第41話 牛乳の乱
「♪〜」
楽し気な歌が何処からか聴こえてきた。
「凄いワ!!ソラくン!なかなかじゃなイ!」
「ど…どうも」
「でも声が小さいですよ?」
「いやだってこの歌―…」
「ばっきゃ野郎〜羞恥心なんか捨てちまえYO!!」
「そうです!もっと大きい声じゃないとボクちんのドラムに負けるですよ?」
「じゃア、ソラくン?もう一回通すわヨ!!」
「…ふぇ〜い…」
おやおや。ソラ君、練習頑張ってるみたいですね。邪魔しちゃ悪いんで、ルゥ達の方に足を伸ばしてみましょう。
「痛っ!?なんか今足当たった?!」
…いっけね☆
「何言ってるにゃ?ルゥちん」
「ん〜…?」
周りを見回すルゥ。…バレてない!絶対バレてない!!
「…なんでもないよ」
…………………………ほっ
「ふ〜…平和だね」
イオが言う。
「まふ〜♪」
「きききき〜♪」
「本当本当〜平和が一番よね!」
「そう言えば、あの後ルゥちんはどうやって王様を説得したにゃ?」
「ん?」
「そう言えばそうね。私たちが客間にいる間、ルゥ王室行ってたのよね?」
「あ〜…!」
『父上様!これでもセイクリッドを信じるのですか!?』
『…』
『ヤツは内部に侵入して、この街のミストを破壊したのですよ?!そして、見張りの兵を操って…!!』
『…うむ』
『あ…あなた…』
『この様な事が起きたと言うのにセイクリッドを信じると言うなら、私は王位継承権を放棄します!!』
『『!』』
『民を守る事も出来ない様な王の後など、継ぎたくありません!!』
『…』
『…ルクレツィア』
『…港に』
『!』
『港に一隻の船を着けておいた。』
『父上様!』
『赤の台座は、ソング大陸にある。』
『じゃあ!』
顔を上げるルゥ。
『…だが、セイクリッドとの友好関係は変わらぬ。』
『な、何故ですかっ?!』
『我が愛する民を守る為―…無意味な血を流さぬ為だ!』
『!』
ルゥの顔色が明るくなった。
『ただし、条件がひとつだけある…』
『?』
『『…必ず…生きて帰ってきなさい…!』』
『! はい…父上様、母上様!!』
「…とまあ、こんな感じ?」
「格好良いにゃ〜ルゥちん♪」
「でしょ?!」
「てかルゥ…絵、上手いわね?」
「でしょ?!」
実はルゥ、二人に紙芝居で回想を伝えていた。かなり絵が上手い。
「流石、王族の英才教育ってヤツだね。」
「おお?解ってんじゃんイオ!」
「「英才教育ぅ!?」」
アミュとエリアが同時に聞き返す。
「うん!……あれは…キツかったなあ…礼儀作法に食事に語学、国学、地学…」
「それなのに、牛乳飲めないにゃ〜?」
「う…」
「そう言えばルゥ、ピーマンとニンジンとナス食べられないわよね?」
「うう…」
「はんっ…お子ちゃまだね」
イオが鼻で笑った。
「うっさーい!!!!!!いいの!!何だよ!?牛乳が何だって言うのさ!?」
ルゥがキレた。
「何?あの白い液体?!牛乳!?そんなの仔牛だけ飲んでりゃ良いじゃん!!!オレもう離乳しましたよ!?ええしましたとも!!!それなのに…それなのにっ…!!!!」
髪の毛を自分の手でぐしゃぐしゃにするルゥ。そして
「うわーんっ!!」
部屋から走り去っていった。泣きながら。
「…」
「……」
「………」
「「ルゥ!?」」
「何してるにゃ〜!!追うにゃ〜!!!!」
「まふ〜!!」
「ききー!!」
こうしてメンバーがルゥを追い掛けて行った。
「…此処に宝玉があるのね♪」
長い桃色の髪を団子にした一人の女性が村に入って来た。
「でもちょーーーっと、詰まんないわね…ん〜…」
村を見回す女性。そして張り紙に気付く。
「…バンド…コンテスト?」
「よぉよぉ姉さん美人だね〜♪」
「俺らと遊ばな〜い?」
女性が振り向き、口説いてきた二人の男を見て呟いた。
「…タイプじゃないわ」
「な?遊ぼうぜ☆」
聞こえなかったのか、再度そう言って、女性の腕を掴んだ。
すると、女性は、その美しい顔でふっと微笑み、そして、美しい声でこう言った。
「一回死ぬか?豚共」
びゅわっっっっっっっっっ
文字通りその場が氷ついた。
「…やってらんないわね〜…ホテルでも探しましょ♪」
何事もなかった様に歩いていく女性。
氷ついた二人の男を残したまま…
「…」
ぶっす〜と膨れてるルゥ。
「ほっ、ほら!ルゥの好きなスパゲティよ!!」
エリアがスパゲティを差し出した。因みにこのスパゲティは買った物です。断じて作った物ではありません。
「…」
「…にゃ!オレンジジュースも付けるにゃ〜♪」
「…」
「ホラ、エビフライもあるよ。」
「まふ〜」
「ききー」
「…」
今、ルゥの目の前には、お子様が大好きそうなメニューがズラリと並んでいる。悔しい事に、ルゥはこれらが大好きだ。
「…」
食べたいのだが、自分は今膨れている為かなり食べにくい雰囲気。
「…」
ここで、アミュが決め手の一言を言った。
「にゃ〜♪ルゥちんが大好きな酸っぱい納豆も付けるにゃ!!!!」
「許す!!」
文字通り顔色が変わるルゥ。そして喜々としてそれらを食べ始めるルゥ。それを見て、
(((…お子ちゃまだなあ…♪)))
エリアはルゥより年下なのだが、あまりにも微笑ましいルゥに、メンバー全員がそう思いながら微笑んでいた。
「?…食べないの?」
ルゥが聞く。
「にゃ!頂くにゃ〜♪」
「「いただきま〜す♪」」
「まふ〜♪」
「ききー♪」
こうして、メンバーの夜が更けて行くのでした。