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初めてのお祈り

 


 翌朝。



 鳥のさえずりに目を覚ますと、目の前に邪神の顔があった。



 文章にするとかなり凶悪な状況だが、案外気分は悪くない。


 幸い腕枕まではされていなかったので、ゆっくりと起き上がりベットから這い出る。



「……。」



 うん。

 寝る前に感じていた気怠さは無いな。


 ステータスを確認すると、MPが全回復している。

 しっかり休めた様だ。

 よく見ると魔力とMPの値が増えている。限界まで魔力を使ったからだろうか。



「…んぅ……。」



 しかしよく眠っているな。

 寝ている姿は完全にただの女の子だ。


 いやむしろ、神要素が少な過ぎないか?

 確かに能力的には優れているのだが、その他は殆ど人間と変わらない。


 あ、アレはどうなんだろうか。起きたら聞いてみよう。



「……。」



 30分程待ったが、起きる気配がない。


 しかしこのままでは朝食の時間が終わってしまうので、起こすとしよう。



 問題はどうやって起こすかだが…普通に起こしてもつまらないよな。



 よし、おっぱいを揉もう。



 むにゅ。



「…Cカップ。」


「……何、やってんの?」


「起きたか。飯行くぞ。」


「質問に答えなさいよ。何やってんの?」


「見ての通り、おっぱいを揉んでいる。」


「……うがぁーー!」



 おお。

 邪神が本性を現したぞ。


 だが無駄だ。

 俺にお前の攻撃は通じない。



「くっそ!ホントくそ!」


「ああ、くそで思い出したけど、お前ってトイレ行かないよな?何で?」


「あ?私は神よ!口に入れた物は完全に吸収出来るの!…それより謝りなさいよっ!」


「お前はアイドルか。…あと謝らない。」



 都合の良い神設定だな。


 宥めるのは諦めて、俺は1階の食堂に向かう。

 テラも何だかんだで付いてきた。コイツ割と食いしん坊だよな。



「…裏の井戸で顔洗わせて。」


「神というだけあって目ヤニの1つも無かったぞ?」


「寝顔見んな!気分的に洗いたいのよ。」



 コイツは向こうでどんな暮らしをしていたんだ?

 人間の真似事でもして過ごしていたのだろうか。


『洗浄』でスッキリしても良いが、朝イチから無駄に魔力を使いたくないな。仕方がないので朝食の前に井戸に寄る事にした。



「昨日の夜はあんなにしおらしかったのにな。朝はこれかよ。」


「アンタが変な起こし方するからでしょ!」


「……。」



 ん?

 何となく気になって後ろを振り返ると、桶を抱えた女の子が立っている。確かこの宿で受付をしてくれた子だ。



「おはようございます。」


「あ、お、はようございマス!」



 女の子は顔を真っ赤に染めると、井戸に寄らずに走り去ってしまった。



「…何あの子?」


「想像力が豊かなんだろ。俺とお前の会話を誤解して捉えたのさ。」


「…ああ。確かに昨晩何かあった感じに聞こえるかもね。」



 あの子は多分、俺達が一部屋に泊まると言った段階で妄想し始めていたのだろう。反応からしてそんな感じだった。



「ま、どうでもいいか。早く飯行くぞ。」


「うん。お腹空いたわ。」



 俺達は朝食を摂るため、食堂へと向かう。







 朝食を摂った後、宿から出た時には9時を過ぎていた。



「お寝坊さんのせいで予定より遅い出発だ。」


「よ、予定なんて言って無かったでしょ!」



 言って無かったかな?



