第65話 最高魔法
「ジャーン!おはようございます!!皆さん!」
シルエリの登場。
「わ!?また?!」
「朝から元気ね…」
「でもレヴェル低いしね…」
「う…そうにゃ…」
「何この子馬鹿みたいね!ゲヘヘ」
「ジャンヌに言われたらおしまいだね」
「レヴェル☆アップ…ですか?…まぁそうですね!ではこの"秘密のバケツ"に入って下さい!」
こうして秘密のバケツに入っていくメンバー。
「…サヨナラです…」
そしてシルエリも入っていった。
「久しぶりソラ」
「…トリ!?」
ソラの目の前にはトリがいた。しかしトリの足は本当の鳥の様で、腕は翼になっており、尾羽までついていた。しかもその羽一枚一枚が燃えている。
「ふ…フェニックス!?」
「違うよ…僕は"朱雀"。これからソラをレヴェル☆アップさせて、魔法も増やしてあげる!!」
「本当?!」
「ただし、本気で来ないと…僕は君を殺してしまうかもしれない」
「!?」
「剣を抜いて?さあ行くよソラ!!」
「!!」
トリが襲いかかってきた。
「久しぶりね!カメ!!」
「おう。しばらく」
「…雰囲気…変わったわね?」
カメの背中には甲羅がついていて、絹のような見事な淡い水色の長い尻尾を持っていた。
「おれは"玄武"。エリアを殺す気でレヴェル☆アップさせるよ!!」
「え?」
「エリアにはまだ秘めた"力"があるからね」
「!」
「それを引き出せる様になるまで…頑張るんだな!!」
カメが見た目からは想像出来ない程素早く襲いかかってきた。
「きゃあ!?」
「杖を出しなよエリア。そうしないと…死ぬよ?」
「キモトラが更にキモく!?」
「…酷いねルゥ」
トラの頭には白い虎の耳が、手足には白い虎の手足が、尻には白い虎の尻尾が生えていた。
「私は"白虎"。君を強くするためだけに存在している」
「?」
「私を倒して強くなれルゥ!」
「…なんだか知らないけどやる気満々?!」
ルゥがフォークを大きくする。
「本気でこいよ?でなきゃお前は…そこまでだ!!」
トラが襲いかかってきた。
「やっほ!アミュ♪」
「ドラゴンっぽくなってるにゃ!?」
ドラゴンの手足は龍の様に鋭い爪を持ち、背中には翼が生えている。
「私は"青龍"。お手合わせ願うわ!!」
「にゃ!?」
「あなたの"力"はこんな物じゃないハズよ!!」
「っ!」
「だから私が無理矢理引き出してあげる!!」
「にゃ!?」
ドラゴンが襲いかかってきた。
「何処よ此処?」
「異次元です」
「誰よあんた?」
「シルエリ」
シルエリは白い着物の下に赤い袴を来ていた。
「…もとい"巫女"です!!」
「巫女!?」
「あなたをレヴェル☆アップさせてあげますよ!!」
「マジで!!!?メルヘンね!ローズホイップ!!」
武器を出すジャンヌ。
「かかってきなさい?」
「行きますよ!!」
シルエリがジャンヌに襲いかかってきた。
「どうしたのソラ!?全然駄目じゃん!!」
ガインッ
「わっ!」
ソラの剣が吹っ飛ばされる。
「隙だらけだよ!!」
「っと!フレイムアタック!!」
「あひゃひゃっ!効かないよソラ!!フレイムアタック!!」
魔法が相殺される。
「っ!!」
「今度はこっちから行くよ!」
トリが体勢を立て直した。
「ファイアバード!!」
そのまま突進するトリ。
「わ!?」
炎に包まれるソラ。
「あっつッッ!?」
「まぁだまだ!!」
第二弾が襲いかかる。
ドンッッッ!!
