レベル爆上げ
廃坑の中には、長いこと放置されて錆びきったレールが敷かれている。現役時代にはこのレールの上をトロッコが走り、石材や鉱石などの運搬が行われていたのだろう。
俺達はそのレールに沿って廃坑内を進んで行った。
入り口から10分程進んだ所で、最初の魔物が現れる。
やはりと言うべきか、最初に現れたのはスケルトンだった。
「鑑定を使うまでもなくスケルトンだな。」
「スケルトンね。」
とはいえ油断で死ぬのはカッコ悪いので、念の為鑑定スキルを発動する。
【スケルトン】Eランク アンデッド
人間の成れの果て。
白骨化した遺体に魔力が溜まり発生する。
知能は低く、本能のままに彷徨う。
再生能力は低いが、ダメージを受けても動き続ける。
魔石を破壊する、魔石を体外に出すなどの方法で討伐可能。
光、治癒魔法に弱い。
やはり鑑定を使うまでも無かったな。
完全にイメージ通りだ。
「早速暗器を使ってみたいところだけど、知能が低い相手に使ってもなぁ。」
「光魔法は?」
「『光球』と『閃光』だけ。」
「攻撃力皆無ね。」
「治癒魔法は『治癒』と『解毒』だな。」
「攻撃力皆無ね。」
どうやら魔法はダメらしい。治癒魔法に弱いなら『治癒』が効きそうなものだが、俺の練度ではまともに通らないという事だろうか。
仕方がないので暗器で行こう。
「……。」
俺は努めて自然体を装い、スケルトンに近づく。
対するスケルトンは、手に持った骨を振り上げ俺に向かって走り出す。
走り方がなんともぎこちないが、筋肉も筋も無いのに走れるだけ凄い。
カタカタと音を立てながら走るスケルトン。
互いが互いの間合いに入り、奴が上段に構えた骨を俺に向けて振り下ろした瞬間…
ダーンッ……。
「……。」
俺はすれ違い様に奴の頭部に手を翳し、拳銃の引き金を引いた。
ゥゥウンゥゥゥ……。
発砲音が洞窟内に響き、続いて骨の崩れ落ちる音が重なった。
スケルトンの残骸から、魂が流れ込んでくる。
どうやら魔石は頭部に在ったようだ。
「……銃は無しだな。」
シンプルにうるさい。
これでは魔物を誘き寄せるだけだろう。
レベル上げなのだからそれでもいいのだが、スケルトンが大挙として押し寄せてくる様は見たくない。
俺は銃を『道具箱』に仕舞い、ついでにスケルトンの残骸も収納した。
「ナイフも刃こぼれしそうだし…やっぱり暗器は魔物向きじゃ無いな。」
「うーん……魔力強化したらいけるんじゃない?」
「それならいっそ、刀を使うよ。どうせ暗器術のレベルはもう上がらないし。」
「…うん、それもそうね。」
暗器はあくまでも暗殺用だ。
当然その対象は人間を相手に考えられている。
知能も無い上に体格もまるで違う相手には、あまり効果的では無いだろう。
「ま、気長に刀術でも鍛えるさ。魔力強化をすれば、骨くらい斬れるかも知れないし。」
気を取り直して探索を再開する。
が
「これって…やっぱりさっきの銃声のせいだよな?」
「でしょうねぇ〜。」
奥に進むこと30秒。
薄い電灯に照らされた薄暗い廃坑に、地響きが発生している。
次第にその発生源が視界に入って来て、俺は思わず発狂しそうになった。
「……っ!?テ、テラ!へるぷっ!!」
「わ、分かったから!揺らさないで!!」
現れたのは予想通り、スケルトンの群れだった。
視界に収まる限りでも30体はいると思われる。
人の亡骸なんて見慣れているが、それが動いて、しかも集団で迫ってくる様は流石に気味が悪い。
俺はテラの肩を揺さぶり、助けを求めた。
「ほら。私の持ち主がビビってるから……消えろ。」
そう言ってテラは右手を翳す。
直後
「うおっ!?眩しっ!!」
洞窟を埋め尽くす程の白い光が放たれて、一瞬のうちに消えた。
光が消えた時、それに連れ去られる様にしてスケルトンの群れも消えさっていた。
後に残ったのは、夥しい数の魔石だけだ。
「あ、良かった。ちゃんと魔石だけを残せたわ。」
「………。」
俺はその圧倒的な魔力に呆然とする。
これ、俺がレベル上げる意味あるのか?
