第89話 世界のコト
『♪ばう〜』
『♪はう〜』
『♪ぱう〜』
「「「「「…」」」」」
メンバーが呆気にとられた。目の前の巨大生物の美しい三部合唱に。
「…地獄の番犬…"ケルベロス"」
シャーンが言った。
「…地獄の番犬がこんなに愉快でいいの?」
ソラが聞いた。
『♪我々は地獄の番犬〜』
『♪地獄で唯一愉快な存在〜』
『♪我々の名前を呼んでごらん〜』
ω(オメガ)が歌った。
「「「「「…」」」」」
「…ω」
シャーンが答えた。
『♪そう〜!!僕の名前は"オ"〜』
アルトボイスが言った。
『♪私は"メ"〜』
ソプラノボイスが言った。
『♪そして俺が"ガ"〜』
バスボイスが言った。
『『『♪三頭合わせてオ〜メ〜ガ〜!!』』』
「「「「「いいのかそれで!?」」」」」
メンバーが突っ込んだ。
『『『♪いいの〜』』』
ωが美しいハーモニーで言った。
「あーもーいいから!あの蛙を始末しろ!」
シャーンが言った。
『『『御意』』』
くるりとピンキーの方に向き直るω。
「!…やっと我の出番か!」
ピンキーが小さくガッツポーズした。
『♪い〜』
『♪く〜』
『♪ぞ〜』
三つの頭が上を向いた。
その焦点に黒い光が集まる。
『『『♪ブラックホール!!』』』
黒い光が一気に拡散し、光の核が辺りを吸い込み始めた。
「「「「「!」」」」」
物凄い風圧でメンバーも吸い込まれそうになる。
「うわ!?」
「「ルゥ?!」」
よってこの中で一番軽いであろうルゥが吸い込まれそうになる。
「ルゥ!捕まって!!」
「ソラ兄ー!!」
ソラの手を掴むルゥ。
ルゥは鯉のぼり状態だ。
「あ、悪ぃ」
シャーンが思い出した様に言った。
「気を付けなきゃお前らも吸い込まれるぞ?って言うの忘れてた」
「「「「「早く言おう?!」」」」」
「すっすっ吸い込まれたらどうなんの!?」
ルゥが聞いた。
「軽く…消滅とか?」
「「「「「ふざけっ!?」」」」」
急いでブラックホールの裏側にいるシャーンの元に駆け寄るメンバー。
「ケロリンパ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ωの魔法が、ピンキーの魔法を…物という物をガンガン吸い込んでゆく。
「くっ…ニュルリンパ!」
ピンキーの魔法は虚しくブラックホールに吸い取られていく。
「ピンキーの魔法が全然効いてない…凄いな…ポチ」
ソラが呟いた。
…ポチ?
一斉にメンバーがソラを向く。
「?…どしたの?」
ソラが言った。
「…今…なんて言った?」
ルゥが聞いた。
「?…凄いなポチ?」
リピートするソラ。
「「「「なんで"ポチ"?!」」」」
メンバーが突っ込んだ。
「なんでって…犬はみんな"ポチ"でしょ?」
ソラが子首を傾げた。
((((っ!!?))))
メンバーがドキッとする。そして急いで円くなり緊急会議するシャーン以外のメンバー。何故かって?それはシャーンが召喚魔法を使っていて動けないからさ。
(か…可愛いい…萌―…!?)
(エリたん落ち着くにゃー!!それ以上言うと危ない人になっちゃうにゃー!!)
(なんかドキッとしたよオレ大丈夫かオレ?!)
(仕方ないにゃルゥちん…あれは反則技にゃ〜)
(反則技?)
(くそうっ!!ソラ兄め…レフリーがいないのをいい事にっ…!!)
(モヤシは、わんわん="ポチ"って決まってるみたいね)
(オレは今パー子が犬の事を"わんわん"って呼んだ事の方が納得いかねえ)
(犬を"わんわん"って呼んでるのジャンヌ?可愛いいわね!!)
(ゲヘヘ!スーパーメルヘンでしょ?)
(うん!とっても―…)
(駄目にゃエリたん!それ以上メガネを褒めたらなんか癪だにゃ)
(あー足痺れたあ!!)
ジャンヌが立ち上がって輪の中から離脱した。
(って言うか…)
ジャンヌがいなくなってからルゥが視線をシャーンに向けた。
「…」
彼は至ってクールに努めていた。
(顔赤っ!?)
