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【後日談】レオンドール・フォン・アウンスバッハ

レオン視点の後日談です。

ネタバレを多大に含みますので本編未読の方はご注意下さい。

甘めのイチャラブ描写あり、苦手な方はご注意を……。

 

 ボクの名前はレオンドール・フォン・アウンスバッハ。ここデュレクで冒険者をしている。

 こう言ってしまっては驕っていると思われてしまうかもしれないけれど……幸せな環境で育てて貰ったと言う自覚は、ある。

 そして街の人々が口々に称えてくれるから、容姿にも……多分恵まれているのだと、思う。

 正直、ボク自身はそんな事を気にしたことはなかったし、どちらかと言えば容姿より中身や能力を褒められた方がずっと嬉しかったのだけれど……。

 どうもボクの容姿は目立って仕方がないらしい。

 ……まぁ、褒められて悪い気がしないのは事実だけど、子どもの頃から、この容姿を褒められる度に心の奥底に何かモヤモヤしたものが溜まって行く様な……そんな気がして仕方がなかった。



 そんなボクだけど、この度生まれて初めて恋人が出来た。

 異世界からやって来たという彼女──リコ・イチノセ。

 小柄な体躯と大きな琥珀色の瞳、小さな鼻と花のように艶やかな唇を持つ彼女。

 だけど、彼女の魅力はそんな外見的なものじゃなくて……自分の気持ちに正直で、コロコロ変わる表情や少し高めの可愛らしい声、

 そして何より、どんなことが起きても前向きに立ち向かおうとするその心根と──満開の笑顔は本当にヤバい。

 昔から、この目立つ外見のせいで女の子達からレオン様呼びをされて、子犬のようにじゃれて来てくれる子達はたくさんいたけれど……。

 ボクには、忘れられない初恋の女の子がいて。

 いつか彼女に会えるんじゃないかと、外の世界に出る事の多い冒険者なんて稼業を選んで旅を続けているうちに、リコと出会ったんだ。


 最初は、その名前や瞳にどうしようもなく惹かれた。

 ボクの初恋の女の子は、リコリアという名前だったし、彼女と同じように琥珀色の瞳とミルクティー色の柔らかい髪の毛の女の子だったしね。

 だけどリコは、初めて逢った時から、ボクを前にして顔を真っ赤にして──ボクの笑顔で鼻血を出すなんてことまでしてくれちゃう彼女から、本当に目が離せなくて。

 初恋のリコリアのように、クルクルと表情を変え、笑顔も涙もいつも全力で。

 ……いつしか、思い出の中のリコリアより、現実の彼女に魅かれていると感じざるを得なかった。


 思えば最初に彼女を意識したのは、ある野営の晩だったと思う。

 何故だか彼女にボクの事を知って欲しくて……ずっと悩んでいた事を打ち明けたボクに、彼女は言った。

 ボクの存在が、皆を幸せにしていると。格好良いからじゃなく、人の心に寄り添う優しさを周囲は好んでいてくれるのだと。

 ……正直、ボクが一番欲しかった言葉を、出会って間もない女の子から貰えるとはちっとも思っていなくて。

 今考えたらすごく恥ずかしいけど……女の子の前で、初めて涙を流してしまったんだよね。

 そんなボクを、リコは黙って受け止めてくれた。

 以来、ボクの我が儘も顔を真っ赤にしながら受け止めてくれたし、時にはボクですらビックリするくらいの告白めいた言葉をくれたし……。

 そんな彼女に恋をしてしまうのに、時間なんかかかるはずがなかった。


 それから旅を続けるうちに、ボクの想いはどんどん大きくなって、サウスの教会で告白をしたボクに、私も初めて恋をした、と、想いを返してくれた彼女。

 天にも昇るような気持ちって、こういう事を言うんだな、と思ったよ。

 好きだと思った相手が、自分に対して同じ気持ちを持ってくれている。

 こんな奇跡があるなんて……。本当に、心の底から女神様に感謝を捧げたよ。

 初めて触れた彼女の唇は想像以上に柔らかくて甘くて……どんな事があっても、リコだけは身を賭して守ろうと、決意を新たにしたのは当たり前の事だと思う。


 そんな中、一度は夢幻王の罠にハマってボクらは引き離されてしまったけど、

