三年後のネィバーランド
この度まことに勝手ながら特別編を書いてみました。最後までお付き合いいただけたら光栄です。それではどうぞ!
春の麗らかな日差しがさしこむシャイア城にて。
ポンポンポンポンポンポン
「…はぁ〜…んでオレがこんなコト…」
頬杖をついてブツブツ愚痴を言いながら、書類にハンコを押している銀髪の彼は"ルゥ"。
「大体…教員免許に国王のハンコなんて要らねぇだろ?」
ポンポンポンポンポンポン
ブツブツ言いながら、次々と山になった教員免許にハンコを押してゆくルゥ。
「〜っ!シャーン!!飽きた〜っ!!」
ルゥはハンコを朱肉の上に置いて顔をあげた。
「はいはい 文句言わないで下さい国王様?」
ズズ…
椅子に座って紅茶をすすりながら本を読んでいる赤髪の彼は"シャーン"。
「っテメ!何優雅に紅茶なんかすすってんだよ!?」
ルゥは、そんなシャーンを見て思わず立ち上がる。
「いや暇だし」
本のページを捲りながらシャーンが言った。
「なら手伝おうよ!?」
ルゥが頭を抱えながら言うと
「いや面倒臭いし」
紅茶をすすりながらシャーンが言った。
「…紅茶なんかすすってもお前の足は長くなんないぞ?」
「ゴハッ!?」
ルゥが言うと、シャーンが噴き出した。
「ほ…本当かルゥ?!」
本と紅茶をテーブルの上に置きながらシャーンがルゥに問うと
「当たり前だ」
溜め息まじりにルゥが答えた。
「でもだってホラこの雑誌に!!」
そう言いながらテーブルに置いてあった雑誌をルゥの所に持ってゆくシャーン。
その雑誌には
+ + + + + +
超簡単!
一日三回の紅茶であなたも理想の足長おじさんに!!
+ + + + + +
って書いてあった。
「…泣けてきた」
目頭を押さえるルゥ。
「そんな…この結果が捏造データなんて…!?」
信じられないという風に頭を抱えるシャーン。
「…シャーン…なんか…ゴメン…」
下を向くルゥ。
「くそぅ!雑誌なんて大っ嫌いだ!!」
悔しそうに雑誌を床に叩き付けるシャーン。
そして
ストン
と体操座りし始めた。
「たっ立て!立つんだ兵士長!!」
テーブルを叩きながらルゥが言うと
「俺の教員免許証にハンコが欲しいんだが」
って背後から声がした。
「いっ今それどころじゃないんだって!!」
シャーンの頭を優しく撫でながらルゥが言った。
「今すぐ欲しいんだが」
すると再び背後から声がした。
「ええい聞き別けの悪いヤツめ!!」
ルゥはそう言うと、自分の後ろに立っていた男の教員免許証をひったくって
ボスッ
っとハンコを押した。
「どーも」
すると男が言った。
「…?」
その時、あることに気が付くルゥ。
「セルシオ?!」
ルゥがバッと振り返ると、そこには自分と同じ顔をした"セルシオ"が立っていた。
「…人違いだ」
セルシオが言った。
「違うかぁ!!」
去ろうとしたセルシオの首根っこをひっ掴むルゥ。
「…なんだ?」
イラッとしてルゥに向き直るセルシオ。
「テメェが三年前に行方くらましやがったからオレが国王様になっちまったじゃねぇか?」
引きつった笑みを溢すルゥ。
「はっ…よかったな?」
鼻で笑いながらルゥの手を払うセルシオ。
「いやよくねぇだろ!!?本来ならお前が国王―…」
「俺は今日から教員だ」
ルゥの言葉を遮るように、セルシオは教員免許証をヒラヒラさせながら言った。
「っ!!そんなものっ!!今すぐ撤回してやる!!」
ルゥがセルシオの教員免許証をひったくろうとした瞬間
「そんな事、させるわけ無いだろう」
軽やかにバック転をして距離をとるセルシオ。
そして
スチャッ
「すいませーん 国王様がご乱心なんですけどー」
仮面を装着したセルシオが言った。
バァン!!
