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龍戦記 ~龍を従える者~  作者: 龍神静人
第2章 青年期 ―胎動編―
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第11話 約束

 時宗は、イリスに街をいろいろと案内をしてもらっていた。時宗の看病をしてくれた医療施設から始まり、軒を連ねる数々のお店を巡り、この国の主な交通手段である馬車や馬を貸し出す所を案内された。


 時宗からしてみたら、ちょっと期待はずれであった。もっと図書館とか教会、闘技場や時計塔など昔よく読んでいた本に登場していたようなものが沢山あると思って期待していたからである。


 この街自体が西方の国の窓口的な役割を担っているため、主に宿屋、旅に必要な物を売っているお店、飲食店、そして移動手段である馬車と馬を貸している国営の施設と限られた施設しかないのである。

 街道も部分ごとに石が敷き詰めらてはいるが、大部分は砂利道のままである。至る所に雑草も生えており、都と言うには少し無理があった。


「そういうの期待していたのなら、ココは向かないわね。旅支度に必要な物しかないわよ。残念でした」


 イリスは笑って、御伽噺とかの街が見たければ、王都に行けばいいと時宗に教えた。


(王都かぁ。王都って聞くだけでちょっと気軽に行こうって気にはなれないな)


 そう思いながら、時宗はイリスと並んで街を歩いていく。


 そして、現在、西日が眩しくて顔を下に向けている時宗がいる場所は関所である。2階建てのレンガ作りの建物であり、その中で出入国の審査が行われている。建物の入り口には二人の警備兵がおり、中には事務員らしき人でいっぱいであった。あちらこちらに警備兵も立っていた。


 警備兵は、腰に帯剣している者と魔法使いらしき格好をしている者と大きく二通りに分けられていた。


 関所といっても王都への案内所も兼ねており、入国してきた者達にいろいろ説明している人達が多く見られる。


 この関所で申請して許可証を貰わないと、国を降りる事(出国)はできないのだ。これは下の大地には、魔獣などが蔓延(はびこ)る危険な場所とされており、生きるには危険な環境なのである。特に武芸に秀でていない者は、魔獣と遭遇した時点で人生の終わりを迎える。


 そのため、一般人が出国する際は、必ず傭兵を二人以上同行させないと許可が下りないのである。


「で、そちらの男性とまた、下に降りたいという事ですね」

「えぇ、そうよ。彼が回復したから下にいる人に会って報告したいのよ」

「下に行く目的は前回と同じ依頼された狩りですか?」

「そうね。まだ依頼を達成していないのよ。で、彼は手伝ってもらっているの」

「わかりました。ではこちらの書類にサインをお願いします。アイリスさんは問題なのですが、彼は異国の人間なので、決まりに従い、許可証はすぐには出せません。明日もう一度来てください」


 関所の人間がイリスとやり取りしている。この担当している者はイリスが怪我人として時宗を運んできた時にも担当した者だった。


「あ、あとこれから、この前できなかったので、彼の似顔絵と指紋を取らせてもらいます。お時間を頂いてもよいですか?」

「ええ、もちろん」


 アイリスが話を終え、時宗の方へ歩いてくる。


「明日には行けるわ。すぐに行けないのが本当に面倒ね」

「いや、ありがとう。でも、許可云々と言っている割には、僕の身元とか確認してないけど、いいのかな」

「これから、確認するのよ。あんたの似顔絵と指紋を記録するわ。あと簡単な質疑応答ね。来るときは緊急事態だって言って、あたしがごり押しで、入国したからね」

「そ、そうだったんだ。なんか迷惑かけたね」

「構わないわよ。でね、トキムネは、あたしの古い友人って事にしてあるの。あたしこれでも国内では少し有名だから、そう言うとある程度の信用を得られるのよ」

「案内してくれてた時もそうだったけど、いろんな人に声を掛けられていたね。イリスってこの国ではどんな立場なの?」


 ふふ、とイリスは笑う。


「気になる? でも、まだ秘密。とりあえず、宿に戻りましょう。今日は歩いたし、お腹も減ったわ」

「え、秘密? なんで? 教えてくれてもいいと思うけど」

「まだ、教えな~い。あはは」


 イリスはチロッと舌を出して笑う。


 時宗は、何がそんなに面白いのかと思いつつも、言われるまま関所に入り、担当官と応接室に入った。似顔絵を描かれ、指紋を摂られ、質疑応答に対応する。嘘は苦手である時宗は、自分の種族だけは伏せてあとは、正直に答えても問題にならないだろうと考えた。