 ビックリするくらい、簡単に事件を解決してくれちゃうリコのおかげで、ボク達は再び出会う事が出来た。

 ……どうやらボクが愛したリコ・イチノセは初恋のリコリアと同一人物らしいけど、今のボクにとって一番大切なのはリコ・イチノセその人だから。

 初恋は初恋として大切に心に仕舞っておくけれど、今は目の前の恋人に夢中で……彼女の隣をずっと歩いて行ける立派な男になろうと必死なんだ。

 そうでなければ、何故だか男性にも女性にもモテモテな彼女を奪われてしまいそうな気がしてならなかったから。

 どんな危険からもリコを護れるように。

 リコがいつまでもボクを好きでいてくれるように。

 今まで以上に努力は必要だろうけど……フフ、何故かな。ちっとも苦労だなんて思わない。

 リコが居れば、ボクには百人力だからね。



 ……と、まぁ、今ボクはとても幸せな状況にある。

 だけどボクには気になっていることが、あるんだよね……。



「レオン様っ! お話を聞かせて下さいっ!」



 一つの依頼をこなし、デュレクに帰って来たボクを、女の子達がキラキラした瞳で迎えてくれる。

 デュレクの人々の幸せを守ること。それは使命だと思っているボクだけれど、

 全ての人の幸せを守るなんて出来ないし……それならば、心を寄せてくれる女の子達の笑顔だけはしっかり守ろうと幼い日に誓ったボクにとって、こうして慕ってくれているファンの子達は大切な存在だ。

 ……リコとは違った意味でだよ? ボクの存在は今や、リコなくしては有り得ないんだから。

 だけど、ボクが冒険に出ている間、心配をしてくれていただろう彼女達の事も無碍には出来なくて……


「フフ、そうだね。今回の冒険の話をしようか……」


 リコとフォレス、大切な仲間と一緒に、というボクの言葉は、他ならぬ彼ら二人の言葉で無に帰される。


「行ってきなよ、レオン! 私も実は、サラちゃんとティナちゃんから女子会しようって誘われてるの! それに今、買い付けでジュリさんも首都に来てるんだって~!」

「お~、ジュリか。俺も会いてェな! リコ、俺も参加して良いだろ?」

「ばっかフォレス! 女子会だって言ってんじゃん!」

「るせーぞ、リコ! お前を放っておいたらどんな騒ぎになることか……。それにそろそろ俺も、オンナゴコロってヤツを知りたいお年頃なの!」

「ププ、フォレスったら。瑠璃へのお土産を選びたいんだって素直に言えば良いのに~!」

「ばっかやろー! ンなもん、俺一人でどうにかなるっつーの!」


 そんな軽口を叩きながら、ボクに対して「また後でね~!」と手を振るリコとフォレス。


「それじゃ、ボクもそっちに……」


 と、言い掛けたボクを、女の子達が「今日の会場はこっちです~」とグイグイと引っ張る。

 そんな様子をニコニコと笑いながら見つめるリコとフォレスから段々と引き離され……やがて彼らも何やらギャーギャー騒ぎながらボクから離れて行った。



 ……リコがボクの恋人になったということは、デュレクの皆には言っていない。

 リコは『亡国の王子様』ということになってるし、サウスから帰って来た時にキラ馬車の上でした熱烈なキスも、パフォーマンスの一環として受け入れられてしまった。

 彼女が王子であるという設定にしていた方が危険も少ないだろう、とフォレスとも相談した結果なんだけど……。

 まぁボクも、彼女の周りに蔓延るのが得体の知れない男より、非力な女性達である方が安心は出来るものなんだけどさ……。

 リコが正真正銘の女性であると知れたら、こんなモノでは済まない自信がある。

 何しろリコは可愛いんだ。決して恋人の欲目なんかじゃない。

 姿形もさることながら、どんな話も瞳をキラキラさせて聴いてくれるし、全力で反応を返してくれる。

 それがどれだけ、相手の心を刺激することになっているのか……彼女は全く自覚していない。

 それは男性であれ、女性であれ関係のないことだ。

 実際、彼女が籠絡した美少女達はこの街の実力者──ギルド長夫人であり、この街で一番の魔法使いのサラ、今年の女神であるティナ、何故だかサウスの商会の次期代表のローザも来ているらしい。

