第五十三話 この世界で
■後半、R15です。
レオリコが全力でイチャついておりますので苦手な方はご注意下さい!■
そうして一頻り落ち着くと、レオンがこちらの世界であった事を教えてくれた。
「君が突然消えてしまったのと同時に、夢幻王がかけたあの結界も解かれたんだ。
……だけど、ボクはまたしても君が目の前から消えてしまったことに絶望していて……。
しかも今回の衝撃は子どもの頃の比じゃなかったよ。心を通わせた後に君が消えてしまったんだから……」
静かにそう語るレオン。
……尚、私達は今でも海底神殿に居座っているのですが……
瑠璃が用意してくれた蒼水晶のテーブルと椅子にはちゃんと二脚ずつ対面に用意されていると言うのに、レオンの声は何故だか私の背後から聞こえている状態です……。
……ええ、はい、しっかりと後ろからホールドされておりますね。
それは確かに私もレオンと引き裂かれてとっても悲しかったし、こうして帰って来る事が出来て、こんなに幸せで良いのかってくらいの幸せを感じているけどさ!
もう二度とレオンと離れるなんて御免だとも、思うけど! 思いますけれどもっ!!
フォレスと瑠璃という、気心の知れたメンバーしかこの場にはいないとは言え、他人様の前でこれはさすがに恥ずかしいです、レオン様!!
「まーなぁ……。俺もさすがにビックリして何も出来なかったけどよぉ……。
レオン、あの時のお前の姿、リコに見られたら百年の恋も冷めちまってたと思うぜ?
鼻水垂らして泣きながらリコの名前を連呼して、血が出るまで地面を打ち付けてる姿なんて……頼むからリコには見せてやるなよ」
と、フォレスが何処か楽しげに笑いながらそう言った。
……え、レオンったら怪我してるの!?
ビックリして私の腰に回されている手を見れば、確かに片方だけ白い包帯が巻かれている。
もう、レオンったら! その綺麗な身体に傷を付けるなんて、ミケランジェロの彫刻に傷を付けるくらいの国家的犯罪なんですから気をつけて下さいねっ!
『治癒』と呟き、レオンの片手を優しく包み込む。
痛いの痛いの、飛んでけ~!
……ええ、いっぱしの魔法使いぶってますけど、私のイメージなんて所詮こんなモンですよ……。
医療的知識は殆どないので、裂傷が綺麗に消えたレオンの優しい手を思い浮かべて呪文を唱えています。
なので、この程度の切り傷ならなんとかなるかもしれないけど、もっと重症を負ってしまったら私にはどうにも出来ないと思うので、レオンにもフォレスにも気をつけて欲しい所だ。
「……ありがとう、リコ。君は優しいね」
私を後ろから抱き締めたレオンが耳の辺りにチュッとキスを落とす。
……ううぅぅ……。レオン様、リコさんは嬉し恥ずかし過ぎて、もうどうしたら良いか解りませんっ!
「お~い、リコ? また鼻血なんて出すなよ? 雰囲気ブチ壊しだからな?」
隣に座ったフォレスが意地悪くクックックッと笑いながら私の頭をワシワシと撫でる。
もぉぉーー!! アナタは本当にいつまで私を愛玩動物扱いすれば気が済むのかな!?
……でも、デュレクでは通常営業のこんなやり取りをまた楽しめる現実に、私の心がポカポカと温かくなったのが解る。
そりゃ、まぁ、レオン様クオリティはかつてないまで最高級にその甘さを増しているけど……
レオンの温もりが世界で一番安心出来る場所だなんて、今に始まったことじゃないもん。
それにフォレスのこんな意地悪な言葉や私の頭を撫でる大きな手も、今の私にとっては、すごく安心出来るものだ。
私は、デュレクで生きると決めた。そしてその決断を、向こうの──異世界のママや親友も応援してくれた。
私がここに居ることを望んでくれる仲間や友達や──恋人がいる世界。
……本当に、帰って来られて良かった!
嬉しくなった私が、ヘラッと笑うと、対面に座っていた瑠璃が呆れたように……それでも優しく微笑んでこちらの世界であった事を教えてくれる。
『夢幻王がだいぶヒントを喋って行ってくれたからのぅ……。都合の良い事に、ここには異空間を使えるアウンスバッハの末裔もおったし、それを利用してお主をこちらに呼び戻そう、言うのは異世界で璃心の盟友とも話した通りじゃな。
……じゃが確かに蒼髪の言う通り、そこな金髪はしばらく使い物にならぬ状態であったよ。
男子たるものそう簡単に涙を流すべきではないと、妾は思うがのう……』
そんな瑠璃の言葉に、レオンが恥ずかしそうに私の首筋に顔を埋める。
……照れてるのかな? かっわいい~~!!
