第9話 覚醒
「どうするぅ?フロルの言うこと聞いてくれたら、さっきの白髪チビみたいに吹っ飛ばされなくて済むわよう?」
ニヤニヤ笑いながらフロルが言った。
「っ!!」
どうしよう。
飛ばされたくないけど、ルゥの言う通り確にキモい。剣で戦おうにもリーチが違いすぎる。
ふとシャーンがソラの目に入る。
「あらぁコイツなら役に立たないわよう。樹に水は効かないの」
シャーンを横目で見ながらフロルが言った。
「…」
魔法…シャーンが言うにはこの世界の人は全員使える…ってことは…
(僕にも…使える!?)
ソラは静かに集中しはじめた。
すると手の周りに光が集まってくる。
…ハズなのだが、何も起こらない。
「あれれ?」
焦り始めるソラ。
「何してるのう?あ、やだ。緊張してるのう?うふふふ」
ニヤニヤ笑うフロル。
やめてやめて。笑わないで。キモいから。
「まふ〜っ!!」
するとソラの前にガブリエルが飛び出した。
「…ガブ?」
ソラが小首を傾げると
「まふまふまふ〜」
ポッ
っとガブリエルの口から小さな火球が出た。
「まふ〜!」
ソラを勇気付けるように鳴くガブリエル。
「…あ そうか!」
それを見て何かを閃いたソラは、目を瞑った。
そう。魔法に必要なのは"イメージ"。
目を瞑ったソラは、再び集中し始めた。
「!!」
すると、ソラの手の周りに光が集まり始めた。
「で、出来たぁ!!」
ソラが目を輝かせると
「まふ〜♪」
ピョンピョン飛び跳ねるガブリエル。
そんなソラを見て焦ったフロルは
「ちょっ!?何する気!?魔法ならこの子たちを盾にするわよ!??」
そう言ってエリアとシャーンを盾にした。
ソラは躊躇する。
ハズだった。
「大丈夫っ!!」
ソラはそう言うと
「まふ〜!!」
ガブリエルの声援を受け、それと共に、ソラの手の周りに集まっていた光が頂点に達した。
「ファイアっっ!!」
ソラはそう叫びながら、フロルに向かって手を突き出した。
バヒュウっ!!
と火炎玉がフロルに直撃する。
「きゃあぁぁぁっっ!!」
絶叫するフロル。
しかし、このままではエリアとシャーンも危ない。
…ハズなのだが。
二人は何事も無いかのように平然としていた。
何故なら、二人は"水属性"だから炎は効かないのだ。
「大丈夫?!」
フロルを倒した後、慌ててシャーンに駆け寄るソラ。
「ゴホッ…ありがとう ソラ……はっ!エリア!!」
シャーンは咳込みながら立ち上がると、ハッとなってエリアに駆け寄っていった。
その間、ソラはルゥの所へ行く。
「すっげぇソラ兄!!」
地面に座って先程の試合を見ていたルゥが目を輝かせながら言うと
「ど、どういたしまして」
軽く照れるソラ。
「大丈夫か?」
シャーンはエリアを立たせた。
(……決まった)
シャーンはそう思ったのだが、エリアは彼を見てはいなかった。
エリアの目線は、部屋の向こうのソラを向いている。
「…かっこいい…」
そしてほんのり頬を赤らめるエリア。
「なっ!?」
衝撃を受けたシャーンは黙って部屋の隅っこに行き、体操座りをして大量に"の"の字を書き始めた。