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初めまして俺の仇

 

 空間の亀裂から染み出す様に現れたソイツは、白い髪に白い瞳、白い肌を持った少女だった。


 ソイツは俺の顔を見るなり怒鳴りつけてくる。



「な、なんでっ…なんでアンタが生きてるの!?私が殺したはずでしょう!!」


「…自供だな。」



 女神の言っていた事は正しかった。

 本当に何でも召喚出来たし、本当にコイツが俺の仇だった。


 てか、地球神も女神だったのか。呼び方変えた方がいいな。



「女神様、疑ってすみませんでした。貴方のお名前をお聞きしても?これからは貴方を崇め奉りながら生きていく所存ですので、どうかお名前を…」


「お、おいっ!無視するなー!ここは何処なんだ!!」


「黙ってろ売女!俺は今女神様と話しているんだっ!」



 喚いている地球神に怒鳴りつけ、再び女神様に向き直る。



「え、えぇっと……私も軽くパニックなんですが…。私の名は【ノアリアリティ】です。ノアと呼んでいただければ。」


「ノア様。貴方のお陰で救われました。これからはこの売女を虐げる事で心の安らぎを得ます。さっそく神器にしてもらえますか?」


「い、良いんでしょうか?別世界の神を呼ぶ事自体、前例の無いことなのですが…。」


「呼べたという事は良いという事でしょう。ダメなら宇宙神が渡していない筈です。」


「……それもそうですね。宇宙神もこの方の事はいつも嘆いていましたし、人の一生分くらいは反省しなさいという事なのかも知れません。」



 そう言ってノア様が地球神に手をかざす。

 かざした手を俺の胸元にスライドして、「完了しました。」と言った。



「これでいくら甚振っても再生するオモチャの完成ですね。それに適したスキルと魔法を選ぼうと思います。」



 ノア様の言った通り、先に神器を選ぶ事でスムーズにステ振りが出来そうだ。さすが我が女神。



「ちょ、ちょっと!あんた私に何したの!?」



 地球神が喚いているが、華麗にスルー。

 俺はステータス画面を呼び出し、ステ振りを開始した。

 視界の端で、ノア様が地球神に説明をしているのが見て取れる。事情を知ったアイツがどんな顔をするのか、今から楽しみだ。



 しかしやはり多い。

 この中で売女を甚振るのに適したモノを探すのは大変だ。



「…拷問スキルかぁ……これは自力で習得出来そうだしなぁ。」


「ノ、ノアぁ〜!今不穏な言葉が聞こえて来たんだけどっ!」



 ふっふっふ。

 怯えているな。いい気味だ。



「あ、これイイな!結界魔法。…叫び声とか遮断出来るかも。」


「ええっと…説明が進まないので、もう少しボリュームを抑えていただけると…。」



 む。

 ノア様に迷惑をかけるワケにはいかないな。

 黙って選ぼう。



 ノア様の計らいなのか、ステータスにはヘルプ機能が付いているのでそれを参考にしながら選択していく。


 やはりここは、後天的に身に付けられないモノを選ぶべきだろう。



 ヘルプによれば、魔法には適性というものがあり、生れながらに持ち合わせた適性以外の魔法は使えないらしい。


 ステータスを見ると、俺の適性は無しとなっている。せっかく異世界に行くなら、色んな魔法が使ってみたいので、各種魔法適性を獲得していく事にする。


 適性を獲得した段階でその魔法はLv.1と表記され、簡単な魔法なら扱える様になるようだ。



「あとはスキルか。んーと、鍛錬で習得出来なそうなのは…。」



 スキルレベルの存在しないモノがいくつかあり、それが後天的に得られないモノのようだ。


 定番の【経験値増加】というのはレベルが上がりやすくなるものだよな?…これは無しだな。レベルはじっくり上げたい。


【成長率増加】か、これは貰いだ。能力値が上がりやすくなるというのは有り難い。能力値は鍛錬でも伸ばせるようだが、メインはやはりレベルアップによるものらしいので、これが有るだけで随分楽になるだろう。


 だったら経験値も増加させろと思われるかも知れないが、「レベルの割に強くね?」と言われたいのだ。

 ……分かるだろ?