 それどころか、世界に数体しかいないと言われている水龍──ルリも彼女の魅力の虜になっている始末だ。

 そんな彼女達がボクに向ける視線には、嫉妬めいたものが込められていることを、リコはきっと知らない。

 特にルリがたまにボクに向ける視線と来たら、命の危機すら感じるほどなんだけどね……。

 無意識なのかリコの前では猫を被っているのかは知らないけど、いずれにしてもボクに良い感情を抱いていないことは確かだ。

 ……とは言え、相手が世界最強の水龍だろうと、身を引く気は更々ないけどね。


「レオン様?」


 昔からボクのファンでいてくれているリュシーが、心配そうな表情でボクの袖をそっと引く。

 正直、彼女達のことだって守りたい。ボクが冒険者になったのは街の皆を守る、それが一番の理由なのだから。


「……ああ、ごめんね、リュシー。行こうか」


 微笑んで彼女の頭を撫でれば、リュシーは幸せそうな表情で微笑んでくれる。

 ……うん、勿論可愛いと思うんだよ。

 けど、今のボクには、リコの輝かんばかりの笑顔以上に魅力を放つ笑顔が解らなくなってしまっているんだよね……。


「……今回は会場が取れなくてレオン派のみの会合になってしまって申し訳ありません。

 いずれまた、リコ派・フォレス派との合同祝勝会も企画しますから……今日はお願いします」


 ……うん、リュシーは賢い子だ、全てお見通しみたいだね。


「何を言うんだい、リュシー。こんなに集まって貰って、ボクの話を聞きたいだなんて……君達は本当に可愛いね」


 心からの言葉を告げると、ポッと頬を染めるリュシー。


「……レオン様、ご無理はなさらないでいて欲しいですが……。けれど、こうしてお話が出来る幸せもまた、私達には大切な物だというのも嘘ではないです」


 少し寂しげな表情で微笑むリュシーには……ボクの気持ちすら解ってしまっているのかもしれない。

 だけど、この街の女の子達の笑顔を守ろうと誓った自分に背くことなんて出来ない。

 彼女達の笑顔を守ることもまた、リコを守ることに繋がるのだから。


「……行こう、リュシー。君達にボクの話を聞いて欲しい」


 そう言ったボクを、リュシーを始めとした女の子たちが会場に案内してくれた。

 これもまた、ボクの仕事だと言い聞かせながら、ボクは今回の冒険について、彼女達に伝えることに終始したのだった。



 ------------------



 そうして祝勝会を終え、定宿にしている『灯亭』に戻ると、リコが机に向かって何か書き物をしていた。

 ……尚、フォレスの気遣いにより、宿泊するうちの何日かは、ボクとリコが同室になるように計らわれている。

 特に冒険から帰って来た当日は、ボクとリコが一部屋、フォレスが別室となることが多かった。

 ……ボクの幼馴染にして親友のフォレスは、こういう所にも気配りが出来る良い男だ。


「あ、おかえり~レオン! 祝勝会はどうだった?」


 おかえり、と自分を迎えてくれる恋人。

 ……そんな存在に滾らない男なんか男じゃないと、ボクは思う。


「……ちょっ!? ……んっ!?」


 感極まったボクは無言でリコを抱き締め、その甘い唇を思い切り堪能することにした。

 突然の事に最初こそ身体を固くしたものの、徐々に力を抜き、口付けに集中してくれるリコ。

 ……マジ可愛い。


「……っはぁ……! どうしたの? レオンったら」


 彼女のクセだろうか。

 コテン、と首を傾げて上目遣いでボクを見つめるリコ。

 ……マジ可愛い。


「……リコ……!」


 堪らなくなったボクは、そのまま力任せに彼女を抱き締めた。

 正直、力の加減が出来なかったのだろう、「ぐべっ」という悲鳴めいた声が聞こえるけど、そんな事を気にしている余裕はない。

『リコ不足』。

 それはボクにとって不治の病にも似た禁断症状だ。

 任務中は過度なスキンシップは止めようと二人で決めていたし、戻ったら戻ったで別行動になってしまったのだから、リコ不足は否めない。



「……また甘ったレオンくんですかぁ……。しょーがないな、私の恋人は……」



 そう呟いてボクの身体を抱き締め返し、ポン、ポンと優しくボクの頭を撫でてくれるリコ。

 ……ああ、リコだ。

 少しだけボクのコロンが染みついたこの香りも、最高にボクを安心させてくれるこの手の温もりも、ボクのリコだ。

 ……正直、格好悪いな、とは思うけど、この時間が好き過ぎて、つい彼女に甘えてしまうんだよね……。



「……ねぇ、リコ。君はボクが好き?」



 甘えついでに聞いてみる。

 ……実は何度も聞いているんだけどさ。彼女の返答がまた最高で……



「……二つの世界を探しても、私には貴方しかいないよ、レオン」



 ……ああ、もう……!!!!

 一つの世界しか知らないボクが、二つの世界を生きた彼女のこの言葉より深い言葉なんて言える筈がないじゃないか!