が、顔が彼の髪の毛ぐらい赤くなっていた。
(…ヤバイ…会話は聞こえてたのか…!!それじゃシャーンは完璧に…)
((完璧に?))
ルゥの発言に興味を持つアミュとエリア。
(パー子に萌えてる!!)
((きゃああああー!!?))
三人のテンションは急上昇する。
「みんな?何してるの?」
カクッ
が、ソラに止められ軽くズッコケる三人。
「べ、別に…?」
「にゃは〜なんでもないにゃ〜」
「そ、そうよ?」
三人が言った。
「そう?…それより」
ソラが言った。
「ジャンヌ止めた方がいい?」
そして指差した。
ソラが指差した先を辿るメンバー。
すると
「「「?!」」」
「ゲヘヘ♪」
シャーンのすぐ後ろにジャンヌが両手をピストルにして構えていた。
「「「止めい?!」」」
「あ、止めた方がいいんだ?」
「「「当たり前でしょ?!」」」
「…やっぱり?」
「「「て言うかなんですぐ止めないの!?」」」
「いや面白そうだなと」
「「「こンのドSが!!」」」
ω並に綺麗なハモりのツッコミをするルゥとアミュとエリア。
ガクッ
「「「「「!!」」」」」
その時シャーンが片膝をついた。
「豚足?!」
当然ピストルを解除するジャンヌ。
「シャーン?!」
「どうしたにゃ!?」
アミュが言うと
「く…MPが…!」
シャーンが言った。
「そう言えば戦ってたわね私達!?」
エリアが言った。
「本当にゃー!!」
「どうなったんだ!?」
ルゥが言うと一斉に戦場を向くメンバー。
「…ロリンパ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ピンキーの魔法は相変わらず吸い込まれていた。
「…んであの蛙吸い込まれないんだ?!」
シャーンが言った。
「蛙には吸盤があるからね」
ソラが言った。
「あーくそっ…成程な」
「納得しないでシャーン?!」
エリアが言った。
「くっそ…!!もう…限界…だ…」
そう言うとシャーンの周りの魔法陣が消えた。
しゅぱんっ
と同時にωも消えた。
バタッ…
「「!」」
「「「シャーン?!」」」
そしてシャーンが倒れた。一斉に駆け寄るメンバー。
「シャーン大丈夫?!」
ソラが言った。
「…」
返事は無い。
「シャーン?!…どうしたんだよ?」
ルゥが言った。
「…」
「ちょっと短足!?」
「…」
「…冗談…止めてよ?」
メンバーの顔が蒼くなる。
「そんな…こんなのって…」
「起きろよシャーン…!」
「にゃー!!嫌にゃー!!」
「…シャーン…なんで動かないの…?!」
ソラが言った。
「MP切れで寝てるからよ」
ジャンヌが言った。
「「「「え」」」」
「…くー…」
「ね…寝息…」
「な…なんだよ…焦った…」
「紛らわしいにゃ〜…」
「よかったわ…」
「ケロリンパ!!」
ドカアァアァアァアァアン
メンバーが吹き飛んだ。
「ったた…」
「…蛙め」
フォークを巨大化させるルゥ。
「ケロリンパ!!」
「バーンバニッシュ!!ってシャーンは?」
ドカアァアァアァアァアン
「にゃ?!あれ?どこにゃ?!」
「そこで寝てるわよ」
ソラを指差すジャンヌ。
「「「「え」」」」
ソラを見るメンバー。
「あ」
「あ」
「あ」
「え?」
下を向くソラ。
「わあ!?シャーン?!なんでそんなトコに?!」
ソラはシャーンの顔面を踏んでいた。
急いで飛び退くソラ。
「ごごごごめんねシャーン?!」
「くー」
「まだ…寝てる?」
「凄いにゃ〜」
「むー」
「なんか…オレも眠く―…」
「ニュルリンパ!!」
ドカアァアァアァアァアン
メンバーが吹き飛んだ。
「…一言言わしてもらう」
ピンキーが震える声で言った。
「貴様ら緊張感無さすぎだ!!!!」
ごもっとも。
「そうだった…ラスボス…だったね」
「気合入れてくにゃー!!」
「ちょっと遅いけどそうね!!」
「いくわよ愚民ども!!」
「「「うん!!」」」
メンバーが立ち上がった。
「エアリアルアイオロス!!」
「ペリッシュオーシャン!!」
「ウッドパイソン!!それとモヤシまた踏んでるわよ!」