「あ、アイツ用のスキル取ってないな。」



 気がつくと厨二心に引っ張られ過ぎて、普通にステ振りしていた。

 神器が決まってステ振りしやすくなったとか言いながらブレブレだ。


 とはいえ、よくよく考えれば売女を甚振るのにスキルも魔法もそんなに必要無い気がする。地球神は俺の神器なので、俺に危害は加えられない様だしな。やりたい放題だ。魔法はある程度得たので、便利そうなスキルを取って終わりにするか。



「…くそっ!あんなカスに縛られるなんてっ!……まぁいいわ。人の一生なんて100年足らずでしょ。そのくらい耐えてみせるわよ。」


「テラさん、全然反省する気ありませんね。」



 気が変わった。

 やはりアイツ用のスキルを確保しておこう。





 最終的に俺のステータスはこんな感じになった。



 名前―愛・拝堂(ラヴ・ハイドウ)


 年齢―18歳


 種族―人族


 レベル―1


 職業―無職


 スキルー不老 鑑定 健康 成長率増加


 魔法―火Lv.1 水Lv.1 風Lv.1 土Lv.1 雷Lv.1 光Lv.1 闇Lv.1 生活Lv.1 念動Lv.1 治癒Lv.1 結界Lv.1 空間Lv.1


 能力値―HP 1000/1000

  MP 1000/1000

  力 100

  魔力 100

  命中 100

  敏捷 100

  物防 100

  魔防 100

  運 100



 アイツを永久に虐め倒すために不老のスキルを取った。5ポイントも使ってしまったが仕方ない。


 成長率増加も貴重な気がするが、不老以外は殆ど1ポイントだったので、きっと命に関するモノは別格なのだろう。

 


 流石作られた身体という事もあり、能力値はレベル1の平均値らしい。頑張って上げていかないとな。


 年齢は身体のモノが適用されるのか。名前と苗字が逆なのはこの世界流か?



「ノア様、ステ振り終わりました。そっちの…テラ?への説明は終わりましたか?」


「はい、終わりましたよ。貴方を呪ったことを自慢していました。病気になるまでに起きた数々の不幸もテラさんのせいだったみたいですね。…あ、ステータスを見させていただきますね。」



 そうだろうと思ったさ。

 お返しはこれからじっくりやっていこう。



 ノア様が俺のステータス画面を覗き込む。

 間近で見ると益々美しい。


 透き通る様な金髪に同色の瞳。

 肌は陶器の様に艶やかで、顔も身体も美術品の様に整っている。


 俺の名前を知って笑わなかったのもこの人が初めてだ。心まで清らかでいらっしゃる。



「ちょっとっ!この私を呼び捨てにした!?私は【テラリアブルーフォーゼ】様よ!ちゃんと様付けしなさいっ!」


「ノア様、いかがですか?」


「えぇと…不老のスキルが取れたんですか?」



 俺とノア様は外野を無視して話を進める。



「はい。5ポイント使いましたけど。」


「うーん、不老は20ポイント全て使う必要があった筈ですが……もしかしたら、宇宙神が援助してくれたのかも知れませんね。」



 宇宙神とやらも俺がテラに罰を与えるのを期待しているという事だろうか。


 期待には応えないとな。



「ラッキーですね。…ところで、俺はどこに送られるんですか?」


「どこにでも送れますよ。希望はありますか?」



 希望と言ってもな。完全に土地勘が無いからなー。



「魔法を試してみたいので、街中以外が良いですね。出来れば危険の少ない所で。」


「ふふ。早速試したいだなんて、ホントに子供みたいですね。田舎町の近くに在る森にお送りしますね。」



 笑顔も美しい。



「あ、町があるって事は人が居ますよね?コミュニケーション取れるでしょうか?」


「はい。そこはサービスで、読み書きまで含めて不自由しないようにしてありますよ。以前来た方は、『テンプレ』なんて言っていましたが…。」



 まぁ、テンプレだな。



「その他神盤の常識的な事はヘルプを参照して下さい。」


「分かりました。ご丁寧にありがとうございます。」



 以上で転生の手続きは終了らしい。



「またノア様に会えますか?」


「私の教会に来て下されば。中々転移者の皆さんは来てくれませんが…。」


「必ず行きます。色々とありがとうございました。」


「お待ちしておりますね。……それではまた。二度目の人生が幸多きものである事を祈ります。」



 そう言ってノア様は、両手を合わせて目を瞑る。

 次第に白い空間に光が満ちて、暖かい気持ちでいっぱいになりながら俺の意識は遠のいた。



 テラは俺が不老と知ってから大人しくなっていたが、いよいよ神盤に送られるとなってワーワー騒いでいる。


 せっかくの良い気分が台無しだ。




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