「……リコ……! ホント、君には一生敵わない……!」



 ボクだけが彼女を好きなのかと、不安に思う度に彼女はこの言葉をくれる。

 本当は解ってるんだ、嫉妬をしない訳じゃない。ボクが女の子達に甘い言葉を囁く度に胸がチクッとすると教えてくれたことがあったから。

 だけど彼女はそれ以上に……ボクを信じてくれていて。

 そんな彼女の包容力につい甘えてしまう自分が恥ずかしいけれど……同時に幸せも、感じてしまうんだよね。

 彼女がこんなに全面的な愛情を注いでくれているのが、他ならぬ自分だ、ということに。

 全知全能たる龍族ですら、求めても得られない愛情を自分は受けている。

 ……ねぇ、これで優越感を抱くなって方が無理じゃないか?


「……リコ、どうして君はそんなに強くいられるの?」


 つい、そんな事を尋ねてしまう。

 彼女の強さは今に知ったことじゃないけど……ただの学生だったと言う女の子が持つには強すぎる力なような気がして。

 そんな問いに、リコはまたしてもコテン、と首を傾げ、心底不思議そうな表情でボクを見返す。


「私は強くなんかないと思うけど……もし私に強さが備わったのだとしたら、貴方が側にいてくれるからだよ。

 ……見たこともない女神様より、こうして側にいてくれるレオンの方が、私にはずっとずっと大切だから……私だって貴方を守ろうって決めてるんだもん」



 うわぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!

 女神様、可愛いボクの恋人に、男前な魅力まで与えるのは勘弁して下さい!!!!



「……決めた。いつか絶対に、君より格好良くなってみせるからね!」

「今でもレオンは世界一だよ?」



 うわぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!

 女神様、これ以上ボクの恋人に、人を骨抜きにする言葉を教えないで下さいーー!!



「……それでもっ! 一生を掛けて君に勝負を挑むっ!」

「……フフン。私の妄想力をナメないでよね。人を悶えさせる台詞なんて、百も承知だよ?」



 ──ただ信じていてレオン。貴方のことだけが、ずっと大好き。



 悪戯っぽく微笑み、耳元で囁かれたその言葉。

 正直、彼女にはボクが喜ぶ言葉なんてきっと筒抜けなんだろう。

 ……撃沈とはこのことか……。

 勝負を挑んだ瞬間に地に膝をついたボクだけど……


 ……控えめに言って、とても幸せです……。

 嗚呼女神様、貴女はなんという存在をボクの側に遣わして下さったのか……。



 ……奇跡なんて滅多に怒らないから奇跡なんだ。そんなのボクだって解ってる。

 けれど、齎された奇跡を幸せに変えるのは、それを受けた人間の努力が必要だと思うから。


 ねぇ、リコ。


 君は奇跡が齎してくれた偶然の産物なんかじゃない。

 今現在ボクの側にいて、こうして温もりを感じる事の出来る存在が、奇跡だなんて思わない。

 出会うべくして出会い、惹かれ合った、一生でただ一人の女性(ひと)



