第79話 回復魔法と召喚魔法
静まりかえった藍色の世界。そこにはエリアとシャーンとカメが居りました。
「シャーン?」
ぺちぺち
シャーンの頬を叩くエリア。
「…」
シャーンの応答は無い。
「シャーン?」
ぺちぺちぺち
「…」
「ねぇシャーン?」
べち
「…」
「シャーンってば!」
べちべち
「…」
「もうシャーン!!」
スパァン
「…」
「起きてよシャーン!!」
スパァァァン
「…」
「…シャーン」
「…」
肩を落とすエリア。
「あなた…シャーンに何したのよ?」
エリアがカメに問う。
「何もしてないあ」
「嘘よ!こんな酷い事するの他に誰が居るのよ!?」
「エリアちゃん前回その子の急所を踏み付けまくってたあ」
「な!?」
顔を赤くするエリア。
「わ、私がそんな事するワケないでしょ!?」
「思いっ切りしてたあ」
「!?」
エリアは怒り狂うと記憶が飛んでしまう様ですね。
「シャーン…此処で休んでてね?」
シャーンをそっと端に寄せるエリア。
「…シャーンの仇!」
「いやだから何もしてないあ」
「黙んなさい!ペリッシュオーシャン!!」
ドカァァァァァァァン
「ふふっ強くなったあ♪」
カメが立ち上がった。
「…どういたしまして!ハイドロキャノン!!」
「ハイドロキャノンあ♪」
ドバァァァァァァァァァン
「相殺あ!凄いあ!!」
カメが興奮した様に言った。
「なめないでよ…!バブルインパクト!!」
「ふふっ楽しいあ♪」
ドカァァァァァァァン
「!」
カメはロケットランチャーを放った。
「…無茶苦茶ね」
「オーブに買ってもらったあ♪」
「売ってるの!?」
「コンビニで見つけたあ」
「そうね…コンビニってなんでも揃ってるもんね!ってアホー!!んなコンビニあるかー!!」
「ふふっエリアちゃん変わったあ♪」
「?」
「前はガクガク震えてたのに…今はツッコミが出来る程余裕になってるあ!」
「それはあなたがボケるからでしょ!?」
「本当の話あ?」
「嘘ん!?」
「いくあ?」
カメがロケットランチャーを構えた。
「…いかせないわ!!マリンショット!!」
ドカァァァァァァァン
「やったかしら?」
「ふふっ♪」
「!」
それはエリアの背後から聞こえてきた。
「いつの間―…」
「喰らえあ!」
ドカァァァァァァァン
「っ!」
エリアが吹っ飛んだ。
「…急所外されたあ」
カメが言った。
「…ったいじゃない…!」
エリアが脇腹を押さえながら立ち上がった。
脇腹は大量に出血している。
「め…メディケーション!」
「!」
暖かい光がエリアを包むとエリアは見る見る回復していく。
「凄い凄いあ!!ちゃんと使いこなしてるあ!!」
カメが楽しそうに言った。
「でもなんで中級あ?」
「…」
「エリアちゃん上級使えるハズあ」
「煩いわよ…」
エリアの傷が完全に塞がった。
「凄いあ!!」
カメが言った。
「エリアちゃん、ちゃんと副作用まで把握してるあ!!」
「…っ!」
「そうあ!回復魔法は限りある生物の細胞分裂を高速化させる魔法あ!!」
「…黙んなさい」
「つまり回復させると同時に術を受けた者の死を速めているあ!」
「解ってるわよ…」
エリアが下を向いた。
「そしてそのリスクは術の難易度が上がれば上がる程高くなるあ!」
カメが笑った。
「だから上級を使わないあ?」
「…そうよ」
「…でもコレは知ってるかあ?」
ロケットランチャーを構えるカメ。
「マリンショット!!」
ドカァァァァァァァン
ロケットと相殺される。
ドカァァァァァァァン
二発目が来る。エリアが左に避けようとした次の瞬間
「…他者に回復魔法をかけた場合、その削られた命は術者のモノになるあ♪」
カメが言った。
「…え?」
エリアの動きが止まった。
「ふふっ」
ドカァァァァァァァン
ロケットはエリアに直撃した。
「よそ見は駄目あ?エリアちゃん」
カメが笑いながら言った。煙が晴れる。
「!?」
カメが驚いた。
「あれは…"アクアシールド"…?!」
「大丈夫かエリア!?」
「シャー…ン…?」
シャーンとエリアは水のベールに包まれていた。
「アイツは…確か五年前の…」
シャーンがカメを見ながら言った。
「…そうよ」
エリアは震えていた。
「大丈夫か?!」
「…私…」
「?」
「みんなの…命…」
エリアが膝をつく。
「…」
「…吸ってたんだって…」
エリアが言った。
「ああ…聞いてた」
シャーンが言った。
「私ね?…今までみんなの命が短くなるの知ってて回復魔法使ってたんだ…酷いよね?」
