13,迷惑なおまけ
全国のおもちゃ屋さんやデパートでも、伝説のサンタ効果で子どもたちのプレゼントへの期待はハイテンション。ねだられる親たちも浮き浮き気分で、まあせっかくのクリスマスなんだからと、子どものニッコニコの笑顔を見たくって、ついついねだられるままにリクエストのおもちゃを買ってあげました。
たいていの子どもは「え〜〜っ、これじゃないい〜〜〜っ!!」ということがないように、いっしょにお店についていって、「これ!」とお目当ての物を指し示して買ってもらいます。
サンタに扮した店員さんに「はい、どうぞ」と、クリスマスバージョンのお店のイラストの大きなビニール袋を手渡されて、ニッコニコで抱えて帰ります。
ところで。
今も昔もヒーローのおもちゃは子どもたちに大人気です!
楽◯市場おもちゃ 週間売れ筋人気ランキングによると、
3位 仮◯ライダー鎧◯ 変身ベルトDX戦極ドライバー
12位 仮面ラ◯ダー◯武 アームズウェポン 03ブドウ龍砲
13位 獣◯戦◯キョウ◯ュウジャー 変身銃ガブリボルバー
22位 ◯電◯隊◯ョウリュウジャー 変形銃ガブティラ・デ・カーニバル
23位 ド◯ド◯!プリ◯ュア プリティーMyパソコン
27位 ウル◯ラマンギンガ DXギンガスパーク
と、変身ヒーロー、ヒロインのおもちゃは大人気です! ……ちょっと微妙な順位の気がしますが、……今年はやっぱりスマホおもちゃと、アン◯ンマンが強いかなあ……
懲りずに元気を出して行きましょう!
Amaz◯nおもちゃ人気度検索では、やった!
トップ 仮面◯イ◯ー鎧武 変身ベルトDX戦極ドライバー
4, ◯キ◯キ!◯リキュア マジカルラブリーパッド
6, 獣電◯◯キョウ◯◯◯ジャー 変身銃ガブリボルバー
10, ◯◯戦隊◯◯◯リュウジャー 超カミツキ変形DXギガントブラギオー
11, ◯◯ライダー鎧武 DX無双セイバー&メロンロックシード
17, 獣電戦隊◯◯◯◯◯◯ジャー カミツキ合体DXキョウリュウジン
と、変身ヒーロー、ヒロインのおもちゃは大人気です! えっへん! ……部外者にはよく分からない、変身ヒーローには似つかわしくない謎の単語が含まれている気がしますが、実に個性的です!
トイザ◯スでお買い物した東京都練馬区の小池太陽くん(6歳)のお宅にお邪魔してみましょう。
大きなビニール袋を抱えてご機嫌な様子で帰ってきた太陽くん。
「クリスマスの朝まで開けちゃ駄目よ?」というのがプレゼントのお約束ですが、子どもたちはもう楽しみでしょうがなく、ビニール袋から取り出して、クリスマス用の綺麗な包装紙を早く破りたくてしょうがありません。プレゼントを開けるまでのジリジリした待ち遠しさが実のところ一番楽しい時間かも知れません。
太陽くんも「開けちゃ駄目よ?」というママのけんせいに、「ちゃんと入っているか見るだけだよ」と、もう何度もビニールの口を広げて中を見ているくせに、包装された商品を床に取り出しました。
すると、もう一つ、買った覚えのない包みが入っていました。
「ママー、変なのが入ってるー」
と呼ばれたママは、あら嫌だ、他のお客さんのが紛れ込んじゃったのかしら? と思いましたが、その四角い包みはお店の物とは違う包装紙で、ベタッと、
「サンタからのとくべつプレゼントだよ。あそんでね」
と、サンタマークのシールが貼られていて、ママはテレビで見た立派なサンタクロースの公認シールを思い出しました。買いに行ったお店にも「サンタクロース公認シール」の貼られたおもちゃはあったのですが、予算オーバーの商品ばかりで、幸い太陽くんの欲しいのはもっと安いおもちゃだったのでほっとしたのでした。
あれの関連のキャンペーンなのかしら? お店では何も言ってなかったけれど? と、よくよく見ると、もう一枚、大人用の小さな文字の印刷されたシールが貼られていました。
「保護者の皆様へ。
この度はヒーロー・ヒロインのおもちゃをお買い求めいただきまことにありがとうございます。つきましては感謝の印として、おまけの無料プレゼントをお受け取りください。
こちらの商品は工場の生産ラインの終了した少し古い物ですが、お子さまにいっしょに遊んでいただけましたら幸いでございます。
日本ヒーロー・ヒロインおもちゃ協会」
はっきり無料と書いてありますから、どうやら悪質な詐欺の類ではなさそうです。太陽くんも興味津々で覗き込んでいますし、
「開けちゃおうか?」
と渡すと、
「うん!」
と、太陽くんはクリスマスの朝の予行練習とばかりにビリビリ包装紙を破りました。
すると、出てきたのは…………
「あら、ザウルスナンダーの黄色いの。よかったわねえ?」
(※お断り=これより著作権に配慮し、ヒーローを小説オリジナルにさせていただきます。万が一設定の似ている実在のヒーローがいても、それは偶然の一致の気のせいですから、深く追求しないでください。)
それは太陽くんの大好きなスーパー武隊の黄色のヒーローの人形でしたが…… おや? どうしたのでしょう? 太陽くんは変な顔でじいっと人形を見ています。
「こんなの知らない。ザウルスナンダーに黄色なんていないもん」
「あら、そうだった?」
ママがよくよくパッケージを見ると、それは「雷獣武隊ザウルスナンダー」ではなく、「激竜武隊ヤンチャナンダー」でした。ほぼ一回り昔のスーパー武隊です。
ああ、そうだった、とママは思い出しました。
但し書きにありました、これはもう工場の生産の終わってしまった古い商品の、おそらくは店で売れ残って返品された、メーカー在庫品なのでしょう。
「でもいいじゃない、これもスーパー武隊の仲間よ?」
「うーん……」
浮かない顔で知らないスーパー変身ヒーローを見ていた太陽くんでしたが、自分がすでに持っている「ザウルスナンダー」のヒーローたちの人形で遊びだして、けっきょく「ヤンチャナンダー」の黄色いのは箱に入れたまま放り出されています。
ちなみに太陽くんが買ってもらったクリスマスプレゼントは「ザウルスナンダー」の変身銃でした。
すっかりテンションの下がってしまった太陽くんにママは苦笑して、余計なおまけおもちゃにため息をつきました。
余計なゴミが増えちゃったじゃない。ゴミを捨てるのもただじゃないんですからね、と。
あーあ、せっかく子どもに遊んでもらえると思った売れ残りのヒーロー人形はがっかりです。えーと…、日本ヒーロー・ヒロインおもちゃ協会、ですか? きっと善意からなのでしょうが、罪なことをしてくれたものです。