「バーンバニッシュ!!わあ!?本当だ?!」
「ニュルリンパ!!」
ドカアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアン
激しい爆発が起こり、ピンキーが吹き飛んだ。
「本当ごめんシャーン!!」
飛び退くソラ。
「ぬー」
「うなされてるにゃ?!」
「ってか起きよう?!」
「ニュルリンパ!!」
「ウッドパイソン!!」
ドカアァアァアァアァアン
「ゲヘヘ!そろそろバテてきたんじゃない?」
「だ…黙れ!!ケロリ―…」
「黙るのはお前の方だ」
「何っ―…!?」
ドッッッ
「かっ…?!」
ピンキーの体を貫通して巨大フォークが床に突き刺さった。
「「ルゥ!」」
「いひひっ」
「どうりでさっき魔法の数が少なかったのにゃ〜!」
「チビッコだから視界に入ってないだけだと思ったわ!!」
「捻り潰してやろうかパー子?」
「あんたじゃ無理よチビッコ」
「潰ス」
「くー」
「お…おのれっ!!」
ピンキーが言った。
「オレに気付かなかったお前が悪いんだよ!いひひっ」
ルゥがピンキーを見下ろした。
「か…神に…ネィバーランドの神にこんな事して良いと思ってるのか?!」
ピンキーが叫んだ。
「ウン」
「何ぃ?!」
「それより」
ソラが言った。
「…なんで僕をネィバーランドに呼んだの?」
場が静まった。
「ソラ…兄…」
「フ…ハハ…何故かって?」
ピンキーがあえぎながら言った。
「良いだろう…教えてやる…」
「…」
「…オーブ…は…試したかったのだ…」
「…何を?」
ソラが問うた。
「どちらが…世界を救う為の最善の…方法なのかを」
ピンキーが言った。
「にゃあ?そんなのあたしらの方に決まってるにゃ〜!!」
アミュが言った。
「果たして…本当にそうなのか…?」
「にゃ?」
「…人間は貪欲だ…すぐにモノを欲しがり…自分のモノにしようとする…」
ピンキーが続ける。
「物質がある…それ故人間は争い合う」
「「「「「…」」」」」
「そのくだらない争いで傷付いたオーブは我に言ったのだ…」
オーブを見据えながらピンキーが言った。
「物質がこの争いの種…ならば…物質を全て消滅させればいい」
「…それで…月を…?」
エリアが聞いた。
「そうだ…そして我はその願いを聞き入れた」
「そんな…」
「だがオーブもまた人間…全てを消滅させる事に迷いがなかったワケではない…しかしネィバーランドの人間では最高権力者であるオーブの言う事に素直に従ってしまう」
ピンキーがソラを向いた。
「そこでネィバーランドを救ってくれそうな隣の世界にいる人間を…ガブリエルに探させた。そしてその者でどちらが正しいか試したのだ」
「それが…僕?」
「…そうだ。フハハ…暇潰しにはなったぞ?」
ピンキーが言った。
「…ルゥ?」
「!」
突然名前を呼ばれて驚くルゥ。
ルゥがソラを向くと、ソラは微笑んでいた。
「な、何?ソラ兄―…」
「捻って」
「え?」
「そのフォークぐりんって捻って」
「こ、こう?」
ぐりんっ
「ぎゃああああああ?!」
ルゥがフォークを捻った。よってピンキーに激痛が走る。
「ははは…そんな理由で僕を呼んだの?」
ソラが言った。
「馬鹿だね…死んじゃったらなんにもならないじゃないか?」
「そうだぜ…お前も大概狂ってるな」
いつの間にか目を覚ましたシャーン。
「そうよ!私達はいつも争い合ってるワケじゃないわ!!」
「みんなで力を合わせれば平和な世界もつくれるにゃー!!」
「そうね!!なにせウチらは…」
ジャンヌがピンキーを指差した。
「悪を滅ぼすメルヘンなんだから!!」
(((((台無しだー!!)))))
「いくわよ!!コンっ!」
「待て待て!?ルゥが…アクアシールド!!」
もわんっ
「メテオフレア!!」
「ロールスプラッシュ!!」
「サイクロン!!」
「ヴォルテックホープ!!」
ドカアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアン
メンバーの最高魔法がピンキーに炸裂した。