第十七話 レオンの告白
その日は結局、魔物に遭遇することもなく、森の中で野営をすることになった。
「普通なら魔物に遭遇してもおかしくねぇけどな……。こんだけ静かだと逆に不穏だな」
「……ああ」
レオンとフォレスが難しそうな顔をしてそんな事を話し合っている。
う~ん、私のイメージでも、街の外はもうちょっと殺伐とした雰囲気が漂っている感じだったんだけど
スライムの一匹にすら出会わず、夜を迎えてしまった。
「何かあるとは思うが……全ては蒼炎洞に着いてからだな。今日はもう休もう」
そう言って、レオンが異空間からテントやら寝袋やらといったアウトドアセットを取り出し始める。
折り畳みテーブルとか椅子もある!
すごいな、アウンスバッハ家の異空間! 便利さがハンパない!
「この異空間は時間は停止していないから、食料を保存しておくことが出来ないのが難点で……
食事は簡単なもので申し訳ないけど、これを食べたら休んでね」
そう言ってレオンが渡してくれたのは出掛けにデュレクで買ったパンと水筒に入った紅茶。
「ありがとうございます」
御礼を言って受け取ると、レオンがニコッと微笑んでくれた。
……あ~、空のお星様、間違ってここに落ちて来ちゃった……?
麗しすぎて目がチカチカします!!
焚き火を囲んでそれぞれ食事を摂っていると、話が私に向けられる。
「リコの国ってどんな国なの?」
水筒の紅茶を飲む仕草すら麗しいレオン様だ。
「ん……と、そうですね。こことは全然違う、としか。
人も建物も多いし、みんな、時間に追われてせかせかしてると言うか……。
けど、平和は平和です。魔物もいないし戦争もしばらくは起きていないし……」
そんな私の話を、二人は楽しそうに聞いてくれる。
「なるほどねぇ。そんな平和な国で育ったから、こんなのほほん娘になっちまったんだな」
と、クックックッとフォレスが楽しそうに肩を揺らして言った。
……もう! のほほん娘ってなによ!
ぷくぅっと頬を膨らませてフォレスに抗議の視線を送ると、ヤツは一層楽しそうに笑い出すではないか。
「そんな顔すんなって。ほれ、お兄さんが特別にハチミツ玉を分けてやるから」
ほれほれ、と、持っていた飴玉のような物を私の前に摘んで差し出すフォレス。
だけど、私が取ろうとすると、素早くそれとは逆の方へ飴玉を移動させ、私に取らせようとする気配が全くない。
私も躍起になって取ろうとするけど、ヤツはどうやらスキルを使ってまで私で遊んでいるようだ。
それでなくてもリーチの長いフォレスに『疾風』のスキルまで使われたら敵うワケがない。
フォレスってば、私を玩具か何かと勘違いしてない!?
「もう! 私で遊ばないでよフォレス!」
意地になってフォレスから飴玉を奪い取ろうとしていた私だけど、散々弄ばれて息切れしてしまい、
最終的には上目使いで再度頬を膨らませ、ぷんすかとフォレスを睨みつけた。
「そうだぞ、フォレス。リコで遊ぶんじゃない」
レオンがそう言ってフォレスから飴玉を奪い、「はい、リコ、あ~ん」と、口の中に飴玉を入れてくれる。
……よし! 今日はレオンから初めて『あ~ん』を頂いた記念日として語り継ぐことにしよう!!
口の中で溶けていくハチミツ玉の甘さと、レオンの優しさで、私の怒りは一瞬にして霧散した。
「ぶははっ。単純だな~リコは!」
そしてフォレスは勝手に笑いの渦に突入していった。
……あ~もう。こうなると止まらないんだっけ。
いくら魔物の脅威が少なそうとはいえ、野外でこれだけ爆笑するのもどうなんだろう…?
