第86話 オーブ
ガチャ
扉が開いた。
「…入れ」
セルシオが無愛想にメンバーを部屋の中に促した。
「お、お邪魔します?」
「広いわねー!!」
「プルトニウムって感じね!!」
「意味分かんねえよ三編み…」
「意味は無いわよ!!ゲヘヘ」
「…はぁ…」
シャーンが溜め息をすると
「おっ!あれは…!!」
ルゥがにやけながら言った。
「セルシオって…毎日身長測ってるの?」
「ああ…習慣だ。毎日欠かさず測っている」
と答えて気付くセルシオ。
「ってんなワケないだろ!?」
慌ててルゥが見ていた身長計を隠すセルシオ。
「へぇ〜?シャイ男はいっつも身長測ってるんだぁ?」
「う、煩い!!」
「にゃは〜♪可愛いいにゃ〜」
「黙れ!!…此処だ」
本棚を押しながらセルシオが言った。
そこにはハイハイしないと通れないような狭い通路がパックリ現れた。
「わぁ…狭いね?」
「文句言うな異界人」
「こんぐらい早く見付けろよお前?」
「黙れ極短足」
「極!?」
シャーンがこれまでにないショックを受ける。
「ゲヘヘ!!これは男先に行ってもらうわ!!」
ジャンヌが言った。
「?どうしてジャンヌ?」
エリアが訪ねた。
「あんた…モヤシにケツ触られるわよ?」
「ええ?!」
顔を赤くしてソラを見るエリア。
「そんな事しないよエリア!?」
焦るソラ。
「まぁ兎に角先行くにゃー!!」
「わ!?」
アミュに押されてまずソラが入っていった。
「オレ二番〜♪」
続いてルゥが入る。
「じゃあその次は俺―…」
「豚足の次はウチね!!」
「ルゥ!代わってくれ!!」
「やっだぷー」
「ムカつくなお前!?」
「ゲヘヘ!!覚悟なさい?」
両手でピストルをつくるジャンヌ。
「やめろお前!?こんな時に!?」
「はいはい二人でラブラブしてないの!早くしろにゃ〜!!」
「テメェ猫!?」
「早くしろにゃ」
ゲシッ
「わ!?」
通路に入るシャーン。
「ゲヘヘ!!」
続いてジャンヌ。
「先行くにゃ♪」
続いてアミュ。
「セルシオ、みんな…ありがとう!」
エリアが言った。
「…」
「どういたしましてぇ♪」
「てー♪」
「エリアちゃん…終わったらお茶しない?」
「え?」
「はいはいこんなコモ男気にしないで、行ってらっしゃい!!」
「は、はい!!」
「ヴェルナちゃん酷い…」
「頑張ってね!!みんな!!」
「うん!じゃあ…行ってきます!!」
エリアが通路に入っていった。
「…なぁ?私達は行かなくて良いのか?」
エリアが見えなくなってからカーフェイが言った。
「馬鹿ねぇ…馬鹿男」
「酷くない!?」
「俺らの仕事は…トラをシャイアの牢獄に送る事だ」
「そうだよ!カーフェイくん」
「は…そっか!!…でもシャイア城に入れるのか?」
「シャイ男が居るじゃない」
「…」
「そうか…!!」
「…行くぞ」
「「「了解」」」
「せ…狭かったわ…」
エリアが出口から顔を出すと
「大丈夫?エリア」
ソラが手を差し延べた。
「え、ええ…ありがとうソラ…」
顔を赤くしながらソラの手を握るエリア。
「うん。下向かないでねエリア?」
ソラが笑顔で言った。
「え?」
反射的に下を向いてしまったエリア。
「きゃああああああああああああああああああ!?」
通路の出口とソラ達が立ってる場所との間は、下が見えないほどの絶壁になっていた。
「いいいいいやぁー!!」
「わ!?」
ソラに飛び付くエリア。
「きゃああああ!?ご、ごめんなさいソラ!!!!」
真っ赤になってソラから飛び退くエリア。
「だ…大丈夫…」
「痛っっ…!!おい三編みふざけんなよ?!」
