料金無しの普通乗車券のみで利用出来るのはここだけでは無いでしょうか。乗り得最高。
当然特急列車には折り畳み式テーブルがついているので、それを展開して先程夕張で買った弁当を開きます。中身はご飯やサラダ、それに鶏の唐揚げが入っていてそれなりのボリュームでした。地場産品かどうかは分かりませんがとても美味しかったです。
列車は雪に覆われた山の中を駆け抜けます。風景こそ変わりませんが、ゆっくりと日は落ちていきます。小さな光の集まりが見えてくると、占冠に到着です。占冠はお隣のトマム駅も含む小さな村ですが、スキーなどのレジャーや星野リゾートなどの宿泊施設目当ての観光客が多いみたいです。自分の乗っていた車両からは白人系の家族連れが降りていきました。
占冠からは日は完全に没し、辺りは暗闇に包まれます。外を照らすのは車内の照明のみで、遠くは何も見えません。朝が早く、ご飯も食べ終わったので眠くなってきて暫く目を閉じていました。これもゆったりとしたシートのせいです。
気付くとトンネルの中。既に根室本線との合流する上落合信号場は過ぎてしまったようです。長いトンネルを出ると有名なs字カーブですが、暗い中ではよく分かりませんでした。それでもググーッと曲がっていたのは分かりました。っていうか二周ぐらいしたかと思いました。
暫くすると街明かりが見えてきました。新得町です。
結局、車内検札とかはありませんでしたが、楽しいタダ乗り特急でした。新得で列車を降り、スーパーとかち号を見送ります。また反対側のホームからはとかち号の到着を待っていた新夕張方面の貨物列車が発車。「ECO-POWER RED BEAR」の名を冠するDF200形は、非電化区間の多い北海道の貨物輸送を一手に引き受けています。DF200形は旅客気動車よりも更に大きな大轟音を夜の新得駅に響かせ、ゆっくりと、貨物を牽引していきます。後方にももう一機DF200形が連結されており、新得からの上り勾配に向かって力強く登っていくようでした。
自分と同じように特急料金不要の旅を楽しんだらしい鉄ヲタは、何故か皆駅の外へ出て行ってしまいます。はて、普通池田行きはもう三番線にスタンバっているのですが……。よく分からないまま三番線のキハ40形二連に乗車します。
おお、一人っ子一人いない……。
久々に誰も乗っていない列車に乗りました。
ふぅん……帯広という都市に一時間も掛からずに行けるのに、人は居ないのか……。
新得自体がそれ程大きな町でも無いですが、まさか一人も乗っていないとは思いませんでした。まだ発車まで時間があるので車内を見学。昼間はキハ40形には人がいっぱい過ぎてよく見れませんでした。このキハ40形二連は帯広方から700番台+1700番台という異番台の組成でした。700番台はまだ延命工事がなされていない番台区分で、車内には扇風機が付いています。勿論JNRの物です。窓と窓の間に「扇風機」と書いてある赤いボタンがあります。これで扇風機を回したり止めたり出来るようです。回しませんでしたが。これが1700番台になると「冷房」となるようです。
ボックスシートにこの日初めて座りましたが、良いですね。誰も居ない中、優越感を得ながら向かいの座席にも足を伸ばせるというのは。田舎の路線はこれが出来るから最高です。
結局誰も乗って来ないまま定刻となり、微かな二点チャイムが鳴ってドアが閉まりました。さっきの外に出た人達はどうしたのだろうかとずっと考えている内に、漸く答えが分かりました。恐らく根室線の代行バスに乗車したのです。時刻表を見ると、やはり新得到着の十分後にバスが発車となっています。このバスに乗れば同日の内に札幌、旭川に到着出来ます。皆さんそれを企図していたんですねぇ……。でも暗い中の旅というのも何だか味気無いので、贅沢ですが僕はあまり好きではないです。昼間が一番!
とは言っても列車は暗闇の中を駆け抜けます。十勝平野に出て、一気に線形もよくなったのでしょう、快調に飛ばします。誰も乗って来ないなんて言いましたが、それでも十勝清水や芽室では一人二人ながらそれぞれ乗って来ました。ですがそれにしても人は少ないです。対向列車を見るとこちらよりも明らかに乗客が多い……。恐らく帰宅者です。という事は、もう時間的には帰宅のそれで、今から帯広に行くような物では無いと、そういう事なのでしょう。
列車はその後も南西へ進み、西帯広~柏林台の帯広貨物で運転士員交代の為に運転停車(旅客駅以外での乗務員交代を初めて経験したので驚き)しつつ、高架を走行するようになります。大分街っぽい明かりがチカチカしてくると、間も無く十勝地方最大の都市──帯広に到着です。帯広では学生やら会社員やら、多くの人々が列車を待ち構えていました。池田方面に帰宅するのでしょう。列車から降り、暫くすると再びエンジンを吹かし南東方面へ出発しました。よく見ると、700番台と1700番台では側面の乗降取扱を示す赤色灯の位置と大きさが微妙に違いました。まぁどうでも良いと言えばどうでも良いですが。
列車が居なくなった帯広駅ホームからは人影は消え、辺りは静けさに包まれます。夜だから寒いというのに加え、駅に一時間に二、三本かしか列車が来ないとなると、皆さん下の待合室で暖かくして待っているのでしょう。静岡に居る限りでは有り得ないような光景が目の前に広がっていました。
北海道の一日目はここ、帯広で終わりです。続きは次の日です。
夕張支線ありがとう!
126年の歴史の幕に勇姿は感動的だったよ!