「フォレス。明日も早いんだ、いつまでも笑ってるんじゃない。
……今日は先に見張りを頼んで良いか? 三刻程で交代するよ」
「オーケー。ほらリコ、お前も寝とけ。……寝坊したら襲うからな」
ニヤリと気障っぽく微笑うフォレス。
「……え、目覚まし爆音セットした方が良い……?」
その私の呟きに
「「やめてくれ!」」
見事に声を合わせる美形二人。
……もう! こんな時まで相棒力を発揮しなくて良いってば!!!
そうして、私はレオンに「おいで」とテントの中に誘われる。
外で夜番をしてくれているフォレスに「おやすみフォレス、ありがと。また明日ね」と声をかけると
「お~おやすみ!」ととても良い声で返してくれた。
……見張りかぁ……。今はまだ役に立てそうもないけど、そのうち私もやり方を覚えて交代要員に入れてもらえるように頑張ろう!
……その前に寝坊癖をなんとかしなきゃなぁ……。
明日、ちゃんと起きられるかな。ちょっと心配だな……。
そんな事を考えながら寝袋に潜り込み、ふと、隣を見るとレオンは寝袋を下敷きにして片頬に手を当てて横になっていた。
……その綺麗な瞳で私を見つめながら。
ギャアアア~~! 油断した! テントって狭いんだった!!
鼓動さえ聞こえてしまいそうな近距離でレオンに見つめられ、
私はなんだか居た堪れなくなって寝袋の中でもぞもぞと反対を向こうとすると。
「そんな寂しいことしないで、リコ。……顔を見せて?」
レオンの囁き声がさっきより至近距離から聞こえるではないか!
焦って隣を見れば、頭のすぐ上にレオンの美しい顔が迫って来ている。
……っていつの間に寝袋の距離を縮めたのレオン!? まさか忍びの者!?
「今日は疲れたでしょう? いっぱい歩かせてごめんね。
……けど、ボクらはこういう仕事をしているから、こればっかりは慣れてもらうしかなくて……」
本当にごめん、と、レオンが切ない表情でそう言った。
「……いえ。逆に、私がいることでスピードが落ちて、ご迷惑を掛けていませんか?」
ずっと心配だったんだよね。
レオンに貰った靴は本当に移動の手助けになる魔法がかけられているようで、疲れはあまり感じなかったけど
どうしたってレオンやフォレスとはリーチの長さが比べ物にならない。
ましてや私は、部活もしてない、引き籠り気味な、現代日本の女子高生。
二人で旅をしている時はもっとサクサクと、先まで進んでいたんじゃないだろうか。
「そんなこと気にしていたの? 全然大丈夫だよ。
今日は魔物との遭遇もなかったし、予定より距離を稼げたくらい。
リコ、良く頑張ったね」
レオンが優しく私の頭を撫でてくれる。
「……や! レオンからもらった靴のおかげもあると思うし……! あ、明日も頑張りますね!」
距離と、頭を撫でる優しい振動と、レオンの体温と心音。
その何もかもにドキドキしてしまい、真っ赤になっているだろう顔を半分寝袋に隠し、私はそう言った。
「……ねぇ、リコ」
すると、何故だかちょっとむくれ気味のレオンが私の頬に手を当てる。
笑顔ばかりじゃなくて、こうしてむくれたり、怒ったりするレオンの表情は私にとって最高のご褒美だ。
……けど、なんか不満そうなのは、なんとかしてあげないと!
レオンにはいつでも笑っていて欲しいんだ、私。
「どうしたんですか……?」
心配になってそう問う私に。
「……なんだかさ、フォレスにはすごく心を開いているのに、ボクには壁を感じるんだよね……。
その……言葉づかいとか……」
そう言って寝袋ごと、私をギュウウウっと、ちょっと苦しいくらいに抱きしめるレオン。
……ちょっ!? いよいよ私の心臓を止めにかかってる……!?