 質問は簡単なものばかりであった。どこの国から来たのか。目的は何か。年齢は。職業は。時宗が一番困ったのは、職業は何か聞かれた時であった。


 一様、まだ職には就いておらず、旅をしていろいろな地を巡っていると答えた。担当官も年齢から考えて、職についてないのは珍しくないと思い、そのまま質問を続けた。


 親は?家族構成は?と聞かれて、そこは竜だけ伏せて、盗賊に集落が襲われ自分以外は殺されてしまったと話したら、担当官の時宗を見る目が変わり、同情されているとすぐに時宗は気がついた。担当官にも時宗と同年代の息子がいるため、重ねてしまったのだ。


 そして、身の上話が終わると、担当官はもう大丈夫だと言って、退出して良いと言った。時宗は言われるがまま退出しようとしたとき、ふいに担当官に声を掛けられる。


「何か生活に困るようなことがあれば、私のところに来るといい。王都にはそういった子供達の施設もある。私が紹介しよう」

「あ、ありがとうございます」


 時宗は、担当官に軽く頭を下げて退室した。


「あれ、結構早く終わったわね。大丈夫だった?」

「ああ、問題なかったよ。なんか身の上話したら同情されたけどね」

「あら、そうなの。どんな身の上話?」

「後で、ゆっくり話すよ」

(そういえば、イリスには自分の身の上話は伝えてなかったな)


 時宗は、宿に戻ったらちゃんと話そうと思い、イリスと二人で宿屋に向かう。


 □□


 そして、そんな時間もかからずに、目的の宿屋に到着した。


「以外と近かったんだ」

「関所の近くって言うのは何かと便利だからね。すみませ~ん。お世話になっているアイリスですけど~」


 イリスは、到着するなりカウンターに向かい、宿屋の人を呼びに行った。


 部屋はそれぞれ別の部屋で、イリスはもうすでにココで2日間、寝泊りしていた。


「時宗はこっちの部屋ね。なかなか落ち着けて良い部屋よ」

「へぇ、なかなか広いね」


 時宗は自分の部屋に入るなり、その広さに目を見張る。とはいえ、街の人からしてみれば、普通の広さの部屋なのだが、初めて泊まる時宗は何もかもが新鮮であった。


「少し休んだら、夕食にしましょ。ここの近くに美味しいお店があるの」

「分かった」


 □


 この後、イリスと食事をしたのだが、出てくる料理がこれまた美味しくて、時宗は舌鼓しながら、出された料理をぺろりと平らげたのであった。


(はぁ、あんな柔らかい肉を食べたのは初めてだったなぁ。野菜といい、フルーツといい最高だ。自分が作ってきた料理が味気なくなりそうで怖い……)


 時宗はすでに、この国の料理が病みつきになりそうであった。しかし、宿代も食事代もすべてイリスが支払っている事を思い出す。


(はぁ、お金かぁ。何か稼ぐ方法を見つけて、イリスに返さないとなぁ)


 時宗はお金をどうやったら稼げるか、イリスに聞こうと思いながら寝床に入る。


(あ、イリスに自分の事を話してないや……ま、聞かれなかったし、いいか)


 そんな事を思い出し、時宗は深い眠りについた。



□□□□□□



 翌日、許可証も発行されて何事もなく、国の外へと降りられた。降りた先で許可証を見せて関所を通る。下の関所は、簡易な作りの小屋が建てられており、警備兵が5人と担当事務官が二人と実にシンプルであった。上と下とではかなりの差があった。朝から下の関所には入国希望者達で、すでに行列ができている。