けど、それだけ私の事を心配してくれたってことだよね。嬉しいよ、レオン。
気を良くした私は、そっと片手をレオンの頭に添えてその柔らかい金髪の感触を楽しむことにする。
するとレオンも、グリグリと私の手に頭を擦りつけて来てくれるではないか。
……あ~、甘えてくれてるのかな、これは。
もう! レオンったら、そんなに私を萌えさせてくれなくても良いんだよ?
『ま、今回は仕方あるまいの。金髪の絶望は妾にも理解るしの。
じゃが、そんな使い物にならない金髪を叱咤し、殴ってまで立ち直らせてここまで引っ張って来た蒼髪、主の功績は評価に値するぞ』
レ、レオンを殴ったですってぇぇーー!!??
フォレスさん! アナタなんてことしてるんですか!
……けどまぁ、絶望に打ち拉がれている親友を立ち直させるには、それは有意義な方法なんだろうな……特に男の子にとっては。
私に対する藤子のデコピンみたいなものなんだろう。
「ん……まぁ、そんな大したことじゃねぇよ。あのままあそこにいても何も出来なかっただろうしな。
正直、俺達じゃ夢幻王なんて大それた相手に立ち向かう方法も思い付かなかったし、全知全能の龍族……ルリの力を借りた方がはえーだろ」
瑠璃に褒められ、ちょっと照れくさいのかフォレスがポリポリと頬を掻いて呟くように言う。
ところが、その途端に瑠璃が猛然とフォレスに食ってかかった。
『何度言えば解るのじゃ! 瑠璃、という名は璃心しか呼んではならぬと言っておろうに!』
「何でだよ! 名前があるならそう呼んだ方が話し易いじゃねーか!
俺は龍だのなんだのに信仰心は持ってねぇからな。リコがお前をルリと呼ぶなら俺だってそう呼ばせて貰う!」
『妾は全知全能の龍族ぞ!? 崇め奉れ蒼髪!』
「何言ってんだ、ガキのナリして。お前こそ俺様を崇め奉れよ!」
キィィーー!! という擬音が聞こえる程の勢いで睨み会うフォレスと瑠璃。
……なんかフォレスってすごい。
一歩間違えれば龍の怒りを買って殺されても仕方のない状況なんだろうけど……
今ではフォレスも私にとって大切な人だと理解してくれている瑠璃がそんなことする筈もないし。
なんだろ、その立場や存在に平伏すだけじゃなくて、こんな風にあっけらかんと話をしてくれる存在は、瑠璃にとっても必要なんだろうなぁ。
何だかんだで、この二人って良いコンビかもしれない。
私が思わずププッと笑いを漏らすと。
『「何が可笑しい!? 璃心!?」』
と、声を合わせて抗議してくる。
ほらね、こんなタイミングもバッチリじゃないですか~お二人さん!
「何でもないよ~! 随分仲良くなったみたいだね、お二人さん?」
ニヤニヤ笑いを浮かべた私に、二人が口々に文句を言って来るけど、正直、今の私には強がっている子どもにしか見えませんよ?
すると、コホン、と咳払いをして気を取り直したらしい瑠璃が話を続ける。
『……とにかくじゃ。一度、時空の歪みは閉じたが、妾は時空の専門家ではないのでな。
再びそれを発見するのは恐らく夢幻王の方が先じゃろう……今は魔力もロクに使えぬ赤子同然の状態で異世界に取り残されておるがの。
全く、異世界に行く為なら己の魔力すらどうでも良いと思える程の探究心、恐れ入るわ……』
ホントにねぇ。魔力を抑えないと時空の歪みを通れないと解ったら、自分の最大の武器である魔力すら捨てて異世界に来ようとするなんてね。
魔族──特に虚飾に生きる彼らが、目の前の事に没頭しすぎて回りが見えなくて迷惑を撒き散らすのは、多分諸刃の剣なんだろう。
興味に埋没しすぎたら、こんな風に自分を窮地に陥れる事もあるのだから。
だけど、ディールに関しては藤子が任せて、と言ってくれてるし、何とかしてくれるだろう。
ディールにとっては屈辱的な状況だろうけど、現代の日本人はスプラッタな状況は好まないし、肉体的な苦痛についてはあまり心配しなくても大丈夫かな、と思う。
……精神的ダメージについては、藤子を怒らせた時点でお約束は出来ません、悪しからず……。