ザンッ
ルゥの出刃包丁がトラを襲う。
「…甘いね…!!ライトニング!!」
トラが微笑んだ。
「うお!?」
紫の雷撃に跳ばされるルゥ。
「…やる気あるのかい?ルゥ」
トラが言った。
「君からはまったく"殺気"が感じられないよ!ブリッヅシュラーク!!」
再びの雷撃。
「くっ…!!」
鍋の蓋で魔法を防ぐルゥ。
「…なろっ!」
攻撃に走るルゥ。
「とぉ!!」
フォークを突き刺す。
「…優しいね」
「何!?痛がり屋さん!?」
「…ハズレではないケド…」
「そこは否定しろよ」
「"急所"って…知ってるかい?」
トラが言った。
「はぇ!?」
「命にかかわる体の大切なところだ」
「いや知ってるし」
「…そうか。だから戦闘ではそこを狙った方が確実に早く済む」
トラが言った。
「例えばこんな風にね!ファスチネイションサンダー!!」
最大魔法がルゥの心臓へと直進する。
「わぁ!?」
特大鍋の蓋で防ぐ。
「あ、危ないな!!殺す気か!?」
「うん」
「ええ!?」
「…言ったハズだよ?ライトニング!!」
「させるかっ!!」
再び防ぐルゥ。
「ライトニング!!」
そして反撃。
「効かないよ…ライトニング!!」
ルゥの魔法がトラの魔法に相殺される。
「もうっ!何なの!?」
「残念だよルゥ…」
そう言うとトラが突っ込んできた。
ガブッ
「っ!?」
トラがルゥの首筋に噛みつく。
「…虎の最大の武器は…牙と爪」
トラが言った。
「そのどちらともが…獲物の肉を引き裂く!!」
ブッッ
「っっ!!」
大量の血が溢れ出す。
膝をつくルゥ。
「…おしまいかい?ルゥ」
「…」
トラがルゥを見下ろした。
「…世界を救うんじゃなかったのかい?」
「…!」
首を押さえながらルゥは立ち上がった。
「そう…だったね!」
バタ…
倒れるソラ。
「…あれあれ?もうおしまい?」
「…」
「…ふぅ…」
地上に舞い降りるトリ。
「弱いねソラ…ガッカリだよ」
トリが言った。
「…」
(…動けない…)
「そんなんでネィバーランド救えると思ってるの?」
トリが続ける。
(…そう言えばそれ半強制的だったな…)
「とんだヘタレ連れてきたね…ガブ…」
(…あ。忘れてた…)
ガブの事を忘れていたソラ。
「…いつまで寝てる気?」
(いや動けないんだって…)
「は…もういいよ。おしまいにしよう」
トリが片足をあげた。
(…死ぬのかな…僕…)
「世界が滅びる前に死ねて良かったんじゃない?」
(…世界)
「君の世界とネィバーランドが滅びる事…あの世で後悔しなっ!!」
(そうだね…"月"って言ってるぐらいだから…きっと僕のいた世界も…)
「サヨナラ。ソラ」
ドッッッッッッッ!!
「!?」
「…まだ…負けないよ…!雲もルゥもエリアもアミュもジャンヌも!!…みんな生きてて欲しいから…!!」
「…だよね!ソラ!」
トリの足を掴んだまま立ち上がるソラ。
「…鳥の脚ってね…飛ぶ時の負担を減らす為に…結構脆く造られてるんだよ…」
バキッ
「うわっ!?」
トリの足が折れた。
その隙にソラは剣を取り戻す。
「…さぁ…行くよ!」
「そ…そうこなくちゃ!!ファイアバード!!」
トリが突進する。
「…」
ソラは動かない。
「…気付いたんだねソラ。君の最高魔法は…"炎"を操ることが出来る」
「うん…炎をありがと…」
ソラが左手を前に出す。
トリの炎がソラの左手に吸い寄せられていく。
「…」
その左手を上にもっていくソラ。
左手の上に集まっていく炎はガンガン大きくなる。
「今まで…ありがとうトリ…そしてサヨナラだね。」
「…そうだね」
「残念…かな?」
「…そうでもないよ。ソラは頑張って僕の本体を消して世界を救ってね?」
全身の炎を奪われたトリが言った。
「…うん。多分」
「多分かよ」
そして上を向くソラ。
「…焼き尽せ…!!」
左手を降り下ろすソラ。と同時に叫んだ。
「メテオフレア!!」
ドカァァァァァァァァァン
「…わ!火傷してる!」
ソラが左腕を見て言った。
「痛たた…冷やさなきゃだね」
キンッッッッ
「…!!はうっ!!」
「いひひ…急所って言ったらやっぱりそこだろ」
ルゥはトラに金蹴りしていた。
「ちょっと…これは反則…」
「甘いこと言ってんじゃないよ?」
ニヤリと笑うルゥ。
