第10話 発表
その夜、アクリウムの村ではパーティーが開かれました。
「ありがとうございます!」
「ありがとうございました、ソラ様!」
「洞窟の悪魔を倒したんだろ〜!?」
「スゴいね!お兄ちゃん!」
次々とソラにお礼を言う村人たち。
「それに引き換え、シャーンは手も足も出なかったらしいぜー!」
そんななか、一人の子供が言った。
「「うわっ、だっさプー!」」
便乗する子供たち。
「こ、こら!ごめんなさいね?」
子供の口を押さえながらその母親が申し訳そうに言うと
「き、聞かなかった事にしてくださいまし…」
もう一人の子供の口を押さえながらその母親が言った。
「「お、おほほほほほ」」
そして二人の母親は笑って誤魔化した。
「…」
がっくりと肩を落とすシャーン。
「…シャーン…」
ソラが気まずそうにシャーンに話しかけると
「いい。話しかけてくれるなソラ」
右手を突き出してソラの発言を遮った。
そして酷い言われように涙を光らすシャーン。
今にも"の"の字を書き出しそうだ。
「う…うん…」
ソラはぎこちなく頷くと、テーブルの方へと戻っていった。
「…んもーっシャーン!!そんなんだからエリ姉が気付かないんだよ!!」
ソラが行ったのを確認してから怒ったようにシャーンを叩くルゥ。
「はぁ!?」
ルゥの言葉に驚いてシャーンが飛び退くと
「? どしたの?」
ソラが振り向いた
「い、いやなんでもない…」
シャーンが手を振りながら言うと
「? そう?」
ソラは再びテーブルの方を向いた。
「…何言ってんだよルゥ?!」
シャーンが小声でルゥに言うと
「だって見た感じで分かるじゃん?」
スパゲティを小皿に取り分けながらルゥが言った。
「うっ…」
顔を赤くするシャーン。
(このガキ…)
とか思いながら。
「いひひっ♪まぁエリ姉は―…」
ルゥはそう言いながらエリアの方を向いた。
つられてエリアの方を向くシャーン。
「エリア…どうしたの?」
すると、丁度ソラが心配そうにエリアに尋ねた。
「えっ!?な、何?!ソラ?」
慌てて聞き返すエリア。
ソラの真向かいに座っているエリアはお皿をかじっていた。
明らかに動揺している。
「それ…お皿だよ?」
ソラが言うと
「えっ!?あっ?!本当だ!何やってんだろ私?!」
慌ててお皿を放すエリア。
パリーンっ
放されたお皿は、床に落ちて砕け散った。
「きゃあ!?」
「大丈夫?!」
そんな様子を見ていたルゥが
「あの動揺ぶり…」
やれやれと溜め息をついた。
「いいんだルゥ」
するとシャーンが静かに言った。
「お?諦めたん?」
ルゥが小首を傾げると
「…いや」
シャーンは拳を握り締めガッツポーズをした。
そして
「例え相手が親友だろうとも、この手でエリアを振り向かせて見せるっ!!」
って宣言した。
「? 呼んだ?シャーン」
するとエリアが振り向いた。
「おぉっスゲェ!!早速振り向いた!!」
冷やかすルゥ。
「…ははは」
再び悲しい涙を光らせるシャーンでした。
ガチャ
「うぇ…食べ過ぎた…」
口を押さえながら外に出たソラ。
やたら村の人が食べ物を勧めてきたので、ソラの胃は限界だった。
「お?ソラ兄どしたの?」
外には何かの台に座って月を眺めていたルゥがいた。
「いや気持ち悪くて…」
ソラが言うと
「吐くなよっ?!」
透かさずルゥが突っ込んだ。
「そう言えばルゥ」
そこで思い出したように話を切り出すソラ。
「ん〜?」
ルゥが返事をすると
「この世界って消えちゃうの?」
ってソラが尋ねた。
「うん」
コクンと頷くルゥ。
「ええっ!?」
普通に返されたので驚くソラ。
「いひひ♪空見て見なよソラ兄?」
にこっと笑いながらルゥが言った。
「え?」
言う通りに空を見るソラ。
紺色の空には、月と星が美しく輝いている。
「月が見えるでしょ?」
ルゥが聞くと
「うん…綺麗だね」
頷くソラ。
「…何でソラ兄がこの事を知ってるの?」
「へ?」
ゆっくりとソラに目を戻しながら
「これは王族かセイクリッドのヤツらしか知らない事のハズなんだケドなあ?」
って言った。
「え…じゃあルゥは…」
驚いたようにソラが尋ねると
「スパイだ」
ってルゥが答えた。
「マジでっ!?」
ソラが聞き返すと
「スパイダー」
ってルゥが言った。
「ははは、ばぁか」
爽やかに笑うソラ。
「…冗談は置いといて」
ルゥはふぅっと息を吐くと
「この世界が消えちゃうってのはね?」
ソラを真っ直ぐ見つめ
「あの月が落ちてくるって事なんだ」
って言った。
「ええええええええ!?」