『……璃心よ、主はもうしっかりとこちらの人間として認識されておる。妾が言うのだから間違いはない。
じゃから、再び時空の歪みが見つかった所で二度とそこを通る事は出来ぬかもしれぬ。……前例のないことじゃし、妾にも解らぬがの。
……とにかく今は、お主も色々あって疲れたじゃろう。今日はここに泊るが良いぞ。人間が宿泊出来る場もこの神殿には用意しておるからの……未だかつて、使われることはなかったが』
瑠璃がちょっと寂しそうに微笑んでそう言ってくれた。
使われることのなかった、人間の為のお部屋か。
いつか人間と心を通い合わせる事が出来たら招待しようと、瑠璃が用意していたのかな。
けど、その圧倒的な力を前に、人々は平伏すことはしても友愛を示すなんて恐れ多いと思ってしまって、瑠璃もそれを当たり前の事として受け取っていたのかもしれない。
そういう意味では、異世界で育った私、というのはこちらの世界の常識が、良い意味で通じない存在だから、その壁を打ち崩すことが出来たのだろうか。
そして、サウスの人々にもその愛情を瑠璃に捧げて欲しいとお願いした以上、そのお部屋もこれからは賑やかになるに違いない。
……フフ、良かったね、瑠璃。
そして私も、正直、ちょっと疲れているのは確かだな。異空間に生身の人間が入り込むなんて、常識外の事をやっちゃったワケだし……
休ませて頂けるならお言葉に甘えちゃおうかな? と考えていると……
『金髪。今世紀最大の優しさを以て主と璃心を二人にしてやる。
……妾の大切な眷属を呼び戻してくれた褒美じゃ、受け取れ』
と、瑠璃がニヤニヤと笑いながらレオンを煽る。
……ちょっ!? 瑠璃ってば、そんな風にレオンを煽ったら私の身が危険に晒されるんですけど!?
「……おお、水龍よ、感謝します!」
私に甘えていた状態のレオンが一瞬にして復活する。
『突き辺りの奥の部屋を使うが良い。……蒼髪、主とはまだ話があるでな、しばし残れ!』
瑠璃のそんな言葉に、望むところだ、不敵な笑いを零すフォレス。
そして私はレオンにお姫様抱っこで神殿の中の客室に連行されることになった。
「瑠璃ぃぃーー!!?? 私もまだ貴女とお話したいですぅぅーー!!??」
そんな私の絶叫は。
「『また明日な~』」
という、またしてもタイミングバッチリのフォレスと瑠璃の言葉によって延期されてしまった。
「リコ、君の時間をボクに頂戴?」
抱き上げた私の額に妖艶な表情でキスを落とすレオン様。
……そのただならぬ色気はどうしたことですかぁぁーー!!??
だけど私の困惑は何処吹く風で部屋にしけこむレオン様。
この後私、どうなっちゃうんでしょうか!?
……一方、私達が去った海底神殿の大広間では、瑠璃とフォレスが以下のような会話を交わしていた。
当然、私の与り知らない出来事ではあるのだけれど、作者補正で補完させて頂きますね。
『……蒼髪、主も難儀な立場よのぅ……。良いのか?』
「ガキが何を気にしてんだよ。……確かにリコは大切な存在だけど……なんつーかな、家族みたいなもんなんだよな、アイツは。元々妹分だったワケだし。
レオンが早く本気の恋を見つけられたら良いな、とはずっと思ってたし、リコが現れた時、そんな予感もしたしな。
……俺は孤児だからさ。恋人よりは、友達や……家族ってヤツが、一番欲していたものなんだって解ったし。アイツらからかいながら、大事に、大事に護るよ。
んで、いつか俺にとってコイツが唯一だって思える存在が現れたら、そいつも巻き込んでアイツらと旅を続ける。
……それが俺にとっての、最高の幸せだって、今では思ってる」
『……主はまこと、心強き者よのぅ……』
「惚れんなよ?」
『自惚れるでないわ!!』
……フォレスと瑠璃。
なんだかとっても微笑ましい、喧嘩ップルになる予感が……ちょっとだけしています。
その時は当然協力しますし……今までからかわれた分も上乗せして遊ばせて貰いますからね!
覚悟してね、お二人さん!