 時宗が驚いたのは、国へ登り降りするのに、ゴンドラ等の乗り物を使うのではなく、転移魔法を使っていた事だった。ココに来る前に、上の関所内で許可を得た者達から5人づつ常に光を灯している魔法陣に乗り、魔法使いらしき人がなにやら呟くと、5人が光に包まれた後、姿が消えていく様子を見ていた。


 自分の前の人たちが転移魔法で消えていくのを見て、本当に下に転移させているのか不安であったし、身体が消えるのでそのまま消えて無くなってしまうんじゃないかと戦々恐々であった。


 無事にイリスと共に下に着いた時には、時宗は少し汗を垂らし、大きく息を吐いて安堵していた。それをみてイリスが面白そうに笑っていたのであった。


「じゃあ、行きましょう。ガゼル達を安心させてあげなきゃ!」


 そう言ってイリスは、時宗を先導してガゼル達のアジトへと向かう。


「なんか、関所の周りには結構な人が集まってくるんだね」

「まあね。入国希望者は毎日くるわ。目的は人の数だけって感じね。でも中には潜入しようとする他国のスパイや国外追放された罪人もまぎれて来るから、下での審査は特に厳しいわ」

「へぇ」


 時宗は歩きながら、すれ違う人々を見ていた。


(本当にいろんな格好の人がいるんだなぁ。あ、あれって同郷の人っぽいな)


 などと思いながら、歩いていく。


 □□


 2時間程歩いて(ようや)くガゼル達のアジトに到着した。アジトに入り、ガゼル達と再会をする。


「時宗!! よかったな。心配してたんだぜ」


 ガゼルが抱きついてきた。本当に安心したような表情をしている。


「はい。なんとか無事みたいです。心配をかけました」

「無事で何よりです。時宗。貴方はかなりの重傷を負っていましたから」

「目が覚めないときは、あの魔族の呪いなんじゃないかと思った。・・」


 そう言いながらスレインが近寄ってきた。ジルも一緒である。どうやら、ジルは、なかなか目覚めない時宗が魔族の呪いにかかっているのではないかと心配していたのだ。


 数日ぶりの再会であった。

 その後、5人で一緒に昼食を食べてから、以前作戦会議で使った部屋に集まり、今回の戦いの顛末を聞いた。そして、話が一段落した後。



「それで、お前の身体について教えてくれ。あの戦いの最中、短い時間で傷口が完全に塞がっていたり、常人では致命傷になる攻撃を喰らっても耐えていた。なんでだ?」


 ガゼルが今回の本題であろう事を切り出した。


「あたしも気になっちゃうわ。急に強くなったり、そもそもトキムネって何者なのよ?」


(皆が僕に注目している。なんだかそんなに注目されると、打ち明けた後の反応が怖くて言いづらいなぁ)


「あ、あの。え~とですね。僕は東方の国のさらに東の果ての集落で生まれたんですけど」


(じいちゃんからは決して他人に言うなって言われていたけど、ここまで世話になった人に言わないのは失礼だし。ごめんよ。じいちゃん)


 時宗は恐る恐る自分の種族を口にする。


「その集落っていうのが、龍人族って種族の集落なんです。――僕は龍人族です」


 時宗は口にした後、下を向いて顔を上げられない。西方の国では邪悪で恐ろしい怪物とされている竜の血を引く人間が目の前にいる。


 この事でどんな反応をされるのか不安で皆の表情を見ることができないでいた。警戒されて武器を取るかもしれない。そこまで想像する時宗であったが、皆の反応はその真逆であった。


