1話 元悪役令嬢(代役)はフランケンシュタインでした。
初の乙女ゲームものです。私自身、乙女ゲームをプレイしたことがないので、設定に甘いところがあるかもしれません……
「これより、マリー・ヴァレンシュタインを処刑する!」
処刑人の声が高らかに響く。
ーーー私の名前はマリー・ヴァレンシュタイン。乙女ゲーム『魔法と恋と』の悪役令嬢だ。
え? 悪役令嬢が自分のことを悪役令嬢だと知っているはずがない?確かにそうだ。
ーー御察しの通り、私は現代日本から転生してきた。もちろん、前世の記憶もしっかりある。
「魔法と恋と」は前世で大人気だった、乙女ゲームだ。割と王道系で、魔法が使える異世界で平民の主人公が王子達がいる学園に入ってきて、恋を繰り広げるという内容だ。
前世は「魔法と恋と」をフルコンプリートしたぜ!と喜んでいたところ、車に轢かれました。確か、あの車は逃げていったから、轢き逃げされたのかな?
まあ、それはともかく、「魔法と恋と」の世界に悪役令嬢役のマリー・ヴァレンシュタインとして転生しました。まるで、ネット小説のようですね。
うーん……まあ、ちょっと違うかも。最初は名も無き孤児だったんだけど、マリー・ヴァレンシュタインが事故によって死んでしまったから、見た目がたまたま似ていた私が養女としてヴァレンシュタイン公爵家に引き取られたってとこかな?
いやー、見事に破滅ルートを進んでいきましたよ。まず、幼少期に第二王子のルーベルトの婚約者になります。はい、超打算的な婚約ですね。可も無く不可も無く、といった関係が続いていったところ、ハイ、ヒロイン登場。愛が足りない感じで過ごしてきた第二王子のルーベルトは瞬く間にヒロインに恋をします。
それに嫉妬したご令嬢たちはヒロインを虐め、それが第二王子に発覚した時、私に指示されたと言います。恋のせいで盲目になった、第二王子ルーズベルトは調査をします。そして、ご令嬢たちが用意しておいた、偽の証拠をたっぷり見つけます。
この展開は元のゲームと少し違うんだけど、
断罪されて、婚約破棄されて、今に至ります。
ーーなんで私が抵抗しなかったかというと、アレがあったから。私は平穏に過ごせれば良かったんだけど、こんなゲームの世界で悪役令嬢役なので、平穏に過ごせるわけがありません。アレがあるので、私はこの後がどうなろうとも、どうでもいいのだ。
私は今、処刑の為に用意された、ギロチンへと近づいてる。ふと、観衆の方を見れば、第二王子のルーズベルトと一緒にヒロインが私を見つめている。
ああ、悪役の断罪イベントを見にきました。
『私、怖いよお。』
『俺がいるから、大丈夫だ。』
『ルーズベルト様ぁ……』
ってところだろう。ご苦労様です。
私の首がギロチンの下に置かれる。そして、処刑人が罪状を読み上げる。
「第二王子のルーズベルト殿下の婚約者への恐喝、窃盗、傷害などの罪への罰として、マリー・ヴァレンシュタインは公爵令嬢の地位を剥奪。よって、ただの『マリー』となり、そして、死刑とする!」
その罪状を聞いた私は爆笑しそうになった。婚約者?
いつの間になったのかしら。まあ、地位を剥奪されるのは予想してたし、そのほうが好都合だ。
「刑務執行!」
その声に続き、ギロチンの刃が落ちる。
ザシュ。
という鈍い音がし、私の首が切れる、
はずだった。
実際はバキャン。という音を立てて、ギロチンの刃が砕けた。そう、砕けたのだ。
そう、刃は確かに私の首に当たったのだ。けれど、刃は私の首を切れるほど強くはなかった。だから、砕けた。刃の破片はあたりに飛び散り、前の方にいた人や、処刑人に砕けた刃が刺さる。
「アギャアー」
「痛い、痛い。」
などの悲鳴がたくさん聞こえた。阿鼻叫喚って感じか。
そして、私は自分の失態に気づいた。ああ、準備をするのを忘れてた。そりゃあ、刃が砕けるわ。
そして、私の首には傷一つ、ついていない。
「ば、化け物。」
誰がそういったのだろうか。誰が言ったのかは分からないけど、その言葉は瞬く間に広がっていく。
「化け物だ。」
「みんな、逃げろー!!」
いつしかそういう声が群衆の中から出てくる。逃げる人も出てきたな。
うーん。どうしようか。
あ、いいこと思いついた。
「ハッハッハ!」
私は大声を上げて笑う。
「この程度で私を殺せると思うのか!」
私は王子を指差しながらいう。そして、魔法を発動する。
「このまま、幸せに生きていられると思うなよ!」
その後、私の姿は灰になって消えていった。
***
まあ、幻影ですけどね。魔法は得意なんだよね。
私は処刑台でやらかした後、幻影魔法で姿を灰になったように見せかけたのだ。こうすれば、悪役の退場として、いい感じでしょう?
ちなみに今は幻影魔法で姿を消している。だって、見つかったら、大変じゃない?
ああ、じゃあ私の秘密について話そうかな。私は人造人間だ。誰に作られたかは知らないけど、貧困街を彷徨っていたところ、ヴァレンシュタイン公爵家に発見された。
で、まあ、人間じゃないんだよね。特殊能力なのか分からないけど、私、異様に頑丈なんだよね。あ、怪力でもあるけど、そこはモンスターの定番じゃん?
で、上からコンクリートが降ってきても、軽く拳で粉砕できるような私が、ギロチンごときで死ぬと思う?
死にません。というか、不死身なのかな?
まあ、そんなとこ。
この後どうしようかなー。
乙女ゲーのストーリーから脱出できたわけだし、自由に暮らそうかな。
うーん、この国では生きづらいから、よし、他国にいって自由気儘に暮らそう!
私は隣国がある方角を向く。それは、ちょうど群衆たちがいた方角と真反対だ。あ、まだ第二王子とヒロインがいる。
私は彼らに背を向け、ちょっと振り返る。そして、別れの挨拶として優雅に微笑んでみた。
さようなら。
それに気づいたのか、第二王子と目が合う。私の姿は見えてないだろうけど。
私は前に向き直り、隣国へ向かって、走っていった。
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