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24,船を去る

「まるでドバイだな」

 モニターでオークションの進行を眺めながら三太郎は呆れたように言いました。次から次に超高級品が競りにかけられて、ものすごい金額がぽんぽん出ています。

「本当にあの伝説のサンタのおかげで日本の今年のクリスマスは大フィーバーだったなあ」

 自分が仕掛けておきながら三太郎は他人事のようにニタニタ笑いました。

 イライラしたように三太夫がききました。

「あれは、悪のダークサンタじゃあなかったのか?」

「さあな。俺は知らねえ。俺はただサンタクロースどもの困ることをしてやっただけだ。どうだ? 困っただろう?」

 三太郎は見張りの警官サンタたちに意味深な視線を投げかけました。彼らは固い顔を崩さないで無視しています。きっと上の方から、伝説のサンタに関してはいっさい事情を知らなくてよろしい、と厳しく言いつけられているのでしょうが、彼らだってサンタの一員ですから内心では興味津々のことでしょう。

 三太夫はがっかりしてため息をつきました。

「けっきょくオレは、ただの馬鹿騒ぎの空騒ぎだ。こんなことじゃあ、黒サンタ首は決まったようなもんだな」

「いいんじゃねえかあ?」

 三太郎がまた無責任にニタニタして言いました。

「結果オーライよ。最後には子どもたちも大喜びだったじゃねえか? いやいや、なかなか、いい仕事したんじゃねえか? なあ、悪いサンタのお兄ちゃん?」

 慰めているのか、からかっているのか、

「うるせえよ」

 三太夫はすねた顔でチラッと三太郎を睨みました。三太郎は面白そうに眺めてききました。

「おめえのヒーローはなんだった?」

「あん?」

 何をきくんだ?と三太夫は三太郎の顔をまともに見ました。三太郎はニタニタと、先輩黒サンタの貫禄で言いました。

「おもちゃってのはちょいとかさばるアルバムみてえなもんじゃねえか? 遊ばなくなっても、捨てずにとっておきゃあ、そうさな、大人になって、パパやママになって、ある時、実家の押し入れからひょっこり段ボールにしまわれたのが出てきてよ、ああ懐かしいなあとしみじみしながら、自分がこれで遊んでいた頃どんな子どもだったか思い出すのさ」

 三太夫は面白くない顔でじっと聞き入っていました。三太郎は言います。

「で? おめえのヒーローはなんだった?」

「オレは……」

 三太夫は長い顔でだいぶ前の子供時代を考えました。

「特捜ロイド ヒュージャン」

「渋好みのお子さまだな」

 三太郎にニヤニヤ言われて三太夫は赤くなって、逆にききました。

「あんたはなんだったんだよ?」

「俺はメフェラス星人さ」

「うん? そりゃあヒーローじゃなくて悪役だろう?」

「ああそうさ。大のお気に入りだったぜ」

「なるほど、そいつあ筋金入りだ。負けましたよ、先輩」

 三太郎はニッと笑い、警官サンタに言いました。

「さて、警官諸君。脱獄犯を連行するには今が潮時と思いますがねえ?」

 三太夫が眉を曲げて、気を使ってききました。

「いいのか? このまま挨拶もなしで?」

 三太郎はどっこいしょと立ち上がりました。

「いいってことよ。本物のサンタは夢の中にだけ訪れるものさ」

 警官たちが頷き合って、三太郎の肩に手をかけました。

「では黒岩三太郎、行くか」

「へいへい。お世話かけやす」


 サンタ警察の高速スパイボートがスーッと豪華客船に横付けして、特殊なシャボン玉に入れられた三太郎が下ろされ、海に飛び込んで逃げられないように足かせまでかけられ、そのまま北極の警察本部へ連行されていきました。

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