「……ボクなんて、つまらない一人の男だよ。一人の女の子の歓心をどうすれば得られるかと日々悩んでいる、さ」
抱きしめられているせいで、レオンの表情はわからない。
けど、その切ない告白は紛れもなくレオンの本音だと、心の奥底から理解する。
「……レオン、だいじょぶ……、レオンを嫌いな女の子なんて、どんな世界にも、いないから……」
今日の疲れもあったのか、私の眠気はMAXだ。
レオンに抱きしめられているドキドキは消えないけど……
そして、レオンの告白は切なさすら感じてしまうものだったけれど。
今はどうやら睡眠欲の方が勝ってしまっているみたい。
……レオンの腕の中は、何故だかとても懐かしくて、私にとって世界で一番安心出来る場所であるようだ。
疲れも手伝い、その優しい温もりの中で静かに意識を落とす私。
おやすみ一秒は、私の得意技。
けど、その前にこれだけは言っておかなくちゃ。
「……私の、世界でいちばん、かっこいー、王子さま……。だい……す……き………」
言い落して、私は夢の世界にダイブする。
寝落ちする寸前の言葉には、意識が働いてない分、たまにとんでもない爆弾を落とすことがある。
そしてその後、私の王子様は。
「……まったく。無邪気で男前で無自覚に煽ってくるとか……
……ねぇリコ、本当に君からは目が離せないよ。お願いだから、そういうのはボクの前だけにしてね?」
……という、レオンの腰砕けな台詞を聞き逃していた。
……ねぇ誰か!? 今のレオンの表情と台詞、後で動画で送ってくれませんかね!?
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緊張も手伝ったのか、私が珍しく誰かに起こされる前に目を覚ますという偉業を成し遂げた時。
テントの外からはシュッ! シュッ! と空気を切り裂く音と、
「ハッ!」という色気に満ちた男の息使いが聞こえていた。
その時の私は寝袋に入ったミノムシ状態のまま、フォレスの足を胸に乗せられているという、なんとも間抜けな状態ではあったのだけれども。
……フォレスさんや……いたいけな女子高生を足蹴にするのはやめて頂けるかね……?
けど、フォレスがここで爆睡しているということは、外から聞こえる音はレオンだろう。
私はフォレスの長い脚をペッと投げ捨てると(正直、すごく重かった……)
モゾモゾと寝袋から這い出し、テントの外に顔を出す。
と、そこには。
一晩中絶やさずに炊いてくれていたのだろう焚火の向こうに、
上半身をシャツ一枚という、いつもより露出気味なレオンが、いつもは腰に帯びている細剣を一心腐乱に、額に汗しながら真剣な表情で振り続けていた。
……もう、それは寝起きのフワフワな感じなんて一瞬で吹き飛ぶくらいの色気と格好良さだよね。
レオンって、私ヴィジョンを通さなくても本当に格好良い人だと思うんだよ。
それは『レオン様協定』が約定されちゃってる時点で誰の目にも明らかだ。
その彼が、肉体美も露わなシャツ一枚で、朝靄の中で無心に剣を振っている。
その身体から流れ落ちる汗は、生まれたての朝の光を反射して彼をキラキラとしたオーラで覆って祝福しているようだ。
レオンはそんな私の視線に気付くこともなく、夢中で剣を振るっている。
時には炎を、水を、風を、光を、その剣に纏わせながら。
一瞬毎に変わるその剣の色は、もはや神々しささえ感じさせる。
しかもそれを振るうレオンの表情は真剣そのもので、麗しさの中に荒れ狂う、狂気すら感じさせ、
私はしばし、その宗教画のような光景に見とれていた。
……と、一通りの鍛錬が終わったのか、近くの岩に置いていたハンカチーフで汗を拭い、私に気付くレオン。
その瞬間の破顔ときたら……!!!!!!
今、息が止まっても後悔はしないと言っても過言ではないくらいの神々しさを醸し出していた。
「ごめん、リコ。起しちゃった?」
そう問われて、ブンブンっと頭を振るだけで精一杯だった私に。
「おはよう」
そう、キラキラの笑顔で告げてくれる。
「……おはよう、ございます……」
カラカラの声でなんとかそう返すと、レオンが焚火の近くに椅子を置いて手招きをした。
「おいで。紅茶でも淹れよう」
そう言って鍋に火を掛け、『ウォーター』と軽く呟くと、鍋の中はあっという間に水で満たされる。
やっぱり便利だなー魔法って!