「……愛してるよ、リコ」



 耳元で囁けば、途端に彼女の顔にポンッと熱が集まるのが解る。

 ……フフ、こういう直接的な言葉には、いつでもちゃんと、こんな初心な反応を返してくれるんだよね。

 そんな所がとてもツボで、その度にボクの心がますますリコにハマって行くなんてこと、彼女はきっと知らない。

 そしてそんな反応を示されると、ちょっとだけ意地悪をしたくなってしまうんだよね。



「……けどちょっとリコ不足かなぁ~? ねぇリコ、そんな時のおまじない、君なら知っているでしょ?」



 そんな風に尋ねれば、う~っと顔を真っ赤にして俯き……やがて薔薇色に染めた頬に涙すら浮かべた瞳という、破滅的に可愛い顔でボクを見上げて来る。

 ……クッソ可愛い。頑張れ、ボクの理性。



「……甘ったレオン君ってば……! もう……!」



 覚悟を決めた表情で彼女の唇がボクの頬に寄せられる。

 ……いつか、こんな風に『お願い』しなくても、自発的にしてくれるようになったら嬉しいなぁ~なんて思いつつ。

 でもこんな風に、ボクのお願いに一生懸命応えてくれようとするリコも可愛くて堪らないな~とも思い。

 彼女のその可憐な唇が頬に触れようとした瞬間、ボクは自分の顔をそっとずらして、そのチェリーのような唇にちゅっと触れる。



「……!!!!」



 ビックリした表情でボクを見つめるリコ。

 ……全く、何度もこの作戦にやられている筈なのに、油断し過ぎだよ、君は。

 ……それとも、わざと、なのかな。だったらちょっと……嬉しいな。


 何も言えないくらい驚いて固まってしまった彼女を、そっと抱き締める。

 世界一幸せなその温もりは、確かにボクの腕の中にあって……



「……火がつきそ……」

「……今日はダメっ! 萌えすぎて死んじゃうっ!」



 慌ててボクの腕の中からリコが逃げ出そうとするけれど、そんなの、手放す筈なんかないよね。

 彼女がボクを好きだと言ってくれる言葉を信じていないワケじゃないけれど……

 ……残念ながら、『好き』の度合いの勝負で、リコに負ける訳にはいかない。

 この世界にも、元いた世界にも、彼女には血の繋がった家族は、いない。

 けれどそんな事を気にする時間もないくらいの愛を、ボクは彼女に注ぐつもりだ。

 ……とりあえず今は、物理的に目に見える形でね?



「……そうか、君も期待してくれてたんだね。……待たせてごめんね? ボクのリコ」



 そう言いながら再びキスをし、それを深めて行き……段々ベッドに近付いて行く。


「……ちがっ……んっ!」


 反論はボクの口の中にどうぞ、リコさん?

 ボクの腕にジャストフィットな君が、いつもとは違う表情をボクだけに見せてくれる時間は、恐らくボクが世界で一番幸せになれる時間だし……

 ……ねぇリコ。君にも天国を見せてあげられるように頑張るから。



「……愛してるよ、リコ」



 心からの言葉を告げれば、それだけで彼女の身体から力が抜けて行く。

 そうしてボクらは、めくるめく恋人達の時間を……



 ……過ごそうとした所で、突然の侵入者の声に阻まれる。



「リコちゃーん! さっき言ってた魔法の秘訣を語り合いましょー!」

「リコー! 美味しいパンを焼いたわー!」



 ……サラー! ティナー!! 空気を読めぇぇーー!!



「お~い、リコ、瑠璃の土産ってさー」



 ……フォレスまでーー!!!!



 突然やって来た来訪者に、思わず固まってしまったボクの身体を、その華奢な身体の何処にそんな力があるのかと思わせる程の強い力で撥ね退けるリコ。

 ……くっそ、コイツら絶対、絶妙なタイミングを狙っていたに違いない!

 存外強い力で突き飛ばされて、その場に尻もちをついたボクの肩を、ポン、とフォレスが叩く。



「……悪ィな、レオン。ルリの指示には逆らえねぇ。なんつったって世界最強種の龍だからなぁ!」



 初めて見せる、カッカッカッというフォレスの笑い声。

 ……オイ、それ、ルリに似て来てるだろ!?

 愕然とするボクの前で、サラとティナがニヤリとボクに対してだけ黒い笑みを見せるけど……次の瞬間には元の美少女の満面の笑みでリコに向かう。


「混合魔法についてなんだけど~。ロンちゃんを交えたらもっと強力になると思うから、今度練習しよーよ!」

「今日のパンは自信作だよリコ! リコは甘くてフワフワのが好きだから、パンケーキにも負けないフワフワを追及してみたの!」


 キャッキャと、傍目に見れば無邪気な少女の表情(かお)でリコに纏わりつく美少女達。

 リコも楽しそうに二人とじゃれ合っている。

 そんな美少女達を、フォレスがニヤニヤと意地の悪い表情で眺めている。



「……ハハン。元々恵まれ過ぎてるお前に嫉妬する輩なんか、いくらでもいるんだぜ?

 第二の夢幻王が現れないよう、女神様にでも祈っとくんだな」



 呟くようにフォレスの口から放たれるその衝撃発言に、ボクは驚愕を感じざるを得なかった。

 ……フォレス、コイツだけはボクの味方だと信じていたのに……!

 だけど、どんな妨害に遭ったって、負ける訳にはいかない闘いが、男には、ある!



「……ふぅん? それがボクらの愛を深める為の試練って訳か……。

 ……受けて立とうじゃないか、アウンスバッハの名に賭けて!」



 そんなボクの言葉を、楽しげな表情で受け取ってニヤリとニヒルに笑うフォレス。



 上等だ! その勝負、受けて立つ!

 相手が誰であろうと弾き返して、リコを心身共にボクの物だと、世界に認めさせてみせようじゃないか!



 ……リコ・イチノセ、世界(デュレク)中の権力者から愛される、ボクの恋人。

 彼女を名実共にボクだけのものにする為に。




 ──ボクの闘いは、始まったばかりだ!!


お読み頂き、有り難うございました!

レオン視点を描く事には何の苦労もなく(笑)、楽しく執筆させて頂きました♪

後日、更に別視点の後日談も投稿予定ですので、お目に留まりましたらお付き合い頂ければ幸いです。

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