「りゅ・・龍人族って!? あの東方の国の伝承にある、伝説の種族ですか!?」


 真っ先に口を開いたのは、ジルである。さすが知識欲が強いだけあり、ジルは龍人族についての伝承を読んだことがあったのである。


「え!? なに? その龍人族って。あたしは聞いたことがないわよ」

「俺も聞いた事はある」

「私もその言葉だけは知っていますね。詳しくは知りませんが」


 時宗は皆の反応を見て、つい聞いてしまう。


「龍の血を引く人間だけど、恐れたりしないんですか?」

「うん? お前を恐れるワケがないだろ。一緒に戦った戦友だぜ。今更恐れるかよ」

「ええ、龍人族という種族がどういった存在かは知りませんが、あなたは無害でしょ」


 とガゼルとスレインが時宗の言葉を否定する。


「そうよ。そんな事を気にしていたの? 安心しなさいよ。同じ人間種でしょ。あたし達はそんな種族だけで差別したりしないわよ」


 イリスも気にしていない。


「あ、ありがとう」


 時宗は変わらず接してくれる皆に感謝しつつ、若干一名の熱いまなざしを感じていた。ジルである。ジルは龍人族と聞いた時から時宗を見つめ、何かいろいろ聞きたそうな様子でソワソワしていた。


「イリスには昨日話すって言って話せていないんだけど、僕にはある目的があって。僕は黒い竜を探しているんです。それには理由があって、――――」


 と、時宗は自分が幼い頃に集落を黒い竜によって焼き払われて自分とじいちゃん以外殺されてしまった事、その襲撃の中、父と母が自分を命がけで守って、死んでしまった事。それで黒い竜を探し出して討伐したい、仇を討ちたいという思いを伝えた。すると、ジルが何か知っているような表情をして言う。


「なるほど・・・・黒いドラゴンか・・・。私が知っている限りでは黒いドラゴンといえば1匹しか知らないな。王都周辺にたびたび出現すると聞いたことがあるな」


「えっ!? ジルさん、黒いドラゴンの事を知っているんですか?」

「あぁ、人伝てで、聞いたことがあるってだけだがな」

「お、教えてください。どんな情報でも知りたいです」


 時宗は、その後ジルから黒い竜の話を聞いた。


 なんでも、数十年前からたびたび王都の上空を黒いドラゴンが飛行しているのを多数の人間が目撃しているのだとか。頻繁ではないが、多いときは月に2,3回の目撃証言があるという。その存在だけは間違いないだろうと言われている。


 ただ、国内で被害にあったという話が出てこないので放置されているのだとか、黒いドラゴンが街の周辺に生息しているのなら、被害が出てもおかしくないのだが、一件も被害がないとなると、それはそれで不自然な事であった。


「・・・・私は逆に被害が出ていない状況をみると、何者かの支配下に置かれているのでは? と疑いたくもなるのだがね」

「王都か・・・王都に行けば何か手がかりが得られるかもしれないな」


 時宗がそう言うと、ガゼルが忠告する。


「王都に行くのは勧められない。龍人族って聞いちまったしな」

「どうして?」


 そう聞くとイリスが説明し始めた。


 王都はね、エルフ族とドラゴンに関しては、特に敵対者として厳しく対処するの。エルフに関しては、もう何百年も昔の戦争以降、対立しているの。だから西方の国に捕まったエルフは奴隷扱いか人身売買で売られているわ。最悪、処刑もありうるわ。


 ドラゴンに関してはね、当然、怪物として狩るべき相手なのだけど、それだけじゃなくて、現国王のご子息がドラゴンに食い殺されて以来、最重要討伐対象になっているのよね。賞金も付けられていて、腕に自信がある者はそれで稼いでいるって話しよ。


 実際食い殺したドラゴンだけではなくて、全てのドラゴンを狩り尽くすって宣言しているわ。特にトキムネは龍人族。王都で種族がバレたら、どんな目に遭うか想像したくないわね。