そうして二人で焚火を囲い、水に徐々に熱が伝わっていくのを静かに眺める。
何の会話もなくても居心地が良いのが相性の良い印だって何かに書いてあった気がするけど、
その点でいけば私はレオンと相性は良いみたい。
言葉なんかなくてもその麗しのお顔さえあれば私はいくらでも妄想することが出来るしねっ!
「今朝はあの爆音の処理をせずに済んで助かったよ」
プククッとレオンが口元に手を当てて楽しそうに笑う。
「……いやあの、さすがの私も、魔物がいるかもしれない場所であの爆音はまずいことくらい解りますよ!」
いくら私だってそれくらい解るもん!
「いつも、こんな鍛錬をしているんですか?」
淹れてくれた紅茶を一口啜り、そんなことを尋ねてみる。
小説の中でもそんな姿を描いたことはなかったし、なんだかレオンって努力しないでも何でも出来ちゃう印象があったから。
私の小説では、問題発生→フォレスと言い合いながら問題解決へ→女の子に感謝される、という一連の流れを
なんだかわちゃわちゃした感じで書いていくことが多かった。
デュレクでキャーキャー言われたり愛想を振りまくレオンを描くこともそれは多かったけど、
どちらかと言うと戦闘シーンを多く描いていたような気がする。
なので、ここに来てから初めて知る事も、実は多いんだよね。
……まぁ、ここは現実なのだから、当たり前なのかもしれないけど。
「うん。毎日の日課だね。鍛錬を怠けたら、ボクはきっとすぐに皆に呆れられてしまうだろうから」
綺麗な動作で紅茶を啜りながらそう言うレオンは、なんだか何かを諦めたような悲しい表情に見えた。
……何故そんなことを思うんだろう。
こんなに格好良くて完璧な人にそんな感情を抱く人なんて、いる訳ないのに。
不思議に思い、コテンと首を傾げた私に、レオンはフッと苦笑して話してくれる。
「……フォレス、アイツはさ、天才だ。剣の技術もそうだけど、敵の隙を見切る素早さや、反応速度、加えて『疾風』なんていう優れた特別技能を持っている。
……けどボクは、魔法適性に優れただけで、力もスピードも凡人だし、与えられた特別技能も、そう役に立つとは思えない」
……え、そんなことないんだけどなぁ……。魅了スキル、戦闘でも大活躍なんだけど……
けど、今は口を出すべきじゃないような気がして、黙ってレオンの言葉の続きを待つ。
「ボクの家──アウンスバッハ家の人間は、創世の頃に女神を助け、デュレクを救った一族の末裔だと言われている。
今は伝説に残っているだけで、真実を知る人間は何処にもいないけど……
けど確かに、ボクら一家には『女神の祝福』で全魔法に対する適性もあるし、異空間の使用も許されてるし、
他の人間よりも数段優れた『何か』を生まれつき持っているようなんだよね。
ボクの父は優れた商才を、お祖父様は強靭な肉体をそれぞれ与えられていたけど……。
ボクは生まれた時から平凡でね。ある時、言われたんだ。
──レオン、貴方は誰より優れた美貌を与えられたのね、って。
……笑っちゃうだろう? 美貌だなんて。何の役に立つって言うんだ。
言われた時はショックで、その日は一日膝を抱えて部屋で泣いていたっけ」
何処か遠い瞳をしてそう語るレオン。
……何を言うんだろう、この王子さまは。
美貌だなんて、望んで手に入るものではないというのに。
「自分の容姿が整っていることは、だから自覚しているんだ。
その為に女の子たちが騒いでくれることも、光栄だとは思うし、それには応えたいとも思う。
……けどさ、それだけじゃ、いつか飽きられてしまうだろうし、街の英雄の一族として、ダメだと思うんだよね」
だから、努力は続けないと、と、レオンは話をそう結んだ。
なんだか朝から重い話をさせちゃって申し訳ない気持ちだ……。
けど、私は知ってるよ、格好良いだけでSランクになんかなれない。
フォレスだって、街の人たちだって、レオンが格好良いから好きな訳じゃない。
私だって、それは勿論レオンの美貌にはドキドキしっぱなしだけど、
姿形を妄想していた時より、現実のレオンに関わった今の方が、ずっとずっと、レオンに魅かれている。
妄想の中のレオンも大好きだったけど、さすがに『恋』は出来ないもの。
伝えなくちゃ、レオンに。
なんだか凄く寂しそうだし、悲しそうだし、
今まで誰にも言ったことのないだろう告白を、他ならぬ私にしてくれたのだ。
元気にしてあげなきゃ、女が廃るってもんでしょ!