「それで?今日もクエスト受けるのよね?」


「ああ、だけどその前に寄りたい所がある。」



 寄ると言っても、宿はギルドに併設されているので、完全にお出かけになる形だが。



「どこよ?」


「教会。」



 昨日冒険者ギルドで聞いてみたらこの町にも在るらしいのだ。リアリティ教会が。



「…もう会いに行くの?」


「おう。ご尊顔を拝見したい。」


「何その言葉遣い。」



 ノア様も俺に会いたくて会いたくて震えている筈だ。



 教会はギルドから徒歩5分くらいの距離にあった。この辺りは一等地だと思うので、教会もそれなりに力があるという事だろう。

 ノア様が慕われているようで良かった。



「ようこそリアリティ教会へ。」


「お邪魔します。ノアリアリティ様に祈りを捧げに来ました。」


「貴方からは素晴らしい信仰心を感じますね。どうぞ礼拝堂へお入り下さい。」



 出迎えてくれたのは綺麗なシスターさんだった。



「シスター衣装って良いよな。」


「めちゃくちゃ場違いな事言ってるの自覚してる?」



 礼拝堂はかなりの広さがあり、30人程の信徒が祈りを捧げていた。


 俺は礼拝堂の奥に鎮座しているノア様の像の下に進み、そこで祈る。祈りの作法なんて分からないので、他の信徒をマネて両手を組んでみる。



「ほら、テラも。」


「なんで神が神に祈るのよ。」


「…ちっ。邪神がぁ。」


「邪神って言うな。」



 テラは放っておいてノア様に集中しよう。

 両手を組んだまま目を瞑って、心にノア様を思い浮かべる。すると、次第に暖かい何かに包まれる感覚を覚え、それに引っ張られる様に目を開けた。


 そこは先程まで居た礼拝堂では無く、転生する時にお邪魔したあの白い空間だった。



「ノア様。」


「えっ?あ、ああ…ラヴさん。ようこそ。」


「今日も変わらずお美しいです。」


「あ、ありがとうございます。その…昨日お別れしたばかりですよね?」



 ノア様の後ろ姿を見つけ声をかけると、ノア様は驚いた顔でこちらを見る。



「はい。教会を見つけたのでいつでもお会い出来ると思い早速お邪魔しました。」


「えと、毎日来て下さるつもりですか?」


「もちろんです!お布施も沢山納めます!」


「……。」



 ノア様が震えている。

 感激して下さっているのだろう。



「…あのですね。私の願いは貴方が幸せな人生を歩む事なんです。なので、私に会いに来るのは程々にして、豊かな人生を歩める様に励んで頂ければ…」



 おお。

 そこまで俺の事を考えて下さるなんて。



「あ、ありがどうございばず…。」


「な、泣かないで下さい!怖いです!…それより、テラさんの方はどうですか?お仕置きは出来ていますか?」


「…ぐすっ。…はい。あの邪神は揶揄(からか )うと過剰に反応するので、頻繁に罵倒してやりましたよ。」


「それは…お仕置きなんですか?」


「もちろんです!たった1日でほぼ屈服状態です!現に昨日の晩なんて、俺のベットに潜り込んで来たくらいですから!」


「……仲良くなってるだけ…いえ!貴方が楽しめているならなによりです。」



 その後、クエストの話や魔法を使ってみた感想などを伝えた。ノア様は俺が不自由無く過ごせている事を喜んでくれた。



「けれどまだ1日ですからね。これから先苦難にぶつかる事もあるでしょう。相談などがあればいつでもお越し下さい。…あ、程々にお越し下さい。」


「はい。ありがとうございます。…テラを待たせているのでそろそろ戻りますね。」


「…やっぱり仲良くなって……な、なんでもありません。それではまた。」



 ノア様から意識を切ると、視界いっぱいに白い光が溢れ、礼拝堂へと戻って来られた。



「…ラヴ?戻った?」


「…ああ、お待たせ。そんじゃクエストに行こうか。」


「うん。またハート草?」


「……そのクエストがまだ残ってればな。」



 俺達は教会を後にし、冒険者ギルドへと向かった。



お読み下さり有難う御座います。


ブクマや評価などをして頂けると励みになります。

お気に召して頂ければ宜しくお願い致します。

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