シャーンが尻を押さえながら言った。
「ゲヘヘ!!」
「ゲヘヘじゃねえよ!?普通十七の女がカンチョーするか?!」
「ウチは普通じゃないからね!!」
「…自覚はあるのか…」
「にゃー?あの向こうが台座かにゃー?」
アミュが言った。
「うん…多分ね」
ルゥが巨大な扉を見ながら言った。
「じゃあ行こっか?」
ソラが言った。
「ゲヘヘ!!エンドレス!!」
グサッ
「ぎゃあああああ!?」
「ほら叫んでないで行くにゃ短足」
「そうだよシャーン」
「見て!?刺さってるよ!!!?ってかお前ら最近冷たいな?!」
「行くわよ愚民ども!!」
「「「「へい!!」」」」
「みんなが三編みに毒された!?」
そしてメンバーが扉に向かって歩き出した。
「…ようこそワシの部屋へ」
「「「「「「!」」」」」」
扉の前まできたメンバーの背後に、肩に蛙を乗せた老人が一人現れた。
「オーブ…!!」
ソラが言った。
「久しぶりだなソラ?」
オーブが言った。
「ソラ兄…顔見知り!?」
ルゥが驚いた。
「へ?うん」
ソラが答えた。
「いつ会ったにゃ〜?!」
アミュが尋ねた。
「僕がこの世界に来た時だよ」
「「「「「!」」」」」
メンバーが驚いた。
「ほ、本当にゃ!?」
「す、凄いわ…」
「?」
「オーブはネィバーランドで最高権力者なんだよソラ兄」
「ええ?!」
ソラが驚いた。
「ゲヘヘ!!電球!!」
「おいおい三編み?!」
焦るシャーン。
「相手が最高権力者だって最高短足者だってなんだっていいわよ!!」
「喧嘩売ってるの三編み?」
爽やかな笑顔で突っ込むシャーン。
「アイツはウチらの敵なのよ!!」
ジャンヌがオーブを指差した。
「「「「「おお…!」」」」」
なんかジャンヌが格好良く見えるメンバー。
「ふぉっふぉっ…威勢の良いお嬢さんじゃな?」
「伊勢海老は美味しいわよ!!」
「意味分かんねえよ三編み?!」
「じゃが…」
オーブが懐へ手を伸ばした。
「「「「「っ!」」」」」
武器を構えるメンバー。
「ノックぐらいしたらどうじゃ?」
オーブが扇を取り出した。
「扉から入ってないからね!!ゲヘヘ!!」
「…?」
オーブに疑問符が飛んだ。
「秘密の通路よ!!」
ジャンヌが言い放った。
「…そうか…仕置が必要じゃな麋…」
麋を漢字にしないで下さい。
「そうはさせないよ!」
ソラが言った。
「お前は此処で倒しちゃうかんな!!」
ルゥが続く。
「大体…どうしてこんな事するんですか?!」
エリアが問うた。
「月を落としてどうする気だ?」
シャーンが言った。
「そうにゃー!!頭おかしいにゃ!?」
アミュが続く。
「ふぉっふぉっ…教えてやろうではないか」
オーブが扇を広げた。
「ワシに勝てたらな!」
「ウザイわよ電球」
「エ」
バシーン
ビシーン
べシーン
バシーン
バシーン
ビシーン
ベシーン
ビシーン
ベシーン
バシーン
「ゲヘヘ!!」
「フレイムアタック!!」
「バブルインパクト!!」
「ブリッヅシュラーク!」
「ウインドスパイラル!」
ドカァアァアァアァアァン
オーブが吹っ飛んだ。
「月夜の銀…ν(ニュー)!!」
シャーンが言った。
『にゅー』
「か、可愛いい…♪」
エリアがトローンってなる。シャーンの目の前には銀色の毛波が美しい狼"フェンリル"が現れた。
『にゅー?』
「アイツだアイツ。アイツを吹っ飛ばせ!!」
『にゅー♪』
ドカァアァアァアァアァン
「うわあっ!?」
ソラが吹っ飛んだ。
「ソラ!?な、何やってんだν?!」
『にゅ、にゅー!!』
ドカァアァアァアァアァン
「うわあっ!?」
「そそそソラぁー?!!」