「レオン」
そう言って、私は恐らく、この異世界に来てから初めて、自分から隣に座るレオンの手をギュッと握る。
「そんな風に思わないで下さい。
確かにレオンは格好良いし優しいし……でもそれだけで、フォレスや街の人が貴方を慕っている訳ではないと思うんです」
そう告げる私を、レオンはその麗しの瞳でじっと見つめている。
……うう、恥ずかしくて今すぐ逃げたいけど、今それをしたら絶対後悔する自信がある。
頑張れ、私!
「レオンは、人の気持ちに添うことができる。
女の子限定かもしれないけど、困った人は放っておけない、熱い心も持っている。
おかげで私は救われて、今、こうして一緒に旅をすることが出来て、本当に幸せです。
……ねぇ、レオン。人を救うことって、問題を解決したりすることや、悩みを聞いてあげることだけじゃなくて……
その存在が、心を豊かにすることだって、あると思う」
そう。ギルドでレオンが言ってくれたように、ただ信じてくれる人がいる、それだけで救われることだってあるんだ。
「レオンの存在が、皆を幸せにしているんです。それって凄いことだと思いませんか?
格好良いからだけじゃないですよ。
その人の気持ちに添う優しさが、温かさが、きっと皆大好きだから」
だから、笑っていて欲しい。
そう願う私を、レオンがギュッと抱きしめた。
「……ありがとう、リコ。
……この手で誰かを守れるなら、出来るだけ手を差し伸べよう、そう思っていたボクは間違っていなかったんだね」
私を抱きしめるレオンは、ちょっと泣いているかもしれない。
けどきっと、それは悲しい涙じゃなくて……
「私は、レオンがいてくれるだけで、幸せです」
心から、思う。
小説の中の貴方より、現実の、こうして泣いたり笑ったり怒ったりするレオンが、
私は本当に好きだなぁ……と思うから。
「頑張るよ」
何処か吹っきれた表情で、ふと抱きしめてくれていた腕を緩めるレオン。
「……ねぇリコ、頑張るから、ご褒美をくれないか」
涙に濡れたその瞳で、私を見つめるレオン。
「……私に出来ることであれば……」
そう言うしかないよね!
だって好きな人の望みを叶えるなんて、私にとってもご褒美でしかないんだから。
「……敬語禁止。その口調も可愛いけど、なんだか、距離を感じてしまうから。
……もっと君の親しい存在に、ボクはなりたい」
ってえええェェ~~!?
なにそれ誰得、私得!?
……けど、出来るかなぁ…。未だにレオンと話すと緊張しちゃうんだけど……
「……や、あの……頑張ってみます……?」
「リ・コ?」
「頑張るぅ~!!!」
「良くできたね!」
そう言ってレオンは大層満足気な表情で笑った。
「……そうと決まれば、敬語を使う度に何かペナルティーを受けてもらおうかな」
レオンが、キラキラと楽しそうな光を湛えて私を見る。
「……ペナルティ?」
なにそれ怖い。
「……敬語を使う度に、ボクのお願いを聞いてね。……良いよね?」
何それ怖いってば!!!
「楽しみだなぁ~、何にしようかなぁ……」
フフフと、あの黒い笑顔がレオンの麗しの顔に表れた。
ギャァァ~~!! また眠れる獅子を叩き起してしまったぁぁ~~!!
「……お、お手柔らかに……」
と、私はビビって黒レオン様に懇願することしか出来なかった。
お読み頂き、有り難うございました!