第74話 ヘアバンド
「…着替えたい着替えたい着替えたい着替えたい…」
「ふっ…とっても似合ってるヨ…ソラ兄…」
「フフヒヘホーハ」
「エリたん!?」
「なあルゥ…エリアおかしくないか?」
シャーンがルゥに言った。
「ふえ?」
「なんかさっきから顔赤いし…」
エリアを見るルゥ。
「…まさか…」
「まさか?」
「…ソラ兄と…なんかあったとか?」
「なっ!?」
「だって考えてみん?この御伽の世界に…ぶっ…ソラ兄の格好…どう見たってなんかの"王子様"じゃん?」
「…それって…もしかしてもしかしなくてももしかして!?」
シャーンが言った。
「キスして蘇る系のヤツか!?」
「で…もしエリ姉が白雪姫だとしたら…」
「う!?」
白くなるシャーン。
「そんでそんで…エリ姉が毒林檎食べたとしたら?!」
「っっ!!」
石化するシャーン。
「いひひっ…やるじゃんソラ兄♪」
ルゥがソラを見る。
「着替えたい着替えたい…」
ソラはまだブツブツ言っている。
「…ぶっ!」
静かに爆笑するルゥ。
「にゃ?どしたにゃ短足?」
「…」
「にゃ!?石化してるにゃ!?」
「アラシャーンどうしたの?フフヘホハー」
「…エ…リア…」
エリアを見るシャーン。
「ハヒヘフホー」
「くっ…ソラめ…!!ソラめ!!!!」
「着替えたい…着替えたい」
『ヒヒーン』
ぶくぶくーっ
「「「「「わ!!」」」」」
「ご機嫌麗しゅう皆の衆!!ゲヘヘ」
ジャンヌが現れた。
「どんな状態変化にゃ!?」
「中和よ!!」
「馬鹿だろお前馬鹿だろ」
「聞きなさい愚民ども!!」
ジャンヌが言った。
「出口を見付けたわ!!」
「「「「「…出口!?」」」」」
「…馬鹿ね…自分が呪いにかかってるのも解んないの?」
「「「「「!!」」」」」
メンバーが驚く。
「ど、何処なのにゃ!?」
「ゲヘヘ!!付いてきなさい?」
そう言うとジャンヌは
ぶくぶくー
溶けた。
「「「「「!?」」」」」
「何してんのよ?あんたらも早く溶けなさい?」
「「「「「できねーよ!!!?」」」」」
「…チッ…本当愚民ね…」
ご立腹のジャンヌちゃん。
「仕方ないわね…ジャックと豆の樹!!」
もももももももももももも
巨大な亀裂の入った岩壁に辿り着いたメンバー。
「…此処なのジャンヌ?」
「ええそうよ!ダサいモヤシ」
「みっ見るな!?足の方を見るな!!!?」
「ゲヘヘ」
「此処が何なの?パー子」
「ただの岩壁じゃねぇか」
「本当ね…」
正常化したエリア。
「これだから愚民どもは…」
溜め息をつくジャンヌ。
「何様だよさっきから?!」
「あからさまよ!!」
「意味解んねぇよ?!」
「此処がこの呪いの弱点よ!!」
ジャンヌが岩壁を叩いた。
ガゥン…
「「「「「!!」」」」」
「…空洞音?」
「そうよダサモヤシ」
「う…」
「此処が出口だとしてもどうやって此処から出るにゃ?」
アミュが聞いた。
「全員で力を合わせるのよ!!」
ジャンヌが言った。
「「「「「…?」」」」」
「この岩壁に向かって…」
ジャンヌが岩壁を向いた。そしてY字バランスで
「ちょろぼんまんぼ!!」
・・・
・・・・・・・
「…って叫ぶのよ!!」
メンバーの心が一つになる。
(((((絶対やりたくねえ…)))))
「ゲヘヘ愚民ども…あんたらの考えてる事ぐらい手に取る様に解るわ!!」
ジャンヌが言った。そして
「モヤシ?」
ソラを向くジャンヌ。
「っ!?」
「此処から出ないと…一生そのダサい格好のままよ?」
「やります」
ソラが寝返った。
「ゲヘヘ♪」
((((や、ヤバイ…!!リーダーが真っ先に折れた!?))))
たじろぐメンバー。
「大根?」
「っ?」
今度はエリアを向くジャンヌ。
「…それ、おっきくしてあげるわよ?」
「やります」
エリアも寝返った。
(((ヤバイっ!?甘い誘惑っ!!)))