νがソラに追撃した。
『にゅー♪にゅー♪』
ガブッ
「ええええええええ?!」
νがソラの右足に噛みついた。
「きゃあ!?ソラ?!」
「ばっ、よせν!?アイツだ!!オーブだ!?」
『にゅー?』
首を傾げるν。
「だ、か、ら!!あのハゲだ!!」
『にゅにゅー!!』
ガブガブガブガブッ
「ぎゃあああああ!??」
「ソラぁぁぁぁぁぁ?!」
「も、戻れν!!」
『にゅー!!』
しゅぱん
νが消えた。
「めめめ、メディケーション!!」
「…」
ソラの反応は無い。ただドクドク足から血を流している。
「ゲヘヘ!!やるじゃない豚足!!モヤシを倒したわ!!」
「わあぁ!?こんなつもりじゃなかったんだソラぁ!?」
「シャーン…知らなかったよ…」
ルゥが言った。
「…本当のラスボスは…シャーンだったんだね…!?」
「違っ―…!?」
「酷いにゃ…あんまりにゃ!!」
「ソラ!!いやぁ!!死なないでぇぇ!?」
「違うんだソラぁぁ!!」
「な、なめおって…!!」
オーブが起き上がった。
「邪魔よ!!ウッドパイソン!!!!」
ドカァアァアァアァアァン
「うわあっ!?」
オーブが吹っ飛んだ。
「…」
むくっ
「!ソラ!!よかっ―…」
「ありがとエリア」
微笑むソラ。
「う、…うん!」
「…シャーン?」
そのままの顔でシャーンを向くソラ。
「な、なんだソラ…?」
恐る恐る尋ねるシャーン。
「…地獄へ招待してあげようか?」
「っ!!」
血の気が引くシャーン。
「メテオフレアー♪」
ドッッッッッッッッッッッッカアァアァアァアァアァアァァアァアァアァアァン
「…あれ?」
シャーンは無傷で立っていた。
「そ、ソラ?」
シャーンが言った。
「今は相手が違うでしょ?」
ソラが言った。
振り向くとオーブが吹っ飛んでいた。
「そ、ソラ…!!」
シャーンが言った。
「今は、ね?」
ソラが言った。
「っ!!」
悪寒がするシャーン。
「…来るよ!!」
ルゥが言った。
「ふ…ざけおって…!!…シューティングスター!!」
オーブが叫んだ。
「ファスチネイションサンダー!!」
「エアリアルアイオロス!!」
「ペリッシュオーシャン!!」
「ウッドパイソン!!」
ドカァアァアァアァアァン
魔法が相殺した。
「くっ…!!」
「なんか…拍子抜けだね?」
ルゥが言った。
「なんにゃ〜?弱いにゃ〜?」
アミュも言った。
「こ、小癪な…!!」
「ペリッシュオーシャン!!」
ドカァアァアァアァアァン
「…やったかしら?」
エリアが言うと
「…まだまだじゃよ…」
「!!」
オーブは扇でエリアの魔法を防いでいた。
「ここからじゃ!!トゥウィンクルスター!!」
「バーンバニッシュ!!」
「ペリッシュオーシャン!!」
「エアリアルアイオロス!!」
「ファスチネイションサンダー!!」
「ウッドパイソン!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドカァアァアァアァアァアァアァアァアァアァン
魔法負けしてメンバーが吹っ飛んだ。
「つ…強…?!」
ルゥが言った。
「…なんで急に?!」
「お約束のパターンよ…ソラ」
「にゃー?!血ー!!」
「マヨネーズケチャップソース!!」
メンバーはボロボロになっていた。
「く…!!仕方ないな…」
シャーンがそう言うと、
ぶわんっ
(…本当はやりたくないけど…)
そんな事を思うシャーンの目の前に桃色の魔法陣が現れた。
「き…キュートな桃色……δ(デルタ)!!」
シャーンが叫んだ。
(((((…ええええ…?)))))
メンバーは軽く引いていた。