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【後日談】荒野の薔薇 ①

後日談になります。ネタバレがありますので本編未読の方はご注意下さい。

 


 ──その日、目を覚ますと、私、一之瀬 璃心(りこ)は何故か一人でその部屋に居た。



 今ではもう慣れ親しんだ『灯亭』の一室。質素ながら過ごし易いそのお部屋で、相変わらず寝坊すけな私はゆったりと惰眠を貪り、太陽が昇って久しいと思われる時刻に目を覚ましたのだけれど……。

 先日、一つの依頼をこなし、このデュレクの首都に帰って来た私達は、束の間の休息を取る事に決めた筈だ。

 この世界で生きると決めてから、もうかれこれ三ヶ月程が経つだろうか。

 街の人気者のレオンとフォレスが度々宿泊し、おまけに先日の『女神祭』で今年の女神に決定したティナちゃんも度々顔を出すとあって、今やこの『灯亭』は人気のお宿になっているらしく、


「……申し訳ございません、突然、団体のお客様がいらして、三人部屋のご用意しか出来ないのです……」


 ……と、看板娘のジーナちゃんが申し訳なさそうに告げたのは昨夜のこと。

 いつもは二部屋をお借りして、レオンと私が一室だったり、男の子たちと私に別れて泊まったりという風に使わせて頂いていたのだけれど、勿論三人部屋だって何の不都合もない。

 私とレオンは……その、恋人、という関係ではあるけれど、仕事中はパーティー仲間として過ごそうと決めているし、仲間のフォレスとだって良好な関係を築いているという自負もある。

 冒険が終わった後の休息期間は……だからその……甘ったレオン君がいつもより色濃く登場するせいで、中々私を放してくれなかったりする事もあるんだけどね。

 ちょっと恥ずかしいけど、それは私にとってとても幸せな時間で、思いっ切りレオンを堪能させてもらっている。

 ……グフフ、そんな時のレオンを思い出すだけで思い出し鼻血が出そうだよ。


 だけど昨日は、泣きそうな程申し訳ながっているジーナちゃんに、レオンは「三人部屋でも問題ないよ。混んでいるのに部屋を確保してくれて有り難う」と、その麗しの微笑みを寄越し、ジーナちゃんを赤面させていた筈だ。

 そしてその後、私は旅の疲れもあって、先にお風呂を使わせて貰った後にすぐ寝入ってしまったのだけれど……。



「……レオン? フォレス……?」



 三人でいる時はそうでもないけど、一人でいるとやたらと広く感じるそのお部屋。

 ……考えてみると、私、この世界に来てからずっとレオンやフォレスと一緒に居た気がする。

 その他にも、私の周りにはティナちゃんやサラちゃんといったお友達もいるし、レオンのご家族も優しくして下さる。南に行けば可愛い瑠璃がいてくれる。

 何処に行っても歓迎してくれる、優しいデュレクの人々。

 冒険者という仕事がら、楽しい事ばかりじゃないけれど……魔物とは言え、命を奪う事の申し訳なさや、時には魔物に襲われて命を落とした動物や……人々に出会う事もあって。

 育った世界では、そういった命の遣り取りに触れる事は少なかったから、そんな光景に触れる度に私は少なからずショックを受けて……でも、決して人前では泣いてはいけないと、一人になって泣く事もあった。

 でも、そんな時は必ずと言って良い程、レオンが誰よりも早く気付いて側にいてくれた。


「ボクの前では無理しないで。本当は君にこんな想いをさせたくはないんだけど……それでも手放せないボクを許して欲しい」


 そんな言葉を優しく囁いて、抱き締めてくれる、私の恋人。

 レオンだって辛い筈なのにね。

 だけど、私が泣くとレオンもとても寂しそうな瞳をするから……私ももっと強くならなきゃ、と、人知れず修行をしている最中だ。


 そんな私だから、この世界で一人になる事はあまりない。

 優しい人達と恋人に囲まれて、一人部屋で寝ている時だって、朝起きたら何故だかレオンがベッドに潜り込んでいたりするくらい、一人にさせないように、と気を遣ってくれている。