そんな風に考えながらも、俺の体には次々とスケルトン達の魂が流れ込んで来て、バカみたいな速度でレベルが上がっていく。
果たして今の一撃で何体のスケルトンが消滅したのか。
どのみち魔石を回収して回る事になるで、消しとばしたスケルトンの数は分かるのだろう。
「…なぁテラ。頼んだのは俺だけどさぁ…。」
「し、仕方ないじゃない!咄嗟のことだったから加減ができなかったの!」
集まった魔石を『道具箱』に収めると、なんとその数は148個にも昇った。
魔石は廃坑の行き止まりまで転がっており、これはテラの一撃でスケルトンが一掃された事を意味している。
俺は道中何度も躓き、壁に体を打ち付けた。
急激なレベルアップによる弊害だ。
この能力値に対応出来るようになるまで、まともな戦闘は行えないだろう。なるべく早く慣れたいとは思うが、果たしてどれくらいの時間がかかるのか…
参考までにステータスを開いてみる。
名前―愛・拝堂
年齢―18歳
種族―人族
レベル―3→19
職業―冒険者
スキルー不老 鑑定 健康 成長率増加 暗器術Lv.MAX 剣術Lv.1 格闘術Lv.1 薬草採取Lv.1
魔法―火Lv.1 水Lv.1 風Lv.1 土Lv.1 雷Lv.1 光Lv.1 闇Lv.1 生活Lv.1 念動Lv.1 治癒Lv.1 結界Lv.1 時空Lv.1
能力値―HP 1,230/1,235→2,835/2,835
MP 1,232/1,283→2,883/2,883
力 318→1,918
魔力 335→1,935
命中 309→1,909
敏捷 312→1,912
物防 300→1900
魔防 300→1900
運 309→1909
あーあ。
能力値が6倍以上になってしまった。
体がコントロール出来ないわけだ。
300台の時ですら超人じみていたのに、1,900台になったら完全な化け物だ。
「だ、大丈夫よ!私はコントロール出来てるわけだし…。」
「はは。ウケるー。」
神の器用さを基準にされてもな。
「あ、蝙蝠だ。」
テラは頭上に蝙蝠を見つけ、なんとなくと言った感じで石を投げつけた。
石は見事に命中。蝙蝠は魔石を残して消し飛んだ。どうやら魔物だったみたいだ。
「…う。レベルが20になってる。」
どうやら先ほどの蝙蝠でレベルの壁を突破してしまったらしい。スケルトンの経験値でレベル20の一歩手前まで行っていた様だ。
「……これで敵無しねっ!」
「…レベル上げが目的だっただけに、文句も言えん。」
物凄くモヤモヤする。
けど確かに目的は達成したんだよな。
天才的な素質を持つ者でさえ、レベルが1上がるごとに能力値は10程度しか上がらないらしい。そう考えると、俺は最低でも常人の200レベルに相当する能力値を備えている事になる。
戦争での活躍は約束された様なものだ。
ただそれは、相手に異界人が居なければの話だが。
異界人ならきっと、俺と同じ成長率に加えて俺よりも高レベルの者がいるだろう。そうなると結局、俺はザコのままだ。
ただこれに関しては気にしすぎても仕方がない。どれだけ考えたって分かる事では無いのだから。
いざとなればテラに頼ろう。
流石の異界人もテラには勝てまい。
「さて、目的は達成しちまったし、アウランに戻るぞ。」
「歩けないならおんぶしようか?」
「……忘れてた。」
俺達は、たっぷり2時間かけてアウランに帰還した。
2時間程度で慣れる事が出来たのは僥倖だろう。結局は自分の体なんだと考えると、思いの外早く慣れる事が出来た。
人間というのは便利に出来ているものである。




