第60話 ジャンヌ
「ど…ドキドキ?」
「名前!?」
ルゥが聞いた。すると
「そんなわけないでしょ?あんた馬鹿?」
少女が言った。
「はぁ?!」
「じゃあ誰なのにゃ〜?」
「うわこのガキキモいわね。にゃだって」
「にゃ?!」
「お、落ち着いてアミュ」
「…ふーん?あんたら呪いに掛ってるわね」
少女が言った。
「「「「呪い?」」」」
「速いけど鈍い呪いよ」
「いやどうでもいいよ!?」
「ってかどっから沸いてでたにゃ?!」
「ここよ」
少女が言った。
「ぶくぶくーって沸いてでたの」
「「「「そんなわけないでしょ?!」」」」
「…あんたら駄目ね。こういう時は"そんなバナナ?!"くらい言ってみなさいよ?」
少女が言った。
「「「「そんなバナナ?!」」」」
「古いわね」
「「「「そんなバナナ?!」」」」
「あー解った解った。ちょっと待ちなさい?」
そう言って何やらゴソゴソし始める少女。
「あったあった。マイ眼鏡」
眼鏡を装着する少女。
「…ふむふむ」
メンバーをまじまじと見る。
「?」
「何してるにゃ?」
「…成程"トランスフォーメーション"ね」
「「「「?」」」」
「その呪い解いてあげるわ」
「「「「!」」」」
「本当!?」
「嘘」
「嘘にゃ!?」
「嘘」
「どっちだよ!?」
「本当」
「じゃ治して!!」
「面倒い」
「「「「ざけんな?」」」」
「ゲヘヘ解ったわ。やってやろうじゃない!」
「ゲヘヘ!?」
「さあ行くわよチビッコと不愉快な仲間達!!」
がしっ
「「「「わあ?!」」」」
少女にガッシリ髪の毛を掴まれ、引きずられていくメンバーでした。
少女の家に着いた。
「さぁ上がんなさい?」
促されて家に上がるメンバー。
「…」
「……」
「………」
「…………」
少女の家の中には蕨人形が壁一面にズラリと並んでいた。
「欲しいでしょ?あげないわよ」
「「「「いやいらないよ?」」」」
「強がんな?」
「「「「強がってないよ?」」」」
「じゃかあしい!さっさと血ィ出しなさい!!」
「「「「はぁ!?」」」」
いきなりキレた少女とその少女の発言に驚いたメンバー。
「なんで血!?」
「黒魔術に鮮血はつきものよ」
少女が言った。
「鮮血って…」
「いいから!ささっ、ドバッと♪」
「ドバ!?そんなに使うの!?」
「最低1デシリットルは必要ね」
「微妙だな!?」
「いいから切る!!」
「ど、どこをにゃ?!」
アミュが聞いた。
「首」
即答。
「ざけんな?」
ルゥが突っ込んだ。
「大動脈」
即答。
「やめて?」
エリアが突っ込んだ。
「手首」
即答。
「痛々しいにゃ!?」
アミュが突っ込んだ。
「耳」
即答。
「気持ち悪いよ!!?」
ソラが突っ込んだ。
「…指でいいわよ」
諦めた様に少女が言った。
「「「「…うん」」」」
「はいカッターナイフ」
少女がメンバーにカッターナイフを投げつけた。
「「「「危なっ!?」」」」
「さあ早く中指を切り落としなさい?」
「「「「ざけんな!?」」」」
「じゃあ親指?」
「「「「…」」」」
プツッ
メンバーの人指し指から赤い血が流れる。
「…つまらないけど十分ね。」
少女は孫の手を取り出した。
「「「「!」」」」
するとメンバーの流した血が自然と魔法陣を描き出す。
「油肩部羅血陳夫異夫異乃夫異!!」
"アブラカタブラチチンプイプイのプイ"とどこか聴いたことのある様な呪文を唱えて少女は孫の手を膝で二つに折った。
ベコンッ
眩い光がメンバーの視界を奪った。
「…!戻ってるわ!!」
エリアが言った。
「本当にゃ〜♪」
「よかったぁ」
胸を撫で下ろすメンバー。
「全く呪いなんかにかかってんじゃないわよ」
少女が言った。
「ありがとう。君は?」
ソラが聞いた。
「まずはそっちから名乗りなさいよ?モヤシ」
「モヤシ!?僕はソラ」
「エリアよ」
「ルゥだ」
「アミュレリスにゃ〜♪」
自己紹介するメンバー。
「ウチはジャンヌよ。よろしくねモヤシに大根にチビッコに毛玉」
「だからモヤシって!?」
ソラが言った。
「だ、大根!?」
エリアが言った。
「チビッコだと?!」
ルゥが言った。
「毛玉にゃと!??」