嫌な予感がするアミュ。
(ルゥちんと短足のコンプレックスと言ったら…)
「豚足?」
「っ!!」
シャーンを向くジャンヌ。
「足…長くしてあげるわよ?」
「やります」
シャーンも寝返った。
((悲しいっ!!そんなシャーン見たくないっっ!!))
悲しくなるルゥとアミュ。
「チビッコ?」
「ひっ!!」
「背…高くなるわよ?」
「っ…やります」
ルゥも寝返った。
「にゃ!?そんな軽いプライドでいいにゃ!?ルゥちん!」
「…ゴメン姉御…こればっかはどうにもならねぇ…!!オレは…オレは背が高くなりたいんだよぉ…!!」
ルゥが下を向く。
「…っ!短足っ!!」
アミュが言った。
「煩いこれは…な…涙じゃ…ねえぞ…!?」
涙を隠すためにヘアバンドを取り、目に当てるシャーン。髪の毛が前に戻る。
「にゃ!?何気格好良いにゃ!?」
前髪が現れたシャーンは普通に格好良かった。
「ヘアバンドやらなきゃいいのに…って…エリたん!!」
アミュが言った。
「これで…これで…この幼児体型ともおさらばねっ…!!そうすれば…そうすれば…うふっ♪」
胸に手を当てるエリア。
「…もぅっ!!ソラソラっ!?」
アミュが言った。
「出たい…一刻も早く…そして着替えたい!!」
ソラは全く聞いていない。
「ゲヘヘ!!これで残るは毛玉だけね!!」
「〜っ!!」
「尻尾…取ってあげるわよ?」
「やめてにゃ!?これはあたしのセクシーポイントにゃ!?」
尻尾を持つアミュ。
「じゃあその猫耳?」
「これはあたしのプリチーポイントにゃ!?」
耳を押さえるアミュ。
「じゃあその猫髭?」
「これはあたしの大切なアンテナにゃ!?」
「にゃーにゃー煩いわよ!何猫気取ってんの?」
「猫にゃ!?」
「たく…面倒ね」
ジャンヌが言った。
「マドレーヌっ!!」
ジャンヌの指からキラキラが飛び出す。
「はにゃ!?」
「ごろにゃ〜ん♪」
アミュは混乱している様だ。
((((コイツ呪い使えるんだ…))))
メンバーがジャンヌを見て思った。
「さぁ言うわよ?」
ジャンヌが言った。
「ちょろぼんまんぼ!!」
「「「「「ちっ…ちょろぼんまんぼ…!!」」」」」
メンバーが続く。
「全然駄目よ!!何シャイぶってんのよ!?」
ジャンヌが言った。
「ちょろぼんまんぼ!!」
「「「「「ちょろぼんまんぼ…」」」」」
「歯切れ良く!!ちょろぼんまんぼ!!」
「「「「「ちょ…ちょろぼんまんぼ!!」」」」」
「どもるな!!ちょろぼんまんぼ!!」
「「「「「ちょろぼんまんぼ!!!!」」」」」
メンバーの声が綺麗に揃った。
「上出来よ!!」
なんか格好良いジャンヌ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「「「「「!」」」」」
亀裂が大きくなる。
「これが出口よ!!駆け込みなさい!!」
「うん!」
「ええ!」
「おう!」
「にゃ!」
「おし!」
「ゲヘヘ!!」
こうしてメンバーは御伽の世界を後にした。
「っ!?もう?!」
リアラが言った。
「スーパー黒魔術師ジャンヌちゃんを舐めないでよ!!ゲヘヘ」
ジャンヌが言った。
「ちょっ、やめろ猫っ!?」
「駄目にゃ〜っ!そんなヘアバンドなんか要らないにゃ〜!!」
アミュがシャーンのヘアバンドを取り上げる。
「にゃは〜♪こっちの方が全然格好良いにゃ〜♪」
「なっ!?」
顔を赤くするシャーン。
「本当だっ!!絶対取った方が良いって!!」
ルゥが言った。
「ちょっ…」
「なんか…シャーンじゃないみたいね…?」
「へ?」
「ヘアバンド取ったシャーンなんて初めて見たわ!!」
エリアが言った。
「格好良いよシャーン!」
ソラが続く。
「っ…しゃ…しゃあねぇな…でもバンドは返せよ」
「にゃ〜い♪」
ヘアバンドをシャーンに返すアミュ。
「あんたら…敵よ?」
ジャンヌが言った。
「「「「「!?」」」」」
リアラに気付くメンバー。
「リアラっ!!」
エフラムが入ってきた。
「あれ程魔法使うな言うといたやろ!?」
「…黙りなさい」
「無茶言う―…」
「黙りなさい!」