 だけど、いざ、こうして一人になってみると……何て心元ないんだろう。

 自分という存在のちっぽけさに、思わず身震いする。

 ここがもし、デュレクじゃなければ。あの時レオンと出会わなければ。

 異世界トリップなんていう信じられないような経験をした私(それも二度もだ!)だからこそ、突然一人で全く知らない場所に放り出される恐怖、という物をつい考えてしまう。


「……何処行ったんだろ……?」


 呟いて部屋の中を見渡してみると、何故だか彼らの荷物もなくなっているようだ。

 そして……ベットサイドに置かれた机の上には一枚の紙切れ。

 何かが書かれている様子のその紙を手に取ってみると、そこにはレオンの字でこう書いてあった。



『急な依頼でフォレスと出掛ける事になった。ゴメンね、リコ。心配しないで待っていて』



 相当焦って書いたのか、いつもより少し乱雑に感じるレオンの字。

 そこに書かれている内容に、私は何だか嫌な胸騒ぎを感じてしまう。

 だって、今までこんな事なかったのだ。

 どんな依頼にも動じる事なく、華麗な手腕で問題を解決するデュレクの英雄(ヒーロー)

 私も少なからずそのお手伝いをさせて貰っているけど、とにかく、『仕事』中のレオンはいつでも沈着冷静だし、フォレスだっていつもの笑い上戸は出したことがないし、私に何の説明もないまま……そして私を置いて出掛けるなんて、俄かには信じ難かった。


「……仕事の依頼ならきっと、ヘクターさんかサラちゃんの耳には入ってるよね。とにかく行ってみよう」


 そう呟いて、私は手早く身支度を整えて『灯亭』を出た。

 突然置いていかれた事に一抹の寂しさはあったけど……それよりももっと、胸騒ぎがして仕方がなかったんだ。

 きっと危険な任務だからと心配して私を残して出掛ける事にしたんだと思う。

 ……相談してくれなかったのはちょっと口惜しいけど。それはレオンに会ったら思いっ切り甘えさせて貰う事で補完するとしよう、そうしよう!



 ------------------



「たぁのもぉぉーーーー!!!!」



 道場破りよろしく私が何度かお邪魔したことのあるヘクターさんとサラちゃんのお宅に突入すると、サラちゃんは何やらお庭で畑仕事をしている最中のようだった。

 ……美少女にほっかむりは似合わないから止めた方が良いよ、と何度か進言はしたのだけれど……。

 彼女曰く、そのスタイルが一番作業がし易いらしい。

 全く、それでも眩しい程に可愛らしいなんて、美少女って本当にケシカラン存在だよねっ!


「あ、リコちゃん。いらっしゃーい!」


 サラちゃんがニコニコと笑いながら手を振る側から、ニュッと小型サイズの地蟲(ワーム)さんが顔を出す。

 サラちゃんの相棒のロンディアヌスさんは、太古から生存する数少ない魔蟲でサラちゃんとは魂の契約を結んでいるという説明は聞いたことがあるけど……正直、その威容は今でもちょっぴりビクついてしまう。

