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21,ヒーロー・バトルロワイヤル

「先輩ヒーロー軍団、出動! ええい、とにかくサンタをさらって、イベントをぶち壊してしまえっ!」


 尾羽黒三太夫の指令で旧シリーズのヒーローたちが超豪華客船の船内にドリームワープしてきました。

 そもそも三太夫の計画では、まず現役ヒーローズが悪役として登場し、旧ヒーローズが正義のヒーローとして悪役現役ヒーローズをやっつけて、念のため伝説のサンタを船外に避難させて、うやむやの内にシークレットイベントを中止に追い込む、となるはずだったのですが……

「サンタを奪えーっ!!」

 ワーッと旧ヒーローたちは現役ヒーローたちに襲いかかり……日本のサンタ支部長の依頼は隠密裏の処理のはずでしたが、そんなことはすっかり忘れ去られて、今やぐちゃぐちゃの大混戦です。ま、ごちゃごちゃ複雑な設定を詰め込みすぎてシナリオが破綻、締めがぐだぐだのまま尻切れトンボに終わるというのは、特に意欲的な作品にありがちなことです。

「こらあっ、先輩の言うことを聞きやがれ!」

「黙れ! 己の欲望のために悪に魂を売った堕ヒーローめ!」

 わーわーぎゃーぎゃーとののしり合いながら、派手なエフェクトの武器を振り回して火花を散らして小規模な爆発を起こして、お客たちは大迷惑です。それに、新しく乗り込んできた旧ヒーローたちは現役ヒーローたちの2倍、300人はいるでしょうか? いかに巨大な超豪華客船でも完全に定員オーバーです。

 ヒーロー同士の闘いは船内全体で繰り広げられ、阿鼻叫喚の大騒動です。

 そんなヒーローたちの大混戦の中、小さい、明らかに子どものヒーローが混じっていました。

 この夢の世界のホスト=イメージとエネルギーの源である、今自分の家で眠って夢を見ている子どもたちです。

 ザウルスナピンクと因縁の対決をしているヤンチャナイエローが苦戦して、

「ヤンチャナブラック!」

 と応援を求めました。

「僕は……」

 子どものヤンチャナブラックは自分で変身を解いてしまいました。

「ブラック!」

「僕はブラックじゃない!」

 太陽くんは、えい!とヤンチャナイエローを蹴って膝かっくんさせました。

「僕はやっぱりザウルスナンダーが好きだ! ヤンチャナンダーなんて大っ嫌いだ!」

「そんな……」

 子どもに面と向かって大っ嫌い!と言われては悪を気取ったヒーローにも、ガアーーーン……… と、ショックです。きっと一生のトラウマになることでしょう。

 太陽くんの他にも、小さな変身ヒーローは続々変身を解いて子どもに戻ると、現役ヒーローの側につきました。

 せっかくのリッチでゴージャスなクリスマスイブを台無しにされて、すっかりうんざりしているお客さんの中からも、旧ヒーローに対する非難の声が飛びました。


「何してんだよ、キューキューレッド! 地球をサイガイダーの大ハルマゲドンから救ったおまえが、クルーザーを危機に陥れてんじゃねえよ!」


 実に具体的な非難の声に「レスキュー武隊キューキューGO」のキューキューレッドは、うっ、と胸を突かれました。

 具体的なヤジは他のお客さんからも飛び出しました。


「ボウケンスルレッド! 世界プレシャスをネクラシンジケートから守り抜いたあんたが、なんで俺たちのサンタを奪うんだよ!?」


「ハリセンレッド! 宇宙ヤギューの陰謀を叩きつぶしたおまえが、陰湿な真似してんじゃねえぞ!」


「クウヤ! 俺たちの笑顔を守ったおまえが、俺たちのクリスマスを奪うのか!?」


「オニキ! 少年を導いた大人のおまえが、こんな子供じみた真似をしてかっこ悪いぞ!」


「デンドオ! 不運ばっかりだったからって今さら俺たちに八つ当たりしてどうする!」


「アルテラマンはどうした!?」


 とても具体的なヤジを熱くなって飛ばしているのは男性のお客さんばかりで、連れの女性のお客さんはその熱に『え〜…』と引き気味です。ヤジを飛ばしているかっこいいお兄さんたちやいい年したおじさんたちは、昔の特撮ヒーロー小僧たちでしょう。

 女性陣がつまらなそうに冷めた顔をしていますが、女の子に大人気の「ピュアディア」が不参加なのが残念です。京映ドル箱のピュアディアは、毎年現役シリーズと歴代大集合シリーズの映画がそれぞれバラで制作され、毎年大集合して顔を合わせているピュアディア戦士たちは歴代の結束が強く、全シリーズ通してのおもちゃシリーズも展開されていて、三太夫の悪の誘いに乗ってこなかったのです。それにアニメですし。実写化されたときに「イメージと違う」とか色々クレームが来そうです。基本ミニスカートの衣装の実写版は大きいお兄さんの方が喜びそうですし。

 同じく新旧シリーズでサーガ(伝説)が確立している「アルテラマン」にもふられてしまいました。

 最近「号面ライダー」と「スーパー武隊」も抱き合わせで歴代ヒーロー大集合映画を展開していますが、そもそも毎年別々の世界観で新作を制作しているのが裏目に出て、結びつけるのはいかにも無理やり感があります。やっぱり昔のヒーローは小さい子どもたちにピンと来ないんじゃないかなあ?


 さて。


 実に具体的なヤジを飛ばされた旧ヒーローたちは、すっかり闘争心を失ったように棒立ちになりました。

 昔自分たちのファンだった元子どもたちにヤジられて、心にグサグサ突き刺さったのでしょう。


 その様子をモニターで見ていた三太夫は

「ええい、何をしておるか、使えない焼却ゴミどもが!」

 と歯ぎしりしました。


 ヒーロー同士のバトルロワイヤルがだんだん収まっていく中で、

 大ホールの中央で、伝説のサンタが三之助と小三太に手伝わせて、四角い柱を包んでいる布を取り払いました。途端に、パアッと、白い冷気が逃げ出して広がりました。

 現れたのは、4本の金のフレームに納まった、ガラスの鐘でした。ちょっと変わっているのは、鐘をぶら下げている金のフレームの上に、同じ金の、昔の蓄音機みたいな大きなラッパが開いていることです。

 これはいったいなんなのでしょう?

 そして時刻は、今、0時、つまり、イブの24時になりました。

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