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第82話 モヤシと炎

『殺した…!?』


ジャンヌは動かなかった。


『…そうだ…』


『…ふざけないでよ…!!』


バチーン


薔薇の鞭でトリを襲う。


『…クスクス…怒ったか…?』


バチーン


バチーン


『…弱いな…』


『許さない…許さない…!!』


バチーン


『クスクス…ソイツを蘇生させたいのか?』


『!』


ジャンヌの鞭が止まる。


『…え?』


『…クスクス…』


トリが笑った。


『…蘇生させてやってもいいぞ…?』


『何…言ってるの…?』


ジャンヌがトリを睨んだ。


『自分で殺したクセに…!!』


『…クスクス』


『何がおかしいのよ!?』


『珍しいな…お前』


トリが言った。


『人間は皆…望むことなのに…』


『ふざけないでよ…!!そんな事…していいワケないでしょ…!!』


『クスクス…痩せ我慢』


『煩い…!!』


バチーン


『…叶えてやる…』


トリの右手に空色の光が集まる。


『や…やめなさい!!』


『クスクス…』


『やめろ!!!!』



ぶわんっ



空色の光がアンナを包む。


『っ!!』


『…再誕…』


トリが言った。


『!母さん!?』


ジャンヌが振り向くと、そこにはアンナが血を流しながら立っていた。


『…ジャンヌ…』


『なんて…事したのよ…!!』


ジャンヌが言った。


『母さん…天国に…行けなくなっちゃったじゃない…!!』


『…?』


トリに疑問符がとぶ。


『…天国?』


トリが聞いた。


『そうよ…!人は必ず死ぬから…それは神様が決めた事だから…』


ジャンヌが叫んだ。


『天国に行ける様に…神様に逆らっちゃいけないのよ…!!!』


面白そうに笑うトリ。


『…クスクス…お前…天国なんて信じてるのか…?』


『…え!?』


『…面白いなお前…』


トリが言った。


『…気に入ったぞ…クスクス…』


トリの右手に再び空色の光が集まる。


『…プレゼントだ…』


『っ…!?』


その手をジャンヌに押し付けた。


『…何…っ?』


ジャンヌが目を開けるとそこにトリはいなかった。


『!っ母さん!!』


後ろを振り向くジャンヌ。


『っ!!』


アンナの腹からは絶えず血が溢れ出ていた。


『ジャンヌ…』


血だらけのアンナが口を利いた。


ドサッ…


アンナが倒れた。


『母さん!!』


アンナに駆け寄るジャンヌ。


『母さん…母さん!!』


『ジャンヌ…笑って…』


『…!!』


涙を拭うジャンヌ。


『ゲ…ゲヘヘ…』


『…ばっか…もーん…っ』


ぺち


チョキでジャンヌの顔を殴るアンナ。


『もっと…下心見せなさい…』


『っ!…ゲヘヘ!』


『あっひゃ…何…泣いてるのよ…?』


アンナが言った。


『な、泣いてないわよ…!!』


再び涙を拭うジャンヌ。


『…ずっと…笑っててね…ジャンヌ…』


『…うん…』


ジャンヌが言った。


『よぉし…いい子…!』


アンナが瞳を閉じた。


『…母さん?』


『…バイバイジャンヌ…大好―…』


アンナの血がジャンヌと白い雪を真っ赤に染める。


『…母さん!!』


ジャンヌが上を向いた。


『母さん!!母さん!!』


ジャンヌの泣き声が雪空に響いた。









「ゲヘヘ!弱すぎね!!」


バシーン


べシーン


ビシーン


バシーン


ビシーン


「ゲヘヘ!」


バチーン


トリが吹っ飛んだ。


「…レヴェルが随分上がった様だな…」


トリの右手に空色の光が集まる。


「っ!!それはっ!!」


「…貫け…」


トリが空色の光の槍を出現させた。


「母さんの事…!!」


「…そうだ…」


ギュンッッ!!


「!!」


槍がジャンヌめがけて飛んでいく。


「母さん…!!」


ジャンヌは動けなかった。恐怖で。









ドッッッッッッッッッ!!









