4話 スタンピードの討伐を手伝うことになりました。
その後、ギルドは結構ドタバタしていた。なんでだろうか。ところで、私は試験に合格したのかな?よく分からないんだけど。
あ、ちなみにガルートさんが気絶してたから、一応『グレート・ヒール』をかけておいた。
私は今、ギルドの受付前の待合席に座っている。何故なのか知らないが、待たされているのだ。
一応許可を貰って、待機時間の間に宿をとってきた。宿をとって来る時間を含めないでも、30分ぐらいは待っていたと思う。そして、ギルドに入った時と変わらず、人がいなかった。
「お、お待たせしました。ご案内します。」
ようやくギルド嬢がやってきた。そして、部屋に案内されたのだが……ここキルドマスターの部屋じゃない?だって、ドアにバッチリ『ギルドマスター室』ってかいてあったんだけど?
「やあ、君がイシェルかな?」
ギルドマスターと思われる初老の男性はそうイシェルに問いかけた。
「はい。イシェルと言います。」
「私はここの支部のギルドマスターのトトールだ。」
ギルドマスター……もうこの際ギルマスと心の中で呼ぼうーー私はギルマスと握手をかわした。
「Aランク冒険者のガルートを倒したそうだね。一体どうやったんだい?」
「助走をつけて、正面から刀の峰で殴りつけるようにやりました。」
「ふむ、カタナとは、刃が片方にしか付いていない剣のことか?」
「はい。それの刃がついていない方で殴りました。」
すると、ギルマスは私を真剣に見据えた。
「腕前も確かなようだし、試験は合格なので、君はEランクだ。Aランク冒険者を倒すような人材は早急にランクを上げたいのだが、他の支部の賛同がいるから……」
ギルマスは私に冒険者証を渡した。ちゃんとイシェルと書いてある。そして、ギルマスの言葉の最後は消え入るようだった。まあ、私はEランクでもいいのだけれど。
「私は別にEランクのままでも大丈夫です。」
私は正直にそう伝えた。
「そうか……もし、他の支部と話がついたら、ランクが上がるかもしれないから、定期的にギルドには来てくれ。あと、その腕前を見込んで話があるんだ。」
ギルマスの目が急に真剣なものに変わった。
「実は、今、街の冒険者たちが依頼を受けているのだが、もしよければ参加して欲しい。」
そう言われても、なんの依頼か分からないからなあ。
「その依頼が、数日以内にくる、魔物暴走についての依頼なんだ。」
魔物暴走か。初めてきいた。魔物暴走は魔物の集団がなんらかの原因によって、暴走することだったかな?
「そこで、ある程度数を減らす『討伐』の方と『住民の避難』を手伝うのとあるのだが、君に『討伐』依頼をやってもらえないだろうか?」
まあ、魔物暴走によって街がなくなるのもやだし、『十月』でどのくらいできるか試してみたいんだよね。魔物暴走なら、遠慮なく攻撃できるし。
「分かりました。やります。」
私はギルマスに向かってそう宣言した。
「ありがとう。」
ギルマスはそれしか言わなかったが、感謝は十分に伝わった。
***
私は冒険者ギルドを出て、森の様子を見に行くことにした。確か、西の森?に魔物暴走の前兆があったってギルマスが言ってたっけ?
しばらく歩くと西の森に着いた。で、まあ、冒険者の多いこと。皆んなこっちに来てるから、ギルドにあまり人が居なかったんだね。
皆んなテントを張ったりして、野宿をしてるみたいだ。大変だね。
すると、突然
「ピーーーー」
という笛の音が響く。
「魔物の群れが来たぞ!」
冒険者達の中からそんな声が上がる。魔物の群れが、来る?
私は探索を発動した。この探索も多分特殊能力の内の一つだ。魔法ではないと思うんだけど、これを発動すると、周囲の物を感知することが出来るのだ。ゲームのマップとは少し違って、どちらかといえば、レーダーという感じだ。
そして、先程の冒険者が言ったように、魔物の群れが来ている。それもかなり大規模な。もしかして、これが魔物暴走の本隊かな?
その魔物の数、およそ300匹。こんな数の魔物を見るのは初めてだ。
「すみません。」
私は先程笛を吹いた男に声をかける。リーダー格っぽかったし。
「ま、魔物の群れが来るから、早く街に戻った方が……」
そう男は言う。まあ、年端もいかない少女が冒険者やってるとは思わないよね。
「あ、大丈夫です。私もちゃんとしたEランクの冒険者なので。」
そう言いながら、私は冒険者証を提示した。
「そ、そうか。」
まあ、それはともかく。
「2キロメートル程先に魔物の群れがありますよね。それが300匹程いると思うのですが、これって魔物暴走の本隊じゃないんですか?」
私がそう言うと、男は魂の抜けた表情をしていた。
すると周囲で聞いていた冒険者達も声を張り上げた。
「さ、300匹〜〜?」
すると、それを聞いた冒険者達からも様々な声が上がる。
「え?300匹?」
「魔物暴走って多くて150匹ぐらいじゃないのか?」
「え、300ってことはその2倍かよ!」
「これだけの人数で抑えつければ大丈夫だと思っていたのに。」
「俺達は軽く魔物暴走を止めるだけでいいって聞いてたのに、このまま放置したら、他の街も危ないぞ!」
へえー。魔物暴走って多くて150匹くらいなのか。
って大変じゃん。2倍かぁ……
私1人ならなんとか出来るかも?
そんなことを考えている内に魔物は1キロ先まで迫って来ていた。
「ああ、やばい。」
「もう、終わりだ。」
絶望の声が聞こえてくる。
んー。とりあえず、目と鼻の先に来る前に魔術で蹴散らしておこう。こういう時に派手で効果が大きい魔法……
よし。
「じゃあ、ちょっと先制攻撃仕掛けてきます。」
一応、笛男(勝手に命名)に知らせておいた。
「え?何を……」
その先の言葉は私には聞こえなかった。私は高速で移動をして魔物暴走の群れの前に向かった。そして、『空中歩行』を使い上空に向かう。上から見るとよく分かる。ものすごい量の魔物だ。なんか学校の全校集会みたい。
さてと、ちょっと仕掛けをしておこう。私は下にある魔物の群れを見つめながら思った。
『爆発』
私がそう念じると。ボゴォォンという音がした。その音に動揺した何匹かの魔物達が群れを離れる。そして、逃げた先には『爆発』の罠が。確実に仕留められるよう少し威力を上げてある。これで、何十匹かは減ったはずだ。
とりあえず、戻ろう。
また、『空中歩行』を使い、陣地へと私は戻った。
イシェルがこの話で使った魔力は宮廷魔術師の魔力を軽く越えてます。
もし、感想がたくさん溜まったら、Q&Aコーナーをやってみたいです。キャラや、設定に関する質問も受け付けます。