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本の森に迷い込んだら  作者: 雪時
6/6

卵とフェアと。

ドラゴンの巣穴の小さい版みたいになった布団を綺麗に直してベッドメイキングする


と、思ったらなんだか布団がやけにしわになる


というか、布団の中に何かある?


覚えのない膨らみがある

何故だろう、子供の時以来感じたことのないファンタジー作品を読んで夢を見たときの高揚感のようなモノを感じる


ワクワクとドキドキ…何もなかったときの諦めも同時に感じながら布団をめくった。


ふぁさっ…


そこには…


あの夢で見たドラゴンの卵…によく似た色の小さな丸いものがあった


あの卵…なのか?これは…


にしては少し小さすぎるような…

大きさは具体的に言うなら手のひらサイズ、普通の卵よりは大きいが夢で見た卵よりは随分と小さかった


でも何もなかったわけではないのでちょっと嬉しい


自然と笑みもこぼれるというものだ


とりあえず手にとってみることにした。見れば見るほど不思議な色をしていた。茶と赤と緑…でも、混ざっているわけではない。あえて言うなら塗り重ねた、いや、違うか、とにかく複雑な色をしていた。恐らく人間にはこの色は表現できないのだろうなと思う。


とりあえず、出勤時間まで時間がない現実を思い出したので朝食の用意をする。


一応卵かもしれないので温めとくか…?という安易な考えで、布団を巣穴のように戻してから湯たんぽを作って適当に突っ込んでおいた。

急いでご飯を食べて用意を済ませ、いつも通り出勤する。


しかし、その足取りは軽い。


そして僕の働く書店、あまさわ書店についた


「おはよー、咲さん!」


超ご機嫌だった。


「お、おはようございます、店長…随分ご機嫌ですね。私、初めてみました、店長のそんなイキイキした顔。いつも死んだ魚のような目をしてたから…」


「おい(笑)何が死んだ魚だ、僕はいつだって少年のような澄んだ瞳をしてるだろう!」


「え?(今日の店長、ちょっとおかしいんですけど。頭おかしくなったのかな…もともとか…)」


バイトの咲さんが不審気な視線を向けてくる

何故だろうか。


「そういえば、フェアのことだけどさ。」


「はい、決まったんですか?珍しいですね!ギリギリじゃない店長なんて(笑)」


失礼な子だな。事実だけど。


「うん、ファンタジーフェアなんてどうかな?大人向けファンタジーから子供向けの童話まで。幅広く扱うの。中高生も楽しめるようにラノベや漫画のファンタジー作品もおいてさ!フェア用のスペース一面にファンタジー作品を積んで、絵とかも描いたPOPを作品一つ一つにつけよう!どう…?」


「いいんじゃないですか(笑)店長そんな顔も出来るんですね、なんかキラキラしてましたよ、今」


どんな顔してたんだろう、なんか恥ずかしい…


思えば、こんなに話したのは久々かもしれない。いつもつまらなそうな顔をしてたような気がする。そりゃ死んだ魚扱いされるわ(笑)


一日中あの(かもしれないもの)とファンタジーフェアのことを考えながら仕事をした。フェア中に推す作品選びでずっとパソコンとにらめっこしてリストを作り、スペースのレイアウトを考え、企画書を作り、アルバイトさんやパート、社員の皆に企画書を見せてフェアに備える


そして、その日の就業時間が終わると一目散に家路についた


今までで一番テキパキと仕事をしたはずなのに、今までで一番疲れが残ってない気がした


それはもう、走るような勢いで急いで帰る


家に着いたら手も洗わず、上着も脱がず、急ぎ足でベッドもとい卵のある巣穴に駆け寄った。


ドキドキしながら、されど手つきはそっと…


朝と同じように慎重に布団をめくり、(かもしれないもの)を手に取る


温かかった。湯たんぽのせいかもしれないが温かく心なしかドクンドクンと鼓動が伝わってきたような気がした。そっと耳に近づけて聴いてみるがよくわからなかった。


しかし、何故だか、生きている


そんな気がした。


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