「何ですって!?」
瞬間、緑髪のフィーナが扉を勢いよく開いた。
「ああお客様!!大変申し訳ありませんでしたっ!!さっご安心してお帰り下さいっ!」
フィーナがセルシオにペコペコ頭をさげながら言った。
「ああ そうさせてもらう」
ポケットに手を突っ込み、平然と歩き出すセルシオ。
「! ちょっ待てよセルシ―…」
「ルクレツィア様!?国王は厳粛かつ冷静に務めるようにとあれほど申し上げましたよねぇ?!」
セルシオを追い掛けようとしたルゥの首根っこを掴んでフィーナが言った。
「今それどころじゃないって!!あいつはセル―…」
ルゥが言うと
「言い訳なんて聞きたくありません!!さぁお説教部屋に参りますよ!!」
フィーナは有無を言わさずルゥを引っ張っていった。
「…ふっ」
そんなルゥを見て、セルシオが微笑した。
「ぶっ殺―…」
「ルクレツィア様!!」
ルゥの暴言が言い終わる前に喝を入れるフィーナ。
「バケツ持ち追加です!」
「わーん!」
可哀想な国王様でした。
「…俺は?」
…シャーン…まだそこに居ましたか…
ポカポカ陽気の中、一人のお姉さんがスキップしながらやって参りました。
「にゃんにゃんにゃらら〜ん♪」
鼻唄まじりに上機嫌で道をゆく猫耳お姉さんの名前は"アミュ"。
「にゃ〜ん!国立病院に到着にゃ〜♪」
微笑みながら病院に入ってゆくアミュ。
どんっ
「にゃ!!」
「きゃ!!」
病院に入ってすぐ、アミュは人にぶつかってしまいました。
「ご…ごめんなさいにゃ」
アミュが起き上がりながら言うと
「わ…私の方こそごめんなさいっ」
服についた汚れを叩き落としながらぶつかられた方の人が言った。
「…?」
何かに気が付くアミュ。
「…エリたん?!」
驚いたようにアミュが言うと
「エリたん…ってアミュ?!」
ぶつかられた方の金髪の女性"エリア"が言った。
「にゃ〜!久しぶりにゃ〜♪♪元気だったにゃ〜?」
がバッ
エリアに抱きつくアミュ。
「きゃあ?!え?…あ、うん!私は元気よ!」
驚いた後、ちゃんと答えるエリア。
「あ…アミュこそ…元気してた?」
微笑みながらエリアが尋ねると
「うにゃん♪」
エリアを離しながらアミュが頷いた。
「そっかそっか!良かった―…」
ここで何かに気が付くエリア。
「…なら何で病院に?!」
エリアが問うた。
「にゃにゃ!?そう言うエリたんこそ!!」
質問に質問で返すアミュ。
「あ、えっと、私はここのお医者さんなの!」
エリアが答えた。
「にゃ!?エリたんがお医者さん?!」
驚くアミュ。
「うん!私は回復魔法だけが取り柄だしね♪」
にこっと笑うエリア。
「ふにゃ…知らなかったにゃ…」
アミュが呟くと
「アミュはどこか具合悪いの?」
ってエリアが尋ねてきた。
「にゃ!違うにゃ!あたしはここに診察してもらいに来たにゃ〜♪」
微笑みながら答えるアミュ。
「診察?」
小首を傾げるエリアに
「にゃは♪」
自分のお腹を摩って答えるアミュ。
「…へ?!もしかしてアミュ!?」
アミュの顔を見るエリア。
「うにゃん♪もしかしてにゃ〜♪♪♪」
にこっと笑いながらアミュが頷いた。
「わぁ!なら私の家で診てあげるわ!」
アミュの手を取りながらエリアが言った。
「ふにゃ?エリたん仕事は?」
小首を傾げるアミュ。
「今日の仕事は午前中だけなの!それに、一般診察はもう締め切ったわよ?」
小首を傾げ返しながらエリアが言った。
「にゃんですとお!?」
仰天するアミュ。
「ふふっ♪さぁ行きましょ!」
にこっと笑いながら、エリアはアミュを引っ張っていった。
エリアはアミュのお腹に手を当てて目を瞑った。
ふわわわ…
「!」
すると、エリアの手が光り出した。
「…」
しばらくすると、エリアはアミュのお腹から手を離して目を開けた。
「…どうですにゃ?」
ドキドキしながらエリアに尋ねるアミュ。
「おめでとう!三ヶ月よ!!」
にこっと微笑みながらエリアが言った。
「にゃ〜!!やったにゃしおり〜ん!!」
足をバタバタさせながら喜ぶアミュ。
「しおりん…って、あのシャーン似のシオンの事?」
小首を傾げるエリア。
「にゃ!!しおりんとあんな短足を一緒にしないで欲しいにゃ!!」
プクッと膨れるアミュ。