カランカラン…


「…ゲヘヘ!」


「っ!?」


「…何…」


光の槍はジャンヌに当たる前に


「モヤシ…!!」


ソラの剣に当たり、弾かれた。


「…邪魔を…」


トリが再び空色の光を集める。が、


ザンッッッッッ!!!!


「…!!」


トリの右手が吹っ飛ぶ。


「メルヘン!!」


ソラが言った。


「…く!!バーンバニッシュ!!」


「バーンバニッシュ!!」


ドカァァァァァァァァァン


「!!」


トリが吹っ飛ぶ。


「ゲヘヘ!」


透かさずトリの後ろに回り込むソラ。


ザシュッ


ザシュッ


ズサッッ


ザシュッ


ザクッッ


ザシュッ


ソラが連続でトリを切り刻む。


「…っ!!」


「弱すぎだね!!ゲヘヘ!」


ソラが言った。


トリが倒れた。


「モヤシもメルヘンに目覚めたのね!!」


ソラの元へ駆け寄るジャンヌ。


「ジャンヌ!大丈夫だった!?」


「もちろんよ!!ゲヘヘ」


「そっか!よかったぁゲヘヘ」


「ゲヘヘ」


「…ジャンヌ?」


「なぁにモヤシ?」


「今すぐ戻せ」


ソラが言った。


「何を?」


「メルヘン注入ってヤツ」


ソラが言った。


「何言ってるのよ?」


「なんで僕が"ゲヘヘ"って笑うしかないのさ!?」


「あら?いいじゃない?」


「よくないよゲヘヘ!!」


自分の意志とは関係無く"ゲヘヘ"と笑ってしまうソラ。


「様になってるわモヤシ!!ゲヘヘ!!」


「早く戻せ―――――――――ッッッッッッ!!!」


「メルヘン注入って凄いわね!!ゲヘヘ!!」


「バぁンバニぃっシゅウウウウ!!!!!!!!!」


ドカァァァァァァァァァン


「か…解除…」


ジャンヌが言った。


「ふぅ…治った…」


胸を撫で下ろすソラ。


「ゲヘヘって…笑ってたよな…僕…」


「見れたもんじゃなかったわね!!」


「ははは」


「ゲヘヘ」


「バーンバニッシュ!!」


ドカァァァァァァァァァン


「バーンバニッシュ!!」


ドカァァァァァァァァァン


「バーンバニッシュ!!」


ドカァァァァァァァァァン


「焼き尽せ!!メテオフレア!!」









ドッッッッッッッッッッッカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン







「…モ…モヤシ…」


「なあに?ジャンヌ」


爽やかな笑顔。


「…ごめりんこ☆」


「ははは、まだジャンヌは」


ソラが言った。


「燃えたいのかな?」


「…遠慮しとくわ…」


ジャンヌが後退りする。


「そっか!残念だな」


ソラが言った。


(モヤシって…超どSなのね…)


恐怖を覚えるジャンヌ。


「!」


ソラの顔が変わる。


「避けてジャンヌ!!」


「!?」


ギュンッッ!!