 初めて会った時はただただ怖かっただけだけど、話をすると案外気さくな存在だという事も解ったし、最近は身体のサイズを調節する事が出来るようになったらしい。

 それに、私の魔法適性にも興味を持ってくれていて、未だ魔法について理解度の低い私に色々教えてくれたり、特訓に付き合ってくれる有り難い存在になっている。

 ……その『特訓』は、半分以上が魔法大好きっ子のサラちゃんの趣味に付き合ってのもの、なんだけどね……。

 そして、地中から現れた、という事は、またサラちゃんに付き合って地中の作物のお世話をさせられていたんだろうな……。

 その威容はサラちゃんには関係がないと見え、ロンさん(本名は長いので最近は私もこう呼んでいる)はその趣味の家庭菜園でも大活躍しているらしい。

 そのお陰でサラちゃんの畑の作物はとても甘くて美味しいと評判なのだけど……実際はすごく残念な力の使われ方をしているロンさんの力も大きいという事を、私は知っている。



「サラちゃぁぁ~~ん!! レオンとフォレスの行き先知らない!?」



 見た目こそ中学生くらいの美少女だけど、その実体は私やレオンは愚か、旦那様であるヘクターさんの何倍も生きているという風の民(シルフ)のサラちゃん。

 今では友達であると共に、私のお姉ちゃんめいた存在なんだ。

 魔法の特訓の時はたまにタガが外れて私をいたぶることのあるサラちゃんだけど……普段はとても面倒見が良くて優しい人だしね。私もとても頼りにしてしまっている。


「レオン君とフォレス君? 二人なら昨日の深夜にウチに来て、何だかヘクとお話が盛り上がっていたみたいだよ。深刻な様子はなかったけど、どうかしたの?」


 キョトンした表情で私を見つめるサラちゃんに、私は涙を我慢することが出来ずに抱き付いた。

 ……だって、突然一人にされてしまって、とても不安だったんだもん!


「……朝起きたら、レオンがこんな書き置きを残して何処かに行っちゃったんだよぉ~!」


 レオンのメモを渡し、縋りついて号泣する私の頭をポンポンと優しく撫でながら、サラちゃんはそのメモをチラリと一瞥する。


「……馬鹿じゃないの、あの若造……。こんなメモ一つで取り残されたら、リコちゃんが不安になるに決まってるのにねぇ……ロンちゃん!」


 縋り付いていたから私には見えなかったけど、サラちゃんが厳しい視線をロンさんに送ると、黙って頷いたロンさんはそのまま地中に消えて行った。


「……よしよし。今、ロンちゃんが行方を追ってるから……。実はね、ヘクも朝から突然休暇を取って、サラにも内緒で何処かに出掛けたんだ。

 今までそんな事なかったし、風の子達からは特に事件の報告は受けてなかったからサラも見逃してあげてたんだけど……リコちゃんを泣かせるなんて許せないよねぇ?」


 何処か不穏な雰囲気を乗せたサラちゃんの声にビクッとして、私が顔を上げると……

 ……そこには限りなく黒い微笑みを称えた美少女が佇んでいた……相変わらず、頭はほっかむりに覆われていて、その緊張感は台無しだったけど。



『サラ。西の方角からヤツらの気配がするぞ。

 ……念の為に教えておくが、今の時期、西では年に一度の武闘大会が開催されるようだぞ。お前の伴侶もいなくなったのであれば、もしや……』



 時間にしたら三十秒くらいかな……。さすが伝説の魔蟲・ロンさん! あっと言う間に私の欲しかった答えをくれる。


「……なるほどねぇ。ホントに男の子って、幾つになってもそう言うの好きだよね! けど、サラにも黙って行くなんて許せないなぁ……」


 呟くサラちゃんの背後から、ゴゴゴゴ……という擬音と共に黒い風が顕現するようだ。

 ……サラちゃん、闇属性は持っていなかった筈なのに、可笑しいなぁ……?



「リコちゃん! こうしちゃいられないよ! サラと一緒に西に行こう!」



 突然、ガクガクと揺さぶられたので、私は思わずぐぇっという声を漏らしてしまう。その勢いは、あわや脳震盪手前、と言った態だったんだもん!

 ……サラちゃんや、気持ちは解るけど、か弱い人間に対してはもう少し手加減をして頂けるとリコさんはとても嬉しいです……。


 だけど、私の返答を待つ前にサラちゃんは私から手を離して「準備するから二時間後に西門に集合ね! 今回はレオン君がいないんだから、リコちゃんはそのままクラックのお店で準備をして来て!」と、ビシッと指を突き付けて慌てた様子で私に指示を与え、家の中に入ってしまう。

 後に残された私は、強い力で揺さぶられた後遺症もあってしばらくボーッとしていたのだけれど……



『人間よ、猶予は二時間だそうだ。言っておくが、サラは時間には煩いぞ。早く準備をした方が良い。ああなったサラは我にも止められぬからな。

 ……何ならホワイトスノウ服飾店まで、我が送ってやるがどうする?』



 そんな頼もしいお言葉に我に返った私は、コクコクとただ頷く事しか出来なかった。

 ……その激しい頷きにさっきの衝撃が蘇り、再びぐぇっという声が出てしまったのだけれど……優しいロンさんは聞こえなかったフリをしてくれたのだった。

 ……うう、気を遣わせてしまってごめんなさいィィーー!!



