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・・・


夜は皆丸太小屋に閉じ籠り、飯を喰いながら暖をとる。


室内の中央に枠で囲った焚き火の為の穴が浅く掘られている。真上に開いた天窓が煙突代わりだ。



煙が目にしみる。



騎士から眠る前に一杯の酒が配給される。身体を温める為だ。監督している騎士達も鬼では無い。いつくたばるか先の無い罪人達にその程度の温情は与えていた。



「チッ……魔女が歌ってやがる」


「魔女?」



丸太小屋の外は乾いた大気が唸りをあげている。時おり微かに小屋が軋む。



「俺はこの近在の産まれでな……この山は魔女が創ったのさ」


「へぇ」




エル・セルドラの魔女。


この山を根城にしていた女の伝説だ。


その話はとりとめが無く、山自体を創ったとも元からあった山に住み着いたとも謂われている。


魔女に対する印象もまちまちで、ある村では蛇蠍だかつの如く、またある村では慈母の如く謂われていた。


伝説では討伐の命令が下り、追い詰められた魔女が山を極寒の地に変えたのだとか。



「……今でも魔女は生きていて、月明かりのある夜には山を歌いながら巡るんだと」


「なんだ、ガキを寝かしつけるお伽噺じゃねぇか。早く寝ない子は化け物が拐っていくぞぉ!」


「違い無ぇ……だがよ」



近在出身だという男は、最後の一口を呑み干すと言った。



「この山が一年中凍り付いてるのも事実だぜ?」





────────


瓦礫を積み込むシャベルが止まった。


その男は靴紐を直す素振りでしゃがむと、瓦礫の中で輝くものを拾い、素早く隠す。


またなに食わぬ顔で立ち上がると、シャベルを動かし始めた。





「見ろよ」



晩飯の後、男は皆に拾ったものを見せた。騎士達は別部屋で休んでいる。



「……こりゃあ、金か?」


「ははっ!なるほど国家事業だ」



指の先に乗る程の、小さな粒。



「砂金にしちゃあ粒がでかいぜ?」


「この山はどえらい金鉱脈って訳だ」



二つの国がどちらも欲しがらなかった無用無益な山。


罪人はおろか、監督役の騎士達までもすり潰して余りある宝が眠っていたのだ。




「くだらねぇ、だからどうしたってんだ」



一人が詰まらなそうに言った。



「んなもん拾ったって、俺達が使える訳じゃ無ぇよ。生きてこっから降りれると思ってんのか?」



既にこの時、罪人達は半数に減っている。作業が捗らなくなっていた。じきに『補充要員』が来るだろう。


文句をつけた男は立ち上がると小屋の扉に手を掛けた。



「どこ行こってんだ?」


「気晴らしだ、風に当たってくら」


「へへっ、魔女に捕まんなよ」



月の蒼い光が凍る山肌を輝かせていた。昼間の陽の光は照り返しがきつく目を焼くが、夜の照り返しは硬質で冷たい。



「……寒ぃな」



白い息が風に流れる。


風は針で刺す様に男の頬を撫でた。



小屋の傍にはまるで薪の様に罪人達の死体が積み重なっている。


麓に運び下ろす手間をかけていないからだ。どうせ腐らない。


男は横目でそれを見ると息を一つついた。



じきに自分達もああなる。


今更金がどうのと騒いだところで無意味だ。それは皆承知しているだろう。だが、それこそ気晴らしなのだ、他に楽しむものが無いから無意味でも騒いでいるのである。


自分は大人気なくケチをつけた様なものだ。



「寝るか……ん?」



男の目に、不可解なものが映った。





────────

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