「…お前は失敗作やで?」
「っ!」
「「「「「「!?」」」」」」
完全に蚊帳の外なメンバー。
「クロレカ様が作ったお前のリバースは不完全や!」
エフラムが続ける。
「その証拠に…お前"感情"がろくにあらへんやろ?」
「…いいのよ」
リアラが言った。
「何がいいねん?!」
「いいの…これから…敵と戦うんだから…!」
傘を構えるリアラ。
「「「「「「!!」」」」」」
戦闘体型に入るメンバー。
「それやったら…手伝うわ!!」
エフラムも金棒を出す。
「…面倒ね…豚足?あんたがいきなさい?」
ジャンヌが言った。
「はぁ?!」
シャーンが驚く。
「召喚魔法、使えるんでしょ?」
「「「「!?」」」」
驚くメンバー。
「な、なんで知ってんだよ!?」
「全知全能の神だからよ!!」
「凄いわシャーン!!」
「驚きにゃ〜!!」
「あのガキ相手に召喚しようとしてたのシャーン?」
「召喚魔法?」
思い思いの感想を言うメンバー。
「さあいきなさい!!」
「…解ったよ」
目を閉じるシャーン。
ぶわんっ
赤い魔法陣が出現する。
「「「「!」」」」
「…燃える赤…β!!」
魔法陣が光る。
「「「「!!」」」」
メンバーとリアラ達の間にライオンと牡山羊とドラゴンの三つの頭を持った幻獣"キマイラ"が現れた。
「召喚魔法!?」
エフラムが驚く。
『あー!外だー!!』
『うわマジだ…面倒〜…』
『プリン食いたい』
三つの頭が喋った。
「β!アイツらをやっつけるんだ!!」
シャーンが言った。
『『あ!?』』
ライオンとドラゴンの頭が言った。
『プリン食いたい』
牡山羊はプリンが食べたいらしい。
『テメ…誰に対して口訊いてんじゃハゲが!!』
『面倒ー!!反対ー!!』
「ちょっ…ざけんな!?」
『あー!バンド取ったのー!?そっちのが全然いいよー!!』
『キモス』
「ドラゴン頭テメェ?!」
そんな幻獣とシャーンのやりとりを見て
((((大丈夫…なのか?))))
一抹の不安を抱くメンバー。
「何してんのよ!?早くなさい!?」
ジャンヌが叫んだ。
「!?三編みっ!?お前何して―…」
ジャンヌはリアラと戦っていた。
「馬鹿ね!こうしてないとあんたに攻撃がいくのよ!?」
「み…三編み…」
「早くなさい!?」
「お、おう!」
シャーンが言った。
『へぇー、シャーン愛されてるぅ♪』
『物好きもいるもんだね』
『プリン食いたい』
「な、何言ってんだ!?」
顔を赤くするシャーン。
「さあ…いってこい!後でプリンやるから」
キランッ!!
牡山羊の目が光る。
『プーリーン!!』
『うわ!?』
『きゃ!?』
βはリアラ達に向かっていった。
「っ!?」
「なんやヤバイで!?」
『プリン!!』
牡山羊が大きく息を吸い込んだ。そして
『火炎放射!!』
物凄い勢いで炎がリアラ達に向かっていく。
「「!!」」
傘を開くリアラ。
『そんなんで防げないよ!!』
『面倒…』
残り二つの頭も息を吸い込んだ。
『『火炎放射!!』』
合計三つの猛攻撃を受けるリアラとエフラム。
「…っ!!」
リアラが倒れた。
「す…凄いにゃ…!!」
「強い…」
感心するメンバー。しかし
「炎は効かへんで!!」
エフラムがβに攻撃を仕掛ける。
「戻れβ!!」
ヒュン
「!?」
βが消えた。と同時に
「暮れの橙…γ!!」
周りを橙色の光が包む。
『おーほっほっほっ!!』
高笑いしながら上半身は美しい女性で下半身は蛇の姿をした幻獣"エキドナ"が現れた。
「ごっつタイプ!!」
エフラムが食い付いた。
『おーほっほっほっ!!私の美に酔いなさい!?』
セクシーポーズをするγ。
「戦えよ!?」
シャーンが突っ込む。
『詰まんないわね…まあいいわ?』
そう言うとγはエフラムに巻き付いた。
「うひょ!?」
顔を赤くするエフラム。
『ごめんなさいね?雷光!!』
「ぎゃああああああ!!」
エフラムの全身を凄まじい雷が駆け巡る。
『おーほっほっほっ!!これが究極美よ!!』
「よしっ戻れγ!」
『おーほっほっ―…』
ヒュン
…こうしてリアラとエフラムは動かなくなった。