名も無き時代の幼き魔女
超短編でございます。独自の感覚で事象を読み解いて書いたものなので不快に感じられたとしてもご容赦下さい。
初執筆なのでお手柔らかに笑
私がこれから死ぬ理由。夢でパパとママがよくお話してくれたすごーく優しい私達を救ってくれる神様に会えたから。それを友達のマヤに話してたのをお役人さんの制服を着た大人に聞かれたから。それだけですぐに知らないスーツや鎧を着た険しい顔をしたおじさん達が沢山やって来て、痛い事いっぱいされて、魔女だな!?と問い詰められて、魔女ですと無理矢理に言わされた。そしたらおじさん達は喜んで、私は捕まって、ぐるぐる巻きにされて、みんなから石を投げられ、磔にされ、もうすぐ殺される。
周りには見知った顔。パン屋のおじさんが沈鬱そうな顔でこちらを見ている。マヤとマヤのパパがこちらを気にしながらも目を上げられずにいる。そんな中、特に真っ青な顔のパパとママ。私のせいで家もお金も没収され、ボロボロの服を着ながら、神ディアンヌ様の描かれた十字架のペンダントを握っている。ふふっ。そんな顔してると私じゃなくてパパとママが虐められて死んじゃうみたいだよ?せっかく夢の中でディアンヌ様に会えて、私やパパ、ママを助けてくれる、幸せにしてくれるって言ってくれたのに。なぜか笑いが込み上げてきた。おそらくこの場において最も状況を把握していないのが彼女自身だろう。だってなんでこんなに虐められるのか全く分からないんだもん。みんながかかっている怖い病気は私のせい?みんなが苦しんでいる戦争は私のせいで終わらない?そんなの知らない!そんなの国のえらーい髭の長いおじさんがやってるって私、知ってるもん!そんな叫びが心の中をこだまする。いや、喉元をあがり、口から出て来ようとする。なのに、出ない。周りの知らない人々の理由の分からない怒りと冷笑の目。それを見ると声が震えて、震えて、震えて、出ない。代わりに出てくるのは涙だけ。
足元に鎧を着た人がゆっくりと何かを持ちながら近付いてくる。松明だ。その人が離れた後に赤やオレンジ色の光がチカチカと点滅し、どんどん大きくなってきているのが見えた。昇ってくる煙で段々と呼吸が苦しくなる。何も見えなくなってくる。・・・・・五感が何も感じられなくなってくる。
わたしが今苦しいのは何で?なんで?ナンデ?何で?なんで?ナンデ?ナンデ?ナンデ?ナンデ?ナンデ?ナンデ?ナニガワルイノ?ワタシガワルイノ?ワタシガナニヲシタッテイウノ?
意識が落ちるほんの1歩手前、最後に振り絞った力で声が出る。
「アアアアアアアアアァァァァァァアアアアッッッッ!!」
コレが本当に自分の声なのかと疑いたくなってしまうような絶叫。それさえも段々と霞んで出なくなり、代わりに血を溢れるように吐き、どちらが上なのか、前なのか、目の前にいる人々が誰なのかも分からなくなって。そして、、、、、ついに意識が途絶えた。
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「・・・・・はあ。」
今日の分の魔女狩りを終え、残骸の処理をしていた兵が溜息をつき、その場に尻をつき、夕日に向かってたそがれ始めた。最期に聞いた断末魔が脳裏に蘇る。今日の少女はどのような難癖で殺されたのだろうか?金か?異端か?権力か?それとも、、、見せしめか?答えのない問いに思いを巡らせる。こんなことをしても何も変わらないことはお上の方々様も本当は分かっているだろうに。市民のやつらだってこれが意味がないこと、あの子が魔女じゃないことなんかとっくに分かっているだろうに。俺は所詮、一介の国にお仕えするだけの兵士だ。特に力があったり、偉かったりするわけでもなければ、正義感がめちゃくちゃに強い訳でも無い。それでも、戦うのが仕事の敵国の兵士以外が死ぬのを見るのは気分がいいことではない。ないほうがいいに決まっている。このくらいの事は俺でもそうであれと祈ってる。きっと狂人以外誰だって祈ってる。それでも注目を集めないように、殺されないようにという恐怖でこの誰もが思う願いさえ声に出せないのが今の世の中なのだろうか?
「・・・・・はぁっ!」
やるせなさそうにもう一度溜息をつきながら勢いをつけて立ち上がった。そして、何か諦めを帯びたような目で地平線を見やりながら、
「本当に神がいるなら今のこの有様の世界をお作りなさったことを恨ませてもらうよ」
憎しみとも、嘆きとも取れない呟きを残しながら、シャベルを地面に突き刺した。
北風が通り抜け、そこにずっと残っていたなにか陰惨な熱とにおいと空気を運んでいく。明日も何食わぬ顔で地獄を繰り返すための準備を進めているかのように。
テーマは魔女狩りです。魔女狩りの原因と考えられているさまざまな説の要素を色々な所にばら撒いて執筆しておりますので、もし、信用していない説のネタがあってもご理解を。
次はもう少し気軽な作品に挑戦したいと思っている若輩の作者でございます笑
二度目になりますが、批判、助言、感想お待ちしております。