 イリスは終始、不愉快そうな表情で話した。


「最重要討伐対象……でも、行くよ。黙ってればバレないと思うし。せっかく手がかりがありそうだから」

「いいわ。あたしも一緒に行くわ。どうせ王都に帰らないといけないし、それが早くなるだけだからね」

「お、おい。それはどうなんだ? アイリス。 お前はもっとゆっくりしていってもいいんだぞ」

「何よ。トキムネ一人で王都に行かせる気? 父さんはそんなに冷たい人なの」

「い、いや、時宗は心配だがな。お前が一緒に行く必要はないだろ? 俺だっているし、ジルもスレインもいるじゃないか」

「なによ、あなた達は国を追放されたお尋ね者でしょ。王都云々より、入国できないわよ!」

「・・・いや、父さんはな。お前も心配なんだよ。わかるだろ」

「あたし、王都に住んでいるのよ。どうせ帰るんだもの、時宗と一緒の方がいいじゃない。なんか文句あるの?」

「いや、だからな、お前。わかるだろ? 俺の気持ちってもんが」


 スレインとジルは面白そうに困っているガゼルを見ている。時宗も直接ガゼルから釘を刺された身としてはガゼルが何を心配しているかは分かっていた。


「うるさいな! もう決めたの。父さんがなんと言ってもあたしも王都に一緒に帰るわ」


 イリスは、これ以上つべこべ言うなっという意味を込めて、強く睨む。


「うっ・・・・くそ。俺の気持ちも少しは考えろ・・・」


 ガゼルは小声で文句をいって、引き下がった。


(確かに、ガゼルさんより、イリスの方が強いや)


 時宗はそう思い、少しガゼルがかわいそうに思えた。が、ガゼルが時宗を睨んでいる。顔を小さく上の方向へ動かして、無言で後で話しがあると伝えてくる。


(・・・なんか嫌だな)


 時宗はこの後ガゼルに口うるさく言われるんだろうなっと思いながら、話は終わった。時宗とイリスは、明日には国に戻って準備をする事となった。



 □□□



 その日の夜。ガゼルの部屋で、時宗はガゼルと向かい合って見つめ合っていた。


「時宗よ。もう、ごちゃごちゃ言わねぇ。俺の言いたい事は分かるよな?」

「はい。娘さんには手を出しません! 当たり前じゃないですか。僕はそんな男ではないですよ」

「お、おう。分かっているならいいんだ。だがな、そ、その、それだけじゃなくてよ…」

「はい?」

「アイリスはな、その。俺の実の娘じゃないんだ。……その両親は他にいてな」

「え!?」

(いきなり何を言っているのか?)


「まあ、アイリスが小さい頃に両親も亡くなっているんだがよ。その……王都での立場がな。いろいろあるんだ。詳しい事は言えないが、俺は王都で生活しているあいつが心配でよ」

「・・・・」

「その、もしアイリスに何かあったら、お前がそばに居てやって欲しいんだ。守ってやって欲しい」

「ど、どういう事ですか?」

「いや、お前には頼み事ばかりして申し訳ないが、ワケは話せない。だが、今ここで約束してくれないか? もし、王都であいつの身に何かあった時、見捨てないでやってくれ。そのだな……そばに居て守ってやってほしい。お願いだ。見捨てることだけはしないでくれ」

「・・・・何かワケがあるんですね」

「・・・・・」


 ガゼルは答えない。時宗は少しの間考えてから、言う。


「分かりました。そばに居て守ります。見縊(みくび)らないで下さい。少なくとも見捨てるなんてする訳ないじゃないですか。僕の命の恩人でもあるんですよ」

「・・・」

「あの戦いで、彼女に何度救われたことか。約束します。非力かもしれませんが、どんな事をしてでも守りきって見せます」

「・・・すまねぇーな。本当に感謝してるぜ」

「あと、これをもって行ってくれ。何かあった時、その地図の印の場所に行って、頼るといい。必ず味方になってくれる奴がいる」

「わかりました」


 時宗はガゼルから地図を受け取る。


「あ、あと、あいつにはこの話は言うなよ」

「分かってますよ」

「よし」


 ガゼルは一安心したように頷く。


 (ようや)く、娘を任せられる奴が見つかったのだ。これで一人で王都に行かせていた頃よりは安心できるとガゼル肩を撫で下ろした。


 また、時宗もワケは気になるが、ガゼルがここまで心配しているのだから、もしかしたら、王都で何か起るかもしれないと一人、気を引き締めるのであった。



 

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