「魔法使わなかったら危ないって思ったからだろ?」
シャーンがエリアの顔の高さにあわせる為にしゃがみながら言った。
「…違う」
「エリア?」
「私は…血が怖いだけ…」
「…」
「怖いものを見たくないから…だから魔法を使っていたの…」
「エリア…」
「自分が嫌なモノ見ないために人の寿命勝手に吸ってて…その上その命を自分のモノにしてました?えへへ…最低だね?」
エリアが笑いながら言った。
「…もう…やだよ…」
エリアがうつ向いた。
「こんな力…要らないよぉ…!!」
涙が落ちる。
「…そんな事ない」
「え…?」
シャーンが立ち上がりながら言った。
「解除」
そう言うと水のベールがなくなる。
「ふふっ♪お話は終わったあ?」
カメは楽しそうに二人を眺めていた。
「…ああ」
シャーンがカメに向き直った。
「…シャーン?」
エリアが言うと
ぶわんっ
「「!」」
シャーンの前に紫色の魔法陣が出現した。
「召喚魔法あ!?」
「宵の紫…ι(イオタ)!!」
紫色の魔法陣が光輝き、その場に居た者の視界を奪った。
バサッ…
「宵の紫…バンパイア」
シャーンとカメの間に黒いローブを身に纏ったバンパイアが現れた。
『…命令』
ιが口を訊いた。
「アイツを倒せ…!!」
『…御意』
ιがカメを向いた。
「させないあ!!」
ドカァァァァァァァン
ロケットはιめがけて飛ぶ。
『…主』
「行け…!!」
『…承知』
ιはロケットを避けて音もなくカメに突進していく。
「シャーン!!」
エリアが叫んだ。
そう。ロケットはシャーンに向かっていた。
「ば、バブルイン―…」
「大丈夫だエリア」
「!?」
ドカァァァァァァァン
ロケットは身動きのとれないシャーンに直撃した。
「シャーン!!」
エリアが急いで立ち上がった。
「大…丈夫だ」
シャーンの腹に風穴が開いていた。そこからは大量の血が溢れ出す。
「何が大丈夫なのよ?!こんな…こんなに血が出てるじゃない!!!」
エリアが青ざめながら言った。
「はは…こんなの…ただの致命傷だ」
「致命傷って意味解ってるシャーン!?」
エリアが突っ込んだ。
「…エリアが居れば大丈夫…だろ?」
「…っ」
エリアの動きが止まる。
「回復…魔法…?」
エリアが恐る恐る聞いた。
「…ああ」
「だ…駄目よ…!!そんな事したら…シャーンが…」
「…でもそうしなきゃ…俺は死ぬわな…」
シャーンが言った。
「っ!!そんなっ」
「この血だぜ?死ぬだろ?」
「…っ」
「…まぁ…どっちだって良いよ…」
「…シャーン?」
「なんかな…痛くないんだぁ♪」
シャーンが傷を見ながら言った。
「…あはは〜お鼻畑が見える〜♪お鼻がいっぱーい!!気持悪〜い♪」
「シャーン!?」
シャーンは遠い目をしていた。
「ははは〜♪皮だ〜♪綺麗な皮が見える〜♪」
危ないシャーン。
「…エリア」
「な、何?シャーン?!」
突然名前を呼ばれて驚くエリア。
「…信じてるぜー♪」
「!」
顔を赤くするエリア。
「…もう…馬鹿…」
涙を拭う。
「どんな死線をさ迷ってるのよ…!今…助けてあげるから!!」
そして杖をしっかり握るエリア。
「…レイズデッド!!」
汚れのない純白の光がシャーンを優しく包み込んだ。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
カメが悲鳴をあげた。
「!?」
エリアがカメを向く。すると
ジュル…ジュルルルルル…
「っ!」
全身に鳥肌が立つ様な音をたてながらιがカメの首筋から血を吸っていた。
「お…己ぇ…!!…ペリッシュオーシャン!!」
『…回避』
軽やかに魔法をかわすι。
「小癪な…!!ペリッシュオーシャン!!」
『…追撃』
ガブッッッ
「!!」
ιはカメの魔法をかわすと再び首筋に噛みついた。
ドカァァァァァァァン
カメがロケットランチャーをιに向けてぶっ放した。
『…無念』
ιが吹っ飛んだ。
「ああ!?」
エリアが焦る。
「戻れι!」
シュパン
「!」
エリアの隣からシャーンの声がした。
「シャーン!!よかった…!!」
「ありがとなエリア!!」
ぶわんっ
シャーンの周りに再びの魔法陣が出現する。
「させるかっ!!ペリッシュオーシャン!!」
カメが叫んだ。
「こっちこそ!!ペリッシュオーシャン!!」
エリアの魔法とぶつかりあう。
「邪魔あ!!」
「うふふっあなたこそ!!」
「輝く金色…μ(ミュー)!!」
眩い金色が辺りを包む。
ポーンっ!
