3話 冒険者ギルドでスキップ試験を受けました。
馬車に揺られながら、ウトウトしていると、突然ぐらりと体が揺れた。もう、着いたようだ。
私は大きな欠伸をした。眠い。まあ、処刑場に行くまで、拘置所、もしくは牢屋の居心地が悪くて、ずっと起きてたんだけど。
***
私は商人さん達にお礼をいい、街に入った。
ここが、パラティールの主要都市、リリアルか。
私は街を眺めながら、そう思った。活気にあふれていて、治安も良さそうだ。
そして、私はある問題に気づいた。
ーーー私、これからどうしよう?
パラティールに行くことぐらいしか考えていなかったな。でも、ここだけじゃなくて、他の街も見たいんだよね。
各地を旅行(放浪)しながらも、身分が保証される職業と言えば、冒険者!
ってことで、登録しに行こうかな。あ、でもその前にちゃんとした武器が欲しいな。この剣はその場しのぎにしかならないし、私は剣を扱う時は結構雑だから、すぐ壊れると思うし。
あと、付与とかどうしようかな。あ、でも剣の付与は私にもできるから、できるだけローコストにする為に、付与なしのいい剣を買って、あとで私が付与をするってことでいいかな?
よし、そうと決まれば、いざ、武器屋へ!
***
ここが街で一番いいのかな?質はいいし、値段も良心的な地元の店!
他のは酷かったな。一回使ったら、すぐ壊れそうな品もあったし、品はいいのに貴族しか買えないような値段だったり。
この店は付与された品は少ないけど、私が欲しいのは付与なしの剣だから問題なし!
ふーむ。この剣がいいかな?けどな……
というふうに私が悩んでいると、店主さんが声をかけてくれた。
「じゃあ、最近入荷した、これはどうだ?」
そういう店主さんが出したのは刀だった。日本刀っぽくはないが、両刃の剣が一般的なこの世界では、珍しいものだろう。
なんだか、縁を感じたので、それを買うことにした。
ちなみに名前があるそうだ。『十月』というそうだ。
これ、装飾が日本っぽくないだけで、あと完全に日本じゃね?
まあ、それは置いておいて、冒険者登録の為にギルドに行こう!
***
ギルドの中は思ったよりもきれいだった。ほら、冒険者って癖のある人が多いじゃん?
だから、乱闘の痕とかあるのかな?と。
特にそういう形跡はなかった。ところどころに血痕は見えるが、まあ、魔物の血とかだろう。
空いてる。結構人がいるかと思ったんだけど。私はギルドの受付の方へと向かっていった。
「こんにちは。冒険者登録をしにきたのですが。」
「はい、ではこちらの紙の必要事項などをうめてください。利用規約なども書いてあります。」
ギルド嬢が紙を私に渡した。受付の前に待機席のようなものがあるので、そこで書こう。
名前、イシェルと。位は平民、年は17。あとは、これと、これとー。
よし、書き終わった!書き終わったので、私はギルド嬢に紙を手渡した。すると、ギルド嬢が話し始めた。
「えーと、ですね。ここの冒険者ギルドでは、スキップ制度というのが存在します。ここのランクは下から順番にF、E、D、C、B、A、S、なのですが。試験がありまして、こちらのスキップ試験を受けて、合格すれば、Fを飛ばして、最初からEになることができます。」
へえ。そんな制度があったんだ。どうせだし、試験、受けちゃおうかな?
「試験、受けます!」
私は勢いよく宣言した。
すると、ギルド嬢は目を大きく見開いていた。珍しいのかな?
「わ、わかりました。では、少々お待ちいただき、え?ちょうど来てる?……では。グラウンドへとご案内します。」
ギルド嬢は後ろの職員さんと会話をしながら、私をグラウンドへ案内した。
「よお!」
グラウンドには大柄の男の人がいた。イケメンだけど、筋肉系イケメン?だ。
「俺の名前はガルート。A級冒険者だ。」
ほお。ガルートさんはA級なのか。上から2番目だったら、結構強いはず。
「真剣でやるか?」
そうガルートさんは訊いてきた。
「ガルートさんがそれでいいのなら。」
私は返事をする。
「実戦の練習としてもだからな。真剣にしよう。で、これが俺の愛剣の『エクレール』だ。」
そういってガルートさんは柄に大きな宝石が入っている剣を私に見せた。かっこいいね。ガルートさんが剣を私に見せたので、私も『十月』を出した。
「珍しいな。これは。刃が片側にしかない。」
ガルートさんが珍しがっている。まあ、この世界では珍しいよね。
「これは、刀という種類の剣ですね。さっき、買いました。」
解説を軽くする。
「談笑はここまでですよ。」
ギルド嬢がいう。
「じゃあ、行くか。」
ガルートさんのその言葉とともに姿が消えた。高速で移動しているようだ。けど、動体視力、運動神経などが抜群の私には通用しない。どうせだし、しっかりと受け止めよう。
私は『十月』を構えて目を閉じる。
今!
私は目を開き、ガルートさんの攻撃を防ぐ。キインという金属と金属がぶつかりあう音がグラウンドに響く。
「今度はなかなか骨があるやつが来たようだ……」
ガルートさんはぼそりと呟いたが、私にはバッチリ聞こえていた。
「次は私の番ですね。」
私はそう宣言する。そして、私も高速移動をする。
「む?どこに消えた?」
ガルートさんがそういうのが聞こえたが、演技だろう。普通に見切れると思うのだが。
狼狽えているガルートさんの真正面から攻撃するために刀を振る。あ、でも刃の方でやったら、危ないな。じゃあ、峰打ちにしよう。
私が攻撃すると、ガルートさんがぶっ飛んだ。そうです、ぶっ飛んだんです。A級冒険者の体なら大丈夫だと思ったんだけど。このまま落ちたら、死んじゃうかも。助けに行くか。
私は空間系魔法の『空中歩行』を使い、空中を走る。落下している状態をキャッチしたので、お姫様抱っこになっている。
おじさんが十代の女子にお姫様抱っこをされる……深く考えないでおこう。
ガルートさんを無事キャッチ出来たので、また『空中歩行』でグラウンドに戻る。
ギルド嬢が口を大きく開けたまま、固まっている。
何かしたかな、私?
何をやらかしたかって?
色々ね。
ちなみにイシェルは普通に現金持ってます。
ブクマ、評価など、よろしくお願いします。