アミュが言った。
「そうよ!よろしく皆の衆」
ジャンヌが言った。
「あんたら、城に行くの?」
「え?あ、うん?そうなのルゥ?」
「んーん。オレらは緑の台座に―…」
「ウチは全知全能だからそれもお見通しよ!緑の台座は城にあるのよ!ゲヘヘ」
「その笑い方やめない?!」
「たのもーぅ!!」
「「「「ええ!?」」」」
ジャンヌが城に向かって叫んだ。
しかし返事がない。
「…よし!入るわよ!」
ズンズンと進んでいくジャンヌ。
「…行こうか」
「…そうね」
城に入っていくメンバー。
「…誰も…いないにゃ?」
「どういう事?」
「裏庭よ!」
ジャンヌがそう言って裏庭へ向かって行った。
「ジィ!タヤヒガンプイ作るぞ!」
「はい。トトラウト様」
「メイドもだ!」
「「はい。ぼっちゃま」」
裏庭には大勢のメイドと執事、王子らしき人物が集まっていた。
「よし!まずは目からだ!」
「トトラウト様」
「なんだ?ジィ」
「タヤヒガンプイとは何ですか?」
「バッカヤロウ!!そんな事も知らねぇのか!?今すんげぇ流行ってんだぞ?!」
「そうなのですか?」
「ああ!ポクの中でな!!」
「それでは誰も解らないと思われるのですが?」
「いいから鼻作るぞ!!」
「目ではないのですか?」
「バッカヤロウ!!目作ってどうすんだ!!」
「そうですね。トトラウト様」
そう言ってタヤヒガンプイを作り始める。
「「「「…」」」」
「またやってるわね」
ジャンヌが言った。
「…タヤヒガンプイて?」
「雪だるまよ」
「…そう」
「…」
メンバーがそんな会話をしていると
「お!ジャンヌじゃねえか!!」
トトラウトがジャンヌに気付いた。
「気安くウチの名前呼ぶな困った君」
「ええ!?」
青い長い髪を一つに縛っているトトラウトが言った。確かに彼の眉毛は困った様に垂れ下がっている。
「…?」
トトラウトがルゥを見た。
「…ルゥ?」
「へ?」
ルゥが驚いた。
「ルゥ!ルゥだよな!?」
トトラウトがルゥの肩を持ちながら言った。
「久しぶりだな!!六年ぶりぐらいか?!」
「ルゥ…知り合い?」
「凄いにゃ〜流石王子様にゃ〜♪」
「本当ね〜」
「へぇ〜困った君とチビッコって知り合いだったの?」
「だから困った君て言うな!!」
トトラウトがジャンヌに言うと
「………ゴメン……誰?」
ルゥが言った。
・・・
・・・・・・
「ええ!?忘れたの!?」
トトラウトが言った。
「…」
ルゥが顔を伏せた。
「そんな!?六年前の事じゃん?」
トトラウト。
「あんたキャラ薄いからね」
ジャンヌが言った。
「確かにそうにゃ〜…」
「ポク一国の王子だ―…」
「…忘れたんじゃないよ」
ルゥが言った。
「オレには…五年前からの記憶しか無いから…」
・・・
・・・・・・
「「「ええええええええええええええ!?」」」
メンバーが驚いた。
「記憶障害ね」
「マジか!?そう言えばお前…前はもっとクールだったな…」
トトラウトが言った。
「そうなの?」
ルゥが聞いた。
「ああ。ポクが"ルゥ"って呼ぶと怒られたからな」
「それはあんたがウザいだけよ」
「なぁ!?」
「ルゥ…知らなかったわ」
「ルゥちん…」
「いひひっ ゴメンゴメン」
笑ってみせるルゥ。
それを見て
「…でもポクは今のルゥのがいいな」
「?」
「前はルゥ、全然笑わなかったしな」
「たまにはいいこと言うじゃないあんた」
「女の子がそんな下品な言葉使うんじゃないの!」
「チ○コの事じゃないわよ」
「駄目っ!?」
「にゃ〜♪ルゥちんがクールはおかしいにゃ〜♪」
「なっ!?」
「そうね〜ルゥはルゥじゃないと!」
「そうそう小さいルゥが一番だよ!」
「小さい言うな!!!?」
そう言って笑顔になるルゥでした。
緑の光の帯がどこまでもどこまでも伸びていく。
「よし!これでオッケー♪」
緑の宝玉を置いたルゥが言った。
「…へぇ〜ルゥは月を止めるのか!」
「略して突き止めるね」
「意味違うにゃ!?」
「トトラウトは何もしないの?」
エリアが聞いた。
「え?ぽ…ポクは…力が弱いから…」
顔を赤くするトトラウト。
「それにコイツ。おもらしするから」