「金色の…ユニコーン」
「綺麗…!!」
シャーンが言った通り、今度は金色の角を一本額に持った馬"ユニコーン"が現れた。
『(* ̄O ̄)ノ』
んん!?今なんて言った!?
「アイツを叩きのめせ!!」
シャーンが言った。
『(´Д`)』
「…なんだよその態度は?」
『(-。-)y-~』
「…ソーセージが欲しいのか?」
『( ̄^ ̄)』
「…解ったよ…魚肉ソーセージな…」
『(≧▽≦)』
「よし!行ってこい!!」
『♪( ̄▽ ̄)ノ″』
ユニコーンは物凄い勢いでカメに向かっていった。
「い…今のは?」
エリアが困惑気味に訪ねる。
「μは結構ワガママなヤツなんだよ」
「そ…そう…」
(あんなに綺麗なのに…)
残念そうにユニコーンを見るエリア。
『(`⌒´)』
ドカァァァァァァァン
「!」
軽々とカメを吹っ飛ばすμ。
『( ̄∇ ̄ )』
ドカァァァァァァァン
「す…凄い…!!」
「金色だからな」
「意味解らないわ!?」
ドカァァァァァァァン
『(  ̄ー ̄)』
ドカァァァァァァァン
『φ(゜゜)ノ゜』
カメをエリア側に跳ばすμ。因みに"゜"がカメの様です。
「きゃあ!?」
「来たぜエリア?」
「え?」
シャーンを見るエリア。
「止めはエリアだ!」
「!…うん!!」
「よし!頑張れ!!」
エリアが両手を上にあげる。
「ありがとうシャーン…!…逆巻け…!!」
カメの周りに光が集まる。
「ロールスプラッーシュ!!!!!!」
ドシャアアアアアアア!!
「す…スゲェ…!!」
シャーンが言った。
カメが動かなくなった。
「ふぇ…」
エリアが座り込む。
「大丈夫か?」
「ええ…MP切れだわ」
「そっか」
するとμがシャーンの元にやってきた。
『(*°ー°)』
可愛らしくシャーンに顔を擦り寄せるμ。
(か…可愛いい…!!)
エリアがトローンってなる。
「お疲れ様μ、ホラ!」
シャーンが魚肉ソーセージの束を持ち出した。
『(*´∀`*)』
物凄い幸せそうに魚肉ソーセージに喰らい付くμ。
『( ̄人 ̄)』
ペロリとたいらげたμ。
「おう、美味かったか?」
『*´3`)』
「ははは良かったな」
するとμが寄ってきて
『σ( ̄∇ ̄ )』
「はあ!?もっと!?」
ねだった。
『(⌒‐⌒)』
「駄目」
『Σ( ̄□ ̄`)』
「じゃあご苦労さんμ。戻れ!」
『(_´Д`)ノ』
シュパン
μが消えた。
「も…物凄い名残惜しそうに帰っていったわよ?」
「そ…そうだな…」
シャーンも座り込む。
「…俺も…MP切れだ!」
「ふふっ じゃあ少し休んでみんなと合流しましょ?」
「おう!」