「ふふっごめんなさい♪」
微笑みながら謝るエリア。
「…でもいいなぁ〜」
羨ましそうにアミュを見ながらエリアが言った。
「はにゃ?」
小首を傾げるアミュ。
「赤ちゃん…ジャンヌもなのよ?」
プクッと膨れながらエリアが言った。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「はにゃああああ!!?」
思わず仰天するアミュ。
「めっメガネが妊娠したのにゃ?!」
そして聞き返した。
「うん」
頷くエリア。
「だだだ誰の子にゃ!?」
信じられないという風に頭を抱えるアミュ。
「…分からないの?」
エリアが小首を傾げながら言った。
「にゃ?」
その行動に小首を傾げ返すアミュ。
「…」
「…」
「…」
「…まさか」
アミュはヘラッと笑いながら
「…短足?」
って言った。
「うん」
頷くエリア。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「はにゃああああ!!?」
再び仰天するアミュ。
「まままマジかにゃ?!」
聞き返すアミュに
「うん マジよ」
頷くエリア。
「にゃんですとお!!?」
そう言いながらアミュは立ち上がると
「行くにゃエリたん!!」
って言った。
「? どこに?」
小首を傾げるエリア。
「…二人をお祝いに行くにゃ♪」
ニヤリと笑いながらアミュが言った。
「わぁ!楽しそう!!」
にこっと笑うエリアでした。
雲ひとつ無い青空の下、伸びをしながら家路につくシャーン。
「はぁ…疲れた…」
そしてシャーンは自宅の前にやって来た。
「はぁ…疲れる…」
溜め息をつきながらドアを開けるシャーン。
「…ただいま―…」
「「お帰りなさい!!」」
「うお!?」
シャーンがドアを開けると、玄関には
「エリアに猫?!」
エリアとアミュが立っていた。
「ふふっ♪久しぶりねシャーン」
微笑みながらエリアが言った。
「あ…ああ…久しぶり…」
突然の二人の登場に困惑気味に挨拶するシャーン。
「にゃは♪相変わらず短い足してんにゃ〜?」
そんなシャーンを見てアミュが言った。
「やかましい」
そう言った後、シャーンは
「どうしたんだ突然?」
って二人に尋ねた。
「にゃは♪あたし達は〜」
「シャーン達をお祝いしに来たの!」
二人が微笑みながら言った。
「お祝い?」
シャーンが小首を傾げていると
ぶくぶくーっ
「「!!」」
床から緑色の髪を三つに三編みした"ジャンヌ"が湧き出てきた。
「ゲヘヘ!早かったわね!」
眼鏡をかけ直しながらジャンヌが言うと
「頼むからそういう風に現れないでくれ」
頭を抱えながらシャーンが言った。
「ゲヘヘ!さあお祝いよ!!」
「いわゆる無視ってヤツだなオイ」
そう言った後、シャーンは
「?!」
ジャンヌが抱えている物に気が付いた。
「待て待てなんだそれは!?」
シャーンがジャンヌを呼び止めながら聞くと
「ベイビー」
って答えるジャンヌ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「いつ産まれたのさパー子!?」
「そうだぞジャンヌ!!」
驚いたように尋ねるルゥとシャーン。
「ってルゥ?!」
更に驚くシャーン。
「いつの間に俺の家に!?」
「んなこたぁどうでもいい!!いつ産まれたんだパー子!?」
シャーンの質問を流してジャンヌに尋ねるルゥ。
「二月二十九日よ」
「テメェの誕生日なんか聞いてねぇんだよパー子!」
「なんでジャンヌの誕生日知ってるんだルゥ!?」
別々の質問をしまくるルゥとシャーン。
「この子が産まれたのは今日よ」
そんな二人を見て、エリアが言った。
「「今日?!」」
聞き返すシャーンとルゥ。
「自宅出産らしいにゃ〜」
のほほんと産まれたての赤ちゃんを眺めながらアミュが言った。
「なんで言わねぇんだ?!」
頭を抱えながらシャーンがジャンヌに言うと
「なんとなく」
って答えるジャンヌ。
「なんとなく!?」
ぞんざいな扱いにわめくシャーン。
すると
「ほぎゃあほぎゃあ!」
「「!」」
赤ちゃんが泣き出してしまった。
「「…チッ」」
舌打ちをしてシャーンを睨むエリアとアミュとルゥとジャンヌ。