「こんなに血だらけにしてくれちゃって…!!」
「…っ!!」
相当痛かったのか言葉を発せないトラ。
「…死んで詫びろ…!いひひ」
両手を前に出すルゥ。
パリパリと音がする。
「…っルゥっ!めっ…目覚めたかっ…金蹴りで!」
「ああ!悲しいけどね!!」
「ふっ…バイバイ美しきベイベ☆私は君の最高魔法が引き出せて嬉しいよ」
「ああ!じゃあな!」
「…君の生みの親…私の本体を倒してくれベイベ…」
「もち!!」
ルゥがトラを見た。
「轟け!!ヴォルテックホープ!!」
そう叫ぶとトラに向けて激しい雷が襲いまくる。
ドドドドドドドドドドドド
「スっゲェ…オレ…」
自分の魔法に驚くルゥ。
「あばよ変態…元気でな!!」
「ゲヘヘヘヘ♪」
バシーン
ビシーン
バシーン
ビシーン
ビシーン
バシーン
バシーン
バシーン
ビシーン
バシーン
「無抵抗ね!!そんなあんたが大好きよ!!」
ジャンヌが喜々としてシルエリをいたぶっていた。
「…ジャンヌ様は…レヴェル☆アップ…する必要が…ありませんね…」
「ゲヘヘ♪もっといい声で泣きなさい!?」
バシーン
ビシーン
ビシーン
ビシーン
ビシーン
バシーン
バシーン
ビシーン
バシーン
ビシーン
シルエリが倒れた。
「あら?もうおしまい?脱皮の様に短い時間だったわ!!」
「…止め…刺さないんですか…?」
「?…なんでウチがあんたを殺さなきゃなんないのよ?」
ジャンヌが言った。
「…甘ちゃんですね!」
「!?」
ドッッッ!!
シルエリの腕がジャンヌに突き刺さる。
「っ!!」
「…死に際にこそ…限界を超えた力が出しやすいんですよ?」
シルエリが言った。
「ま…まさにメルヘンの法則ね…」
血を吐きながらジャンヌが言った。
「大体…あなたは何故戦っているのですか…?」
シルエリが聞いた。
「ゲ…ゲヘヘ」
シルエリの腕を引っこ抜くジャンヌ。
「…暇だからよ!!」
「ええ!?」
「隙あり!!ウッドパイソン!!」
「あわ!?」
シルエリが樹の根によって締め付けられる。
「その体で…魔法使えるんですか…」
「ゲヘヘ…喋ってる場合?」
ジャンヌが腹を押さえながら言った。
「覚醒よ!!あーらたーな目ー覚めー」
ジャンヌが右手を狐の形にした。
「…避けないの?」
「何言ってるんですか…避けられません」
樹の根に締め付けられているシルエリが言った。
「あ、そか!」
「…それに…殺して…欲しいです…」
「は?」
「オーブ様を…止められなかった…私ですから…」
シルエリが言った。
「生きてていいワケない…こうして皆さんを強くさせているのも…償い―…」
バシン
「!?」
ジャンヌがシルエリの頬を殴った。チョキで。
「馬鹿ねあんた。胸毛も生えてないんじゃない!?」
「はい…胸毛は生えませんが…」
「胸毛はどうでもいいの!!」
「…ええ!?」
「死にたいとか…償いとか!馬鹿じゃないの!?」
ジャンヌが言った。
「…苦しむのはウチの方じゃない…!!………………………………お母さん…」
過去を思い出す様にジャンヌが言った。もちろんシルエリはジャンヌのお母さんではない。
「ジャンヌ様…まさかあなた…」
「…まぁウチにとってはあんたが死んだってどうでもいいけど」
「…ええ!?」
「…あんたが死にたいならウチは喜んで引き受ける!!」
「…言ってる事無茶苦茶ですね…」
「…あんた人間じゃないしね!」
「はい…"手綱"です」
「それにウチが殺さなくても死ぬつもりでしょ?」
「…はい…ごめんなさい」
シルエリが笑った。
「じゃあね!!…あんたが出来なかった事、モヤシが全部やってくれるから安心して逝きなさい?」
「ありがとう…ジャンヌ様…」
「そんでもって…一応冥福を祈っとくわ!!」
「…ありがとうございます」
シルエリが目をつむった。
「コンッ!!」
ジャンヌが右手の狐を動かした。
アーチ状の樹の根がシルエリを包む。
バキバキバキバキバキバキ
アーチ状の樹の根はそのまま萎みながら地面へと戻って言った。
「グッバイ…シルエリ」
ジャンヌが言った。
「暇だから…ウチも世界を救ったげるわ!!」
右手をグーにして上にあげる。
「待ってなさい!?マミーの仇!!その首、ウチが引きちぎってくれる!!ゲヘヘヘヘ!!」