第14話 王都ヴァリスと職探し -後編-
その男は、左目が閉じられていた。額から眉毛を通過して鼻の辺りの頬まで伸びたその傷跡で目が潰れていたのだ。帯刀してはいるが、体付きは左程逞しいとは感じない。どちらかと言うと男性にしては華奢な印象さえ受ける。
「にゃは! この猫の手商会のにゃかでも、1,2を争う腕前にゃ。こいつと模擬戦をやってもらうぞ」
「カムドだ。よろしく頼む」
「時宗といいます。よろしくお願いします」
カムドさんは、なんか凄く大人って感じがする。その落ち着いた物腰からそう感じるのかな。顔もなんか無表情の近いけど優しそうな印象を受ける。
自己紹介もそこそこに、ネフェルさんが場所を移動しようと言って僕らはネフェルさん達の後をついて歩いていく。すると、結構な広さの部屋に案内された。天井が高いな。ジャンプしても全然手が届かない高さだ。イリスを肩車しても全然届きそうにない。普通の大人でも全速力で走れるだけの広さはある。
「ここは、稽古場にゃ。うちに所属している者にゃら誰でも利用できる。ここで模擬戦をしてもらう。武器は脇に立てかけてある木刀、槍、こん棒にゃど全部木製でできているから好きに使うニャ」
見ると部屋の隅っこの壁に様々な武器が掛けられていた。全部木製って凄いな。誰が作ったんだろう。
カムドさんは当然、刀を選択した。僕ももちろん刀である。正直、刀以外上手く扱えない。
ネフェルさんが部屋の中央にお互い向き合って立つように指示をして僕はカムドさんと相対する。ちょっと緊張してきたな。
「でわ。お互い構えて始めるニャ!」
「トキムネ、手加減する必要はないからね」
ネフェルさんの合図とイリスの手加減無用との言葉を聞いて、僕は中段の構えをとる。カムドさんは、棒立ち? 構える素振りを見せない。
で、でも……隙がない。このカムドさんから漂ってくる強い気配に圧倒されそうになっている。見た目以上に存在感が大きく感じられる。
僕の額から汗が滲み出てくる。まだ構えただけなのに。
カムドさんは、じっと僕をみて動こうとしない。僕は動けない。どう攻撃しても一太刀でやられるイメージしか浮かばない。この人じいちゃんより強い。
「どうしたの? トキムネ遠慮なんか要らないわよ。やっちゃいなさい」
イリスは軽く言うけど、その一歩が踏み出せないんだよ。ヤラれるイメージしか沸いてこないんだから。――とはいえ、このままでは模擬戦どころではない。ここは玉砕覚悟で攻撃してみるか。レオンさんも戦いの時は一切の感情を捨てて望めと教えてくれた。これは実戦じゃない。模擬戦だ。なら、死ぬことはないし、無謀なぐらいに攻めていい。――い、いくぞ!