 ------------------



「クラックさぁぁーーん!! 至急しきゅううーー!!」



 昼時の店内とはとても込み合っていたけれど、本当に申し訳ない、と思いながらも私はそんな事を叫びながら店内に飛び込んだ。

 ……あ、ここまで送ってくれたロンさんにはちゃんと御礼を言ったよ?

 けど、ロンさんは『サラの願いは全て聞くのが我の仕事だ』とニヒルに言い捨てて地中に帰って行った。

 ……こんなにサラちゃんが大好きな人がすぐ側にいて、サラちゃんを溺愛しているヘクターさんは大変だなぁ……と思っていた私が、それをやんわりと聞いた事があるのだけれど……


「あー、ロンちゃんは(メス)だからヘクの嫉妬は有り得ないかなー」


 ……と、サラちゃんにカラカラ笑われてしまったことがある。

 そして、相手の性別に関わらず嫉妬心を剥き出しにするのはサラちゃんの周囲でもレオンくらいだと言われ、


「リコちゃんも大変だねー。ま、頑張んな?」


 そう軽く流されたのは良い思い出だ。

 ……うん、レオンの嫉妬深さは恋人になってからというもの悪化していて……ちょっと心配になるくらいなんだけどね……。



「あらぁ、リコちゃんいらっしゃい! 一人で店に来てくれるなんて珍しいじゃなぁい?」



 今日も今日とて派手なレースのエプロンを身に着けたクラックさんがニコニコの笑顔で私を出迎えてくれた。

 尚、店員さん達から感じる視線も、何処か同類に向ける親愛を感じざるを得ない生温かいものなんだけど……今は時間がないので、この辺はまるっと無視させて頂く。


「クラックさん、忙しいのに本当に御免なさい! 実は、急に西部へ旅に出る事になって……。

 今回はレオンが一緒じゃないから、旅支度を整えたいの。装備は以前に整えて貰ったコレで充分だから、旅用の鞄とか食料とか……パパっと用意させて欲しいんです!」


 とにかく時間がない私は、失礼かな、と思いながらも要件をクラックさんに伝える。

 西部、という部分で眉間に皺を寄せ、レオンが一緒じゃない、の部分で拳に力を込めて、クラックさんはプルプルと震え始めるではないか。

 ……どうしたんだろ。


「この時期の西部にリコちゃんがレオン君と離れて旅をする……ですって!?

 何を考えてるのレオン君は! フォレス君もいるだろうにそんな事にも気付かないなんて、あの二人、一体どうしちゃったのぉーー!!??」


 クラックさんの絶叫が周囲に響き渡り、壁に飾られているレースがブルブルと振動している。

 お客様も店員さんもビックリしたようにこちらを凝視しているし……うう、クラックさん、声デカ過ぎだから!