「「「「ええ!?」」」」
「ばっ!?何言ってんだジャンヌ?!!!」
「何よ?本当の事じゃない」
「え…エリアさんの前で…」
「「…ほほう」」
ニヤリとするアミュとルゥ。
「?」
ソラ、理解不能。
「恥ずかしがらないでトトラウト?いつかきっと治るから!」
聞こえなかったのかエリアが言った。
「う、うん!」
顔を赤くするトトラウト。
「せいぜい頑張りなさい困った君」
「だから困った君て―…」
どかぁぁぁん
「「「「「「!!」」」」」」
爆発音が聞こえた。
「なんだ!?」
「外からよ!」
「!…ジィ!!」
トトラウトが走り出した。
「行くわよ!愚民ども!!」
「「「「う…うん」」」」
緊急事態なので敢えて突っ込まないメンバー。
そして城の外へ走り出した。
「緑の光って事は…アイツらしかおらへんなぁ…」
エフラムが言った。
「当たり前よ…」
そう言ってミストを壊すリアラ。
『バオオ』
すぐにやって来たキロロ。
「…大丈夫なんか?リアラ」
「…薬が効いてるわ…それより」
エフラムを見るリアラ。
「…掟」
「わーっとるわ!…解っとる…!!」
そう言って金棒を構えるエフラム。
「…そう」
傘を持つリアラ。
『バオオ』
「…魔法は使うなよ?リアラ」
「…解ってるわ」
「ほな…行くで?」
「…」
そう言って城に突っ込む二人。
「ジィ!大丈夫か!?」
トトラウトが言った。
「トトラウト様!お逃げ下され!!」
ジィが叫んだ。
「でも、そしたらジィ達が!!」
「私達は大丈夫です…それくらいの覚悟は…」
メイド達も頷いた。
その時
『バオオオオ!!』
「「!!」」
キロロが城に現れた。
その禍々しい眼光で身動きがとれなくなる城の人々。
『バオ!!』
そう叫ぶと、キロロは一直線にトトラウトを狙った。
「!!」
「と!トトラウト様!!」
ジィ達が叫んだ。
「フレイムアタック!!」
ボワッッッ!!
『バ!?』
炎の弾丸がキロロに直撃する。
「トトラウト!」
ソラが言った。
「あ、ありがとう…!」
「トトラウト、下がってて!」
エリアが続く。
「で、でも…!」
「あんた邪魔よ」
ジャンヌが言った。
「ええ!?」
「悪いトトラウト、執事達を連れて奥に行って?」
とルゥ。
「…」
「早くするにゃ!」
「は、はい!!」
トトラウトはメンバーの言う通りにした。
『バオオ…』
トトラウト達の姿が見えなくなるとキロロが立ち上がった。
「…アイツはいつぞやの…」
ルゥが言う。
「…って事は…」
エリアが気付くと
「やっぱりなぁ?」
「もう…逃がさないわ」
エフラムとリアラが現れた。
「っ!セイクリッド!!」
ソラが言った。
「"監視"のエフラムや!よろしくな?」
「…"見張り"のリアラ」
『バオバオ!』
「…キロロよ」
リアラが言うと、そのまま突っ込んできた。
「させないよ!」
ガインッ
リアラの攻撃はルゥの鍋の蓋で防がれた。
「…?」
「隙ありっ!!」
バスンッ
「っ!!」
鍋の蓋がフォークに変わる。
「凄いにゃルゥちん!」
「まあね♪」
「まるで食器の様ね」
「食器だよパー子!!」
ルゥが言った。
「"パー子"!?メルヘンの極みね!!」
ジャンヌが言った。
「余裕やな?」
ルゥの後ろにエフラムが現れた。金棒を降り下ろす。
「甘いねっ!」
ルゥのフォークが変化する。
パリーンッ
「!?」
見事な絵皿が割れた。
「どうだ?!精神的に殺られるだろっ!?」
「な、なんや!?この罪悪感は!?」
「知らないにゃ♪」
どかぁぁぁん
「がっ!?」
エフラムがアミュに吹っ飛ばされた。
「今にゃ!」
「うん!ペリッシュオーシャン!!」
「わあ!凄いじゃない大根!!」
「大根ってやめて!?」
「じゃあ俎板」
プッチン♪
「ペリッシュオーシャンんんんんん!!」
「凄い凄い凄い!!」
ジャンヌが言った。
「濡れてるならチャンスだね!ライトニング!!」
紫の雷が二人と一匹を貫く。
「「っ!!」」
『バオオ!!』
「まだまだ!バーンバニッシュ!!」
巨大な炎の剣が襲いかかる。
「オマケにゃ♪エアリアルアイオロス!!」
アミュの最大魔法も続く。
『バオバオオ!!』
「…!キロロ!」