僕は、腰を少し落として重心を低く両足に力を入れて、抜刀の構えに移る。そして一呼吸してから、今出せる最高の速度で間合いを詰めて、カムドさんに切りかかる。さて、どこまで通じるかな。
僕の最高のスピードと力での斬撃をカムドさんは、足を一歩後退させただけで、避ける。しかも簡単に余裕たっぷりに視認した瞬間、右手に激痛が走り、僕の木刀が宙に舞い上がっていた。
「くっ!!」
そして、僕のすぐ目の前にカムドさんの木刀の切っ先が向けられていた。
勝負ありだった。ほんのわずかな時間で決着は着いた。
「うそ!? トキムネがあんなあっさり負けちゃった。ネフェル。あの人は何者よ。最近入った人なの?」
「うんにゃ。昔から私の護衛を専門にさせている。まぁ表舞台に出ることはニャかったからニャ。イリスも知らニャいだろ? あいつはめちゃくちゃ強いぞ」
たった一撃を繰り出すだけでこんなにも汗を掻くものなのか。この人は強い。刀を抜く前から相手に敗北を実感させてすでに勝負がついていた状態だった。後は、何をしても負けるだけ。実戦なら殺されるだけだ。
「太刀筋はなかなか良いよ。身体能力は問題ない。技が足りない。あと精神的な修行もやったほうが良いな」
「ふぅ、あ、ありがとうございます」
「よし! トキムニェ! お前は採用だ。そうだニャ~、三ヶ月ほど試用期間って事でいろいろ簡単ニャ仕事をこニャしてくれ、あと毎日ニ時間程はカムドに鍛えてもらおうか」
「いいニャ? カムド」
「了解した」
どうやら、雇ってくれるらしい。助かった。これで自分で生活できるようになるかな。
あとで聞いた話だけど、この模擬試験ではカムドさんかあと一人で試験を行うらしい。でも大半が攻撃できずに降参して不合格になるらしい。つまり、攻撃できてカムドさん等に一定の評価を言ってもらえれば合格なんだとか。
試用期間の三ヶ月は、訓練と仕事の両立で地味に忙しかった。訓練はカムドさんから剣術の戦い方から技術、足の運び方なんてものまで教えてもらっている。実戦ではまだ使っていなが、これがまた自分としては劇的に強くなれるんじゃないかってぐらい実感がわいている。
仕事は、街の住民からの依頼をこなす形で、買い物、家の掃除、畑仕事の手伝い、迷い猫の捜索、獣退治などなど実にいろいろな仕事をこなしている。
猫の手商会って主に貿易商で稼いでいるらしいが、街では何でも屋扱いみたいだった。
僕は猫の手商会が用意してくれた貸家を借りて生活している。ネフェルさんは何かと世話好きであった。
そして、試用期間の三ヶ月が過ぎていった。
「トキムニェ君、君には正式採用を記念してこれを贈呈しようじゃニャいか」
と、ネフェルさんは一振りの刀を僕にくれた。なんか凄く業物っぽい感じがするけどもらっちゃっていいのかな。
「ありがとうございます」
「いいよ、これから君にはある依頼を受けてもらうからニャ。さっそく初仕事だ」
僕は正式採用と同時に正式な初仕事を与えられた。それは、ある人間の捕縛であった。
えぇ、初仕事が捕縛ってハードル高くないですか? って伝えるとこれは街の住民達の切なる願いなんだとか、ここ二ヶ月の間で金貨だけ様々なところから盗まれていて結構な被害額になっているらしい。この仕事を成功させれば一気に街に僕の名が知れ渡るから王都デビューにはもってこいなんだそうだ。
それって失敗したらその反響もでかい様な気がしますけどね。
僕は、この初仕事で王都デビューを果す。なんか自分の目的を見失いそうな感じだけど、王都にしっかりと根を張るのは大切な事だってイリスに言われたからな。しばらくは猫の手商会でがんばるしかないのだ。
その後、僕はこの依頼をきっかけに王都である女性と出会う。その出会いこそが、僕とイリスの運命を大きく変えることになったんだ。
パイロット版である、この作品はここで終わりにさせていただきました。
結末だけ決めて書いてきましたが、初投稿としては妄想だけが爆発した設定多すぎの長編になってしまうので、
自分の手に余る作品になってしまいました。(青年期からではなく、成人後からスタートしたらまた違ったでしょうね。)
短編を書いてみて、もっとシンプルな物語がよいと作者自身思った次第です。
このパイロット版やいろいろ試しに書いてきた物を経て、今一つの作品を準備中です。
今後はその作品を投稿したいと思います。
このパイロット版の要素も使えそうなところはいろいろ出てくるかもしれません。
登場人物の名前は、どこかで聞いたような人が出てくるかもしれません。
最後に
いままで初心者のつたない文章を読んでくださった方々に感謝いたします。
ありがとうございました。
ご縁があれば、また私の作品を読みに来て頂きたいと思います。
では次回作での再会を願いまして終わりにします。