「ヘクターさんも一緒みたいなんだ。それで、サラちゃんが西に行くからクラックさんに準備を手伝って貰えって……。

 ……御免なさい、忙しいのは解ってるんだけど、とにかくすぐ出発したいらしくて……。

 私、旅にはまだ慣れてないから……手伝って頂けると有り難いんです……」


 ビクビクしながらも、何とか要件を伝えた私に。


「ヘクトルまでぇぇーー!!?? もぉ、馬鹿っ! 男って本当に馬鹿ばっかりよ!!」


 さっきにも増した大音響で絶叫すると、ちょっと待ってて、と私に告げると、クラックさんは凄い勢いで店内を走り回っている。

 状況が解っていない私はその場に放置されたままで……

 店内にいたお客さんや店員さんに「リコちゃんさまー握手してください」と請われるままに握手や魔道具での写真撮影に応じてしたのだけれど……。



「お待たせしたわね。アタシも行くわっ! 西はちょっと遠慮したい地域ではあるけど、きっとこれも女神様のお告げだ思うのよ。

 リコちゃんもサラちゃんも魔法に関しては心配ないけど……旅には絶対に前衛も必要な時があるから」



 そう言って再び私の前に現れたクラックさんは、銀色の胸当て……の上にフリフリエプロンを装備し。

 背中に大きなリュックを背負い、両手にはゴツゴツしたトゲのついたメリケンサックを装備していた。



「……え、クラックさん、お店空けて大丈夫なんですか……?」



 鼻息も荒く私の前に顕現するクラックさんに、思わずそんな見当違いな事を尋ねる私。

 ……それはまぁ、このお店を経営する前は冒険者だったと聞いた事もあるし、見るからに筋骨隆々なクラックさんには変な武器よりメリケンサックは似合っていたけど……。

 準備をしに来て、旅の仲間までゲットする羽目になるなんてちっとも思わなかったよ!


「少し前から、アタシも自分の事情にケリを付けるべきなんじゃないかって予感がしてたのよぉ~。

 これでも、リコちゃんやサラちゃんより旅には慣れてるし、実戦でも役に立つ思うわ!

 ……リコちゃんの準備は、スタッフが全力でしているから。旅立ちの前に西門にスタッフが届けてくれるように手配済よぉ~!

 だからリコちゃん、今はアタシを信頼して、西へ行きましょ。

 でもその前にアークエル・パン店にも顔を出しておかないと後が面倒臭いわよぉ?」



 ……ティナちゃんか。

 そうだね、あの子に挨拶しておかないと、後が色々面倒臭いのは経験済だ。


 ちなみに、今年の『女神』に選ばれたティナちゃんはとても多忙だ。

 何でも、互いに協力する事がなかった『レオン様バーティー』の派閥を纏め、統一会派の会合を開催するに至った手腕、というのが今年の女神の受賞理由らしい。

 その会合は、私も一度しか参加した事がないのだけれど……各派閥から「あんな表情(かお)のレオン様は初めて見ました!」とか、

「レオン様とじゃれるフォレス様の神々しいこと……!」といった声が方々から寄せられ、会合は大成功だったみたい。

 ……私には自覚はないのだけれど、リコ派、とやらも存在していて、それに属する人々からは「リコちゃん様のクルクル変わる表情の一つ一つに鼻血が出そうでした」という感想も多数届いたらしい。

 ……鼻血は私の先輩特許だよ、と思ったのは、ここだけの話。



 行くわよぉぉーー!! と、クラックさんに俵のように担がれ、私はデュレクを移動する。

 ……なんかね、私、という存在はレオンやフォレスのみならず、サラちゃんやたまにやって来るサウスを代表する商会の次期代表・ローザさん、時には女神様(ティナちゃん)といった面々にイジられるのが定石らしくて、クラックさんが私に対してそんな扱いをしていても、人々は何処か生温かい瞳で見守ってくれるだけなんだよね……。

 私自身は、この世界にやって来たばかりの頃、ヘクターさんに担がれてギルド内を移動した記憶が色濃く残っていて、すごくソワソワしちゃうんだけど……。



「リコちゃん様のお通りよぉぉーー!!」



 ……楽しそうにそんな事を言いながら街の中を爆走するクラックさんを止められる人なんかいる筈もなく。



「キャアァァーー!!?? クラックさんお手柔らかにィィーー!!??」



 街の中に響く私の絶叫も、人々は何処か安心した……優しい瞳で見守ってくれるのだった。



 ……ねぇ、私、本気で恐怖を感じているからね!?

 一人くらい「助けてあげようかな」と思ってくれる人がいても良いんじゃないのかな!?


お読み頂き、有り難うございました!

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