キロロが二人の前に出る。よって二つの最大魔法がキロロに直撃する。
『バ…オオバ…!!!!』
ドンッ
次の瞬間、キロロの姿はなくなった。
「…キロロ?」
「これは…不味いなぁ」
エフラムが言った。
「キロロ…よくも…」
リアラが変わらない表情でメンバーを睨んだ。
「よくも私の…仲間を!!」
殺気が溢れ出すリアラ。
「仲間を殺したのはお前もだろっ!!」
ルゥが叫んだ。
「煩いっ!!」
ガンッ
再び鍋の蓋で攻撃を防ぐルゥ。
「効かないよっ!!ボルト!!」
傘を広げて防ぐリアラ。
「おおう!?その手があったか!?」
「アクアスパイク!!」
「うわ!?」
突然の魔法に吹っ飛ばされるルゥ。
「忘れてへんか?」
「忘れてないよ!えいっ!!」
ソラの剣がエフラムを襲う。
「まだまだにゃぁ!!とお!!」
アミュの鉄拳が追加する。
「っ!!負けへんで!!」
「にゃあ?!」
アミュが金棒でホームランされる。
「アミュ!!」
「…隙だらけ」
「うわ!?」
傘で一突きされるソラ。
「ソラ!トリート!」
「でもって回復元を断つのが戦闘や」
ガンッッ
金棒を杖で止めるエリア。
「回復元は…絶対負けちゃいけないのよ!!」
押し返すエリア。
「わっと!?なかなかやるなぁ…!!」
「どうもっ!!ハイドロキャノン!!」
「ウォータリングスプラッシュ!!」
「トランス"スプーン"!とりゃ!」
「な!?」
ルゥのスプーンがエフラムの魔法の前に突き刺さる。
「知ってる?スプーンって勢いある水を面白く弾くんだよっ!!」
ルゥの言った通り、エフラムの魔法はスプーンに当たりシールド状に丸く弾かれた。
「うわ!!」
エリアの魔法がエフラムをノックアウトさせた。
「ありがとう!ルゥ」
「いひひっ…それより来るよ!」
「うん!」
エリアとルゥが振り向いた。そこには一人佇むリアラと…
「「ええ!?」」
驚く二人。
「かかって来いウラァ!!」
そこにはジャンヌもいた。
「ジャンヌ!?」
「パー子!!」
叫ぶ二人。
ソラはアミュを起こしていた。
「大丈夫よ!なんてったってウチは全知全能の神だから!!」
「…」
「「…」」
高らかに宣言するジャンヌに寒い風が吹いた。
「…ふざけないで」
リアラが突進する。
「危ない!!」
エリアが叫んだ。
「ローズホイップ☆」
バシィンっ!!
「「!?」」
「っ!!」
リアラが飛んだ。
「ゲヘヘ♪弱いわね?」
パシーン
ジャンヌは薔薇の鞭を持ちながら北叟笑んだ。
「っ!?」
リアラが鞭で打たれた頬を押さえながら起き上がった。
「セイクリッドが聞いて呆れるわ?」
バシーン
再び鞭で打たれたリアラ。
「あらあら?抵抗しないのかしら?え?出来ない?最高ね!ゲヘヘヘヘ♪」
ビシーン
バシーン
ビシーン
ビシーン
バシーン
ビシーン
バシーン
「ゲヘヘヘヘヘヘ」
((((お…鬼…))))
メンバーがジャンヌを見て思った。
「困った君!!」
ジャンヌが呼んだ。
暫くするとトトラウトが現れた。
「な、なんですか?」
「コイツら牢屋行き☆」
ジャンヌは薔薇の鞭で器用にエフラムとリアラを巻き付け、トトラウトに放り投げた。
「わわ!?解りました!」
いそいそとジィを呼ぶトトラウト。
「…苦しい戦いだったわね」
「「「「どこが!?」」」」
メンバーが突っ込んだ。
「大根はなかなかやるし、モヤシは火ィ吹くし、チビッコの武器は楽しいし、毛玉は…どうだったかしら?」
「にゃ!?」
「まぁあんたら気に入ったわ!仲間になってあげる!!」
ジャンヌが言った。
「…」
「……」
「………」
「…………」
「「「「ええええええええええええええええええええええええ!???」」」」
「そんなに喜んでくれて嬉しいわ!ゲヘヘ」
「「「「いやいやいやいや!?」」」」
「さぁ!行くわよ!黄色の台座のある"ウィルポン砂漠"へ!!」
「だからなんで知ってるの!?」
「全知全能の神だからよ!!ゲヘヘヘヘヘヘヘヘ」
こうしてちょっとおかしくて物凄く強いて可愛いい(ナレーションになんらかの意思を感じる)植物使いのメガネっ娘、ジャンヌを新たに仲間に加え(られ)たメンバーでした。