ジャンヌが居た場所を光の槍が通り過ぎた。


「…」


「コイツっ…まだ!!」


ジャンヌがトリを向く。


「消えなさい!!コンッ!!!!!!!!」









バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ







樹木が消えると、トリの姿がなくなった。


「ふぅ…」


ジャンヌが胸を撫で下ろす。


「ワンダフル!モヤ―…」


ジャンヌが振り向くと


「モヤシ!?」


「はは…刺さっちゃった…」


ソラが腹を押さえながら膝をついていた。腹からは血が溢れ出る。


「モヤシ…どうしてっ!?」


ジャンヌが青ざめながら聞いた。


「…反応が…遅れちゃって…」


「!」


膝をつくジャンヌ。


「…?…どうしたの?ジャンヌ…」


「ウチの…ウチのせいね…!!」


酷く青ざめるジャンヌ。


「ジャンヌ…?」


「…MP使い切ってたんでしょ?」


「っ!!」


「また…ウチのせいだわ…」


「ちっ!違うよジャンヌ!これは自業自得だよ!?」


困った顔になるソラ。


「母さんも…モヤシも…みんな…みんな!!」


ジャンヌがローズホイップを出した。


「?」


「…止血よ…」


薔薇の鞭がソラの腹に絡み付く。


「あ…ありがとうジャンヌ」


「こんなの気休だわ…!!早く大根にっ!!」


ジャンヌが辺りを見回した。


ぐわんっ


「「!!」」


赤い部屋が歪んだ。


「な…に?」


「呪いが解けたのね…!」


ジャンヌがそう言うと、赤い壁が徐々に消え出した。


「早く…早くなさいよ!!くるりら!!!!!!」


ジャンヌがそう言うと壁が一気に消えた。


「大根!」


真っ先に叫ぶジャンヌ。

少し離れた所にいたエリアが振り向く。


「ジャンヌ?」


「早くモヤシを助けて!」


「え!?」


エリアが駆け寄る。


「っ!!酷い血…!!」


「…治る?」


ジャンヌが聞いた。


「ええ…任せて!!」


そう言って杖を構えるエリア。


「レイズデッド!!」


白い光がソラを包んだ。


そこへシャーンもやって来る。


「三編み!お前カツ丼作れるか?」


シャーンが言った。


「え?…ええ」


ジャンヌが困惑気味に答える。


「今すぐ頼む!猫もヤバいんだ!!」


シャーンはアミュを担いでいた。アミュの足からはおびただしい出血が見られる。


「!!…分かったわ!!」


急いで家を出すメンバー。


「っ…!」


ソラを包んでいた光が消える。


クラッ


エリアが膝をついた。


「大丈夫か!?」


シャーンが支える。


「え…ええ…」


「ありがとう!!エリア」


ソラが起き上がった。


「…うん…!」


「じゃあ僕も手伝ってくるね!」


「ああ…任せた!」


シャーンが言うとソラも家の中に入っていった。


「MPがー…すっからかん♪」


「大丈夫かエリア!?」


アミュの止血をしながらシャーンが言った。

すると


ドカァァァァァァァァァン


「「!!」」


後方で激しい爆発が起こる。


「な…何!?」


「ルゥ…?」


エリアが言った。










煙が晴れるとルゥは愕然とした。


「…セルシオ!?」


トラをかばう様にセルシオがルゥの最高魔法を受け止めていた。


「…馬鹿が…!!」


セルシオが言った。


「お前…何やってんだよ!?」


ルゥが叫んだ。


「…お前…自分が何しようとしたか分かってるのか?!」


セルシオが叫ぶ。


「コイツが死んだら…」


そして倒れているトラをみやった。


「…お前も死ぬんだぞ?」


セルシオが言った。


「「!?」」


シャーンとエリアが反応する。


「…分かってる」


ルゥが静かに言った。


「…でも…仕方無いだろ?サンタを全員倒さなきゃ先に進めないんだ…それに」


セルシオを見るルゥ。


「…オレはお前の場所を取っちまうんだぞ?」


「…」


「王子は…一人で十分だろ?」


「…」


「オレは…人間じゃないんだろ?」


ルゥが言った。


「…そうだ」


セルシオが答えた。


「…お前は人間じゃない…トラのエネルギー体だ」


「なら…オレが消えたっていいじゃねぇか?」


ルゥが言った。


「本当にそう思うか?」


セルシオが問うた。


「…何だよ…?お前さっきまでオレのこと殺そうとしてただろ?」


ルゥが言った。


「あれは命令だと言っている…それにお前を殺す気は初めから無い」


「命令でも何でも!…お前にとってオレが消えたってどうでもいい事だろ?」


「…いや」


セルシオが静かに言った。


「…お前は俺の身勝手さ故にこの世に生まれた」


「…」


「だから俺は身勝手な俺なんかより…世界を救う為に動いた王子に生きていて欲しいと思う」


セルシオが言った。


「そんなの…自己満足だ」


ルゥが言った。


「ああ…そうだな」


セルシオが続ける。


「…だがな」


「?…何―…」


「アイツらはどうなる?」


セルシオがメンバーを見た。


「っ!」


ルゥが見るといつの間にかメンバーの五人は家の前に立ち、こちらを見つめていた。


「ルゥ…」


ソラが言った。


「…ルゥ」


エリアが言った。


「ルゥちん…」


アミュが言った。


「ルゥ…」


シャーンが言った。


「チビッコ…」


ジャンヌが言った。











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