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26,サンタの真実

 ヨーロッパ経由で北極に帰ったクウデル・B・サンターズは、最高議会特別議員たちと極秘の会談を持ちました。


「わしが北アメリカ支部長のダークサイド? そう説明されたのかね? ふうーっふっふっふっふ」


 困惑する議員たちにクウデル・B・サンタは説明しました。


「確かに、わしはあやつの双子の弟ではない。あやつの中から飛び出して来てしもうた物じゃ。しかし………、自分があやつのダークサイドかと問われれば、まあ、確かに、大切な貯金を、

 パアーッと楽しく使ってしまえ!

 とそそのかすんじゃから、ふうむ、悪いサンタなんじゃろうのう? ふうーっふっふっふ」


 唯一、あまりサンタらしくない嫌らしい含み笑いをして、クウデル・B・サンタは説明を続けました。


「わしは自分ではあやつのハッピーサイドじゃと思っておる。

 あやつが現役のサンタとして活躍していた頃、あなた方はご存じじゃろう? そりゃあもう、最高にサンタらしいサンタクロースとして世界中で大人気じゃった! 世界中あちこちに呼ばれて、どこでも子供たちに大人気じゃった。大人たちにもな。

 まあ、確かに、忙しすぎて疲れてもいたじゃろう。しかし……

 現代のクリスマスとはなんじゃろうのう?

 わしらサンタはニコニコ笑顔を振りまいて、クリスマスのイメージマスコットのような物じゃ。クリスマスといえば子供が主役じゃろうが、そんなイメージの裏側で、大人たちの思惑でそのイメージを利用した大きな金が動いておる。

 みんなに大人気のわしは、大企業とタイアップして彼らの商品の宣伝をしてやった。おかげで会社は大もうけ、わしも契約金をがっぽがっぽともらって、サンタの国にはずいぶん貢献したじゃろう?

 わしはお偉いさんに毎日接待を受けて、毎日のようにホリウッドセレブたちの豪勢なパーティーに呼ばれて、贅沢三昧の暮らしをしておった。

 そんな自分や、サンタクロース、クリスマスのあり方に、ふと、疑念が湧いてしまったんじゃな。

 こんなに派手に浮かれ騒ぐのが本当のクリスマスなんだろうか?とな。

 そうして暗い顔で鏡を見とった時に、出てきてしまったのが、わしじゃ。

 おまえさんら、最近やつに会ったかね?」


 議員たちは顔を見合わせ、「いえ」とクウデル・B・サンタに答えました。

「北米支部はなにしろ忙しいですからな。彼もいつもいつも忙しいと、もう10年以上ここ北極のサンタの国にも来ていません」

「サンタがそんなに長く、グランドサンタのいるサンタの国に帰ってきていないじゃと!?」

 クウデル・B・サンタは大仰に驚いて見せ、優しい眼差しで微笑むと、続けました。


「やつは今ではもう、全然ハッピーな笑い声を上げず、いつも陰気に考え込んでばかりいるのじゃないかな?」


 議員たちは先頃の電話会談のことを思い出し、難しい顔でうなずきました。


「ハッピーすぎるわしを追い出したものの、今度はサンタらしいかわいらしさをすっかり無くしてしもうて、忙しさに追われるふりをして、その実、サンタたちや、わしや、グランドサンタに会うのが怖いんだろうよ。哀れなやつじゃ。

 あやつから飛びだしたわしは、最初の頃は根暗になってしもうたあやつに代わって表のサンタのイベントをこなしておったのじゃ。ところが、わしもいかんのが、まあ今回のニッポンでの行動を見ておれば分かるじゃろうが、わしは楽しいことが大好きすぎて、ハッピーに歯止めが利かんのじゃ。当時も馬鹿騒ぎをやりすぎて、あやつはすっかり怒ってしまって、わしを捕まえて、北極の氷の刑務所送りにしたと、そういうわけじゃ」


 話を聞いた議員たちは困った顔でクウデル・ハッピー・サンタに言いました。


「また元通り一人には戻れないのですか? そうすればバランスが取れて、ちょうどよいサンタになるのではありませんか?」


 ふうむ、とハッピーサンタは考えました。


「わしもそれは考えたのじゃが、どうもやつの方でまだその気がないらしい。生真面目な修道士みたいになりおって、つまらん。わしの方でもあんな陰気なやつと合体するのはお断りじゃ」


 ハッピーサンタはふーんとそっぽを向いて、悪戯っぽく言いました。


「氷の刑務所の方がのんびりできて快適じゃわい。見た目よりもずうっと温かいし、瞬間冷凍の食べ物は新鮮で美味いからのう。ま、サンタなら常識じゃろうが」


 ハッピーサンタにお茶目に目を向けられて、議員サンタたちは可笑しそうに微笑みました。


「確かにそうですな。では、あなたご自身に、サンタクロース刑務所に入っていることに不満はないわけですね?」

「うむ。……ああ、そうじゃ、あるある、一つあるぞ!」

「なんでしょうか?」

「ニッポンからスリーデーエスを持ってくるのを忘れておった。いやあ、最近のコンピューターゲームは面白いのう? 新作ソフトも届けてほしいのう。それから、ナンテンドー・ViViや、プレイ・ポート・ポータブルやプレイ・ポート3も欲しいのう。ああ、またすぐにもニッポンに帰りたくなってしまったわい!」

 議員たちは苦笑して伝説のハッピーサンタをいさめました。

「最低でもクリスマスシーズン以外はどうかご勘弁を。おもちゃの新製品はできるだけ差し入れるように手配いたしますので、どうぞそれで満足していてください」

「はいはい。いたしましょう。ほおーっほおっほおっほお」

 議員たちはとても幸せな気分で和んでしまいました。

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