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何でも持ち込んでいいの?じゃあ神で。

 

「いきなりですが、貴方は異世界転生します。」


「いきなりですね。がんばります。」



 お決まりの白い空間。


 お決まりの魂状態。


 お決まりの女神っぽい女性。


 お決まりのセリフ。



 どうやら俺は、お決まりの異世界転生をするらしい。



「も、物分かりが良過ぎますね。」


「まぁ…ラノベやネット小説で読み飽きた展開なので。」



 擦られ切ったネタだ。

 自分が当事者になったというのは確かに驚きだが、読み慣れ過ぎているせいか表情に出る程には驚かない。



「はぁ…昔は皆さん驚いてくれたんですけどねぇ。最近は小慣れた対応ばっかりで、私としてもやり甲斐がありませんよ。」


「はぁ、なんかすいません。」



 女神の反応から察するに、俺が送られる異世界には同郷の者がそれなりにいるらしい。



「とはいえ仕事なので、一応はちゃんと説明しますね?」


「はい。お願いします。」



 女神の話によれば、俺は地球で病死したらしい。3年間もベッドの上で生活していれば、当然そうだろうと思っていたのでこれは納得だ。


 ただ、病死の理由は納得出来なかった。



「貴方は地球の神に捨てられました。」


「俺…なんか悪い事しました?」



 俺の病は原因不明と言われていたが、それも当然。神に呪い殺されたのだそうだ。



「いえ、ただの嫉妬です。」


「それでも神か。」



 どうやら俺は、地球の神より上位の神、宇宙神とやらに愛されていたらしい。だからといって特に何か優遇されていたわけでは無く、ただ愛されていたというだけだ。

 しかしそれが地球神には気に入らなかった様で、3年もの時間をかけて甚振りながら呪い殺すという蛮行を行なったのだ。



「正直、そんな理由で異世界に送られる人はいません。宇宙神の計らいで、全く別の次元である私の世界に転生してもらう事になりましたが、他の転移者の方にはなるべく話さない方がいいと思います。貴方以外の方は転生では無く転移なので、その辺りに差も生まれてしまいますしね。」


「よく分かりませんが、分かりました。」



 他の転移者は、神の手違いやら次元の歪みやらで飛ばされた者達で、俺の様に死後送られた者はいないらしい。



「それで、俺が行く世界はなんていう名前なんですか?」


「世界に名前なんてついていませんよ。貴方の世界もそうでしょう?」



 うん。そうだな。

 何となくこういうのって名前があるものだと思ってただけだ。



「まぁ、強いて言うなら【神盤】というのがそれに当たるでしょうか。貴方にとっての地球みたいなものですけどね。」



 名前からしてアレか。

 球体ではなく平面は地上的なやつか。


 それはテンション上がるな。



「なんでニヤニヤしてるんです?」


「男の子はそういうの好きなんです。」


「貴方、もう30ですよね?」



 男は永遠に男の子な部分を持っているものだ。



「今まで来た方もそうでしたね。…でしたらこれも嬉しいんじゃないですか?神盤には【魔法】や【スキル】というモノが存在していますよ。」


「はい。たまりませんね。」



 何から何までお約束だな。

 けど嬉しい事には変わりない。



「ちなみに、転移者や転生者には何らかの優遇措置が施されたりもしますか?」


「やっぱり知っているんですね…。はい、運命から外れてしまった救済措置としてプレゼントしています。」


「ご馳走様です。」



 その後女神は、救済措置とやらの説明をしてくれた。


 どうやら度重なる転移者達の希望を聞いている内に、神盤ではRPGの様なシステムが使える様になっているらしい。

 いわゆるステータス的なものだ。


 救済措置というのは、そのステータスにちょっとした恩恵が齎されるといったものだ。



「本来、スキルや魔法というのは日々の研鑽から得られるものですが、貴方方は20ポイントまで自由に割り振る事が出来ます。」



 スキルや魔法にはレベルがあり、10が最大値だそうだ。キャラクターレベルというものも存在するらしいが、これによって上がるのは能力値だけなので、スキルや魔法のレベルを自由に上げられるというのは凄い特典だという。


 1ポイントに着き1レベル上げられるそうだが、何に割り振るか迷うだろうな。



「あ、でもアレですよね。俺って転生なんですよね?赤ん坊のうちから色んなスキルやら魔法やらを持っていたら気持ち悪がられないですか?」


「いえ、貴方には新しい体を作ってもらいますので、赤子からスタートという事では無いですよ。」



 そう言って女神は、ゲームのキャラクター作成画面の様なものを出現させた。



「ご自由にいじって下さい。」


「…こういうの苦手なんでお任せします。」


「………。」



 女神が引いている。



「人間は自分の容姿を決めたがるものだと思っていましたが…」


「決められるものじゃ無いっていう前提でいましたので、急にやらされても荷が重いっていうだけです。」



 ゲームならサクッと決められるが、自分自身の容姿となると永遠に決められない気がする。



「では、生前のものをそのまま使うという事でよろしいですか?」


「はい。ただ可能なら若返らせてもらえると嬉しいです。」



 可能らしい。

 俺は18歳の肉体を手に入れた。

 早速肉体に入ってみる。


 精神的にはこの頃から何一つ成長していないと思うので、特に違和感は無い。



「本当にその姿でよろしいのですか?」


「ええ。元から完璧なイケメンなので問題無いです。」


「………。」



 軽い冗談のつもりだったのだが、黙られてしまうと不安になる。

 もしかして俺の容姿ってそこそこ残念なのか?



「で、では。ステータスをいじってみて下さい。」


「……はい。」



 若干落ち込みながらも、言われた通りステータス画面を開く。

 頭の中で「ステータス」と唱えるだけでいい様だ。



「……多いですね。」



 候補としてあげられているスキルや魔法は余りにも種類が多い。この手のゲームはやった事があったが、これ程多くは無かった。



「…ちなみにこれはお任せには?」


「出来ません。」



 左様ですか。



「もしお悩みでしたら、先に【神器】を決めてからでも構いませんよ?」


「神器?」



 聞き返した俺に、女神が意外そうな顔をする。



「てっきりこれも知っているものかと…。神器というのは転移者に贈られる特典の一つです。元の世界にあるモノの中から一つ、神盤に持ち込む事が出来ます。持ち込んだ物に私が力を与える事で、神器に成ります。」


「元の世界のモノなら、何でも良いんですか?」


「はい。神器になれば貴方の魂と結びつける事が出来ますので、出し入れ自由で便利ですよ。丈夫になって再生能力も付与されますので、壊れ物でも大丈夫です。」



 壊しても直るのか。

 それは良いな。



「本当に何でもですか?」


「う、疑いますね…。これは貴方の世界の宇宙神との取り決めですので、宇宙神が干渉出来る物なら何でも呼び出せます。今までの方は、刀や銃、愛犬や愛猫などを召喚していました。既に貴方には召喚権を渡してありますので、試しに喚んでみてはいかがですか?返品は効きませんが…。」



 武器などは、神器になった段階で強化されるそうだ。

 生物を呼び出した場合は、知性の無いものには知性が宿り、反抗的なものは主人を害さない様に制御出来るようになるらしい。


 そういう事ならやってみよう。

 出来なければ女神のおっぱいを揉んで憂さ晴らしだ。


 心で強くイメージをするだけで良いらしいが、言葉に出した方が念じやすいだろう。


 俺は強い想いを込めてその名を口にした。





「【地球神】」





 白い空間に亀裂が入り、亀裂の中からドス黒い光と共に()()が現れた。



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