「怖ぇよお前ら?!」
突っ込むシャーン。
「まぁいいわ ほい」
ポイッ
「うをい?!」
ジャンヌが赤ちゃんを投げてよこしたので慌ててキャッチするシャーン。
「泣き止ませろ☆」
そしてジャンヌが言った。
「…はい」
素直に従うシャーン。
「さあお祝いよ!!まずはジェンガね!!」
「「地味だな?!」」
そして五人は居間へと歩き出した。
「お。そう言えば名前とか決めたのパー子?」
居間に着くと、ルゥが言った。
「赤子」
さらりと答えるジャンヌ。
「頼むから名前だけは真剣に考えてくれジャンヌ」
赤ちゃんを揺らしながらシャーンが言った。
「ふにゃ〜名前かにゃ〜」
ルゥの髪の毛をいじくりながらアミュが呟いた。
「ねぇちょっと王様に何してんの姉御?」
ルゥが言うと
「王様がお城脱け出して大丈夫なの?」
ってエリアが尋ねた。
「大丈夫じゃないよ☆」
にこっと笑うルゥ。
「名前ね〜…ジャンヌ二世とか?」
ジャンヌが言うと
「こいつは男だ」
って返すシャーン。
「じゃあロドリゲス?」
ジャンヌが言うと
「いかつくないかそれ?」
って返すシャーン。
「短足なんてどうにゃ!?」
目を輝かせながらアミュが言うと
「テメェ猫この野郎」
って返すシャーン。
「じゃあショートレッグズ?」
その隣でルゥが言うと
「言い方変えただけじゃねぇかこの野郎」
って返すシャーン。
「ん〜…あ!そうだ!」
するとエリアが思い出したように
「今、食べ物の名前つけるのが流行ってるみたいよ?」
って言った。
「「食べ物?」」
小首を傾げるジャンヌとシャーンとルゥとアミュ。
「うん!特に三文字の名前の子が多いわね!」
にこっと笑いながらエリアが言った。
「「食べ物で三文字…」」
考え出す五人。
「今食べたい物とか言ってみたらどうかしら?!」
エリアが言うと
「…マグロ♪」
うっとりしながらアミュが言った。
((この猫…))
とか思うアミュ以外の皆さん。
「キャビアとか?」
お次はルゥが言った。
((この野郎…))
とか思うルゥ以外の皆さん。
「えっと…ミルフィーユが食べたいなぁ」
お次はエリア。
((まともだけど男の子にはつけにくいな…))
とか思うエリア以外の皆さん。
「…ミント」
ジャンヌが言った。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「「…ミント?」」
聞き返すジャンヌ以外の皆さん。
「ゲヘヘ!ミントが食べたいわ!!」
ジャンヌが言った。
「いやミントを好んで食べるヤツはそうそういな―…」
シャーンが突っ込んでいると
「いいじゃないそれ!!」
「うにゃん♪名前っぽいにゃ〜♪♪♪」
「よっしゃ!それで決定!!」
大絶賛するエリアとアミュとルゥ。
「…へ?」
シャーンが驚いていると
「ゲヘヘ!!今日からこいつは"ミント"よ!!」
ってジャンヌが言った。
「え?!ちょっと!?」
あたふたするシャーンをよそに
「「わー!!」」
盛り上がる四人。
「さあジェンガやるわよ!!」
「「おー!!」」
そして四人はジェンガをやり始めた。
「…はぁ」
ミントと共にその場を離れて窓へ移動するシャーン。
「…」
シャーンは青い空を見上げた。
「…ソラがいてくれたらなぁ…」
ジェンガでワイワイ騒いでいる四人とは逆に、なんか泣けてきたシャーンでした。
「だー」
「よしよし。お前はまともに育ってくれよミント?」
あれから三年が経って、ネィバーランドは平和な日々が続いています。
旅の仲間達は、相変わらず仲がよろしいようですね。
ではこの辺で―…
「…え?あれ?終わり?」
おや?ソラくんじゃないですか。
「そだけど…僕は?」
何がです?
「いや…その…出番が…」
題名、読まなかったんですか?
「え?」
三年後のネィバーランド
「…あ」
そう。三年後の"ネィバーランド"なんですよ。
つまり、違う世界にいるソラくんは話の他なんです。
フハハハハ
「そんなっ…!!」
うふふ♪
哀れな主人公♪
「くっ…」
ではではこの辺でお開きにしましょう!
ほらほらソラくん?
「…みんな、読んでくれてありがとう!!」
はい、よく言えました♪
「バーンバニッシュ☆」
おわり。