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一方、レオンのお姫様抱っこで綺麗に整えられたお部屋に連行された私は、床に下ろされるやいなや、真正面からレオンに強い力で抱き締められる。
「……リコ、リコ……!!」
ただ、私の名前を呼ぶだけのレオンのその声には、とても色々な感情が詰まっているようで……私も何だか胸がいっぱいになり、
レオン、と大好きな人の名前を呼んで抱き締められた背中にそっと手を回し、その温もりを改めて感じていた。
「……もう二度とあんな想いをするのは御免だ。
ボクの幸せは君が……君にしか創れないって心から実感したよ。
リコ、恋というのは幸せで……時にとても怖いものだね。自分の心がこんなに脆いだなんて思わなかった。
だけど逆に、君さえ居てくれたら、ボクはどこまでも強くなれそうな気もするんだ。
君を護る為に……ボクは今よりもっと強くなって、自信を付けて、最高のシチュエーションで君にプロポーズをしたい。
……今すぐに、と言えないのがちょっと情けないけど……。
ボクに新しい夢と目標を、君は与えてくれた。今日という日は、ボクにとって大切な記念日だよ、リコ」
──愛してる、と耳元で囁かれる声。
ママがくれたその言葉とは、意味も重みも全く違うけれど……私にとっては生まれて初めての、恋人からの、その言葉。
とても幸せで、ちょっと照れくさくて……そして温かい。
レオンにもそんな気持ちを感じて欲しくて、顔を上げると、あの優しい空色の瞳が私を射抜く。
いつになく切羽詰まった色を浮かべたその瞳は、少しだけ涙で濡れていて。
だけど、私も、と囁こうとした私の唇は、レオンのその花びらみたいな唇で覆われてしまった。
「……んっ……」
その手の経験が全くない私は、吐息を漏らしてそれを受け入れるだけで精一杯。
レオンの優しい唇はとても気持ちが良くて、とても安心出来るものだけど……
正直、酸素不足と恥ずかしさと気持ち良さで膝がガクガクして立っているのも危ない状態です、レオン様!!
「ん、んーーっっ!!」
声が出せないので、レオンの胸を叩いて苦しいです、立っていられません、と訴える私。
そんな私の訴えに気付いたのか、ふと身体を離してごめん、と呟くレオン。
唇が離れた瞬間に、お互いフゥゥ~と深く息を吐き……そして見つめ合って笑った。
「……ごめん、リコ。実はボクも初めてでさ……余裕がなくて。
……だけど、これもゴメン。我慢も、出来ないみたいだ」
そう言いながら再び私の唇に優しくキスを落とし、ジリジリと部屋の奥へと移動するレオン。
レオン以上に余裕のない私はもう、なすがままだ。
そうしてキスを交わしながら移動をしていると、やがて、私の足が何か柔らかい物に当たって止まる。
「……リコ。ボクの本当の恋人になって欲しい。……心も、その身体も」
空前絶後のぉぉぉぉーーーー!!!! その色気ぇぇぇぇーーーー!!!!
そんなモン、私が抗えるワケがないじゃないですか!!
肩をトン、と優しく押され、トスン、とベッドに仰向けに倒れ込む私の顔の両側に手を付き、覆い被さるようにしながら私の額にその額を合わせるレオン。
「……今夜は寝かせないよ、子猫ちゃん」
悪戯っぽく笑ったかと思えば、再びその麗しの唇が私の唇に降り注ぎ、その口付けは段々深くなって行き……
私の身体をなぞるように色々な所を彷徨う掌が肩や腕や足だけじゃなく……もっと色々な部分にも触れられ。
触れるだけだった唇が深く重なり合えば、私の口の中にヌルリ、と何かが侵入して来て。
東京から持ち込んだ制服の上着の裾から、その温かい掌が直接、肌に触れる。
「……んっ、レオン、恥ずかし……っ!」
抵抗の言葉は、再びその優しい唇に吸い取られる。
そしてそのまま、キスがまた深くなって行き……
「……可愛い、リコ。今まで見て来た中で一番、かわい……」
レオンの言葉にも段々余裕がなくなって来るのが解り……
一際深いキスが落とされる。
顔の横に置かれた私の片手はレオンのその手と恋人繋ぎで繋がれたまま。
もう片方のレオンの手は私の身体のあらゆる所を蹂躙して行って……
「……リコ、リコ……。ボクだけの……君でいて……!」
絶叫めいたレオンの言葉を最後に、私達は声にならない声を上げながら、快楽、という初めて知る世界に没頭して行った。
理性すら吹き飛びそうになるその空間の中で……
……お互いだけが唯一だと確かに感じられる、濃密で、世界で一番幸せな時間を、確かに感じていた。
……ううぅぅ……。
朝チュンでしたが、記憶は全て、完璧に残っております……
……恥ずかしいですぅぅーーーー!!!!
けど、幸せで御免なさい全世界のレオンファンの皆さまぁぁーー!!!!
次話にて本編最終回となります。
最後までお読み頂けますと幸いです。




