第18話 セイクリッド
完全中立国"セイクリッド"にて
「…ただいま帰りましたで〜」
金棒を担いだ水色の髪の男が暗い部屋にやって来た。
「あ!お帰りなさい!エフラムくん!!」
すると、紫色の髪の少女が現れた。
「お!クロレカちゃ〜ん!今日も一段とかわいーなぁ?」
その男・エフラムがその少女に言うと
「ちょっ…なんですかも〜!!」
顔を赤くする少女・クロレカ。
「ははは♪あ!大将〜!」
クロレカに続いて、こちらにやって来たブロンドの髪の男に気が付いたエフラムが、その男に手を振ると
「…だから私はカーフェイだ」
その男・カーフェイが言った。
「あはは♪まぁええじゃないですか〜」
エフラムは朗らかに笑うと
「はいコレ」
黄色の宝玉をカーフェイに差し出した。
「おおっ!?黄色の宝玉じゃないか!」
「エフラムくん凄いすご〜い!」
目を丸くするカーフェイとクロレカ。
「あはは!!もっと褒めて〜な〜!」
照れるエフラム。
すると
「礼儀をわきまえなさいエフラム」
冷たい声がして、それと同時に狐色の髪を二つに縛った少女が現れた。
「あ!リアラちゃん!」
クロレカが手を振ると
「こちらに異常はありませんでした。クロレカ様、カーフェイ様。」
少女・リアラがつらつらと報告し終えると
「エフラム」
リアラは表情を変えずにエフラムの方を向いた。
「なんや?」
エフラムが聞き返すと
「それ持ってた奴ら、ちゃんと始末したの?」
感情が篭っていない声でリアラが言った。
「あはは♪これは落ちてたんやで?」
エフラムが笑いながら言うと
「違うな」
エフラムの背後からトゲのある声が聞こえてきた。
「あっ!セルくん!!」
現れた少年を見たクロレカが目を輝かせた。
セルくんことその少年・セルシオは、銀髪の髪で、顔には目と鼻を隠す仮面をつけていた。
「お前につけておいた」
そう言って、セルシオはエフラムのマフラーから小さい機械を剥がした。
「っ!?それは―…」
エフラムが一歩退いた。
「超薄型ハイビジョンデジタルカメラだ」
「なんやて?!」
部下の監視に無駄にお金を使うセルシオ。
セルシオはそう言って映像を映し出した。
「よかったエフラムくん命令通りだね!!」
映像を見終わったクロレカが言うと
「命令違反だな」
セルシオが言った。
「え?」
クロレカが小首を傾げると
「あれくらいでは人は死なない」
カーフェイが言った。
金棒で殴られれば普通死ぬと思うが。
「カーフェイくん!?」
そう思ったクロレカが聞き返すと
「…命令違反」
リアラがエフラムに向けて殺気を放った。
すると
「も〜い〜じゃない!そのくらいにしてあげなさいよぉ?」
桃色の髪を団子にし、上がり具合いの前髪を左に分けている女性が現れた。
「ヴェルナちゃ〜ん!!」
その女性・ヴェルナの登場に目を輝かせるカーフェイ。
「あら、カーフェイ久しぶりねぇ?」
ヴェルナがカーフェイに挨拶すると
「会いたかったよ〜!!」
カーフェイは彼女に向かって駆け出した。
「そ? 私はそうでもなかったわよ?」
「え゛」
走っている途中で撃沈するカーフェイ。
「…ヴェルナ様…エフラムは命令違反」
そんなの構わず続けるリアラ。
「一回だけじゃない?そのくらい良いでしょリアラ〜?」
肩をすくめながらヴェルナが言うと
「…分かりました」
リアラから殺気が消えた。
「よかったわね〜エフラム?」
にこっと笑うヴェルナ。
「…しかしあの少年がいたとは…」
復活したカーフェイが腕を組みながら画面に映っているソラを見た。
「あっ!この茶髪のコ?可愛いわよね〜♪」
画面を指さしてはしゃぐヴェルナ。
「この金髪ちゃんもなかなか…でももちろんヴェルナちゃんの方が素敵だよ」
カーフェイが言うと
「会ったことあるのぉ?」
ヴェルナが流した。
「おっとそうだ。暫く前に空から降って来たんだ」
流されたことを気付かずにカーフェイが答えると
「空から降って来た?」
クロレカが首を傾げた。
「…アクリウムはやられたようだな」
どうでも良さそうにセルシオが口を開いた。
「本当セルくん!?」
クロレカが尋ねると
「こいつらが敵だ」
セルシオが言った。
「敵…確認」
リアラはそう言うと、素早く姿を消した。
「…次は無いと思え?」
リアラが消えた後で、セルシオがエフラムに向かって言った。
「…はい」
気が進まないようだが、エフラムは頷くと、リアラと同じようにその場から消えた。
「…じゃあ私達も行こうかヴェルナちゃん?」
そう言ってカーフェイがヴェルナに手を差し延べると
「めんどい」
その手を払うヴェルナ。
「そう言わないの!!じゃあセルくん!!先言ってるね!!」
クロレカがそう言うと、セルシオ以外の者が部屋からいなくなった。
「…久しぶりだな…」
画面に映ったルゥを見ながらセルシオはそう呟き、そして皆と同じように姿を消した。